[an error occurred while processing the directive]

IDF Fall 2006 R&Dショーケースレポート

未来を目指すIntelの研究

会場:米San Francisco Moscone Center West

会期:9月26日~28日(現地時間)



 IntelのR&Dの中には、同社の製品に直接結びつくものではないが、コンピューティングの将来を考えるようなものがある。これらは、エッセンシャルコンピューティングという名称でまとめられている。IDF前日に、その説明が行なわれた。さまざまなものがあるが、そのうち目を引いたものについて紹介しておくことにしよう。

 このカテゴリに含まれる研究は、コンピュータそのものを対象としてはいないものの、何らかの形でコンピュータと関係がある。

 例えば、「Human Activity Recognition」という研究は、人間の行動を記録して、そこから何をしているのかを推測することなどを目的としている。このために、小型のRFIDリーダーを開発、手に持ったものが何なのかを検出できるようにした。日常生活で使うあらゆるものにRFIDを付けておけば、それを手に取ると、コンピュータにそれがわかるようになっている。このために、腰のベルトにつける本体と腕に付ける超小型のRFIDリーダーを開発した。リーダーと本体の間は近距離無線通信のZigBeeで接続しているという。

 例えば、ティーバッグやポットを持つという動作のあと、カップのそばに手が近づくなら「お茶を入れている」と推測できるわけだ。もっとも、概念的に「お茶を入れている」とは認識するまでに至らず、こうした動作がグループ化されるところまでは、コンピュータ処理で検出が可能だという。

 こうした調査を積み重ねていくことで、ものと人間の関係から行動のパターンがデータベース化されていく。データベースができれば、今度は、それと、実際の人間の行動を比べて、何をしているのか、次に何を行なうのかといった推測が可能になる。そういう意味では非常に基礎的な研究だが、介護のように機械が人間をサポートしたり、あるいはコンピュータが仕事を手伝うといった場合などに応用できるものなのだという。

人間の行動を記録して、そこから何をしているのかを推測する「Human Activity Recognition」

●ナノマシンが3次元形状を自由に作る「Dynamic Physical Rendering」

 今回のR&D分野の中でも、最も飛び抜けていたのが、この研究である。簡単にいうとナノマシンを作って、実在の3次元物体を自由に変形させる研究である。この研究は、カーネギーメロン大学との共同研究で、カーネギーメロン大学側では、“Claytronics”と言っている。

 よく、アニメなどで、ロボットなどが理解不可能な変形を行なうが、あれを実際にやろうというわけだ。ただし、まだ基礎研究の段階。デモビデオがあるので、興味のあるかたは見てみるといいだろう。会場で流されていたデモビデオは、http://www.cs.cmu.edu/~claytronics/movies/にある“future ad”である。ちなみにアニメに詳しいライターG氏によれば、すでにナノマシンで変形するロボットという設定のアニメがあるのだとか。

 現在は、小さな円筒形のマシンを作り、これらがお互いの位置を認識して、自動的に特定の形を作る方法を探っている。いきなり3次元は難しいので、2次元でやろうというわけだ。マシンは、円筒形の側面に電磁石を持ち、相手と特定の角度で接することができるようになっている。お互いの周りを回るように動いて、指定された位置へと自分で動いていくわけだ。

 この研究では、ナノマシンに指示を出して、リアルタイムでの変形を行わせ、また、人間がそれを変形させることで、コンピュータに指示を出すようなユーザーインターフェイスなどの応用を考えているようだ。

 ただ、実用化時期などはまったくの未定。説明に立っていた研究者は、投資次第みたいなことを言っていた。

会場で流されていたデモビデオ。自動車のモデルが変形するところ。実際の映像については本文を参照のこと 説明パネル。究極的には、3次元物体を複数のカメラで撮影し、それとまったく同じものを構築できるという 将来的にシリコンで作ろうとしているナノマシン。ケースの中の手のように見えるのがそれ。指のようなものを丸めて球状となり、多数集まって3次元形状を構成する
2次元の研究モデル。円筒の下の部分が電磁石になっていて、お互いに吸い付く。また、上の方には、赤外線の樹発光部があってこれでお互いの位置を知ることができる 2次元モデルの試作機。現在は、2次元で自由な形を作ることができるロボットを開発し、ソフトウェアなどの研究を進めているという

●実用的な研究も

 前述のエッセンシャルコンピューティングの範疇ではないが、いくつかおもしろい研究もあったので、ついでに紹介しておこう。

 まずは、FPGAで作ったIA-32命令が実行可能なCPUである。FPGAは、デバイスに外部からロジック定義を書き込んでやると、その通りに動作するデバイスである。FPGAができるということは、IA-32を実行するための挙動をソフトウェアとして記述したということである。ただし、アウトオブオーダーなどの複雑な機構は一切なし。しかし、遅いながらもちゃんとWindows XPが動作していた。

 クロック周波数は300MHz。FPGAは、XilinxのVirtex-4、XCE4LX200というデバイスだという。

 これは、今回のIDFで話題のTera-Scale Computingの研究用に作られたもので、ハードウェアのエミュレーションをソフトウェアと同じ時間内で行なうといった目的があったようだ。また、デザインの変更や、プローブの挿入といった回路変更が簡単に行なえ、現実のOSをそのまま動かせるために、同時にそのCPU上で動作できるソフトウェアの開発も行なえるというメリットがあるようだ。

 いわゆるIntelのメニーコアプロセッサは、シンプルコアといわれているが、シンプルコアならこのようにFPGAで構成が可能で、これを多数並べて、アーキテクチャの検証などを行なっているのではないかと思われる。

FPGAで作ったIA-32プロセッサでWindows XPが動作しているところ。速くはないが、スローモーションのように遅いというわけではない 手前の基板が重なってみえる部分がFPGAで作ったIA-32プロセッサ。上には、測定用の端子が出してある

●High Isolation Antenna

 次は、ぐっと、現在に近づいた研究である。Intelは、次世代の無線LANモジュールにMIMO方式を使うIEEE 802.11nを搭載予定である。MIMOは、空間的に複数の経路を使って通信を行なうものだが、このとき、それぞれにアンテナを割り当てたとしても、相互に影響しあい、受信性能などが低下してしまう。これを回避する方法としては、小さなアンテナを並べたアレーアンテナを使い、指向性を高めるという方法があるが、素子の数が多くなると、コストが高くなるという欠点がある。

 IntelのHigh Isolation Antennaは、2チャンネルのMIMO用に2つのアンテナの偏波を変えて配置したもの。偏波とは、アンテナが水平か垂直かといった違いである。電波は、電界と磁界が交互に作用して空間を進んでいくのだが、それがお互いに90度ずれているため、アンテナ同士の角度を合わせないと、効率的な受信ができない。逆にこれを使って、MIMOの2つのチャンネルを縦と横にしてしまえば、横向きのアンテナから出た電波は、縦向きのアンテナに対しては、弱くしか受信されないため、お互いの影響を小さくすることができるわけだ。なんだか、簡単な話だが、高価なパッチアンテナと同等の受信性能があり、コストも現在のアンテナとほとんど変わらないという。

左から、既存の無線LANアンテナ、High Isolation Antenna、パッチアンテナ。High Isolation Antennaは、既存のアンテナと構造がほとんど同じで、コストも変わらないという 従来のアンテナ、High Isolation Antenna、パッチアンテナの受信特性を測定すると、Hight Isolation Antennaは、パッチアンテナと同等の性能を持つ

□IDF Fall 2006のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2006/
□IDF Fall 2006レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/idff.htm

(2006年9月29日)

[Reported by 塩田紳二]

【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
お問い合わせに対して、個別にご回答はいたしません。

Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.