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WWDC2006レポート

WWDC2006基調講演詳報(1)
~過去最大の参加者の前でIntel化完了をアナウンス

会場:San Francisco「Moscone Center West」

会期:8月7日~11日(現地時間)



 米Apple ComputerによるWWDC 2006(世界開発者会議)は、現地時間7日午前10時に幕を開けた。ほぼ定刻に始まった基調講演は、まず同社の顔であるスティーブ・ジョブズCEOの登壇で開始した。

今年も基調講演に臨むスティーブ・ジョブズCEO

 ジョブズCEOは、自分のパートにおいてこれまでと何ら変わることなくエネルギッシュに講演を行なった。冒頭では、今年のWWDC参加者は4,200名を超えたことをアナウンス。また現在ADC(Apple Developers Connection = 同社の登録制開発者組織)の登録者が75万人を数えたことも明らかにした。さらに、今回会場には1,000人を超えるApple Computerのエンジニアが訪れているため4対1の比率でデベロッパへの対応が可能とし、期間中に数多くの有意義なコミュニケーションが得られるとコメントした。

 WWDC、Macworld Expoの基調講演で恒例のアップデートでは、直営店舗の現状について紹介。まずニューヨークの五番街に開店した旗艦店を紹介。地上部分は総ガラス張りのモニュメントで、実際の店舗は地下部分に位置するユニークな店舗で、今では観光名所の1つとなっている直営店を誇らしげに紹介した。この店舗をはじめ、現在世界中に157店を数える直営店では、4~6月にあたる四半期に延べ1,700万人が来店、サードパーティ製品だけで5億ドルの売り上げがあったという。また、同四半期では133万台のMac製品を販売。うち75%をIntel製CPUを搭載するMacが占めた。成長率で見ればPCよりもMacの方が良く、特にノートブック市場においては着実にシェアを拡大していると好調さをあらためてデベロッパにアピールした。

今年の基調講演は、ジョブズCEOを中心に同社のエグゼクティブ3名も参加して行なわれることになった 今年のWWDC参加者は4,200名を超え、過去最大規模に。さらに会場内には1,000人を超えるApple Computerのエンジニアも訪れている ニューヨークの五番街に開店した直営店。地上部分は全てガラス張り(エレベータを含む)で、実際の店舗は地下にある。すでにちょっとした観光名所だ
前四半期においては、133万台のMacを出荷 出荷数の中で、Intel搭載Macが75%を占める 特にノートブック市場でのシェアが向上している

 ハードウェアにおいて事実上唯一Intel化されていなかったカテゴリである、プロ市場向けのデスクトップ製品が「Mac Pro」として発表されたのは既報のとおりである。このセクションでは、ワールドワイドプロダクトマーケティング担当上級副社長のフィリップ・シラー氏がスピーカーを担当した。同社製品の命名基準からいけば、製品名称が「Mac Pro」となることはすでに予測されていたことで、特にシラー副社長もその名称に関しては言及しなかった。

ワールドワイドプロダクトマーケティング担当のフィリップ・シラー上級副社長

 シラー副社長は同社としては珍しく、搭載するプロセッサ名を“Woodcrest”と開発コード名をつけて紹介。その上で同プロセッサが消費電力あたりのパフォーマンスに優れることなど採用の理由を説明した。特に講演では触れられなかったが、Core 2 DuoではなくXeonという選択になったのは、製品ラインを1つの標準仕様とし、“Quadコア”(デュアルコアプロセッサのデュアルプロセッサ構成)搭載という基準を重視したものと想像される。

 Xeonはそれぞれ1.33GHzのフロントサイドバスでシステムコントローラ(チップセット)と接続。やはり講演では言及されていないものの、このチップセットには「Intel 5000X」(開発コード:Greencreek)が採用されていることが確認できている。Mac ProのメモリにはECC機能付きのDDR2-667(PC2-5300) FB-DIMMが採用される。

 内蔵可能なHDDは最大で4基。1台あたり500GB、最大で2TBの容量が本体内に収容できることになり、従来モデルと比べて文字通り倍増している。これには訪れたデベロッパからも拍手喝采の様子だった。ほかにも、光学式ドライブスロットを2基搭載したことや、前面パネルへのインターフェース端子の追加など、細かい部分のリファイン要素は数多い。

 外観はPowerMac G5似ではあるものの、内部は新しい構造になっている。前述したとおり内蔵可能なHDD数の倍増、光学式ドライブスロットの追加、さらにPCI Expressスロットに1スロット分のスペースが増えている。外観寸法がほぼ同一にもかかわらず、これだけ中身に余裕が生まれた秘密は、やはりワットあたりのパフォーマンス向上にあったようだ。

 スライドの配置図を見ても明らかにXeon 2基が収まっているプロセッサ部分の容積は、PowerMac G5のそれよりも小さい。また、これも講演では触れられていない要素だが、従来製品では最大9個のファンを内蔵していたが、今回は4個にとどまっているという。これが内部に余裕を生み、また静粛性も実現している理由というわけだ。

 ベンチマークテストによれば、PowerMac G5に比べて1.6~2倍ほど高速。アプリケーションの実行速度でも、最大で2倍近い差がでるものと紹介された。基本となるコンフィグレーションは単一。ほぼ同スペックのDell製PCをオーダーした場合、1,000ドル近い差が生まれることも紹介され、コストパフォーマンスの良さも強調された。

 BTOによるカスタマイズ可能なパターンは、4,976,640通り。これはワイヤレスキーボードなど追加の細かいオプション品まであらゆるパターンを考慮したもので現実的には大げさな数字だが、CPUは2.0GHz、2.66GHz、3.0GHzの3種類からチョイスでき、前述のHDD、メモリなどのチョイスにも幅がある。さらに、グラフィックカードも用途にあわせて選べるなど、確かにプロ市場をターゲットとするのであれば、標準仕様を1つに絞り込むという選択は、理にかなったものと思われる。

 Mac Proは当日から出荷を開始。この出荷により「移行は完了した」というスライドが表示され、iMac、MacBook Proの発表から210日間でラインナップのIntel化が終了した旨のアナウンスが行なわれた。

Mac Proに搭載されるXeon(Woodcrest)プロセッサ Intel移行に際して最も重視されていた消費電力あたりのパフォーマンスを比較 PowerMac G5 Quadと比べて、ベンチマークではおよそ2倍の性能比となる
アプリケーションベースでも、最大2倍近くのパフォーマンスが得られると説明 フロントサイドバスはそれぞれ1.33GHz 内蔵できるHDDの数は倍増。もちろん総容量も倍増してデベロッパの歓声をうけた
2スロット分のスペースを占有する大型のグラフィックカードにあらかじめ対応。マザーボード上のスロットは4スロットだが、最下段は2本分のスペースがある 外見は従来のPowerMac G5とほとんど変わらないが、内部の構造は一新。CPUの専有部分が小さくなった分、他の目的に使える容積が増えている Dell製PCの同一コンフィグレーションとの価格比較。約1,000ドルほど安く、コストパフォーマンスの良さが強調されている
Apple StoreのBTOを利用すれば、CPUは2.0GHz、2.66GHz、3.0GHzから選択可能。いずれもデュアルコア、デュアルプロセッサ Mac Proの出荷で、Intel移行の完了が宣言された

 さらに、もう1つ残る製品ラインであるサーバー製品についても同じくシラー副社長から発表が行なわれた。こちらはスペック面の紹介が中心となったが、やはりXeonをデュアルで搭載する。ベンチマークテストでは、3.7~5.4倍という従来製品との比較も紹介された。これは、従来のPowerPC G5を搭載するXserveがシングルコア搭載の製品だったことが大きい。

 やはりXserveでもDell製サーバーの同等スペック品との比較が行なわれた。こちらの差額は300ドルとMac Proに比べると小さいものの、やはりコストパフォーマンスに優れるという点は繰り返し強調されている。

 XserveもMac Proと同じく標準の製品仕様は単一。もともと法人需要をターゲットとする製品だけに、納入にあたっては事前の営業やサポート体制も重要となる。そういった点でもカスタマイズ要素が重視されている点は意味がある。Mac Proほどではないが、100万通りを超えるカスタマイズのパターンがあるとされている。

 ちなみに講演では言及されていないが、単体ソフトウェアとして販売されている「Mac OS X Server v10.4.7」も同日からPowerPC、Intel両対応版としてリニューアルされて販売が始まっている。これまでPowerMac G5、XserveのいずれもがPowerPC搭載のハードウェアだったためにServerソフトウェアのIntel対応は行なわれていなかった。今回、Xeon搭載のXserveが発表されたため、ソフトウェアも登場したというわけである。

 クライアントであるMac OS X 10.4 "Tiger"のパッケージ版はPowerPC向けの製品であるため(現在、Intel対応のTigerは本体へのバンドルのみ行なわれている)、これがMac OS Xのなかで唯一のIntel対応パッケージ製品になる。

Xserve G5とのベンチマーク比較。従来製品はシングルコアのデュアルプロセッサだっただけにその差はおよそ5倍余りと大きくなった 冗長化された電源。訪れたデベロッパから歓迎の歓声があがった 計3基、最大2.25TBのHDDを本体内に収容可能となる
同一スペックのDell製サーバーとの価格比較。Mac Proほどではないがこちらも割安感を強調している 新しいXserveの出荷は10月を予定

 再びジョブズCEOがステージへと戻り、本題であるMac OS Xのセクションがスタートした。Mac OS Xは2001年のリリース以来、計5回のメジャーリリースを行ない、さらに今年1月にはIntel版のTigerをリリースしている。これに対してライバルは5年間も何をしているのかと、Windowsを揶揄した。

 頻繁なメジャーアップデートが必ずしも良いこと、または必要なことだとは限らないが、このアップデートを糧にMac OS Xのアクティブユーザー数が1,900万に達したともなれば、同社的にはこの戦略が成功裏に推移しているということだろう。実際、"Tiger"はApple Computerとしてはもっとも売れたソフトとなった。

 また前回のWWDCで明らかにされたIntel移行から1年あまりで、PowerPCとIntelの両方のコードが1つのアプリケーションにまとまった「Universal Binary(ユニバーサル・バイナリ)」アプリケーションの数が3,000を超え、Intelへの移行がソフトウェアの面でも順調に進んでいることを示し、デベロッパに対してあらためて感謝を表した。

Mac OS Xのアクティブユーザーは、1,900万人に達している 5年間に5回のメジャーリリース。Intel版の"Tiger"を含めると、計6回のOSリリースを行なったことになる "Tiger"の画面をPowerPC版からIntel版へとモーフィングしてみせる(スライド上はなにも変わらない)

2004年に開催されたWWDCの様子をスライドで表示。本誌の2004年レポートでも紹介しているが「真似しろ」とバナーに書いてある。それなのに似ているのをネタにするのは、いかがなものかと思う

 そしてソフトウェアエンジアリング担当上級副社長のバートランド・サーレイ氏が登場。いかにVistaが"Tigar"に似ていて、いかに"Tiger"そして"Leopard"が技術的に先行しているかと言うことをしばらくスピーチする時間が続いた。

 ジョーク混じりで、かつ聴講者がMac関係の開発者であるということで業界向けの話題も多く、紹介するスライドやコメントに会場の笑いは絶えない。しかし、聞きようによってはしばらくVistaの悪口が続いているだけでもあり、内容自体はいまいちという印象がある。

 このあとジョブズCEOが再登壇して、"Leopard"の本格的な紹介がはじまった。

サーレイ上級副社長による似ているシリーズその1。TigerとVistaのデスクトップは似ている シリーズその2。SafariのRSS画面とIE7のRSS画面は似ている シリーズその3。Mail.appとWindows Mailは似ている
シリーズその4。iCalとWindows Calenderも似ている どんなに似ていてもWindowsはWindows。レジストリが存在し、レジストリエディタもあると揶揄 Vistaにはアクティベーションが必要。裏をかえせば、Mac OS Xでは、"Leopard"になっても従来同様にアクティベーションは採用されないと言うことだろうか?

□アップルコンピュータのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□WWDC 2006のホームページ
http://developer.apple.com/jp/wwdc/
□関連記事
【8月8日】WWDC基調講演速報、"Leopard"を公開。10の新機能をデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0808/wwdc03.htm
【8月8日】WWDC 2006でXeon搭載のMac Proが登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0808/wwdc02.htm

(2006年8月9日)

[Reported by 矢作晃]

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