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U3準拠のUSBメモリ
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「クルーザー マイクロ」 |
発売中
価格:オープンプライス
サンディスク株式会社から、U3プラットフォームを採用したUSBフラッシュメモリ「クルーザー マイクロ」(以下、クルーザー)が発売された。価格はオープンプライスで、実売価格は512MBが4,000円台後半、1GBモデルが9,000円前後、2GBモデルが18,000円前後となっている。今回1GBモデルを入手できたので、U3アプリケーションなどを中心にレビューしたい。
U3は米SandiskとM-systemsが提唱する、USBメモリ内に格納された複数のアプリケーションの自動起動をサポートする規格。APIを通してデータの読み込み/書き込みを行なうことで、PCに記録やデータを残さず、設定もUSBメモリに保存されるため、共有PCなどでも安全にアプリケーションが利用できるのが特徴だ。
クルーザーは国内で初めてこのU3プラットフォームを採用したUSBメモリ。U3対応アプリケーションとして、経路検索ソフト「乗換案内 U3 Edition」、IP電話ソフト「Skype」、パスワード管理ソフト「SignUp Shield」、アンチウイルスソフト「Avast!」、Outlookなどのデータを同期する「CruzerSync」がプリインストールされている。
●普通のUSBメモリと変わらない外観
製品パッケージは、本体のほか、首掛けストラップ、乗換案内 U3 Editionが入ったCD-ROM、説明書や保証書など。
本体はブラックとホワイトのツートーンで、少し高級感がある。USBコネクタは、本体中央にあるスライドスイッチで本体に収納できるようになっており、キャップを紛失する心配がない反面、内部の端子部は露出されているため少々不安を感じる。
なお、スイッチをスライドするときは少し押下してロックを解除しなければならない。これは誤スライドでコネクタが突出してしまうのと、USB端子に挿したときにコネクタが戻ってしまうのを防ぐための機構だろう。動作ランプはオレンジ色で、スライドスイッチの下に内蔵されている。
製品パッケージ | 内容物をすべて開けてみた。乗換案内はCD-ROM形式で同梱されているだけ | USBメモリ本体 |
「U3 smart」のロゴがプリントされている | コネクタを出してみたところ | 動作中本体のスライドスイッチ部がオレンジ色に光る |
●わかりやすいU3 LaunchPad
PCと接続すると、自動的にドライバと「U3 LaunchPad」がインストールされ、LaunchPadがタスクトレイに常駐する。初回起動時は「LaunchPad ツアー」が起動し、簡単な使い方などが紹介される。初心者でも特に戸惑うことはないだろう。
Windows上からは、物理的にCD-ROMドライブとリムーバブルドライブの2つが認識される。この仮想化のCD-ROMドライブ上にLaunchPadのプログラムがあり、autorun.iniで自動起動する仕組みのようだ。試しにShiftキーを押しながら挿入してみたところ、案の定LaunchPadが自動起動されなかった。
LaunchPadの画面はわかりやすく、左ペインはインストールされたプログラムの一覧およびU3対応アプリケーションのダウンロードサイトへのジャンプ、右ペインは基本的な操作や設定が行なえる。下ペインにはメーカーへのリンクおよびU3メモリの取り外し操作が行なえる。
PCと接続するとドライバーを自動的にインストールし、タスクトレイにU3 Launcherを収納 | U3 Launcherを起動したところ |
初回起動時に起動するLaunchPad ツアー | ドライブは物理的に2つとして認識されている |
メイン機能から順に見ていこう。「U3ドライブの検索」は対象のU3対応メモリをルートとしてWindowsエクスプローラで開く機能。「プログラムの管理」ではU3メモリにインストールされたソフトをリストアップしており、ここからメニューの並び順やプログラムの削除、メモリ挿入時に自動実行する設定が行なえる。
「ステータスと設定」ではLaunchPadの言語、残り容量の表示、ソフトウェアの更新、USBメモリのパスワードロック、U3 LanchPadの削除などが行なえる。なお、パスワードロックしたUSBメモリのパスワードを忘れてしまうと、フォーマットしてデータを削除するしかなくなるので注意されたい。また、U3 LaunchPadの削除を行なうと、単なる大容量ストレージUSBフラッシュとして認識されるようになるとのことだが、現時点ではLaunchPadのみの提供がなく、再インストールできなくなってしまうと困るので試していない。
「プログラムの追加」では、U3のアプリケーションサイト、SanDiskのU3のサイト、マイコンピュータのいずれかからプログラムの追加が行なえる。前2者では内蔵のWebブラウザが起動し、追加したいプログラムをダウンロードして追加する。後者では「ファイルを開く」のダイアログが開き、対応インストーラを選択することでインストールを行なう。
プログラムの管理画面。アプリケーションの削除および挿入時の自動起動を設定できるほか、使用容量が表示される | ステータスと設定ではLaunchPadの言語を選択できる | ソフトウェアの更新もここから行なえる |
USBメモリの使用状況をグラフィカルに表示する。これは乗換案内をインストールした後の状況 | 暗号化を有効にするとパスワードを求められる。忘れてしまうと全データを削除するしかない |
プログラムの追加方法は3通り | 独自のブラウザを搭載しているようだ(レンダリングはIE) |
●U3のメリットが生きるアプリケーション群
次に付属のU3アプリケーションについて簡単に見ていこう。まずは目玉の「乗換案内」だが、現時点では付属の8cm CDからインストールしなければならない。次のロットからプリインストールされるそうだ。インストール自体は簡単で、インストーラからインストール先のU3メモリを選択するだけで始まる。
ちなみに、USBメモリにインストールされるU3用ソフトはいずれも拡張子が「.u3p」で、Windows標準の「.exe」ではない。試しに拡張子を「.zip」に変更してみたところ中身が覗けた。U3 Launcher上でファイルを展開してから、独自の形式で実行する仕組みのようである。
インストール完了後はメニューからクリックして起動するだけ。起動や検索、線路図のレスポンスは軽快で、特にストレスを感じることはない。外出先のPCで、帰りの経路や時間などを検索するのに便利だろう。ただし容量を286MBも使用するため、インストールすると1GBモデルで約4割が使えなくなってしまう(デフォルトで約1割弱を使用)。機能の制限や収録データの簡略化など、U3向けに容量を縮小すれば良かったと思う。
乗換案内のCD-ROMとインストールマニュアル | プログラムの追加を行なう画面 | 起動画面 |
線路図から目的地と出発地をグラフィカルに選択できる | バージョン表示にも「U3 Edition」。ここまでやるならもっと容量を小さくしてくれればよいと思う | U3アプリケーションの拡張子は「.u3p」 |
「CruzerSync」は、Outlookのメール/予定表や、Internet Explorerの「お気に入り」、ユーザが設定したフォルダを同期するソフト。同期されたデータはCruzerSync上で参照できるため、2台のPCの間で同期を取る場合には便利に使えるだろう。ただし、メモやスケジュールの同期にも、Outlookをデフォルトのメーラーとして設定しておく必要があり、「メーラーだけ別のものを使いメモやスケジュールだけ同期をとる」といったことはできない。
CruzerSyncの起動画面 | Outlookのほか、自分で設定したフォルダも同期できる |
Internet ExplorerやFirefoxのお気に入りも同期可能。壁紙を適用する機能も | ソフト上からデータの参照も行なえる |
「SignupShieldパスワード」は、Internet Explorer上で入力された複数のサイトのパスワードフォームを記憶し、1つのパスワードを入力するだけで異なるサイトでの異なるパスワードも代行入力してくれるソフト。パスワードが保存されていないPCで複数サイトにアクセスする場合、パスワードやフォームを入力する手間が省ける。インターネットカフェなどでの利用に便利だろう。
SignupShieldの起動画面。同梱されているのは機能制限版で、製品版へアップグレードするとフィッシングサイト警告機能などが利用できる | SignupShieldは自動起動を推奨しているようだ | このようなログインフォームがあるサイトだと、IDとパスワードを保存するかどうかを問うダイアログが現れる。なお、IE7 beta2では利用できなかった |
「Avast! Antivirus」は、その名のとおりウィルス対策ソフト。こちらはU3向けにカスタマイズされたバージョンで、GUIはWindows版とかなり異り、ネットワークシールドやOutlookシールドなどの機能がなく、単純にウイルスをチェックする機能だけを搭載したバージョンのようだ。
起動時にメインメモリに常駐しているプログラムを検索するため、インターネットカフェのPCなどの外部PCでの利用時に、キーロガーやアドウェアの検出に役立ちそうである。付属しているものは60日間ウイルス定義のアップデートが可能なバージョンで、長期の利用には登録(1年で14.95ドル)が必要となる。
Avast! Antivirusの起動画面。起動前にメモリ内の常駐プログラムをスキャンする | GUIはWindows版とはかなり異なる |
ネットワークシールドなどの機能がなく、ローカルドライブの検査のみが行なえる | ウイルス定義のアップデートも可能 |
「Skype」はご存知の通り、フリーのIP電話ソフトである。こちらはWindows版と大きな変化がなく、Skypeユーザなら問題なくそのまま利用できるだろう。プリインストールされていたのは2.0.14.85で、U3対応版としては最新だった。
Skypeの起動画面。Windows版とほぼ同じだ | ログインした後のインターフェイスもWindows版とほぼ同じ | バージョンは「2.0.14.85」だが(Windows版の最新は2.5)、U3版としては最新のようだ |
いずれのアプリケーションも、設定やデータはUSBメモリ内に保存されており、外出先のPCでの利用や、複数のPC間での利用を想定してPCにデータを残さない点では安心できる。「持ち運べるメディアに詰め込むアプリケーション」としてのメリットを最大限に生かしているといっていいだろう。
●USBメモリを積極的に使おうという気持ちにしてくれるU3
最後に通常のUSBメモリとしての使い勝手を検証するため、ベンチマークを行なってみた。環境はPentium M 1.7GHz、メモリ512MB、Intel 915GM Expressチップセット、150GB HDD(Rapter X)、GeForce FX 5900 Ultra(256MB)、OSはWindows XP Professional。ベンチマークソフトはHDBENCH Ver.3.40 beta6。
HDBENCHの結果 |
結果はシーケンシャルリードが約17.4MB/sec、ライトが約6.5MB/sec。実際にいくつかのファイルをコピーして試してみたが、特にストレスを感じることはなかった。
1週間ほどクルーザー マイクロを試してみた感想としては、とにかくU3アプリケーションが便利で、これまでUSBメモリを一度もまともに利用したことがない筆者でも、「これならUSBメモリを持ち歩いて、いろんなところで積極的に活用してみたい」と思えるほどだ。
付属アプリケーションはすべて日本語化されてるとはいえ、一部は体験版で、製品版の購入にはドルが必要になるなどの問題点はあるものの、今後国内での展開に期待したい。
□サンディスクのホームページ
http://www.sandisk.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sandisk.co.jp/news/060622_cruzer_u3.htm
□関連記事
【6月22日】サンディスク、国内初のU3規格USBメモリ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0622/sandisk.htm
【2005年3月11日】【CES】SandiskとM-SYSTEMSが次世代USBメモリ開発で提携、活動を開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0108/ces09.htm
(2006年7月7日)
[Reported by ryu@impress.co.jp]