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WinHEC 2006 Tokyo基調講演レポート
「Vistaは新たなビジネスチャンスとユーザー体験を提供」
6月20日 開催 会場:品川プリンスホテル
マイクロソフト株式会社は20日、Windowsの開発者向けカンファレンス「WinHEC 2006 Tokyo」を開催した。テーマはやはりWindows Vistaが中心だが、ハードウェアとソフトウェア開発動向、プリペイドカード式PC「FlexGo」などについても触れられた。 午前中のセッションでは、基調講演が行なわれ、同社 Windows本部 本部長 ジェイ ジェイミソン氏が挨拶。 同氏は、「これまで当社が成功できたのは関係者たちとの協力により実現できたものだ。WinHECはグローバルに展開しており、パートナーとの協力関係を深め、パーソナルコンピューティングの普及に努めたい。また、Windows Vistaの登場により、新たなビジネスチャンスが生まれる。協力を始めるいいチャンスだ」と語った。 ●Vistaは各分野に新機能を提供 続いて、米国本社 Windowsハードウェアプラットフォーム エバンジェリズム ゼネラルマネージャン マーシャル ブルーマ氏が登壇し、「プラットフォームの進歩」と題したスピーチを行なった。 同氏はまず、いくつかの業界動向を紹介。「CPUパフォーマンスの向上に焦点をあてた場合、マルチコア化と64bit化に向かっており、ソフトウェアの64bit化およびマルチコアへの最適化などが最も重要な課題。今後同社が提供するサーバー向け製品のロードマップでは、一部製品においては64bit版のみを提供する。これにより64bitへの投資に対して、期待できる効果が将来得られるようになるだろう」と説明した。
一方プラットフォームは、Vistaの登場により大きく変わるとし、「Vistaはビジネス、モバイル、コンシューマ向けの機能を、GUIのみならず、一貫性のある形で備えているとしており、ユーザーを中心としたデバイスが実現できる」とした。 ビジネス向けの機能では、システムのパフォーマンスを測定できるツールを提供。アプリケーションが必要とする性能に満たしているかどうかを判断できるようになる。さらに、ユーザーのアプリケーションを優先してメモリにロードするメモリ管理技術「Super Fetch」や、USBメモリをシステムキャッシュの拡張として利用する「Ready Boost」は、システムの高速化に貢献するだけでなく、HDDの長寿命化にもつながるとした。セキュリティ面でもTPM1.2準拠セキュリティチップによるHDD内容の暗号化技術「BitLocker」などの機能を追加した。 モバイル向けの機能としては、任意の接続方法/ディスプレイによる表示機能「Side Show」、ネットワークの接続状況などを監視できる「ネットワークセンター」などを取り上げ、モバイルでの利用にもVistaが有効であると説明した。 コンシューマ向け機能では、写真や動画の整理/検索性を向上させたほか、コンテンツを活用するための工夫も施した。例として、ネットワークの接続性を改善させた「Windows Rally」、TV機能の強化、HDへの対応、DirectX 10、コンテンツ共有などの機能を挙げた。 ●サーバー製品は64bit中心に サーバー向けOSである「Longhorn Server」(コードネーム)についても触れ、「Windows Vistaと同じ思想で開発されたため、非常にシームレスに連携できる。クライアントとサーバー間のイベント転送などによる管理性の効率向上、クライアント側での印刷データレンダリングによるプリントサーバーとしての可用性向上、新しいTCP/IPスタックによる通信制向上を図った」と説明した。 「Windows Live」について同氏は、「システムのどのレベルにいる人であれシームレスにインターネットを通して連携できる。Liveは、バックエンドがWindowsだが、フロントエンドはWindowsを必要としない。これにより、エンドユーザーにとっても、参加する企業にとっても新たなビジネスチャンスが生まれるだろう」と説明した。 同社が推進しているプリペイドカード式PC「FlexGo」の構想についてブルーマ氏は、世界でのPC普及率を挙げ、「PCの人口普及率は6%しかない。つまり、あと94%の市場が潜在的に存在している。一方、携帯電話は27%も普及しているのは、プリペイド方式で成功を収めたからだ」と指摘し、FlexGoが新興市場の開拓において有用だと説明した。
最後に同氏は、テクノロジの進歩による性能の向上、Windows Vista/Office/Longhorn Serverによる新しいエコシステムの実現、FlexGoなどによる新しいビジネスモデルの提供により、「マイクロソフトはPC市場全体に影響を与え、さらなる成長とイノベーションを提供していきたい」とまとめ、講演を終えた。 ブルーマ氏のスピーチ後、ジェイミソン氏が壇上に戻り、Windows Vistaの使命やロードマップについて語った。 ジェイミソン氏は、過去5年間を振り返り、インターネット、デジタルビデオ、デジタルカメラ、Eメール、インスタントメッセージなどのさまざまな革新的なPCの使い方が増えたと説明。その一方、データの膨大化により、データの整理、検索の重要性、インターネットの安全性の問題などのリスクが問われてきたと指摘。同氏は、「Windows Vistaの提供により、リスクを最小限に抑え、PCのポテンシャルをフルに引き出せる」とした。 Windows Vista Capableプログラムや、同社のPC/周辺機器パートナーシップなどについても紹介し、多数メーカーがWindows Vistaへのサポートを表明することをアピール。また、7月中旬より開催予定のWindows Vistaソフトウェアコンテストについても触れ、「多くの方に参加していただきたい」と語った。
●HD DVD対Blu-rayは理念の対決
最後に、同社 執行役常務 Windowsクライアントビジネス開発事業部担当 堺和夫氏がWindows Vistaに搭載されるデジタルメディア機能について解説を行なった。 堺氏は、現在のデジタルメディアの現状について解説し、「TVはアナログからデジタルへ、音楽はCD/MDからフラッシュメモリ/HDDへ移り変わりつつあり、GyaOなどのネットワーク配信も活発化している。今後はフラッシュメモリとHDDの大容量化/低価格化、ネットワークの普及などが、(音声も映像も)HDへの移行を後押しするだろう」と話した。 Windows VistaのHDへの対応については、HD対応オーサリングツール「Windows Movie Maker HD」、32bit/Losslessに対応した高音質オーディオ、HD DVDへの対応などでサポートしていく。ここで、実際にMovie Maker HDを利用したデモや、e-onkyoが配信している24bit/96kHzのLosslessオーディオ、HD DVDのデモなどが披露された。
株式会社東芝 デジタルメディアネットワーク社 統括技師長 工学博士 神竹孝至氏も登壇し、HD DVDがBlu-Rayに対して価格のアドバンテージを持っているなどと優位性をアピール。また、「Blu-rayの理念は“鎖国”なのに対して、HD DVDは“オープン”。Blu-rayとの対決はシェアの対決ではなく、理念の対決だ」と語った。 次世代のメディアデータに関して堺氏は、「メタデータが重要だ。GPS、季節、温度などのメタデータを写真に付けることにより、データの検索がより容易になるだろう」との見通しを明らかにした。 最後に同氏は、「今後も消費者の予想以上のクオリティを提供し、“デジタル”という言葉を、子供から老人まで、年代を問わずへ浸透していきたい」としめくくった。
□マイクロソフトのホームページ (2006年6月20日) [Reported by ryu@impress.co.jp]
【PC Watchホームページ】
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