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COMPUTEX TAIPEI 2006レポート NVIDIAのフラッグシップを任されたFOXCONNの正体6月6日~6月10日(現地時間) 会場:Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/2/3
台湾のHon Hai Precision Industory(以下FOXCONN)はFOXCONNブランドで、PCコンポーネントの製造を行なう大手ODM/OEMベンダで、自作PCユーザーにはCPUソケットのメーカーとしてよく知られている。FOXCONNは、数年前から自作PCやホワイトボックス向けのチャネルビジネスを展開しており、2005年から日本市場でも販売を開始している。 そのFOXCONNが、NVIDIAとのパートナーシップの強化を発表し、NVIDIAのフラッグシップチップセットとなるnForce 590 SLIを搭載したマザーボード「C51XEM2AA」のお披露目を行なった。さらに、FOXCONNでは、新たにこれまで行なっていなかったビデオカード事業にも参入することを明らかにし、NVIDIAのGPUを搭載したビデオカードの出荷を開始したことを明らかにした。 ●nForce 590 SLIの立ち上げパートナーに選ばれたFOXCONN 5月の末にAMDのSocket AM2の立ち上げと同時に発表されたNVIDIAのnForce 500シリーズだが、そのフラッグシップ製品となるnForce 590 SLIの立ち上げパートナーとしてNVIDIAはFOXCONNを選択している。このため、テクノロジーメディアに対して渡されたサンプルマザーボードもFOXCONNのC51XEM2AAで、世界中のメディアのnForce 590 SLIのレビュー記事で同製品が利用された。 正直なところ、「なんでASUSTeKやGIGABYTE、MSIじゃなくて、FOXCONNなの」という疑問を抱いた読者も少なくないのではないだろうか。それほど、日本の読者にとっては、FOXCONNというブランドはあまりなじみがあるものではないからだ。多くのマザーボードのCPUソケットにFOXCONNというブランドが刻印されていることが多いので、CPUソケットのメーカーか、という認識をもたれている方が多いのではないだろうか。 だが、日本以外の地域では、FOXCONNのブランドは意外と認知度が高い。というのも、Hon Hai Precision Industoryは、CPUソケット以外にも、マザーボード、CPUクーラー、ケースなどさまざまな製品を製造しており、それをPCメーカーにOEM/ODMの形で出荷している。ただし、これまではほとんどがOEM/ODMビジネスが中心で、いわゆるチャネル向けのビジネスはあまり展開してこなかった。しかし、2003年頃からチャネル向けビジネスを開始し、日本市場にも参入するなど徐々にビジネスを拡大してきたのだ。そうした実績を積み重ねて、今回のNVIDIAとのパートナーシップの提携に至ったわけだ。 ●ヘビーゲーマー向けのブランドを確立したい FOXCONNは発表会の中で「マザーボードだけでなく、CPUファンやPCケースに関してもFOXCONNから提供していきたい。それにより、ハイエンドゲーマーに対してトータルソリューションで提供していく」(ビンセント・ヤン氏、FOXCONN チャネルビジネス部門ジェネラルマネージャ)と述べる、同社がマザーボードだけでなく、CPUファンやPCケースなども含めて供給することで、ハイエンドゲーマーのようなスペックに対する要求が厳しいユーザーに対して訴求していきたいと語った。 実際、FOXCONNは自社でCPUファンやPCケースなどを製造する能力を有しており、そうした能力を利用して、ハイエンドゲーマーに訴求するような性能の高い(オーバークロックしやすいという意味だと思われる)製品を供給し、ハイエンドユーザーに対するブランドイメージをあげていく戦略を採ることが明らかにされた。
なお、この発表会には、NVIDIA MCPビジネス ジェネラルマネージャのドゥルー・ヘンリー氏や、対応CPUのベンダとなるAMD、さらにはnForce 590 SLIで対応しているEPP(SPDの拡張仕様でメモリを自動的にオーバークロックできる規格)メモリを供給するCorsairの関係者などがゲストとして呼ばれており、それらの関係者が一堂に会して製品の出荷を祝うセレモニーが行なわれた。
●新たにビデオカードビジネスに参入、ティア1待遇を獲得へ 呼ばれたゲストの中で、ひときわ優遇されていたのが、NVIDIAのヘンリー氏だ。ヘンリー氏はゲストの中で、唯一プレゼンテーションの時間が与えられ、nForce 500シリーズの説明を行なった。 これでわかるように、今回の発表のメインとなる部分が、NVIDIAとの関係強化にあることは明らかだ。実際、あるFOXCONNの関係者は、今回の提携がFOXCONNとIntelとの関係を損なうものではないと説明する。「他のベンダの関係者はFOXCONNがAMDと関係を強化したのかと驚いていたが、それは正しい見方ではない。我々はNVIDIAとの関係を強化したのであって、それが今回はAMD用のチップセットであったということ。現に、我々のブースにいけば多数のIntel用マザーボードが並んでおり、それはAMD用よりも多い」とのように、あくまでNVIDIAとの関係強化がFOXCONNの狙いであるようだ。
こうしたNVIDIAとの関係強化は、FOXCONNにとって別のビジネスの可能性を見いださせている。というのも、発表会では、FOXCONNがこれまで参入してこなかったビデオカードビジネスにも参入することが明らかにされたからだ。FOXCONNはNVIDIAのGeForce 7950 GX2、GeForce 7900 GTX、GeForce 7900 GTを搭載したビデオカードを発表し、実際に会場に展示していた。 FOXCONNではこうしたビデオカードビジネスを始めるにあたり、他のベンダからビデオカードビジネスに精通した担当者をすでに引き抜いており、今後徐々に育てていきたいという意向があるようだ。 ビデオカードビジネスで重要なのは、いかにしてGPUベンダからのサポートを得るか、なのだが、ティア1と呼ばれる最恵待遇を入手するかで、もらえる情報も、GPUの価格も、割り当てられるGPUの数も違ってくる。関係者によれば、すでにFOXCONNはティア1待遇を入手しており、今後他のティア1待遇のベンダ(ASUSTeKやGIGABYTE、MSIなど)と対等に渡り合っていくことが可能であるということだ。 なお、その関係者によれば、しばらくはNVIDIAのラインナップのみでビジネスを展開していくとのことで、NVIDIAにとってもFOXCONNの参入は喜ぶべきことといえるだろう。nForce 590 SLIの立ち上げパートナーにFOXCONNが選ばれたというのも、そうした一連の流れの中で考えるとわかりやすいのではないだろうか。 ビデオカードの市場は、競争が激しいのに利益が薄い市場として知られており、FOXCONNのビデオカードビジネスが成功するかどうかは不透明だが、エンドユーザーからすればもう1つ選択肢が増える可能性がでてきたわけで、その点は歓迎してよいだろう。 □COMPUTEX TAIPEI 2006のホームページ(英文) (2006年6月7日) [Reported by 笠原一輝]
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