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国際フラットパネルディスプレイ展レポート

日本製パネル、高画質で差別化を図る

会期:4月19~21日

会場:東京ビッグサイト



 フラットパネルディスプレイに関する展示会「国際フラットパネルディスプレイ展(Display 2006)」が始まった。Display 2006はフラットパネルの製造装置と部品材料の展示会「ファインテックジャパン」に併設する形で2005年に始まり、今回で2回目になる。

 PC用の製品については別途レポートされているが、ここではイベント全体を概観してみよう。

 フラットパネルディスプレイの主要メーカーは日本と韓国、台湾に集中しているものの、Display 2006は歴史が浅いせいか、韓国と台湾の大手パネルメーカーはまだ出展していない。

 毎年秋に開催されるフラットパネルディスプレイ関連の総合展示会「FPD International」の後は、翌年1月初めに米国で開催される民生機器展示会「International CES」で新しいフラットパネルディスプレイが披露されることが少なくない。このためDisplay 2006は、昨年の秋以降に日本企業が開発したディスプレイを、日本国内で展示する場という性格を帯びている。韓国企業や台湾企業などにとっては、日本企業の情報を取得する格好の機会とも言える。

 そのせいかどうか、会場のあちらこちらで韓国語と中国語の会話が聞こえていた。来場者が東洋人ばかりなのに、外国語がよく聞こえるというのは、なかなかに不思議な感じである。

●フルHD対応のプラズマが続出

 Display 2006でまず目立ったのは、プラズマディスプレイパネル(PDP)である。特に、103型と巨大なプラズマTVを出品した松下電器産業のブースは、大混雑していた。フルスペックのハイビジョン(HD)に対応するこのTVは、「2006 International CES」で発表されたもの。国内では初公開となる。

 展示会初日の19日は見物の人だかりに加え、いくつかのTV局が取材に現れたために、松下ブースの前は相当の混乱ぶりだった。

 PDPの大型化競争という視点で見ると、韓国のSamsung SDIとLG Electronicsはそれぞれ102型のPDPを発表済みなので、松下の103型は大きさではわずかに上回るだけである。

 ただし筆者が2005年秋の「FPD International 2005」でSamsung SDIの102型PDPを見た印象と今回の103型PDPを見た印象を比べると、松下のパネルの方が画面の美しさでは優っているように思えた。映像がくっきりとしていた。もちろんこれは筆者の主観であり、また画面の好みは国、地域や個人でかなり異なることをお断りしておく。

松下電器産業が参考出品した103型のプラズマTV。解像度は1,920×1,080ドットでフルHDに対応する。パネルサイズは2,270×1,277mm(幅×高さ)。画素ピッチは1.182mm。コントラスト比は3,000対1 Samsung SDIが昨秋の「FPD International 2005」に出品した102型PDP。解像度は解像度は1,920×1,080ドット。パネルサイズは2,310×1,325mm(同)。輝度は1,000cd/平方m。コントラスト比は2,000:1(暗所)

 大きさではなく、表示画像の美しさで来場者を感動させていたのは50型のPDPである。松下電器産業とパイオニアがそれぞれ、50型のフルHD対応PDPを出品していた。

 PDPはセルを小さくすると輝度が確保しづらくなるため、液晶ディスプレイ(LCD)に比べると解像度を上げにくいという弱点がある。フルHD対応の解像度を想定した場合、放電セルを大きくできるという意味では50型よりも103型の方が楽なのである。50型では小さな放電セルで、明るさを確保しなければならない。

 放電セルの大きさは、パネルの仕様では画素ピッチの違いに現れる。松下の103型PDPでは画素ピッチが1.182mm×1.182mm、しかし50型のPDPでは画素ピッチが0.576mm×0.576mmであり、垂直方向と水平方向ともに、半分に満たない。単純計算では、面積が4分の1セルで輝度を稼ぐ必要がある。ただし技術改良で明るさを確保できれば、非常にきれいなフルカラーディスプレイを実現できる可能性が高い。

松下電器産業が参考出品した50型のプラズマTV。解像度は1,920×1,080ドット。フルHDに対応する。画面寸法は1,106×622mm(同)。画素ピッチは0.576mm。コントラスト比は3,000対1。「あっち(103型)よりもこっち(50型)の方がきれい」との声が来場者から挙がっていた パイオニアが出展した50型PDP。これはTVではなく、モニター。解像度は1,920×1,080ドット。パネルサイズは1,104×621mm(同)。故意に斜め方向から撮影した。斜めから見ても、画像の品質はまったく変わらないように見える
パイオニアの50型PDPの前に置かれた説明パネル。19日午後1時半に製品発表するため、午前中は参考出品扱いとなっていた 19日午後1時半に説明パネルが差し換えられ、6月上旬発売の新製品「PDP-5000EX」となった。希望小売価格は105万円。消費電力は410W Samsung SDIが2005年秋の「FPD International 2005」に出品した50型フルHD対応PDP。解像度は1,920×1,080ドット。パネルサイズは1,106×622mm(同)。画素ピッチは0.576mm。輝度は1,100cd/平方m。コントラスト比は3,500:1。消費電力は340W

 このほか、パネルメーカーの富士通日立プラズマディスプレイが、42型のフルHD対応PDPと55型のフルHD対応PDPを参考出展していた。42型は2005年12月7日に、55型は2005年9月29日に、それぞれ発表されたモデルである。55型のフルHD対応PDPは、2005年秋に開催されたエレクトロニクスの総合展示会「CEATEC」でも展示されていた。

富士通日立プラズマディスプレイが参考出品した42型のフルHD対応PDP。解像度は1,920×1,080ドット。パネルサイズは922mm×518mm。画素ピッチは0.48mm。輝度は1,000cd/平方m。コントラスト比は3,000:1(暗所)。2007年春に量産を開始する予定 42型フルHD対応PDPの技術説明。放電セル間のリブを狭くする、開口率を高めるといった工夫によって輝度を確保した

 残念だったのは、富士通日立のブースではいずれのPDPも暗がりに展示されていたことである。暗がりだと画面の輝度が不足していてもきれいに見える傾向があるため、評価が難しい。松下やパイオニアのPDPと同様に、明るいところで展示して欲しかった。

●ソニーは82型液晶よりもリアプロに注目

 液晶ディスプレイ(LCD)では、ソニーが参考出品した、82型と大きなフルHD対応液晶TVが来場者の注目を集めていた。これもこの1月に開催された「2006 International CES」で初公開されたTVである。日本国内で一般に公開されるのはDisplay 2006が初めて。

 問題だったのは表示品質で、西川氏によるCESレポートでも指摘されていたが、画質の完成度にはまだ改良の余地がある。筆者の個人的な印象では、「FPD International 2005」にSamsung Electronicsが出品した82型のフルHD対応液晶TV用パネルの方が、表示品質が高いように感じた。

ソニーが参考出品した82型フルHD対応液晶TV。中央に偏光板の継目である縦線が見えており、その旨を小さいパネルで表示していた。輝度やコントラストなどの詳細は示されていない Samsung Electronicsが2005年秋の「FPD International 2005」に出品した82型のフルHD対応TV用液晶パネル。外形サイズは1,875×45×1,080mm(幅×奥行き×高さ)、輝度は600cd/平方m。コントラスト比は1,200:1。色再現範囲(Color Gamut)はNTSCの92%と広い。表示色数は1,670万色。応答速度は8ms未満。視野角は全方向で180度と広い。同社が開発した広視野角技術PVA(Patterned Vertical Alignment)を改良した、S-PVA(Super-PVA) 技術を組み込んだ

 ソニーのブースではむしろ、LCoS(Liquid Crystal on Silicon)技術による60型フルHD対応リアプロジェクションTVの画質が素晴らしかった。何も説明せずに見せると、プロジェクション方式とは分からず、プラズマあるいは液晶と誤解されそうなレベルに達していた。米国向けの製品であり、米国市場では実売価格4,500ドル前後で販売されているという。

ソニーが参考出品した、LCoS技術の65型フルHD対応リアプロジェクションTV。解像度は1,920×1,080ドット、応答速度は2.5ms、コントラスト比は5,000:1 LCoSデバイスの断面構造。LCoSとは、ミラー電極や駆動回路などを形成した半導体チップとガラス基板の間に液晶層を挟んだデバイスである。液晶層に電圧を加えることで、ミラー電極で反射する光の偏光状態を制御する。LCoSと偏光ビームスプリッタを組み合わせると光を通したり、遮ったりできるようになる。さらにレンズ光学系と組み合わせると、リアプロTVを構成できる。LCoSは開口率が高いので、ドット間のすき間のほとんどない、滑らかな画像を得られるという特徴がある
LCoSデバイスを駆動するモジュールの製造工程。ソニーの子会社であるソニーセミコンダクタ九州では、年間にTV150万台分のLCoSデバイスを生産できる態勢を組んでいる LCoSデバイスを使ったリアプロジェクションディスプレイの光学ユニット。光の3原色(赤、緑、青)に対応した3枚のLCoSモジュールを使う LCoSデバイスを形成したシリコンウエハ。小型化によって1枚のシリコンウエハから取り出せるLCoSデバイスの数を増やし、製造コストを低減する

●動画像表示に対応した液晶の高速化技術

 液晶ディスプレイではまた、動画像表示に対応した高速応答技術が着実に進化していることがうかがえた。

 東芝松下ディスプレイテクノロジーは、動画の応答時間(MPRT:Moving Picture Response Time)が6msと短い32型WXGA液晶パネルと、MPRTが4.7msと短い9型ワイドVGA液晶パネルを参考展示した。いずれのパネルも、同社の高速応答技術OCB(Optically Compensated Birefringence)を改良して組み込んだ。32型パネルの解像度は1,366×768ドット。輝度は500cd/平方m。視野角は水平/垂直とも170度。9型パネルの解像度は800×480ドット。輝度は500cd/平方m。コントラスト比は1,000:1。視野角は水平/垂直とも170度。

 日立ディスプレイズも、MPRTが8msと短い32型WXGA液晶パネルを参考出品した。同社独自の高速応答技術IPS(In-Plane Switching)-Proを組み込んでいる。

MPRT(動画応答時間)が6msと短い32型WXGA液晶パネル。右は比較用の32型CRT。MPRTは4ms MPRTが4.7msと短い9型WVGA液晶パネル。液晶の応答時間は4.5ms MPRTが6msと短い32型WXGA液晶パネル。画面を左右に分割し、従来の駆動方式と比較した。撮影条件の関係で左右とも画像がぶれているようにみえるが、実際には左側はきれいな動画像を表示していた

 最近は、動画像表示の性能を示す指標として「応答時間」ではなく、「MPRT」を使うようになってきた。従来の応答時間は、光のシャッタとしての液晶そのものの応答時間を表示していた。これに対してMPRTは、動画像表示でエッジがぼやけている時間を換算した指標で、人間が動画像を視認する感覚に近い。

 このほか液晶関連では、ペン入力機能を備えた小型液晶パネルを日立ディスプレイズと東芝松下ディスプレイテクノロジーがそれぞれ参考出品していた。液晶パネルは、各画素に対応した光センサアレイを搭載し、発光ダイオードをペン先に取り付けた専用のペンで、文字や数字、図形などを書き込む。完成度はまだそれほど高くないものの、興味深い試みとして来場者の関心を引き付けていた。

日立ディスプレイズが出品したペン入力機能付き液晶パネルの説明図。240×320ドットの液晶パネルに対応した光センサアレイが組み込まれている 発光ダイオード付きペンで液晶パネルの上に文字や図形などを描いたところ。液晶パネルの大きさは2.2型 東芝松下ディスプレイテクノロジーが参考出品したペン入力機能付き液晶パネル。ペン先を液晶パネルに押し付けるとスイッチが入り、光が液晶パネル内の光センサに照射される。実際に使ってみたところではスイッチがかなり硬く、まだ改良の余地が大きい

●実際に使われ出したFED

 プラズマと液晶以外では、次世代ディスプレイとされているFED(field emission display)が目を引いた。小型のディスプレイながら、FEDの製品を双葉電子工業が出品していた。

 FEDは、真空中で陰極から放出した電子を陽極の蛍光体に衝突させて発光させるフラットパネルディスプレイである。表示ドット数に応じた数の電極を平面のマトリクス状に配置し、画像を表示する。応答速度が速い、発光型なのできれいな画像が得られやすいといった特徴を備える。

 FEDは電極構造にいくつかの種類があり、キヤノンと東芝が大型ディスプレイ用に共同開発しているSEDもその1つである。双葉電子工業は、針状の陰極を使うスピント型(Spindt)で開発を進めてきた。Display 2006では、3.0型、5.9型、8型などのフルカラーFEDを展示した。一部のFEDは車載用オーディオ製品に実際に採用されたという。

3.0型のフルカラーFED。解像度は184×80ドット。画素ピッチは0.126mm×0.378mm。輝度は600cd/平方m。表示色数は256色。消費電力は4W 5.9型のフルカラーFED。解像度は320×240ドット。画素ピッチは0.125mm×0.375mm。輝度は300cd/平方m。表示色数は1670万色。消費電力は6W
8.0型のフルカラーFED。解像度は480×240ドット。画素ピッチは0.125mm×0.375mm 車載用オーディオ製品に採用されたFED。大きさは3.0型程度

□国際フラットパネルディスプレイ展のホームページ
http://www.displayexpo.jp/
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0419/fpd.htm
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【4月19日】松下が103型PDPを国内販売。シャープが「10年後のTV」(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060419/display1.htm
【4月19日】ソニーが82型フルHD液晶テレビを日本初公開(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060419/display2.htm
【4月19日】パイオニア、50型フルHDプラズマモニターを6月に発売(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060419/pioneer1.htm
【1月10日】【西川】第62回:[CES特別編]おもしろネタ探訪編(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060110/dg62.htm

(2006年4月21日)

[Reported by 福田昭]

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