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“世界一美しい”女性型ロボット「FT」発表

4月7日発表



 4月7日、京都大学ベンチャー、ロボ・ガレージは、細身の美しい外観としなやかな動きを特徴とする女性型の小型二足歩行ロボット「FT」を、京都大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーにおいて発表した。

 「FT」とは、Female Typeの頭文字をとったもので、その名の通り女性らしいシルエットを持ったロボットである。この「女性らしさ」という点は、「FT」の最も重要なテーマであり、設計開発者のロボ・ガレージ代表、高橋智隆氏がこだわったポイントでもあるという。

 「長い髪や胸があるから女性だとか、スカートのような外装だから女性だとかではなく、スタイルからわかってもらおうと考えました。最もこだわったのは足のラインです。具体的には、少し内股気味に立つことであるとか、足の付け根が腰の外側から伸びているところですね」(高橋氏)

 “世界一美しいロボット”という、自信に満ちたキャッチフレーズとともに公開されたデモンストレーションはいわゆる“歩行”と“方向転換”のモーション。だが「FT」が行なう動きは、腰を使ってお尻を振るような“モデルウォーク”、そしてメリハリの利いた“ターン”と表現したくなるものだった。

 高橋氏の持つ、ひざを伸ばした美しい歩行を実現する特許技術「SHIN-Walk」をベースに作られた“モデルウォーク”は、プロモデルの歩き方を参考にし、モデル自身に「どこに気をつけて動いているか」をリサーチしたうえで製作されたもの。さらに実際のモーションもモデルの方にチェックしてもらうなどのブラッシュアップも重ねたという。

あえてモノトーンにしたのは、色で女性のイメージになるのを避けたのと、細く見せるためだという 女性独特の張り出した骨盤をイメージした設計になっている 一枚板の足裏ではなく、ハイヒールをほうふつとさせる構造になっている
正面から見ると、外側からひざにかけて少し内股気味になっているのが良くわかる 見事な“モデル立ち”を見せる「FT」。腰をひねる軸と、ひざ下でつま先を開く軸が活きている 微妙に後ろにカーブした二の腕など、完全な直線でできている面はほとんどない
【動画】起き上がりから挨拶をするFT 【動画】モデルウォークとターン 【動画】別アングルから

ロボ・ガレージ代表、高橋智隆氏と「FT」

 「開発のきっかけは、別の案件で米国のホビーメーカーと商談した時に『うちのドールを歩かせられないか』と聞かれたことでした。その時は即座に『無理だ』と答えました。細い足や胴にモーターや基板を組み込むのは非常に難しい技術です。しかし、ドールをそのまま歩かせることは無理でも、女性的なロボットの新しい用途やニーズはこれからできてくるだろうと考え、チャレンジすることにしたんです」(高橋氏)

 「FT」は、それまでの小型二足歩行ロボットに多かった“ずんぐりむっくり”な体型から、頭が小さく、胴が細く、足が長くなり、ほぼ6頭身というスリムな体型になった。特に足が長くなったことで重心位置が上がったことと、足を細くした結果、足の裏の面積も小さくなってしまったことで、バランスをとるのが非常に難しくなったのだという。これを解決するために、「FT」は前後/左右の二方向にそれぞれ1つずつのジャイロセンサーを配置し、姿勢変化に応じて補正した動作を行なっている。

 また、スリムな胴体にバッテリやマイコンボードを収めるために、従来のロボットのような、部品を水平/垂直に積み上げていくような設計はできず、各部品を細い胴体のあちらこちらにパズルのようにして斜めに収めるような工夫を凝らしている。

 静的なデザインであるスタイルに加えて、動的なデザインといえるモーションを“らしく”するために、可動軸は脚部12軸/胴体1軸/腕部8軸/頭部2軸、計23軸を装備。しなやかな動きを実現した。これだけの軸数が身長35cm、体重800gという機体の中に収まっているのは、各部のサーボモーターに超小型のものを採用しているからこそだ。同時に脚部などの耐久性とパワーが必要な部分のサーボには金属製ギヤを特注し、組み込んでいるという。

サイバーストーン(株)代表、大和信夫氏

 発表に同席した「FT」の所属先・ロボプロを運営するサイバーストーン株式会社 代表取締役 大和信夫氏は「ロボットのデザインは、デザインのためのデザインではなく、機能から生まれるデザインであるべきです。フレームに外装をかぶせてロボットの機能がスポイルされるようなデザインはデザインではありません」と熱弁。「ロボットを作る人たちの芸術性が評価されるような場ができないかと考えています。また、世界的にデザインを評価している団体に対して、今回のFTのようなロボットはどうだろうか、という提案のお手伝いなどをしていきたいと思っています」と述べていた。

 各自由度にサーボモーターを配置した、これまでの小型二足歩行ロボットと基本的には変わらない技術を使いつつ、別次元のスタイルを実現した「FT」。新しいロボットの世界への第一歩を踏み出した「FT」のこれからは、ロボプロのサイトを通じて“ロボット・モデル”として活動することが予定されており、iモードサイト「ロボガレージJack」などで動画の配信なども始まっている。また、ロボプロのイベントなどで、実際にその動きを目にする機会もあるようだ。

□ロボ・ガレージのホームページ
http://www.robo-garage.com/
□ロボプロのホームページ
http://www.robo-pro.net/
□ロボガレージJackのホームページ
http://www.sentojack.com/new_vlive/index.html

(2006年4月10日)

[Reported by 梓みきお]

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