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CeBIT 2006
CeBIT会場レポート【PCパーツ編】
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PCI Express x1接続で利用できるH.264のハードウェアデコードボード「MicRacer 1D-X」。このボードは開発用のボードのためシリアルやEthernetポート、電源端子が付いているが、実際の製品ではこれらは取り除かれるとのこと |
米MICRONASのブースで展示された「MicRacer 1D-X」は、PCI Express x1インターフェイスで接続される、H.264ハードウェアデコードアクセラレーションボードである。家電機器向けなどに対しては、すでにBroadcomなどをはじめとするメーカーがハードウェアデコードチップを出荷している。
本製品も主にセットトップボックスなどを対象としたソリューションであるとはしているが、当然一般のPCでも利用できる。DVD-Video登場時にMPEG-2のハードウェアアクセラレーションボードやビデオカードの再生支援機能などが流行したように、HD DVDやBlu-rayの登場が近づくにつれ、似たような製品や技術がクローズアップされる現象が起きているといえる。
本製品に搭載しているデコーダチップは、WISchipのDeCypher 8100。H.264/AVCのハイプロファイル、最大25MbpsのHD映像をデコード可能で、使用時のCPU使用率を10%前後に抑えることができるとしている。
ちなみにPCでの利用を想定した場合、GeForceシリーズのPureVideoや、RadeonシリーズのAvivoといった、ビデオカードに組み込まれたデコードアクセラレーションがライバルの存在といえるだろう。
この点についてブーススタッフは「ビデオカードは最低でも60Wぐらいの消費電力を必要とするが、このボードは5Wで動作可能だ。また、価格は現時点で未定だがビデオカードよりもかなり安く提供できるのは間違いない」と述べている。つまり、H.264のハードウェアアクセラレーションを搭載しない安価なビデオカードと組み合わせて利用することで、低消費電力かつローコストな再生環境が整えられることになる。
出荷時期については、早ければ3カ月以内、遅くとも夏までには出荷したいとしている。最終的にはH.264もCPU性能の向上により余力十分にデコードが可能になるのだろうが、新技術登場時期ならではの興味深い製品といえるだろう。
●PCI Exress x1やExressCard製品もバリエーション多彩に
ここ数年の展示会では定番ともいえるアイテムではあるが、展示されたPCI Express対応の拡張カードについても触れておきたい。今回のCeBITに展示されたPCI Expressカードでは、シリアルやパラレルなどをレガシーインターフェイスを搭載した製品が目に留まる。
最近のプラットフォームではレガシーデバイスを排除するレガシーフリー化の流れが進んでいる。ほとんどの周辺機器はUSB 2.0またはIEEE 1394があれば利用できる状況で、マザーボードのリアパネルにDVI端子やビデオ出力端子などを配置して、以前では当たり前であったシリアル、パラレル端子を持たない製品も増えてきた。
コンシューマユーザーであれば、このレイアウトでも不便は感じないだろう。だが、シリアルやパラレル経由で機器を制御したり、測定機器からのデータを入力するようなシチュエーションも、特に産業分野を中心にある。こうしたニーズに対応するために用意されているのが、前述のような拡張カードなのである。
もう少しコンシューマ寄りの製品では、IEEE 1394bに対応したボードや、TVチューナカードも展示されていた。後者はデジタル/アナログ両対応のチューナを2系統装備したもので、デジタル放送こそ欧州で採用されているDVB-Tにしか対応しないが、アナログ放送に限っては日本でも利用可能。シリコンチューナによるすっきりしたボードレイアウトでロープロファイルにも対応している。
また、CeBIT会場のSiSブースでは、XGIのXP10を搭載したPCI Express x1カードを展示した。昨年MatroxがPCI Express x1接続のビデオカードとなるMillennium G550 PCIeを発売しているが、こうした製品はあいかわらず珍しい。
このVolari XP10は、本来モバイルや組み込み製品向けに出荷されているGPU。PCI Expressにネイティブ対応しており、チップ自体が省電力動作のためにPCI Express x1動作をサポートしているという。ボード自体もロープロファイルに対応したシンプルなもので、ビデオメモリは64MB。
さて、PCI Expressをベースとした次期PCカードとなる、ExpressCard。すでに国内でもExpressCardスロットを採用したノートPCが出始めているが、スロットに装着できる製品はほとんどお目にかかれない状態。
CeBIT会場においても、それほど製品数が多いわけではないのだが、それでも日本で発売されることがあれば人気を集めそうな製品も見られる。
また、日本では利用できないため文中での紹介に留めるが、TVチューナカードを数多く出品したAverMediaのブースで、Express Card/34に対応したDVB-H対応のチューナカードが展示された。B5サイズ以下の小型ノートで採用が進むであろうExpressCard/34のサイズで実現されたチューナカードとして注目でき、日本でも類似製品の展開に期待したい。
香港のSunrich Technologyが展示した、PCI Express x1接続のシリアル/パラレルコンボカード | インターフェイスカードメーカーとしては定評のあるSUNIXも多くのPCI Express x1カードを展示。これはシリアル/パラレルコンボカード | こちらはブレイクアウトケーブルを利用してシリアルを4ポート出力できる製品 |
●意外に展示が少ないFB-DIMM
さて、先日のレポートで、次期Xeon向けのチップセット「BlackFord」や「GreenCreek」のマザーボードを紹介したが、当然、これらのチップセットに対応するFB-DIMMも展示されている。
ただ、会場内で展示を行なったことを確認できたメーカーは4社のみで、登場が近い主要コンポーネントパーツとしては、かなり寂しい状況となっている。特許問題で揺れているのが影響したのかも知れないが、今回展示したメーカーのうち、A-DATAとTwinMOSは「問題ない」と述べている。
ただ、今回出展してるメモリモジュールメーカーでも、以前のIDFでFB-DIMMを展示していたメーカーがあったことを考えると、実際の商談の場ともなるCeBITでは展示を控えたメーカーが多いのかも知れない。
A-DATAのDDR2-533(上)、DDR2-667(下)のFB-DIMM。容量は512MBと1GBをラインナップしている。DIMM上のバッファチップAMB(Advanced Memory Buffer)はIDT製 | 同じくA-DATAのDDR-533/667 FB-DIMMで、NEC製のAMBを搭載した製品 | 同じくA-DATAのDDR-533/667 FB-DIMMで、Intel製AMBを搭載 |
SUPER TALENTが展示したDDR2-667の512MBモジュール。AMBのブランドはブーススタッフも「知らない」との返事 | UMAXのDDR2-667 FB-DIMM。512MBと1GBモジュールがラインナップされる。展示されているのはAMBにIDT製を採用した1GBモジュール |
□CeBIT 2006のホームページ(英文)
http://www.cebit.de/
□関連記事
【2005年11月11日】【海外】Rambusの特許で揺れる次世代DIMM規格「FB-DIMM」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1111/kaigai223.htm
【3月11日】【IDF】【展示会場レポート】
次世代モバイルプラットフォームのコンセプトモデルを展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0311/idf08.htm
(2006年3月13日)
[Reported by 多和田新也]