元麻布春男の週刊PCホットライン

IDF史上初の2つの出来事




●iMacでデモを行なうIntel副社長

Google Mapとインターネットで入手可能な航空管制データをMashupしたデモを行なうMaloney副社長
 今回のIDFでIntelはいくつか「史上初」のことを行なった。

 1つはAppleの製品が基調講演のデモに登場したことだ。写真1は、モビリティ事業本部のMaloney副社長によるMashupのデモでは、見慣れたWindows PCではなく、AppleのiMacが使用された。もちろん、iMacに搭載されているのはIntel Core Duoプロセッサなわけだが、林檎マークのマシンがIDFのステージ上にあるというだけで、何か感慨深いものがある。

 しかも、このデモはGoogle Mapと航空管制データのMashupだから、使われるのがiMacである「必要性」はない。にもかかわらず、iMacを用いたということは、Intel Coreプロセッサが広範な顧客を獲得しているという主張であり、またAppleに対するリスペクトのようなものの現れなのだろう。

 別のプレス向けのQ&Aにおいて、モバイルPCに比べデスクトップPCにはイノベーションの余地があまり残っていないのではないか、といった主旨の質問を受けたデジタルエンタープライズ事業部(IntelにおけるデスクトップPCの総元締め)のGelsinger副社長は、「PCとMacはどっちがイノベイティブだと感じるかい」と聞き返した。質問者が返答に困っていると、「Macの方がイノベイティブだよね。僕もそう思うよ。ということは、PCにはまだまだイノベーションの余地が残っているということじゃないかい」と回答した。

 最終PC製品を持たないIntelは、Appleと直接競合することはないわけだが、Appleの動向はいつも気にかけていた。IDFがパーム・スプリングスで開催されていた'90年代末、Gelsinger副社長がIDFを取り仕切っていた時代、奇抜な外観のコンセプトPCを集めた「ファッションショー」を開いたことがある。おそらくPCのデザインがMacに比べて垢抜けないことを、かなり気にかけていたのだろう。

 IntelにとってAppleは、ある種のコンプレックスの対象だったハズだし、そのAppleを顧客に迎えられたということは、たとえ数量的には大きくなくても、マインド的には大きな出来事だったに違いない。次はAppleのJobs CEOがIDFの基調講演にゲストとして登壇することがあるのかどうか。1度くらいは見てみたい気がする。

●AMDとの性能比較を解禁

 さてもう1つの初は、Intelが公式な場で、AMDのプロセッサとの性能比較を行なった、ということだ。これまでIntelは、一貫して競合他社製品との性能比較を避けてきた。それは、ある種のポリシーのようなものであり、性能比較は常に自社の過去の製品が対象だった。たとえば前回(IDF Fall 2005)、デュアルコアプロセッサの性能向上をアピールするためのデモを行なったが、その時の比較対象は自社のIrwindaleであった。

 もちろん、ここ最近の製品に限れば、必ずしもIntelの製品が性能面でAMDのプロセッサに対して優位であったとは言い難い。比較しようにもできなかった、という見方もできるかもしれない。しかし、それ以前の時代(Intelが性能面で明らかに優位であった時代)においても、名指しで競合製品との比較を行なうことはなかった(例外は、TPCやTop500(HPC)など、性能が公的に公開されているもの)。

 それが今回のIDFではGelsinger副社長が、WoodcrestのDPサーバーと、AMD OpternのDPサーバーの性能比較デモを基調講演の中で行なった。Gelsinger副社長によると、これはHPのサーバーとSun Microsystemsのサーバーの比較、ということらしいが、実質的にプロセッサの比較になっているのは、誰の目にも明らかだろう。わざわざ実演して見せる以上は、結果がWoodcrestを用いたHPサーバーの圧勝に終わるのは当然なのだが、決して競合製品との直接比較のような「はしたないこと」を行なわなかった昔のIntelを好ましく思う部分があっただけに、ちょっと残念な気がする。

 そういえば1年前のIDFで、プレスとのRound Tableの場で、Gelsinger副社長が次のプロセッサ(Woodcrestのことを指していたものと思われる)では、ベンチマークで競合製品に勝つ、と力説していたことがあった。相当に腹に据えかねていたのだろうが、Intelも普通の会社になったかなぁ、と思わないではない。

 プロセッサの比較としては、3GHzと2.4GHzの比較になっているが、互いにマイクロアーキテクチャが異なるようになってしまった今、クロックを揃えることに大きな意味があるとは思わない。筆者としては、公平を期すのであれば、「1Wあたりの性能」を比較して欲しいのだが、まだ発表前の製品だけに、それは叶わない望みというものだろう。

今回の性能比較で用いられたシステムの構成 金融シミュレーションによる比較結果

□IDF Spring 2006のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spring2006/
□IDF Spring 2006レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/idfs.htm
□関連記事
【'99年9月3日】【IDF】次世代PCの姿が見えたIDFの展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990903/idf04.htm

バックナンバー

(2006年3月10日)

[Reported by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.