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IDF基調講演レポート

ゲルシンガー氏がクアッドコアCPUを初披露

髭を蓄えたパット・ゲルシンガー氏

会期:3月7日~9日(現地時間)

会場:米San Francisco
   Moscone Center West



 米カリフォルニア・サンフランシスコで開催されているIDF Spring 2006。CTOのジャスティン・ラトナー氏に続き、基調講演の2人目のスピーカーとして登場したのは、Intel上席副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパット・ゲルシンガー氏だ。

●IPは常に勝ってきたし、勝ち続ける

世界初のATCAファッションショー
 ゲルシンガー氏は、冒頭で、これまでのネットワークの歴史には、いろいろな対立があったことを振り返りながら、いつもIPのテクノロジーが勝ってきたことを強調、今後も勝ち続けることは明白で、ネットワークの未来をIPが担っていくと断言した。

 加えて、Skypeの成長の著しさに触れながら、先だっての協業で、10wayカンファレンスコールの実現に成功したことを誇らしげにアピール、VoIP分野やIPTV分野の成長にも言及し、今後はすべてのことをIPで行なう時代になってきているとした。この傾向は、さまざまなベンダーの動向にも見て取れ、Microsoftも、OfficeスウィートをIPで提供するOffice Liveをサービスとして提供しようとしているのは、その証であるとする。

 さらに、PICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group)が策定した通信事業者向けの次世代通信機器の業界標準規格である「ATCA」が、これまでの不調を翻し、2005年以降大きな伸びを示していることにふれ、2010年までに60億円規模の市場になると予測した。今では広範囲な製品が業界で見られるようになってきているとし、世界初のATCAファッションショーと称し、舞台には踊りながら基板を手にしてエンジニアたちが次々に登場した。

 また、2006年の新しいテーマとして、企業のコンプライアンス関連の要件がクローズアップされることで、その市場が広がっていくことを強調した。企業が保管するデータ量の増加に対応するため、エンタープライズ級のストレージが、中小企業などでも使われるようになり、そのための要求事項も増えているため、SANの分野は、さらに大きなチャンスが得られるという。

●ITマネージャの負担を軽減するVT-d

ゲストとして登場したVM Ware社長のダイアン・グリーン氏
 一方、ネットワークに関しては、IT予算の8割がメンテナンスのために費やされ、それがITマネージャの大きなプレッシャーになっていると問題提起した。

 この問題は仮想化によって解決できるとし、サーバーの統廃合などによって、ITマネージャの負担を軽減することができるという。IntelのVTは、ソフトウェアによる仮想化を補完するかたちで使われ、多くの顧客が、このテクノロジを使うようになってきている。ロードマップとしてのVTは、まだ初期の段階にあり、まだまだ機能は追加されていくようだ。次のステップとしては、I/Oデバイスのバーチャル・マシンへの割り当てを可能にするI/Oの仮想化を実現するDirected I/O向け対応(VT-d)で、その仕様がこの日に公開されたことがステージ上で宣言された。

 ゲストとして登場したVM Ware社長のダイアン・グリーン氏は、Intelと協業してきたことで、今では、2万社のうち、1/4以上がIntelの技術でVTを採用していることに触れ、VT-dに関しても、すでにフィードバックを開始、2007年には完全なサポートを実現すると約束した。今後も、マーケティングや営業活動のコラボレーションを、Intelと一緒にやっていくという。

●クアッドコアを初披露

WoodcrestやConroeのコアを披露するゲルシンガー氏
 エンタープライズ向けのプラットフォームに関しても、やはり大きなテーマは、ワット(W)あたりのパフォーマンスだ。Intelは、この第3四半期にBensleyプラットフォーム向けに、パフォーマンスを80%以上向上させる一方、消費電力を最大35%削減するプロセッサ「Woodcrest」を投入し、Bensleyプラットフォームを一新するが、ステージでは、競合プロセッサ搭載のSun製品との比較デモンストレーションが行なわれ、パフォーマンスで35%勝りながらも、消費電力は5%少ないことを、その場で証明してみせた。

 Bensleyプラットフォームは、2006年度末までにデュアルコア化され、そのプラットフォームのままでクアッドコアに移行できるとし、プラットフォームの寿命の長さをアピールした。ステージでは、クアッドコア・プロセッサとしてBensleyプラットフォームとソケット互換のClovertownが動作する模様も公開され、2007年初頭に出荷が開始されることが明らかにされた。

●Conroeが果たすワットあたりのパフォーマンス向上

開発途上のOffice 12のExcelで、マルチスレッド対応が駆使され、従来比3倍のパフォーマンスアップを実現、デモとして、ConroeとPentium 4が比較された
 ネットワークの現状としては、XMLトラフィックが急増していることに触れながら、主流のプロトコルが変わっていくことで、エンタープライズのバックエンドアーキテクチャも変わっていくとした。従来の閉鎖的なバックエンドに対して、現在は、水平的な能力が求められているという。これまで信頼性とパフォーマンスを提供してきたのは、Itaniumプロセッサファミリ(IPF)で、100億ドルの投資が、この10年間で行なわれてきたが、2006年はいよいよMontecitoも登場する。

 ゲルシンガー氏は、これからのコラボレーションは、Skypeに代表されるVoIPなどが積極的に使われるようになることで、クライアントレベルでのパフォーマンス向上は必須課題であるとする。だからといって消費電力が増えてしまったのでは本末転倒であり、クライアントレベルでの消費電力を下がる方向でTCOを維持していかなければならない。

 その課題へのIntelの解が「Conroe」だ。ゲルシンガー氏は、ConroeをデスクトップバージョンのPentium Mであるとし、消費電力を4割下げながらも4割のパフォーマンスアップを実現する新世代のプロセッサとして、2006年第3四半期の投入を約束した。Conroeには、すべての能力が含まれ、一世代分の改善がここに実現されているとし、Pentium以降の新製品でこれだけの改善を見たことがないとおどけてみせた。

 Microsoftもゲストとして呼ばれ、開発途上のOffice “12”のExcelで、マルチスレッド対応が駆使され、従来比3倍のパフォーマンスアップを実現、デモとして、ConroeとPentium 4が比較されていた。Microsoftは、今後も、Intelと協力しながら、Vistaなどにおける新世代プロセッサへの対応を宣言した。

 また、ステージでは、アクティブ・マネジメント・テクノロジ(AMT)のデモも行なわれ、HDDがクラッシュしてシステムダウンしたクライアントが遠隔コントロールでBIOS設定などが書き換えられ、復旧される様子などが披露された。AMTを使えば、最悪の状況にも対応でき、今後もパートナー各社と標準化を進めていくという。

●理想的なショーケースになれないIDF会場

 ゲルシンガー氏は、Intel 3.0をお見せすることができたとして基調講演を終えた。かつてはCTOとして、バラ色の未来を披露する立場にあったゲルシンガー氏だが、エンタープライズの担当となったことで、基調講演の内容も、妙に現実的なものとなったのが印象的だった。新たにたくわえた髭は、ゲルシンガー氏のどのような野心を象徴しているのかが気になるところだ。

 もっとも、数千人規模の出席者を集めるIDFの会場は、ゲルシンガー氏の掲げるエンタープライズでのネットワーク環境の理想的なショーケースともなるはずなのだが、無線LANサービスの不調、リソース提供のためのサーバーの頻繁なシステムダウン、極端に狭い帯域しか確保できない線の細さなどは、いつでもどこでもネットワークにつながる環境の提供という同社のスローガンにはまったく似合わない状況だ。まずは、ここでバラ色の未来を現実として見せてほしかった。

□IDF Spring 2006のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spring2006/
□IDF Spring 2006レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/idfs.htm

(2006年3月9日)

[Reported by 山田祥平]

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