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2006 International CES

【Seagateレセプション編】
ポスト垂直磁気記録技術「HAMR」
~SDカードで20GBをめざす「Probe」

会期:1月5日~8日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Centerなど



 Seagateは、5日の夜(現地時間)、MGMグランドホテルで、プレス・アナリスト向けのレセプションを開催した。このレセプションでは、次々世代の記録方式に対する取り組みや、ブースでは展示されていなかったHDD搭載製品が紹介されていたので、レポートしていきたい。

Seagateのプレス・アナリスト向けレセプション会場。MGMグランドにあるパーティルームを借り切って開催された レセプションはパーティのような雰囲気で、CEOをはじめとするSeagateのエグゼクティブも参加し、参加者と談笑していた 会場では、Seagate製HDDを搭載した製品が展示されていた

●垂直磁気記録の3倍の容量を実現する次々世代磁気記録技術「HAMR」

 Seagateは、将来にわたってHDDの容量向上を実現するために、研究開発にも多額の投資を行なっている。レセプション会場では、その最新の取り組みが2つ紹介されていた。まず最初にポスト垂直磁気記録方式の「HAMR」(Heat Assisted Magnetic Recording)から紹介しよう。

 現在のHDDでは、メディアの表面に対して平行な方向に磁化を行なう水平磁気記録方式が採用されているが、記録密度が向上すると、熱揺らぎによって磁化が消えてしまうという問題があり、記録密度向上も限界に達しつつある。そこで、水平磁気記録方式に代わる次々世代磁気記録技術として期待されているのが垂直磁気記録方式である。Seagateの2.5インチHDDの最新モデル「Momentus 5400.3」では、他社に先駆けて垂直磁気記録方式を採用することで、最大160GBの大容量を実現した。

 Seagateが研究中の「HAMR」は、垂直磁気記録方式を発展させた方式であり、データを記録する場所にレーザーをあててメディアを加熱することで、より高い記録密度を実現しようというものだ。磁気メディアは温度が上がると、保磁力が小さくなり、磁化しやすくなるという性質がある。HAMRは、この性質を利用してデータの記録を行なう。

 Seagateのデータによれば、2.5インチHDDの容量は、現行の水平磁気記録方式では120GBが限界だが、垂直磁気記録方式の採用によって300GBまで増加し、HAMRでは1,000GBの実現も可能だという。現在のペースで大容量化が進めば、4~5年先にもHAMRへの移行が必要になるため、数年後の実用化を目指して研究が進められているという。

Seagateは、垂直記録のさらに先の技術として「HAMR」を研究中である プラッタ2枚構成の2.5インチHDDで実現可能な最大容量。現行の水平長手記録方式では120GB止まりだが、垂直記録方式の採用によって容量は300GBまで増加。さらにHAMRでは、1,000GBもの容量が実現できる 現行の水平記録方式の原理図。メディアに対して平行な方向に磁化されるため、NとN、SとSが近づき、密度が上がると不安定になりやすい
一部の製品で採用が始まった垂直記録方式の原理図。メディアに対して垂直な方向に磁化されるため、磁区を小さくしても安定した記録が行なえる 4~5 年後に実用化が予想されるHAMRの原理図。細く絞ったレーザー光によって、加熱を行ない、さらに高い記録密度を実現する HAMRによる記録を行なうには、レーザーからの光を鏡によって反射し、グレーティングカプラによって、メディアに導く必要がある

●SDメモリーカードサイズで20GBを実現する将来技術「Probe」

 Seagateが開発中のもう1つの将来技術が「Probe」と呼ばれる技術である。これは、現行の磁気記録方式の代替を狙ったものではなく、新たな超小型記録媒体を実現するための技術である。Probe技術の採用によって、SDメモリーカードやMMCと同じサイズで、10~20GBという大容量を実現できるという。

 この技術では、Probeを格子状に数多く配置し、ピエゾ素子などのアクチュエーターを利用してメディアを上下左右にわずかに動かしながら、データの記録/再生を行なう。HDDと違ってモーターなどが不要で、回転待ち時間もないため、消費電力が小さく、アクセス速度が高速なことも利点だ。こちらも、製品化時期などは明らかにされていないが、携帯電話などの小型機器への搭載を狙って開発が進められているようだ。Seagateは、超小型記録媒体として、0.85インチHDDではなく、こちらが本命だと考えているのであろう。

Seagateが開発中のもう1つの将来技術「Probe」 Probe Scannerのサイズは、SDメモリーカードやMMCと同じで、当初の容量は10~20GBクラスを想定している 消費電力が100~200mWと小さく、携帯機器にも最適である。また、アクセス速度も5ms未満と高速だ
データの記録/再生を行なうProbeが格子状に多数配置されている Probeがメディアに接触する形で記録/再生を行なう

●DVD-Videoを最大825本分記録できるDVDサーバー

 レセプション会場では、CESのSeagateブースで展示されていた各種製品が、自由に手に取って試せるように置かれていたほか、ブースにはなかった製品もいくつか展示されていた。その中でもユニークな製品が、KaleidescapeのDVDサーバーシステム「Kaleidescapeシステム」である。Kaleidescapeシステムは、サーバーのHDDにDVD-Videoのコンテンツをコピープロテクションを含めて丸ごとコピーし、LAN経由で接続した専用のムービープレイヤーを利用して、サーバー内のコンテンツにアクセスして再生を行なうというものだ。サーバー内のコンテンツは保護されており、PCにコピーすることや、インターネット経由で外部からアクセスすることは不可能である。サーバー内の映画コンテンツは、タイトルやカテゴリー、監督、出演者などで、ソートや検索が可能だ。

 Kaleidescapeシステムは、中核となるKaleidescapeサーバーと、DVDドライブを搭載したリーダー、再生を行なうためのムービープレイヤーから構成され、ムービープレイヤーを増やすことで、複数の部屋からサーバー内の映画コンテンツを再生できるようになる。Kaleidescapeサーバーには、最大12台のHDDを搭載でき、最大容量は5.5TBにも達する。最大増設時は、約825本分のDVDコンテンツを収納可能だ。サーバーの心臓部ともいえるHDDに、SeagateのHDDが採用されているという。

 Kaleidescapeのスタッフによると、本製品は業務用ではなく、家庭用製品とのことだが、システムの価格は、最低構成で22,000ドル(約250万円)とかなり高価だ。すでに販売が開始されているが、主な顧客を尋ねたところ、「セレブや一流スポーツ選手だ」とのことで、富裕層を対象にした製品であることは間違いないようだ。

 また、HDDを搭載し、録画機能やタイムシフト機能を実現したHUMAXの液晶TVやLG電子のプラズマTVも展示されていた。LG電子の製品は、デジタルハイビジョン対応で、ハイビジョン放送もそのままの画質で録画可能である。

KaleidescapeのDVDサーバーシステム「Kaleidescapeシステム」。筐体はラックマウント対応になっており、一番下がサーバー(ラック5ユニット分を占有)で、その上がDVDドライブを装備した「リーダー」、一番上が再生用の「ムービープレイヤー」である。リーダーとムービープレイヤーのサイズは、1ユニット分だ HDDはRAID構成になっており、ホットスワップが可能だ。12台のHDDを搭載可能で、最大5.5TBの大容量を実現 取り込んだDVDコンテンツのパッケージ映像を一覧表示させることもできる。なお、このHUMAXの液晶TVにも、SeagateのHDDが搭載されており、TV番組の録画が可能だ
LG電子のHDD搭載プラズマTV。デジタルハイビジョン対応で、ハイビジョン放送をそのままの画質で録画できる Seagateの160GB HDDを搭載しており、ハイビジョン(HD)放送なら14時間、標準(SD)放送なら68時間分を録画することが可能 Seagateの1インチHDDを搭載したポータブルメディアプレイヤー。ソニーのウォークマンAなども置かれており、参加者が自由に手にとって試せるようになっていた
1インチHDDを搭載したPDAやポータブルGPS端末、デジタルボイスレコーダーの展示 1インチHDD対応のデジタルカメラや、1インチHDDを搭載したフォトプリンタ「HP Photosmart 475」 iVDRと似たコンセプトのリムーバブルメディア「Tornado」と、対応プレイヤーの「Twister」

□2006 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□Seagateのホームページ
http://www.seagate.com/
□関連記事
【2005年6月9日】Seagate、垂直記録方式採用の2.5インチ160GB HDDなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0609/seagate.htm

(2006年1月8日)

[Reported by 石井英男]

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