[an error occurred while processing the directive]

FPD International 2005レポート

2006年にTFT生産ナンバーワンを目指す台湾

会期:10月19日~21日

会場:パシフィコ横浜 展示ホール



 液晶TVやプラズマTV、PC液晶ディスプレイ、ノートPCなどの中核部品である薄型パネル(フラットパネル)。フラットパネルの技術、製品、部品、材料に関する総合展示会「FPD International 2005」が、10月19日~21日にパシフィコ横浜で開催された。今回は、展示会場だけではなく、周辺のイベントも含め、数回にわたってレポートをお届けする。

 世界的に見ると、フラットパネルの開発企業はアジアに偏っている。フラットパネル生産のほとんどはアジア地域で占められており、生産金額では韓国系企業と台湾系企業、日本系企業がおおむね3分の1ずつという状態にある。ただしPCや大型TVなどに使われる大型液晶パネルの出荷数量では、韓国系企業と台湾系企業がそれぞれ4割を占め、日本は2割弱と水を開けられている。

 フラットパネルの技術開発では、韓国と日本が先行してきた。台湾は日本の技術を積極的に導入し、技術格差を詰めている。すでに、台湾の大手メーカーは、技術は日本に追い付いたと考えている。

 2大勢力である韓国と台湾の大きな違いは、パネルメーカーの数にある。韓国系企業は、大手エレクトロニクス企業であるSamsung系あるいはLG系の4社が中心である。液晶ディスプレイパネルがSamsung ElectronicsとLG.Philips LCD、プラズマディスプレイパネルがSamsung SDIとLG Electronicsと比較的きれいに分かれている。これに対し、台湾には大小さまざまなパネルメーカーが存在する。AU Optronics(AUO)とChi Mei Optoelectronics(CMO)の大手2社に、Chunghwa Picture Tubes(CPT)、HannStar Display、Quanta Display、InnoLux Displayなどが続く。

●官民挙げてフラットパネル産業を育成

記者会見の模様。台湾貿易センター、台湾経済部、フラットパネルメーカーの要人が出席した

 今回のFPD International 2005では開催前日に台湾貿易センターが記者会見を開催し、フラットパネルにかける台湾の意気込みをアピールした。台湾が官民を挙げて産業育成に取り組んでいる様子がよく分かるので、まずは会見の内容をピックアップしてお伝えしよう。

 台湾経済部(MOEA:Ministry of Economic Affairs)次長のChen Ruey-Long氏は、台湾におけるフラットパネル産業の位置付けを説明した。台湾では現在、「Two Trillions, Twin Stars」と名付けた産業振興政策を進めている。Two Trillionsは台湾経済を支える2大産業であり、半導体産業とフラットパネル産業が対象である。Twin Starsは現在は小さいものの、将来に大きな飛躍が期待される2大産業であり、デジタルコンテンツ産業とバイオ産業が対象となっている。

 Two Trillionsのなかで半導体産業は、すでに台湾で最大規模の産業である。フラットパネル産業は2番目に大きな規模に育ってきた。台湾経済部としては2006年に、TFT液晶パネルの生産額で世界ナンバーワンの地域になることを目標とする。


「Two Trillions, Twin Stars」。フラットパネル産業はTwo Trillionsの一角を占める。2004年の生産額は323億米ドル(約3.5兆円) 2004年と2008年に台湾を支える産業の規模。2008年におけるフラットパネル産業の目標生産額は584億米ドル(約6.4兆円)である。また全般的にハイテク関連の産業育成に力を入れていることが分かる 「世界経済フォーラム(World Economic Forum)」が2005年9月に発表した競争力ランキング。台湾は総合ランクで5位、技術力ランクで3位につけている。ちなみに日本は総合ランクで12位、技術力ランクで8位だった

 フラットパネル以外に視野を広げると、台湾はさまざまな製品で世界トップの生産量を誇る。システムメーカーがサブシステムや部品、材料などを調達する拠点として、台湾は適しているとする。すなわち調達コストの削減が図れる。台湾貿易センターの支援により、NECグループが2002年からの2年間で調達コストを30%削減した例を挙げていた。

台湾が生産量で世界トップ3に入る品目のリスト。トップ品目には、マザーボード、ノートPC、液晶ディスプレイ、PDA、光ディスクドライブ、MP3プレーヤーなどがならぶ。厳密には台湾系企業が台湾以外の地域で生産している品目も、カウントされているようだ NECグループの調達コストを削減した例。台湾貿易センターの支援で調達コストの削減プログラムが組まれた

●液晶TVメーカーが増え、パネルメーカーが減る

 台湾の経済誌「工商時報(Commercial Times)」のChen Yung-Cheng次長は、台湾と日本のTFT液晶パネル産業を比較して説明した。初めに、急成長中の台湾企業として最近注目を浴びている、InnoLux Displayの例を示した。同社は台湾Foxconn Groupの子会社である。2004年に液晶パネル生産を開始し、液晶ディスプレイの出荷を開始した。出荷台数は2005年の第1四半期に100万台だった。同年第3四半期には出荷台数を月当たり100万台に増やした。2006年には、出荷台数を2005年の2倍に増やす予定である。

 InnoLux Displayがビジネスを急速に立ち上げられた理由はなにか。Chen Yung-Cheng氏が挙げた理由は、1)現場の感覚とビジネスのセンス、2)市場環境の急速な変化に対応する柔軟性、3)価格競争に適応するための独自の思考/行動、の3つである。この3つは、InnoLux Displayというよりも、台湾のフラットパネルメーカーに共通のビジネススタイルであるようにみえた。一方、日本の事業戦略は、マネジメントの優秀さと、価格競争を避けるところに特徴があるとした。

タイトル。台湾の「道(Dao)」と日本の「武士道」の対決 InnoLux Displayの液晶ディスプレイ事業。急激に出荷台数を増やしてきた
InnoLux Displayの液晶ディスプレイ事業が急速に拡大した理由。「Sensitivity」、「Flexibility」、「Maverick Heart」の3つだとする。LCDは、Low Cost Deviceの略だというダジャレがくっついている 日本のフラットパネル産業における事業戦略。「イノベーション、研究開発(R&D)、設計、製造のマネジメントが優秀」とある。ほめすぎのようで少々気恥ずかしい

 Chen Yung-Cheng氏は続いて、フラットパネル市場の動向に話題を転じた。大型フラットパネルの用途として現在、最も期待されているのは薄型TV市場である。このためTV市場に参入するメーカーが増え、大手の液晶TVメーカーはシェアを低下させつつある。これに対し、TV向けの大型液晶パネル製造には大規模な設備投資を必要とするため、TV用液晶パネルでは大手による寡占化が進行している。


 またパネルの大型化と高精細化、高速化などには技術革新が欠かせない。このため、特許に代表される知的財産権(IP:Intellectual Property)の重要性がさらに高まるとの見通しを述べた。

TFT液晶TVメーカーと液晶パネルメーカーのシェア推移。TFT液晶TVでは、「そのほか(Others)」の占める割合が増えつつある TFT液晶パネルメーカーの特許成立数の推移。台湾企業と韓国LG.Philips LCD(LPL)の特許が最近は急速に増えている

□FPD International 2005のホームページ
http://expo.nikkeibp.co.jp/fpd/japanese/
□関連記事
【10月19日】FPD International 2005開幕。フルHD PDPなど出展(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20051019/fpd.htm

(2005年10月24日)

[Reported by 福田昭]

【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
お問い合わせに対して、個別にご回答はいたしません。

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company.All rights reserved.