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AMD Fab36グランドオープニングレポート
~AMDの製造キャパシティは倍以上に

10月14日(現地時間)開催

会場:ドイツ共和国ザクセン州ドレスデン AMD Fab36



 米AMDは、ドイツ共和国ザクセン州ドレスデンに建設してきた、300mmウェハに対応した新工場“Fab36”の完成披露式典(オープニングセレモニー)を、現地近くに設営されたイベント会場で行なった。

 現地時間の昼頃に行なわれた完成披露式典では、ドイツ共和国のゲアハルト・シュレイダー首相やザクセン州のジョージ・ミルブラット首相らを招き、AMDの新しい工場を披露した。

 また、式典に先立つ記者会見では、同社の会長/社長兼CEOのヘクター・ルイズ氏がすでに今夏にFab36におけるファーストシリコンが300mmウェハで製造されたことを明らかにし、Fab36がフルに稼働すれば、AMDの製造キャパシティは現在の倍以上となることを明らかにした。

●地元ドイツとザクセン州への感謝の言葉を繰り返したルイズCEO

AMDのヘクター・ルイズ会長、社長兼CEO

 セレモニーで壇上に登場した、AMDのヘクター・ルイズ氏は「AMDは現在世界で最高のマイクロプロセッサを製造するベンダになった。その躍進を支えてくれたのが、ここドレスデンにあるFab30だ」と述べ、Opteronのリリース以降、好調が続いているAMDのマイクロプロセッサビジネスには、ここドレスデンに'99年に完成したFab30が大きな貢献をしていると述べた。

 ルイズ氏は「Fab30は間違いなく世界で最高の工場の1つと言える。その成功を支えてくれたのが、ここザクセン州の人々だ」と述べ、詰めかけたザクセン州の関係者に何度も感謝の言葉を述べた。というのも、Fab30にせよ、Fab36にせよ、ザクセン州はAMDの工場を誘致するのに補助金を出しており、それが、AMDがドレスデンに工場を建設する理由になったと言われている。それだけにルイズ氏が盛んにザクセン州の関係者に感謝を述べるのも無理はないだろう。

 そもそもザクセン州は、旧東ドイツに相当し、産業はあまり多くない。そこで、ザクセン州はこの地域をシリコンバレーのようにするべく、エレクトロニクスカンパニーの工場誘致に力をいれてきたという歴史がある。

 AMDが'99年にここドレスデンにFab30を決定したのには、そうした背景の中でザクセン州政府がオファーした多額の補助金が決め手になったと言われている。そして、今回のFab36についても、ザクセン州政府からやはり同じようなオファーがあったと見られているのだ。

 ルイズ氏は「ザクセン州政府とのパートナーシップにより、我々は今後もすばらしい製品をユーザーの元に届けることができる。我々は2020年には地球上のすべての家庭がマイクロプロセッサにより接続されるというビジョンを持っているが、それを実現するのにFab30とFab36は非常に多大な貢献をするだろう」と述べ、同社の明るい未来をアピールした。

●対照的な2人の首相、失意のシュレーダー首相と笑うザクセン州政府首相

 ルイズCEOの後には、ドイツ共和国のゲアハルト・シュレーダー首相、地元ザクセン州州政府のジョージ・ミルブラット首相らが登壇し、それぞれ祝辞を述べた。

ドイツ共和国のゲアハルト・シュレーダー首相 ザクセン州政府のジョージ・ミルブラット首相

 シュレーダー首相は「連邦政府は今後もドイツに対する投資を促していく。特にハイテク産業に関しては、ドイツにはそれを受け入れる基盤がある。AMDのFab36はそのよい例であり、今後とも連邦政府、ザクセン州ともにサポートしていくだろう」と持ち上げると、ザクセン州のミルブラッド首相も「東ドイツには成長のためのエンジンが必要となっている。'91年に我々がこの地域をハイテクのための工業地帯にするという戦略をたて、それを推進してきた。AMDのFab30はその成功例だし、今後もAMDがより投資を続けていくことを期待したい」と述べた。

 ただ、シュレーダー首相があまり笑っていなかったのに対して、ザクセン州のミルブラット首相は終始笑顔で講演をするなど、2人の首相の態度はあまりに対照的だった。

 シュレーダー首相が笑顔でないのは、AMDがというよりは、一昨日に首相を辞めることを明らかにしたことが影響しているだろう。シュレーダー首相は、9月の総選挙で社会民主党が議席を減らし、キリスト教民主同盟(CDU)との連立を組まなければならない状況となり、その責任をとって退任することがすでに決定している。これに対して、ミルブラット首相の方は、一応勝利したキリスト教民主同盟陣営で、AMDの新しいFab36の開設により直接、間接を含めて7,000人もの雇用を作り出したというのだから(ちなみにドイツでの主要な政治課題は失業問題)笑いが止まらないのだろう。

左からザクセン州政府のジョージ・ミルブラット首相、AMDのヘクター・ルイズ会長/社長兼CEO、ドイツ共和国のゲアハルト・シュレーダー首相、AMDのハンズ・ディッペ氏(副社長兼AMDザクセンジェネラルマネージャ)。中央にあるのがAMDの新しいFab36で生産されたウェハ Fab36で生産されたウェハを持つFab36の従業員

●当初は90nmプロセスルールでの製造が行なわれ、2006年の終わりから65nmへ

 完成披露式典に先立つ記者会見で、Fab36の概要などが明らかにされた。それによれば、Fab36は、製造するウェハのサイズは300mmとなる。Fab30は200mmウェハを利用して製造されていたので、AMDとしては初の300mmウェハとなる。

 Fab36は、当初は90nmの製造プロセスルールを利用して製造される。すでに今夏にファーストシリコンの製造が終わっており、大量出荷可能なウェハは2006年の第1四半期に製造が開始され、実際にマイクロプロセッサとして市場に流されることになる。65nmプロセスルールへの移行は、2006年の終わりに始まり、2007年の半ばにはすべてが65nmプロセスへの移行を終える計画となっている。

●大きなチャンスとなるFab36の立ち上げだが、同時にチャレンジ

 AMDにとり、Fab36の完成は大きな意味を持つと同時に大きな賭であるのも事実だ。なぜなら、Fab36の完成により、AMDの製造キャパシティは大きく伸びることになるからだ。AMDのルイズ会長兼CEOは「現在Fab30では、ラフに言って年間で5,000万ユニットのマイクロプロセッサを製造することができる。Fab36がフルに稼働するようになると、そのキャパシティは倍以上となり、少なくとも1億ユニットのマイクロプロセッサを製造できるようになる」とFab36の完成により、AMDの製造キャパシティはこれまでよりも格段に増えるという見通しを明らかにした。

 昨年の世界のPC出荷台数は約2億ユニットというのが各調査会社の見込みだが、仮にこれが正しいとすれば、AMDはその半分を製造することができるキャパシティを得ることになる。むろん、今後もPC市場自体は成長していくことが予想されており、特に2006年の後半にWindows Vistaがリリースされてからはさらに出荷台数が増えることが予想されている。

 例えば2008年にPCの出荷台数が3億ユニットに増加するようであれば、現在の25%程度よりちょっと増えた33%程度ということになるが、それでもシェアを現在よりも8%伸ばさなくてはキャパシティを全部埋めることはできないということになる。

 半導体ベンダにとってキャパシティを埋めらられないことは、大きな赤字を垂れ流すことになり、AMDにとって大きなインパクトがある。それに対して、逆にキャパシティを埋めることに成功すれば、AMDはシェアをこれまで以上に伸ばすことができるようになる。そうなるように、AMDがどのように製品展開を行ない、マーケティングをしていくのか、そこがAMDの躍進の鍵となる。

 ただ、1つだけ言えることは、少なくともAMDは、今後5年間Intelにチャレンジする“チケット”を手に入れたということだ。

□AMDのホームページ(英文)
http://www.amd.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.amd.com/us-en/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543~101840,00.html
□関連記事
【10月14日】AMD、300mmウェハの「Fab 36」グランドオープン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1014/amd.htm
【'99年10月21日】900MHzの銅配線Athlonプロセッサのサンプル製造に成功!
~ AMDがドイツドレスデンのFab30開所式を開催 ~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991021/amd01.htm

(2005年10月15日)

[Reported by 笠原一輝]

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