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PDC2005 エリック・ラダー副社長基調講演レポート

Server and Tools Business担当上級副社長のエリック・ラダー氏

9月13日~16日(現地時間)

会場:米ロサンゼルス市コンベンションセンター



 PDC(Professional Developers Conference)の2日目の基調講演(プログラム上ではジェネラルセッションとなっているのだが、MicrosoftのPressPassなどではKeynoteになっている)は、Server and Tools Business担当上級副社長のエリック・ラダー(Eric Rudder)とOffice担当上級副社長のスティーブン・シノフスキー(Steven Sinofsky)が行なった。ここでは、ラダー上級副社長のスピーチを中心にレポートする。

●Windows Workflow Foundationや開発ツールを発表

 ラダー上級副社長のスピーチでは、いくつかの製品、技術が発表された。それは、

・Windows Workflow Foundation(WWF)
・Visual Studio tools for Applications(VSTA)
・Microsoft Expression

の3つ。

 前回のPCD(2003年)でラダー副社長は、SQL Server2005(Yukon)とVisual Studio 2005(Whidbey)を発表しているのだが、実際には、SQL Server 2005の遅れからどちらもまだ出荷されていない。SQL Server 2005の遅れは、広範囲に影響し、そのコアを利用するはずだったWinFSやOutlook 12などが影響を受けた。また、これを利用したアプリケーションを開発するためのVisual Studio 2005にも少なからず影響が出ている。

 ラダー副社長は、PDCが終わる頃にVisual Studio 2005の製品候補リリースを出せるだと述べた。ようやくVisual Studio 2005の開発が完了したようだ。

 さらにVisual Studio、SQL ServerそしてBizTalk Serverは、今年11月の早い時期にようやく出荷できることになると述べた。製品出荷の見込みもつかずに2回目のPDCでスピーチすることはかろうじて避けられた。もっとも、Windows 2000のときにはPCDを3回やってようやく登場したのでそれよりはマシではあるのだが。

最初に発表されたのは、Windows Workflow Foundation。WinFXを使うワークフロー構築のための仕組みである Microsoft Expressionは、グラフィックス、インタラクティブ、Webの3つのツールから構成されるデザイナー用ツール Visual Studio Tools for Applicationは、サードパーティアプリケーションにマクロ機能を追加するためのもので、Microsoftが他社にライセンスする技術である

●Windows Workflow Foundation

WWFは、システム内のワークフローだけでなく、人間が介在するようなワークフローも構築できる

 Windows Workflow Foundation(WWF)は、ワークフローを構築するための技術である。WinFXを使うため、基本的にはOffice 12とVista向けである。ワークフローとは、仕事の流れを意味し、会社などの組織内でルールが決められた複数の人が関わる作業のことである。

 簡単にいうと、会社で書類を書いて回すというような仕事である。これを電子化するための仕組みがWWFである。単純な作業ならば、メール程度でなんとかなるのだが、たとえば、どこかで承認が取れなかったときや、書類の内容により途中で手順が変わるなんて場合には、電子メールだけではどうにもならない。

 また、このWorkflowにわざわざFoundationなんてものが必要になるのは、複数の人やマシンが関わることになるからである。処理のルールをどこで管理するのか? 手順の分岐などを誰が面倒みるのかといったことが問題となる。

 もっとも、1台のサーバーマシンにログインして作業するなら、マシン内で処理が完結するのでそれほど難しいものではないが、関わるメンバーが、それぞれのマシンで書類を見たり、承認するなんて場合には、処理が複数のマシンで分散して行なわれることになるため、かなり面倒なものになるわけだ。こうした問題をちゃんと解決するための仕組みがこのWWFなのである。

 実際にワークフローを構築するには、フロー自体を管理するサーバーが必要。次期BizTalkサーバーやOffice 12と同時期に提供されるWindows SharePoint Servicesなどが利用できるようだ。また、Office 12には、文書ベースのワークフローを実現するための機能が組み込まれることになるという。

 WWFは、サーバー上で動作しているWWFランタイムエンジンと他のアプリケーションがWebサービスで接続されて動作する。ワークフロー自体の管理はサーバー側だが、ワークフローとして行なわれる作業は実際には、たとえば、Webページからのデータ入力やOfficeによる文書作成などとなる。

 このワークフローの開発には、Visual Studio 2005で行ない、ここでGUIを使ってのワークフロー設計が可能だという。

●VSTAとExpression

 もう1つの発表は、VSTAである。これは、簡単にいえば、アプリケーションに.NET Frameworkを使ったマクロ機能を追加するための技術である。Microsoftは、VBA(Visual Basic for Application)をサードパーティにライセンスしており、一部のアプリケーションは、これを実装していた。また、すでにWindows Scriptingで、Scriptコントロールにより、スクリプト技術を追加し、VBScriptを利用することも可能だが、これらの技術は、COMベースである。その.NET版がVSTAである。

 このVSTAは、VSTAを組み込んだアプリケーションを作るための専用の開発環境(IDE)やランタイム、エンドユーザーが利用するIDEなどから構成されている。このVSTAを組み込んだアプリケーションでは、エンドユーザーが手順をマクロとして記録したり、IDEを使ったマクロ開発などが可能になる。

【お詫びと訂正】初出時に「すでにAutoCADが採用を決定しており、AutoCAD 2006に組み込まれることになるという」という記述がありましたが、デモンストレーションでプロトタイプが試用されたことを誤認しておりました。お詫びして訂正させていただきます。

 最後の発表は、Microsoft Expressionと呼ばれるデザインツールである。Windows Presentation Foundation(WPF)では、XAMLを使うことでアプリケーションの表現とロジックを完全に分離できる。これにより画面デザインは専門のデザイナーが行ない、開発者は、ロジックの開発に専念するという分業が可能になる。このExpressionは、画面デザイナーなどが利用するためのツールで以下の3つのプログラムから構成されている。

・Graphic Designer(コード名Acrylic)
・Interactive Designer(コード名Sparkle)
・Web Designer(コード名Quartz)

 簡単にいうと、Acrylicがビットマップ画像やベクトル画像を作るためのツールで、AparkleがXAMLのGUIデザインツール、QuartzがWebページのデザインツールである。

 これらは、WinFXのアプリケーション開発用でVisual Studioと連動するツールなのだが、実際には、Adobe製品への対抗製品でもある。XAMLは、XMLベースの言語だが、動作を記述するだけで、実行コードに変換することができる。これを使うとFlashのようなことが簡単に行なえる。一部には、SpakleをFlashキラーと呼ぶ向きもあるようだ。また、AcrylicがIllustratorやPhotoshopと、QuartzがGoLiveに競合している。

 Microsoftは、2003年に香港のCreature Houseを買収。ここは、グラフィックスやアニメーションツールを手がけていた企業だった。この会の製品がExpressionという名前だったのである。

 関係者の話によると、Acrylicなどは、買収したCreature Houseのリソースを元に開発しているものの、コードとしては完全に作り直したもので旧Expressionの改良版ではないのだということだ(しかし、AcrylicのCommunity Technology Previewのページには、前バージョンとしてCreature HouseのExpression3が紹介されている)。

 このMicrosoft Expressionの出荷時期は未定だが、VISTAの出荷と前後して提供されることになると思われる。

Expression Graphic Designer(コード名Acrylic)。人物を切り出すデモ。簡単な操作で人物だけを選択することができた。Acrylicは、このほか、ベクトル図形も扱うことが可能 Windows Presentation Foundationでは、XAMLを使って画面を記述できるため、ロジックを記述するプログラマとGUIデザイナで分業が行ないやすい

□PDC2005のホームページ(英文)
http://msdn.microsoft.com/events/pdc/

(2005年9月16日)

[Reported by 塩田紳二]

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