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PDC2005 ビルゲイツ会長基調講演レポート

9月13日~16日(現地時間)

会場:米ロサンゼルス市コンベンションセンター



 Microsoftのソフトウェア開発者向けのイベントであるPDC(Professional Developers Conference)は、不定期ながらほぼ隔年で開催される。前回は2003年に開催されLonghornの詳細が発表された。

 今回は、今年7月のβ1公開に続き、Windows Vistaの詳細な情報が開発者向けに公開される場として注目を集めている。

 また、Windows Vistaと並んでセッション数が目立つのは、次期Officeである「Office 12」だった。これまで「Office Longhorn」と呼ばれていたバージョンである。

●Windows VistaのSide Barが新機能を備えて復活

ビル・ゲイツ会長兼CSA

 初日の基調講演は、Microsoftの会長兼CSAのビル・ゲイツ氏が登場した。今回のテーマは「The Next Step」。Microsoftでは、Windows VistaやOffice 12をWindows 95から続く現在のWindowsが、大きく変化し次のステップへの移行すると考えているようだ。

 この講演では、Office 12の情報が新たに公開され、Vistaに関してもGUIが変更された新しいバージョンをデモ、また、IE7やAJAX技術であるAtlas(コードネーム)についても触れられた。

 Vistaについては、これまでコードネームで呼ばれてきたAvalonとIndigoに関して、正式な名称が付けられた。Avalonは「Windows Presentation Foundation」、Indigoは「Windows Communication Foundation」である。Vistaのアップデートで登場予定の「WinFS」も、このパターンの名称となることが予想される。

 続いて、Windows Vistaの最新ビルドとOffice 12のデモが行なわれた。Windows Vistaのβ1では、それまであった画面右側のSide Barが無くなっていたが、今回、新たな形で復活していた。

 β1以前のSide Barは、どちらかというとXPのタスクバーの拡張版のような形だったが、新しいSide Barはデザインも変わり、ガジェットと呼ばれるプログラムを配置して、さまざまな機能にアクセスできるようになっている。

 XPのWindows Media Player 10は、アイコン化すると、タスクバーにミニプレーヤーとして表示されるが、ガジェットもそんな感じで、操作が可能なオブジェクトとしてSide Barに表示される。時計のようなガジェットやRSSの表示、サーチバーなどもあり、一部は、現在のシステム通知領域にあるアイコンが持っている役目もあるようだ。システム通知領域は本来、アイコンで状態を通知するためのものだが、現在では、通知以外にもさまざまな設定や機能起動のためのボタン的な使われ方をしている。

 おそらく比較的操作や入力などが必要なものをSide Barで動かすことになるのではないかと思われる。

 その他、ウィンドウを3次元表示させ、各アプリケーションを動かしたまま、紙芝居のように次々と前面に来るアプリケーションを切り替えるタスクスイッチャーのようなデモや、文書の検索などのデモが行なわれた。なお、デモの中では、現在単にExplorerと呼ばれているWindowsのファイル表示ウィンドウは、Document Explorerと呼ばれていた。Internet Explorerなどと区別するために名称が付けられたのかもしれない。

AvalonやIndigoに正式名称が付けられた。それぞれ、Windows Presentation Foundation、Windows Communication Foundationという名称である β1で無くなっていたSide Barが復活 Windows Presentation Foundationのデモでは、動作中のウィンドウを3次元表示させ、紙芝居のように動かしてみせた

ガジェットブラウザからWindows Media Playerのガジェットを選択 ガジェットはクリックなどで操作が可能 ドラッグ&ドロップでデスクトップの任意の位置に配置することもできる

●GUIを一新するOffice 12

 Office 12は、大きく見た目が変化する。これまでのOfficeでは、さまざまな機能拡張が行なわれてきたが、今回は、それらを使いやすくするために従来のメニュー、ダイアログボックス、ツールバーという「伝統的」なWindowsアプリケーションのスタイルを捨てる。

 午後のセッションなどで説明を聞いたところによると、機能が多くなりすぎて、もはやメニューの数が多く、理解できる量を超えたため、根本的な見直しを行なったという。

 タイトルバーの下にあるのは、メニューとツールバーを合わせたような「Ribbon(リボン)」があり、項目(タブ)を選ぶと、その下にアイコンやテキストボタンが並ぶ領域が表示される。

 ここは、チャンクと呼ばれる領域に機能ごとに分割されている。その中の1つをクリックすると、選択可能な項目がグラフィカルに表示される。これはギャラリー(Galleries)と呼ばれる。その上でマウスカーソルを動かすと操作対象がリアルタイムに変化する。たとえば、フォントの設定であれば、選択したフォントが次々に設定されていく。これをMicrosoftではLive Previewと呼んでいる。

 この新しいGUIは、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Accessと、Officeの主要アプリケーションで採用される予定。ただし、Outlookは、部分的な改良で、ウィンドウ全体は、現在のようにメニューバーを持つものになるようだ。

Office 12は、新しいユーザーインターフェースを持ち、これを開発者が簡単にカスタマイズすることが可能 Office 12では、メニューバーの代わりにリボンと呼ばれる領域があり、そこのタブをクリックするとボタンなどのツールが表示される。また、設定の場合、内容をグラフィカルに表示するギャラリーが開く。ここでの選択はリアルタイムに本文表示などに反映される

●IE7も機能強化

タブブラウジングで複数ページを開いたとき、そのページをサムネイル表示させることもできる

 7月のβ1ではあまり機能追加が見られなかったInternet Explorer 7も、大きく変わるようだ。タブブラウジング機能は、単にタブ表示だけでなく、各ページのサムネイルを並べた表示が可能になり、一覧性が高くなった。また、ページの拡大、縮小機能が強化され、見やすいサイズに変えて表示できるほか、ページを印刷するときに、縦横幅を用紙サイズに合わせることが可能になった。

 さらにフィッシングサイト対策が組み込まれ、フィッシングサイトと思われるページは、フィルターが働いて表示する前に警告が表示される。また、アドレスバーが赤くなり、ユーザーに注意を促す。


多少でも危険性がある場合には、アドレスバーが黄色になり、ユーザーに警告する フィッシングサイトを開こうとするとフィルタが警告を表示する フィッシングサイトを表示させると、アドレスバーが赤くなる

●Atlasについてはほとんど触れられず

 Windows VistaとOffice 12は、公式予定としては、ともに2006年後半の出荷であるが、おそらく出荷タイミングを合わせることになると思われる。Microsoftとしては、Windows 95のときのようなムーブメントを再び起こすことを狙っているようだ。

 最後にゲイツ氏は、2006年には大きな波が来て、アプリケーションはもっとも良くなるだろうし、そのために準備することを望むと述べた。そして今が最もおもしろい時期でソフトウェア産業は最も良い状態にあり、変革の要因に必ずなるだろうと述べ、スピーチを終えた。

Office 12とVistaは、2006年後半の出荷。また、コミュニティテクノロジプレビューの配布が行なわれ、マーケッティングプログラムが開始される このスライドでAtlasの名前だけが登場。実際の内容は、ゲイツ氏の後のオルチン副社長の講演で触れられた

 Ajax技術であるAtlasについては、ほとんど触れられず、スライドに名前が出ただけであった。Ajaxとは、GoogleのGmailやMapなどのようにWebページでありながら、ローカルアプリケーションのようにリアルタイム性の高い操作が可能なもの。これを作る技術をAJAX(Aysnchronous JAvascript + XML)と呼ぶ。Atlasは、Visual Studio 2005でサポートされ、ASP.NETに統合されることになるという。

 また、MicrosoftのBusiness StrategyグループのGeneral Manager Charles Fizgerald氏によれば、Atlasは、今後のWebアプリケーションでは主流になるとMicrosoftは考えているとのこと。

 このAjaxは、Googleが積極的に採用している技術だが、Microsoftもこれを本格的に取り込むことになるようだ。Windows Desktop Searchといい、幹部引き抜きに対するMicrosoftとGoogleの訴訟騒ぎといい、現在のMicrosoftの第一ターゲットはGoogleのようだ。訴訟問題が片づきつつあるMicrosoftは、また以前のような攻撃的な戦略を取り始めるのかもしれない。

□PDC2005のホームページ(英文)
http://msdn.microsoft.com/events/pdc/
□基調講演のWebcast(英文)
http://www.microsoft.com/events/executives/billgates.mspx
□関連記事
Microsoft Professional Developers Conference 2003レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/link/pdc03.htm

(2005年9月15日)

[Reported by 塩田紳二]

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