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Freescale Technology Forum Japan 2005レポート9月8日 開催 9月8日、都内にてフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン株式会社主催による「Freescale Technology Forum Japan 2005」が開催された。 Freescaleという社名になじみが薄い、という人は多かろうが、元はMotorola。このMotorolaの半導体部門が独立したのがFreescaleである。昨年のEmbedded Processor Forum 2004レポートの中でもちょっと触れている通り、旧Motorolaが開発/販売してきた68KコアやPowerPCコア、ARMコア、ColdFireコアといったCPUコアのみならず、DSPの「STARCORE」や、そのほか各種半導体部品(センサーやパワーアンプ、etc)をすべて継承して開発/販売を行なっている会社である。 ワールドワイドでは世界30カ国に22,000人以上の社員と10カ所の工場、25ものデザインセンターを抱える巨大企業で、売上も半導体業界でトップ10に入るポジションに位置している。日本ではFreescaleの100%子会社であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンが東京・目黒にオフィスを構えるほか、大阪と名古屋に営業所、仙台にデザインセンター、名古屋に品質・テストセンターを構えるなど、それなりの陣容をそなえた半導体メーカーである。 そのFreescale、今年から同社の顧客(つまりFreescaleの半導体を使って製品を作るメーカー)向けにFreescale Technology Forum(FTF)を開始した。最初のFTF America 2005はOrlandoで6月16日~6月20日まで開催され、これに続きFTF Japan 2005が初の海外FTFとして今回行なわれた事になる。これに続きイスラエルのテルアビブ、インドのバンガロール、パリ、ミュンヘンで10月まで開催される予定だ。 似たようなイベントは主要な半導体メーカーなら必ず実施している。代表例がIntelの開催するIntel Developer Forumであるが、Intelと異なりFreescaleはコンシューマ向け製品を出荷していない事から、セッションの内容などは非常にテクニカル寄りであり、また基調講演のテーマもやや専門的な内容が多い。というわけで、まずはFTFの基調講演を中心にレポートをお届けする。 ●Freescaleの対象とするマーケット
基調講演ではまずSumit Sandra氏が同社の基本的なマーケットポジションやターゲットとするマーケットについて説明を行なっていた。 同社は先も述べた通り、コンシューマ向けの製品を直接製造する事はない。従って同社の製品ジャンルは基本的には組み込み向けのみという事になるわけだが、組み込み向けといってもマーケットはすこぶる広い。そこで同社はTranspotation and Standard Products、Wireless Solutions、Network and Computingの3つの分野に絞って製品とサービスの提供を行なっているという状況を示した。 同社の基本方針は、「マーケットでNo.1~No.3の範囲に入れないものは撤退する」というもので、逆に参入すると決めたマーケットには徹底的な製品ラインナップと各種サービスをそろえる。 たとえば自動車向けであれば各種センサー(タイヤの空気圧センサーや加速度センサー、最近登場してきたレーダーなど)、マイクロプロセッサ/マイクロコントローラ、車内LAN、電源制御チップなどが現在の対象項目として挙がっている。あるいはWireless向けではDSPやBaseBand、RFなどでNo.1のポジションこそ譲り渡したものの、再びNo.1のポジションを奪回すべく製品展開を行なっていく事を明らかにしている。ちなみにこのほかのものとしてコンシューマ向け製品も柱に据えているが、これは後述する。 ●実際の製品群
続いて壇上に上がったフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの高橋社長は、実際にデモを交えながら、実際の製品の紹介を行なっていった。まず最初は携帯電話向けプラットフォームとして同社が強力に推進しているMXCプラットフォームである。 MXCはGSM/GPRSという3G向け携帯電話の標準プラットフォームであり、MXCを利用する事で携帯電話の部品点数を大幅に減らす事が可能としている。デモでは、実際にMXCを搭載した開発ボード上でGSM端末のソフトウェアを実行し、基地局エミュレータ上でループバックを行なっての動作が示される予定だった(*1)。 (*1) 基調講演ではデモがうまく動作しなかったが、その後の展示ではちゃんと動作することが示された。 次に示されたのは、WiFi(IEEE 802.11b)を使ったVoIP電話のデモであった。ここでは「ColdFire V2」を搭載したWiFi端末を利用し、実際に通話が行なえる事が示された。このケースの場合、VoIPの処理、WiFiのコントロール、TCP/IPの制御と端末側の負荷は大きく、これをいかに低消費電力で実現できるかがキーとなってくる。ColdFireはこうした用途に最適なプロセッサである、というのが同社の主張であった。 3つ目のデモは、そのColdFireの上位製品にあたる「i.MX31」というARM11コアベースのSoCを利用して、ワンチップでMPEG-4デコードを実施するというものであった。i.MX31はPDAや携帯ビデオプレーヤーなどといったマーケットをターゲットとしたもので、実際これらに必要とされるハードウェアをほぼすべて網羅している。 特にビデオ周りで必要なフィルターや画像アクセラレーションなどをハードウェアで持っており、かつこれらを高速なスイッチで接続する事で同時に稼動させられるため、見かけ上は3GHz動作に匹敵する(つまり5~6個のブロックが532MHzで同時に動作するから、積み重ねると3GHz相当になる)としている。 4つ目のデモは自動車向け分野で、車載向けのPowerPCを使い、たとえば運転席に設置したカメラで運転者を監視することで、運転者の居眠り防止機構を実現できることが示された。 高橋社長によれば、2004年の時点で車に搭載される半導体は総額233ドル程度だが、2015年にはこれが400ドルまで上がり、かつASP(平均販売価格)は大幅に落ちている事を考えると、膨大な数の半導体が自動車に搭載されるという見通しを語っており、今回のデモもその一環であった。 最後のデモは、通信分野向けのものである。通信事業者向けに、Intelが以前提唱して各社が採用したものにATCA(Advanced TCA)と呼ばれる規格があるが、この規格は便利なもののやたらデカイという問題があり、もっと小さなものが望まれていた。 このためMicroTCAと呼ばれる省スペースのフォームファクタが検討されており、今年のCOMPUTEXあたりから各社でこれに向けた製品の参考展示などが始まっている。このデモもやはりMicroTCAベースのものだが、バックプレーンとしてGigabit Ethernet(GbE)とSerial RapidIOの2種類を比較し、どちらがより高速に転送を行なえるかを比較したものだ。 FreescaleはこのSerial RapidIOの関連チップセットなどを提供しており、次世代のATAC/MicroTACのバックボーンとして強く推進していく事を示した。 ちなみに会場には、Freescaleのチップを搭載した各社の製品が展示され、応用範囲の広さを示した。
●わずか1日のイベントだったが…… 基調講演では更にNTTドコモの永田氏とトヨタ自動車の谷川氏が相次いで公演を行なった。
永田氏はFOMAを中心に、いかにビジネスを(海外の事業者に比して)継続していくかという観点から、プラットフォームの標準化による開発コスト抑制の重要性を語り、谷川氏は自動車向けが通常の組み込み向けシステムといかに異なるか、という観点から、自動車向けのシステムのあるべき姿を論じるというもので、逆にいえばこうしたマーケットに向けてFreescaleが特化したビジネスを展開していることを印象付けるものになった。 ちなみに午後は、 ・携帯電話の次世代プラットフォーム の6つのトラックに分かれ、合計29ものテクニカルトラックが実施されるという密度の濃いものであった。さすがに全てをレポートするのは手に余るが、筆者のカバーする組み込みプロセッサの枠に入るいくつかの分野について、追って別にレポートをしたいと思う。 □フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのホームページ (2005年9月9日) [Reported by 大原雄介]
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