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IDF Fall 2005レポート
パット・ゲルシンガー副社長基調講演レポート
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Intel上席副社長兼デジタル・エンタープライズ事業部長 パット・ゲルシンガー氏 |
会期:8月23日~25日(現地時間)
会場:Mosconeコンベンションセンター
(米国カルフォルニア州サンフランシスコ)
IDF2日目は、Digital Enterprise事業部のパット・ゲルシンガー上席副社長の基調講演で始まった。
ゲルシンガー氏は、R&D担当から、ビジネスを行なうDigital Enterpriseの事業部長になって2回目のIDFとなる。R&Dを担当していたときには、IDFの責任者として毎回、IDFの初日の最初にスピーチを行なっていたのだが、それを観客席側から眺めるのは少しへんな気持ちで、「IDFのGod father」と呼ばれるのは、なんだか年を取ってしまったようだと述べた。
●Embedded IT(EIT)とは?
最初に紹介したのは、Embedded ITと呼ばれる技術分野についてである。これは、VT技術を使い、別の実行パーティション内で、管理専用のOSを動かし、セキュリティやシステム管理、メンテナンスなどを行なわせるもの。AMT(Active Manegment Technology)と似ているが、専用OSにLinuxやWindows CEといった高度な機能を持つOSが利用できるため、AMTなどより大規模な管理アプリケーションを実行できる。
その実例としてCiscoで開発中のシステムのデモを行なった。これは、クライアントPCのアクセスを別パーティションで動作しているCisco Trust Agentで制御するもの。クライアントからは通常のアクセスを行なっているように見えるが、実際には、Trust Agentがネットワークを介して認証を受けなければ、サーバーなどにアクセスできない。これを使えば、たとえネットワーク自体に接続できても、認証を受けられないマシンではアクセスが行なえない。その他、ファイアウォール設定やパケットの通過などについても同様の仕組みを利用して制御する。
また、Embedded ITは、VTマネージャーを介さずに直接仮想パーティションを利用するが、将来的には、VTマネージャソフトやLT(LaGrande Technology:セキュリティ技術)やTPM(Trusted Platform Module)を併用し、システムの自動リカバリやバックアップなども可能になるという。また、ビジネス分野だけでなく、通信と組合せることで、スモールビジネスや家庭向けのPCでも利用できる機能になると予想した。
また、VT技術については、MicrosoftのVirtual Server 2005、VMwareのESX Server 2がこれに対応したことを発表、デモを行なった。Virtual Server 2005では、次世代のBensley Platformを使い、1つのマシンから他のマシンへ、実行中のサーバープロセスを移行させるデモを行なった。
加えて、VT技術は、レガシーなシステムをそのままにハードウェアだけを最新のものにアップデートできるという方向性を示した。ESX Server 2では、Windows NT 4.0のシステムを動かし、たとえそれがブルースクリーンで止まってしまってもシステム全体は動き続けるというデモを行なった。
VTは、次世代で仮想マシンの実行性能を向上させ、将来的には、さまざまなI/Oやグラフィックスデバイスの仮想化も行なう予定だという。
次にゲルシンガー氏は、ビジネスでのコラボレーションでのVoIPについて触れ、いまの電話は、非常に古い技術で、帯域が制限されており、これからは、「ビジネスクラスオーディオ」と呼ばれる高品質なVoIPによる通話が普及するだろうと予測。これに対して、Skypeとの提携を発表した。具体的には、Intelが高品質音声を扱えるCodec(音声の圧縮、伸張プログラム)を提供、また、デュアルコアプロセッサでの同時接続数を保証するなどの機能がSkypeに追加されることになる。これは、標準のSkypeに組み込まれ、対応するIntelプラットフォームであれば、自動的に使えるものになるという。
●次世代Xeonプラットフォーム
そして、次世代のXeonプラットフォームであるBensleyそして、現行のTrulandプラットフォーム(Xeon MP)で利用可能になるTulsaプロセッサについて説明を行なった。
Tulsaは、Paxville MPの後継となるDualCoreプロセッサで、16MBのL3キャッシュを持ち、65nmプロセスルールで製造される。登場は、2006年の第2四半期、VTに加えPellston Technologyを搭載する。
Bensleyは、Xeon DPプラットフォームで現行のlindenhurstの後継となるもの。CPUには、Dual CoreであるDempseyが使われるほか、新しいマイクロアーキテクチャを持つWoodcrestにも対応できる。
メモリにFB-DIMMを採用し、AMTやVTを利用可能で、さらにI/O Acceleration Technologyを持つ。チップセットには、Blackfordが使われている。
また、ブレードサーバーなど、低消費電力が求められる分野用には、Sossamanが用意される。これは、Yonahをベースにしたもので、既存のLindenhurstプラットフォームで動作する。
今回のIDFでは、Xeon系のCPUにもプロセッサ・ナンバが導入されるといわれていたが、パット・ゲルシンガー氏は特にこの話題には触れなかった。しかし、同氏が示したロードマップには、しっかりとDempseyが Dual-Core Xeon 5000、Paxville MPがDual-Core Xeon 7000として記載されていた。また、図から判断するに、プロセッサ・ナンバの導入は、Paxville MPからになると思われる。
このロードマップの説明で、ゲルシンガー氏は、2007年にはクワッドコア(4コア)が登場と述べたが、それは、図中で登場時期がFutureとなっているWhitefieldのことだと思われる。また、IA-64のTukwilaとPoulsonも4コア以上のようだ。
Xeon系のCPUにバリエーションが出てきた反面、Itanium系は、最上位CPUという位置付けとなり、ラインアップも縮小してしまっている。ゲルシンガー氏は、Itaniumの存在理由に「ユーザーに選択肢があること」を上げるなど、ちょっとItaniumにはちょっと冷たい感じだ。
それでもIBMのPowerとの比較を行なったのち、各社のItaniumマシンを登場させ、石油探索現場で利用されている解析ソフトウェアのデモをSGIのマシンで行なった。
最後にゲルシンガー氏は、「Transform the Enterprise」というメッセージで基調講演を締めくくった。
□IDF Fall 2005のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2005/
□IDF Fall 2005レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/link/idff.htm
(2005年8月26日)
[Reported by 塩田紳二]