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IDF Fall 2005基調講演レポート
オッテリーニCEOが次世代マイクロアーキテクチャへの移行を発表
会期:8月23日~25日(現地時間) 会場:Mosconeコンベンションセンター IDF Fall 2005初日、IntelのCEOであるポール・オッテリーニ氏がオープニング基調講演を行なった。この中で、同氏は2006年後半からの新マイクロアーキテクチャの投入を正式に発表。これまでの周波数向上を目指す考えから、ワット当たりの性能を向上させる方向へ変化させる姿勢を表明した。 ●新マイクロアーキテクチャを2006年後半に投入
ポール・オッテリーニ氏にとっては、今回がCEOに就任して初めてのIDFとなる。その世代交代を象徴するかのように、サーバーからモバイルまでを包括する新たなマイクロアーキテクチャ群が発表された。 この新マイクロアーキテクチャは「Performance/Watt(ワット当たりの性能)」を向上させることに主眼を置いている。4年前のIDFでは「GHz超」を主眼に置いていたが、今はマルチコアを使ったワット当たりの性能向上へと、マイクロアーキテクチャの方向性を切り替えたわけだ。 ちなみに、このPerformance/Wattの向上に注力したマイクロアーキテクチャは、すでにモバイルへは投入されている。それがBanias、Dothanであり、さらに2006年に投入されるYonahである。 これをさらに進めたのが、新しいマイクロアーキテクチャで、現在Intelが持つ2つのマイクロアーキテクチャ(すでにPerformance/Wattを意識して展開されているBanias系と、パフォーマンス志向のNetBurst)の良さを合わせたものになるという。 その新マイクロアーキテクチャを採用した3つの製品も発表された。サーバー向けの「Woodcrest」、デスクトップ向けの「Conroe」、モバイル向けの「Merom」で、これらは2006年後半に登場する予定。さらに講演では、各製品のデモンストレーションも実施された。
サーバーからモバイルまで一貫したマイクロアーキテクチャを利用することで、プラットフォームを一貫性のあるものにでき、「*Ts」に代表されるプラットフォーム上の技術をいずれのセグメントでも利用できることをメリットとして挙げている。 これらの製品は65nmプロセスによって製造されるが、2006年中には、6つの65nmプロセスのデュアルコアCPUが出荷される予定で、65nmのシングルコアCPUも2つ出荷される予定だ。さらに、4つのコアを持つマルチコアCPUも10種類以上の製品を開発中とのことで、これは明日のDigital Enterpriseの基調講演で詳しく語られる予定だ。 この新マイクロアーキテクチャ採用製品における最大消費電力は、モバイルが5W、デスクトップが65W、サーバーが80Wという。加えて、「ハンドトップ」と呼ばれる新たなセグメントの開拓も検討しており、0.5Wの最大消費電力となるプロセッサによる、コンセプトモデルが公開された。 今後はこのマイクロアーキテクチャを使って、モバイルやハンドトップの分野においては消費電力を10分の1に。一方、サーバーなどの分野ではパフォーマンスを10倍にできるとしている。 ●ユーザーニーズに応える技術 今回のオッテリーニ氏の基調講演の目玉は、新マイクロアーキテクチャの発表なのだが、これ以外にも、各事業部で展開されている取り組みに関して、さまざまな技術の紹介、デモが実施された。 まず、Digital Enterpriseの分野。ガートナーの調査によれば、各企業のCIOは予算の約90%を管理に費やしており、設備投資や技術改革への投資は10%ほどでしかないため、新しい技術を組み込むことが難しい。同時に、セキュリティ脆弱性の問題は2000年以降急激に拡大しており、こうした技術への投資も欠かせない状態である。つまり、大半の予算がビジネスの維持に使われているわけだ。 そこで、Intelが提供しようとしているのが、「Embedded IT」と同社が呼ぶ、トランジスタ技術とソフトウェアを組み合わせて、セキュリティ/管理性向上/仮想化を実現する、LT/iAMT/VTといった技術だ。
ここで、Lenovo Chief Exective OfficerのSteve Ward氏が壇上に登り、同社の「Rescue and Recovery」を使った、iAMTとVTのデモが実施された。 各端末をiAMTを使ってユーザー管理を行なったり、VTによってWindowsとネットワーク部を分離して起動し、ウイルスに感染した場合でも、Windows部のみを切り離してネットワークのダウンを防ぐ、といったことを行える。後者を実現する「Antidote」と呼ばれる技術は、Lenovoから6カ月以内に出荷されるという。 Intelでは、2007年までにはVTとiAMTが全PCの半分には組み込まれるとしていた。これまでは、技術面とユーセージモデルが示されてきたのみだったが、特定のメーカーから具体的な製品が示されたことで、一気に現実味のある技術となった。
次は、Channel Platformの分野である。ここでは、今後拡大が予想される発展途上国などの新興市場に目を向けた製品開発の現状が紹介された。例として挙げられたのはインドである。 インドでは、農村地帯などにインフォメーションキオスクが開設され、PCに触れたことがないような地方の人でもインターネットにアクセスできるようになりつつあるという。こうした地域には、先進国にはない特殊なニーズが存在する。こうしたニーズに応えるために開発されたのが、「Community PC」と呼ばれるPCだ。今回は、そのリファレンスデザインが示され、来年の初期には出荷される予定になっている。 このCommunity PCは特殊なニーズに応えるための、さまざまな特徴を持っている。電力が安定して供給されない点を解決するために、車のバッテリでも使用できるようになっていたり、高温多湿のため虫が多く、さらに砂塵が舞うような環境における耐久性を上げるため、ダストフリー化がなされている。 さらに、共有使用されることから、たくさんのトランザクションがあり、さまざまなアプリケーションが利用されるため、オペレータはPCをリカバリする機会が増える。この作業を簡便化するために、ボタン1つでリカバリコンソールに入って、特定のシステム構成へ戻すことができる技術も盛り込まれているという。
さらにCommunicationの分野においても、こうした発展途上地域のネットワークインフラを普及させるための手段として、WiMAXの存在がアピールされた。ちなみに、現在WiMAXのトライアルが世界で100以上実施されているが、その3分の2は開発途上国で行なわれているという。 講演では、ヒマラヤ山脈のふもとにある街「Uttaranchal」と、WiMAXを利用したTV電話を行なうデモが実施され、これまでインターネットを使えなかった地域でも、リアルタイムにインターネット接続ができるようになることを示した。 最後はDigital Homeの分野だ。ここでは、ニーズと一口にいっても、よりライフスタイルに合った技術を提供していく必要があるということが特徴だ。 この点については、すでに過去数回のIDFにおいて、いくつかのユーセージモデルが示されてきているが、今回はさらにWiMAXを組み合わせたコンテンツ配信についてのモデルが紹介された。 また、家庭内でコンテンツを活用するデバイスとしては、やはり家電風なデザインであることが求められるとし、Yonahをベースとした小型のEntertainment PCのコンセプトモデルが紹介。前回のIDFで示された「Sleek Concept Entertainment PC」の後継モデルと思われるが、Yonahをベースとし、Wi-Fi、Bluetoothなどの無線デバイスを内蔵。32dB程度の騒音で静音性の高い製品であるという。このシステムについては、明日行なわれるDigital Homeの基調講演で、さらに詳しい情報が提供される可能性もあり期待したい。
□IDF Fall 2005のホームページ(英文) (2005年8月25日) [Reported by 多和田新也]
【PC Watchホームページ】
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