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IDF Japan 2005基調講演レポート エンタープライズ&モバイルの新プラットフォーム
会期:4月7日~8日 IDF Japan2日目の4月8日の基調講演は、エンタープライズ、ソリューション、モバイルの各分野について、各担当者から現在の取り組みや将来について語られた。前日に比べると、ややビジネス寄りの内容となっている。 ●エンタープライズ向けのプラットフォーム
本日最初の講演は、「いつでも、どこでも展開可能なリアルタイム・ビジネスを実現」と名付けられたデジタル・エンタープライズに関するもので、インテル・シニア・フェロー デジタルエンタープライズ事業本部のスティーブン・パウロスキ氏が壇上に登った。 同氏が所属するデジタルエンタープライズ事業部では、ビジネス分野における問題を解決するために活動を行なっている。そして、その実現に向けた方向性として、下記の4つの柱を挙げた。 ・組み込まれたIT:ステータスチェックや自己管理・修復機能、仮想化技術などのIT技術をプラットフォームに組み込む この4つの柱を具体化しリアルタイムビジネスを実現するために、プラットフォーム技術や、製品としてのプラットフォーム、業界標準規格の策定やエコシステムの構築を進めていくとしている。 このうち、プラットフォーム技術については、仮想化技術であるバーチャライゼーション・テクノロジ、リモート管理機能のアクティブ・マネジメント・テクノロジ、セキュリティ機能のLaGrandeなどが該当する。 講演ではバーチャライゼーション・テクノロジのデモとして、MontecitoコアのItanium上で、三つのゲストOSを起動しているようすが示されたほか、アクティブ・マネージメント・テクノロジを使ったシステム復旧のデモが実施されている。 さて、リアルタイムビジネス実現のための2つ目の要素となるプラットフォームは、すでに3月のIDFで発表されたものと同様、5つのセグメントに対するプラットフォームのロードマップが紹介された。 このほか、プラットフォームに絡んだところでは64bitアーキテクチャへの移行や、並列処理が今後も進んでいく点などをアピール。また、リアルタイムビジネス実現にあたっては、FB-DIMMやAdvancedTCAなど業界標準規格の策定が不可欠で、マルチスレッドソフトウェアの開発ツールやインテル・キャピタルなどの同社が進めるエコシステムについても触れられ、同社が進めるソフトウェア開発者向けの教育コースである「ソフトウェア・カレッジ」の日本での開催が決定したと紹介している。 ●デジタル・シティを実現するサービス指向エンタープライズ
ソリューション市場開発事業部・ワールドワイド ストラテジ&プランディングディレクタのトム・ギブス氏による「拡大するデジタル・ワールドが導くビジネスの変革」と名付けられたソリューションに関する講演である。このソリューションに関する内容は、3月の米IDFでも行なわれておらず、日本で初めて講演される内容とのことだ。 まず同氏は「さまざまなジャンルで新しいトレンドが起きており、さまざまなペースで展開している」と述べた。そして、このトレンドを活用してビジネスを伸ばしていくべきで、ソリューションの分野でもさまざまな関わり方をする。ただし課題は多い。例えばグローバルなビジネス環境、複雑なリソース管理、ネットワークの融合など、テクノロジ面で課題を抱えている、エンドユーザーはそのトレンドの変化によってビジネススタイルの変化が強いられており、これらを助けるためにテクノロジの革新を進めなければならないわけだ。 もっとも、このテクノロジの革新について、現在はエンドユーザーも興味を持つ時代であることを、とある実験を例に紹介した。その実験とは、Yahoo!において、現在もっとも人気のあるエンターテイナーは歌手のブリトニー・スピアーズであるとされているのだが、ブリトニー・スピアーズをキーにYahoo!で検索をかけると900万件ヒットする。同様にWi-Fiを検索すると2200万件のヒット。そして次の大きな動きとなるであろうRFIDを検察すると650万件、グリッド・コンピューティングは600万件ヒットする。ブリトニー・スピアーズと同等か、それ以上に興味をもたれているわけだ。 この実験により、これら新しいテクノロジについてエンドユーザーが興味をもっていることは分かる。しかしながら、それぞれのテクノロジを熟知するだけでも時間がかかるわけで、このようなトレンドの変化が大きい社会に適合するソリューションとして「サービス指向エンタープライズ(SOE:Service Oriented Enterprise)」を提唱した。 このSOEはコンシューマに対してはサービスとして提供されるもので、サービス指向のソフトウェア、仮想リソースとしてのハードウェア、自立的なデータ基盤、接続環境に影響されない利用技術、ファイアウォールを越えて利用できるサービスなどによって成り立っている。 サービス指向のテクノロジ/アーキテクチャ/インフラの整備により、エンタープライズから地域自治体・公共機関にいたるまで、すべてネットワーク接続されたデジタル・シティが実現でき、さらにデジタル・シティは、コンピューティングが業務に活用されるので、ユーザーにとっても高い価値をもたらすものであるとしている。
●Yonahに搭載された省電力機能の概要を発表
本日最後の講演は、モビリティ事業本部副社長兼モバイル・プラットフォーム事業本部長のムーリー・エデン氏による「モバイルの時代」と名付けられた講演だ。タイトルどおり、内容はモバイル全般に関する幅広いものである。 まず語られたのは、携帯電話などのハンドヘルドデバイスについてだ。'73年にMotorolaのマーティン・ クーパー氏が行なった携帯電話のデモンストレーションを起点に、ワイヤレスでコミュニケーションを行なえる時代がはじまった。そこから携帯電話が急速に普及していったのは周知のとおりである。 携帯電話のネックとして帯域幅の問題があったが、いわゆる3G携帯電話によって改善され、今後はアプリケーションの要求が高まってきているという。同社ではこのニーズに対する回答として、XScaleベースのハンドヘルドプラットフォームをハイエンドからバリュークラスまでカバーして提供していく。 また、ハンドヘルドデバイスに不可欠のフラッシュメモリについても、3月に発表した90nmプロセスの多値セル型フラッシュ「Sibley」に続き、IDF Japanの会期中には組み込み向けに低コストのフラッシュメモリを発表。これは「P30」と呼ばれるフラッシュメモリで、「Sixmile」のコード名で呼ばれてきたものだ。130nmプロセスで製造される多値セル型のフラッシュで、パッケージや容量のバリエーションが多く、組み込み機器メーカーからの多様なニーズに応えられる製品だとしている。 携帯電話に引き続いてワイヤレス化が進んだのが、Wi-Fiに対応したモバイルPCだ。Centrinoプラットフォーム登場以降、無線LANが急速に普及したが、これによって生まれる新しい無線LANサービスとして、国技館で行なわれている「SumoLiveTV」が紹介された。これは、5月から正式スタートの予定になっているそうだ。
そのモバイルPCのプラットフォームとして、今年リリースされたSonomaに続き、来年登場予定のNapaの存在がすでにオープンになっている。NapaはCPUのYonah、チップセットのCalistoga、無線LANカードのGolanをまとめたプラットフォームである。 このYonahはモバイル向けCPUとしてはじめてのデュアルコア製品となるが、今回の講演で、本CPUに組み込まれた「Dynamic Power Coordination」と呼ばれる省電力機能の具体的な動作が公開された。これは従来のPentiumMに搭載されていたEnhanced Speed Step Technologyに変わる、デュアルコアに対応させた省電力機能である。この仕組みを簡単に紹介すると、Yonah全体、コア1、コア2の3つのステートを持ち、各コアのステートはその動作状況に応じて個別に変化する。ただし、VRMが1系統しかないため、電源供給が正しく行なわれるようコア1/2の負荷が高いほうのステートに合わせて、Yonah全体のステートが決定されるのである。 このほか、集積密度の向上によるプラットフォームの小型化についても述べられ、初代CentrinoのCarmelプラットフォームに対して、Napaプラットフォームでは3分の1程度サイズを抑制できる。 さて、同氏は講演の最後にカバレッジの必要性を訴えた。要するに、ワイヤレス接続が行なえるエリアを拡大することこそが重要で、これは帯域幅よりも優先されるのである。現在、PANエリアではBluetooth、LANエリアではWi-Fiなどが利用されており、さらに都市部のエリア向けにWiMAX、さらに広いエリアに携帯電話のワイヤレス技術があり、これらを共存させて、いつでもどこでも最適な通信環境を入手できるインフラを整えることが重要だとしている。 □IDF Japan 2005のホームページ (2005年4月9日) [Reported by 多和田新也]
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