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幽霊探知機能付きUSBメモリを試す株式会社ソリッドアライアンスという会社は、USBフラッシュメモリが主力なのだが、普通の製品だけではなく、ウケをねらったような製品を得意としている。 たとえば、アヒルの格好をした「i-Duck」、すしの「SushiDisk」、シューマイなどの「FoodDisk」という具合だ。言い換えれば、ワルノリをする会社の1つだ。 そのソリッドアライアンスの新製品が、「ゴーストレーダーUSBメモリー」だ。こんどは幽霊探知機能を持ったUSBフラッシュメモリだという。 発表が4月1日なので、てっきりエイプリルフールだと思ったら、なんと本当に売るという。というわけで、さっそく購入してみた。容量は一番小さな128MBで、ボディカラーは深夜でも目立たない黒だ。価格は、送料込みで10,300円だった。 ●とても大きな本体と、おまけのUSBフラッシュメモリ 金曜日の昼に発注して、土曜日の昼前に到着した。 すぐに使おうとしたところ、なんとパッケージの裏に「この製品は、深夜0時に電源を入れてスタートさせて下さい」と書いてある。あとで、反応が無かったりしたときに「ああ、それは0時に電源を入れなかったからですよ」とか言われるのがイヤなので、深夜まで待つことにする。
それにしても本体は大きい。写真から想像していたのはキーホルダーぐらいの大きさだったのだが、手のひらでにぎれるぐらいの大きさだ。 本体はプラスチックで、質感は、かなり安っぽい。大きさこそ違うが、ガチャガチャで出てくるLEDゲームぐらいの質感だ。 ちなみにUSBフラッシュメモリは、本体の背面に小型のユニットがついているだけで、幽霊探知機能とはまったく関係がない。見つけた幽霊のログをフラッシュメモリに記録する機能とか期待していたので、ちょっとガッカリだ。
しかも大きな本体の真ん中についていて、コネクタもひっこんでいる。付属のUSBケーブルを使わないと、使用することもできない。ここまでして、USBフラッシュメモリにこだわらなくてもという気もする。まぁ、価格の維持とか、PC誌でも取り扱ってくれるとか、大人の事情があるのだろう。 これから購入する人は、128MBの製品を購入することをお勧めする。機能的には差がないし、ちゃんとUSBフラッシュメモリとして使いたいなら、別に買ったほうが絶対に便利だ。 ●2つのセンサーでゴーストを探知 0時を待つ間に取扱説明書を読む。 「通常、お化けが出現するときに発生するといわれている、磁場の乱れ、身体の変化やその他の異常現象を科学的に検出することにより、未知エネルギーとしての存在を検出することができるかもしれません。また、搭載している特殊センサーと検出アルゴリズムの開発にはバーチャル機関であるGRXの協力により実現しました」とある。ただし、GRXには「架空の組織であり、実在するものではありません」と注がついている。 本体についているセンサーは「微弱な磁界の変化を捉える特殊センサー」と「微妙な身体変化を測定するセンサー」の2つが主で、ほかに温度センサーや光センサーも載っているようだ。 ちなみに「磁界センサーには磁石が使用されておりますので、磁気記録メディアなどに近づけないようご注意ください」とある。身体用センサーは、体抵抗値を計っているようだ。 磁界センサー、温度センサー、光センサーは単独で動作させて、パネルに表示させるモードもついているが、あまり説明がないことと、表示が地味なことから、どう遊んでいいのか困ってしまう。
また、「この製品には、特殊なバイオクロックを内蔵しており、使用者の月齢サイクルに同期することで、より高いバイオフィードバックが得られるようになっています」とあり、USBフラッシュメモリに入っている月齢表をみて、同じ月齢の日にリセットしてください」とあるので、ゲッ、すぐに使えないじゃんと思うと「すぐにご使用になりたい場合や、複数人数で使用する場合は、月齢とは関係なく午前0時にリセット起動してください」と、逃げ道も用意されている。 なんというか、遊びのバックグラウンドのためのフィクションを組み立てたいんだけど、説明責任もあるし、儀式性を持たせたんだけど、手軽にもしたいし、と迷っている感じが伝わってくる。1万円を投じているんだから、もうちょっとうまくだましてほしい。 付属のボタン電池を入れ、パネルをネジで留めて、夜まで待機することにした。 ●街頭に出歩くも、反応はゼロ 0時が近くなった。どうせなら厳密にやりたいので、電話を手元に置き、117の時報に合わせて電源スイッチを入れる。 使い方は、電源スイッチを入れる、身体用のセンサーを指で覆う、本体は水平に保持する、という簡単なものだ。 電源を入れると、ピッ、ピッ、と小さな音が鳴り、パネルの四隅の赤いLEDが点滅している。
電源を入れたとたんに、巨大な反応が出たらどうしよう、とドキドキしていたが、とりあえず大丈夫だった。 とりあえず、家の中を歩き回る。無反応。 次に、いろいろなモノに近づけて反応を見る。人体、生肉、野菜、鉢植え、動作中の電子レンジ、包丁、焼串、パソコン、無線LANアンテナ、聖書、仏典、怪談集、背徳的な内容の本、背徳的な内容のDVD、いずれも無反応。 自宅を出て、遠目のコンビニまで出歩く。 繁華街の方向へ向かうと、まだ人通りがあったが、無反応。みんな幽霊じゃなくて、普通の人間らしい。 交通事故の多い街道の交差点に行ってみたが、ここでも無反応だった。もちろん、コンビニの中でも反応はなかった。ただ、店内で出して見ているのは、かなり恥ずかしい。 この界隈は寺町で墓地もあるが、無反応。お亡くなりになった方は安らかに眠っているようで、なによりだ。 ●ついに反応が! 自宅にもどって、もう一度、取扱説明書を読む。 よくあるご質問に「全然表示パターンが出てこないのですが」という項目がある。回答は、「非常に特殊な環境でのみパターンが表示されます。従って、いつでもどこでもパターンが出る訳ではありません。引き続き、根気よくサーチしてみてください」とある。 電源を入れて、15分ぐらい経つと、オートで電源オフになる。右手で本を読みながら、ずっと左手に持っていて、ときどき電源を入れ直す。ひたすら反応を待っているところが、魚釣りでもしているようだ。 しばらく、そうやっていると、初めて反応があった。パネルの上の方のLED4つが点灯し、そばのLEDが1つ場所を変えながら点滅している。1分とたたないうちに、通常のパターンにもどってしまった。 取扱説明書を見ると、「影響範囲:狭、移動特性:有、身体影響:負」のパターンだという。一番最初に書かれているので、一番出やすい反応なのだろう。 つまり、ごく小さなエネルギー体が、とおりすぎ、それは身体には悪影響があるかもしれない、というわけだ。 あんまり反応がないのもつまらないが、反応があればあったで、ちょっと怖い。しかも自宅内だし。 とりあえず仏前に線香を供え、不動真言を3回唱えて寝ることにした。 ●1万円のジョークグッズとしてとらえるべき製品 まだ1日しか使っていないが、この製品の感想をまとめていえば、次のようになる。 ・USBフラッシュメモリはオマケと思った方がいい ・センサーが反応することは少ない。パーティグッズとして使おうと思うと、白ける可能性が高い ・たまにしか反応しないので、反応が出たら出たで怖い。暗示に弱い人などには向かない というわけで、この手のモノが好きで、そういう場所に行くのも好き、という人や、日常性の裏に別の世界を見たい、というような人にお勧めしたい。複数で楽しむというよりは、ときどきポケットから出してセンサーの反応を楽しむ、という使い方の方が向いている。 個人的にはUSBフラッシュメモリをはずして、単体で3,000円ぐらいで売ってくれるとありがたい。冗談グッズとしては、それぐらいの価値という印象だ。1万円以上を投じるには、エンターテインメント性が低い。 本体以外も、ツメの甘さが目立って、ソノ気になかなかなれない。たとえば、取扱説明書に記載されている「ゴーストレーダー専用HP」は、何も始まっていない。せめて製品情報にリダイレクトしとけよと思って醒めてしまう(注:4月4日より公開された)。 また、リリースでは、「香港の電脳集団AKKORD Internationalが開発担当した」とあるが、本体のパッケージや取扱説明書には、その名前は出てこない。購入者にはすべての情報を提供すべきで、フィクショナルな世界への導入と、実際の世界での製品説明の切り分けがうまくできていない感じだ。ホラー系のゲームソフトのパッケージなどを参考にするといいと思う。 機能面での改良のアイデアとしては、身体センサーの感度を上げて「個人のオーラが判断できます」とか、電波も受信できるようにして磁気センサーとからめ「空間の霊的状況が判断できます」ぐらいは、すぐにできそうなので、今後の発展を望みたい。 いずれにせよ、購入者を選ぶ製品であることは間違いない。 □ソリッドアライアンスのホームページ (2005年4月4日) [Reported by date@impress.co.jp]
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