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IDF Spring 2005レポート

Pat Gelsinger副社長基調講演レポート
~新ロードマップとコードネーム多数登場

3月1日(現地時間) 開催

●新部門着任後、初の基調講演

デュアルコアプロセッサを紹介するPat Gelsinger副社長

 IDF Spring 2005初日の3月1日(現地時間)、Pat Gelsinger副社長兼デジタルエンタープライズ事業部長の基調講演が行なわれた。

 Gelsinger副社長は、今年1月までは、IntelのCTO(Chief Technology Officer)としてIntelの研究開発を担当していた。しかし、今年2月の組織変更でデジタルエンタープライズ事業部の事業部長に就任し、ビジネスの最前線に戻ってきた。

 デジタルエンタープライズ事業部は、企業向けのデスクトップから、サーバーまでを扱う事業部で、プロセッサとしては、Pentium 4、XeonなどのIA-32プロセッサとItanium(IA-64)が含まれる。従来のエンタープライズ部門とデスクトップ事業部のうちデジタルオフィス関連を吸収した事業部である。

 Gelsinger副社長のスピーチのテーマは、「Enabling Real-Time Business Anytime, Anywhere」。最初に提示されたのは“Digital Enterprize”。事業部の名称そのままではあり、Intelが提案する企業のスタイルでもある。企業がIT技術を取り入れ、Digital Enterpriseとなることで、ビジネスを成長させ、リスクを軽減、コストを低下させることが可能になるという。その要素として、同氏は、4つのテーマを掲げた。 それは、“Embedded IT”(エンベデッドIT)、“Pervasive Connectivity”(パーベーシブ・コネクティビティ)、“Seamless Collaboration”(シームレスコラボレーション)、“Information Assistance”(インフォメーション・アシスタンス)、である。

 “Embedded IT”とは、さまざまなものに組み込まれるCPUにより、それらをIT技術で管理すること。組み込み系CPUあるいは、RFIDのようなものを使うことで、管理やメンテナンスが簡単になり、所有コスト(TCO)を下げることが可能になるという。

 “Pervasive Connectivity”は、無線LANやWiMAXなどにより、常時接続性を提供することであり、「Anytime, Anywhere」を実現するための基本技術でもある。単なる常時接続ではなく、ローミングなどの機能を導入することでシームレスな接続が可能になり、さまざまなプラットフォームをサポートすることで、機器に依存しないコミュニケーションが可能となる。そういう接続をPervasive Connectionと呼ぶ。

 “Seamless Collaboration”は、コンピュータを介した共同作業で、ある意味、Digital Enterpriseの根幹部分である。つまり、企業内での仕事はある意味すべてがCollaboration、共同作業であり、これをコンピュータを介しての作業にすることで、企業はDigital Enterpriseとなるわけだ。しかし、そこには、セキュリティの問題、プラットフォームの問題などがまだある。共同作業はなにも社内だけに限ったことではなく、最近では企業の枠をこえて行なわれる。そのような場合には、どうやって社外とのコミュニケーションでセキュリティを維持するのか、社外と社外で採用しているプラットフォームが違っている場合などの問題があり、これらを解決したものがSeamless Collaborationなのである。

 “Infomation Assistance”は、増大していく情報から必要なものを取り出したり、情報から行なう人間の判断を補助するもの。具体的には、コンピュータを使った検索や分析、情報の自動収集などに加え、現場で簡単に実現できる自動処理、正しい方向に拡張できるインフラストラクチャなどがある。情報を単に保存するだけでなく、必要なところに配布することが組織の管理と成長に必要なことだとGelsinger副社長は述べる。

 こうしたDigital Enterpriseを実現するためにIntelは、さまざまな技術を提供する。

 1つは、Intelのプラットフォーム技術、これはプロセッサやチップセットといったコンピュータの基本技術である。さらにIntelはエンタープライズ技術として、クライアントやサーバー、ストレージ、コミニュケーション技術を提供する。これらの上に業界標準やエコシステムが乗り、それを使って「Real-Time Business」が実現できるのだという。

●プラットフォームにもコードネーム

 そしてGelsinger副社長は、Intelが今後提供するプラットフォーム技術について語り始める。今回のIDFでは、プラットフォームがテーマであり、Intelは、プロセッサを単独の商品として提示するのではなく、プラットフォームという形で提示するという方向性が打ち出されている。

 このため、従来は、CPU名を前面に出したロードマップだったのに対し、今回は、プラットフォームを単位としたロードマップが提示された。このため、各プラットフォームにはすべてコードネームが付けられている。

 つまり、今後は、CPU、チップセットのコードネームのほかにプラットフォームのコードネームも登場することになるわけだ。もっとも、モバイルでは、いままでもSonomaやNapaといったプラットフォームコードネームが使われていたのでそれと同じではある。ただ、ただでさえ多いコードネームがまた増えるのも事実。

 一般の人にもコードネームは関係ないとはいえ、たとえば、Pentium 4のPrescottコアとNorthwoodコアを区別する必要がある場合にはコードネームは欠かせない。ノートパソコンを語るときでさえ、プラットフォーム名が使われることを考えると、デスクトップマシンもプラットフォームコードネームで区別するといったことが行なわれることは十分予想できる。

 Intelがプラットフォームと言い出した背景には、Centrinoの成功が挙げられる。プロセッサ名ではなくユーザーに対してはCentrinoというプラットフォームブランドを提案することで、さまざまな名称、型番を持つOEMメーカーのモバイル製品の中で、Intelのブランドを確立できたからである。

 Gelsinger副社長がロードマップを示したプラットフォームカテゴリは、「Enterprise Client」、「2 Socket 64bit Xeon」、「4 Socket 64bit Xeon」、「2 Socket Itanium」、「≧4 Socket Itanium」の5つだ。

Enterprise Client
2 Socket 64bit Xeon 4 Socket 64bit Xeon
2 Socket Itanium ≧4 Socket Itanium

 従来のDP、MPといった区別は、Dual Coreになると意味が変わってしまうため、プラットフォームでは、ソケットの数(つまり装着可能なCPUパッケージ数)で区別することになった。なお、“≧4 Socket”は、Intelの資料の表記から取ったが、「4つ以上」のSocketという意味である。

 Enterprise Client Platformsは、2005年には、Lyndonプラットフォームが登場し、2006年には、Averillプラットフォームに切り替わる。Lyndonでは、945Gチップセットが採用され、IAMT、VTへの対応が行なわれる。さらにAverillでは、IAMTがアップデートされIAMT2となり、LaGrande(LT)にも対応する。2006年は、いわゆるLonghorn Time Frameであり、それにあわせてLTを導入するわけだ。このAverillには、Broadwaterチップセットが対応する予定。以下、ほかのプラットフォームについては表を参照されたい。

Intelのプラットフォームロードマップ
Enterprise Client時期20052006~
名称LyndonAverill
CPUPentium 4Pentium 4
Pentium D(Smithfield)
チップセット945G-
機能HT,XD,EM64T,EIST,IAMT,VT2005年の機能+IAMT2,LT
2 Socket 64-bit Xeon時期20052006~
名称IrwindaleBensley、Glidewell
CPU64bit Xeon 2MDempsey
チップセットE7520/E7525Blackford,Greencreek
機能HT,EM64T,DBS2005年の機能+VT,IAMT,I/OAT
4 Socket 64-bit Xeon時期2005~20062007~
名称TrulandReidland
CPU64bit Xeon MP/Paxville/Tulsa/Whilefield
チップセットE8500-
機能HT,EM64T,DBS-
2 Socket Itanium時期2005~20062007~
名称--
CPUMillington/DP MontvaleDimona
チップセット8870,Enabled-
機能MT,Foxton,Pellston,VT-
≧4 Socket Itanium時期2005~20062007~
名称-Richford
CPUMontecito/MontvaleTukwila/Poulson
チップセット8870,Enabled-
機能MT,Foxton,Pellston,VT-

●デュアルコアCPUの実物を公開

 Gelsinger副社長は、今回登場した新しいデュアルコアのチップやNapaプラットフォームマシンも見せた。

新登場のDual Coreプロセッサとプロセスルール。図中左上がMontecito。以後左から右、上から下の順で、Dempsey、Smithfield、Presler、Yonahとなる

Smithfieldは、1CPU パッケージに1つのダイ、2つのNetburst系コアが入るもの Dempseyは、2つのダイからなるXeon系デュアルコア Preslerも、2つのダイから構成される。ただしこちらはデスクトップ用でPentium D(Smithfield)の後継となる
モバイル系デュアルコアのYonah。Banias/Dothanの後継となるプロセッサ IA-64のデュアルコアであるMontecito

 そのほか、デュアルコアを装備したマシンでのVT技術などのデモが行なわれた。

 「Vanderpool Technology」と呼ばれていた技術は、「Virturaization Technology」が正式名称となった。この技術のメリットとして、ウィルスが発生した場合に、仮想化してあれば、汚染された仮想環境だけを切り離せばよく、マシン全体を切り離す必要がないということが主張された。VT技術はそれぞれ独立した実行環境を提供し、HDDなども仮想化されているため、ウィルスなどの影響が他の仮想マシンに及ぶことはないのだ。

●MicrosoftのJim Allchin副社長登場

 基調講演の最後に登場したのは、Intelの「重要なパートナー」であるMicrosoftのJim Allchin副社長である。64bit版のWindowsのリリースが近いこともあり、ItaniumやXeonとWindows Server 2003の組合せがSAPのベンチマークで世界一になったことなどを報告、また、ライセンスが、CPUコアからCPUパッケージに変更され、より利用しやすくなったことなども訴えた。

 Intelの予想では、来年に出荷されるほとんどのプロセッサが64bit機能を持つものとなり、サーバーは100%が、企業向けクライアントは50%が年内に64bit対応になる。足踏み状態にあったEM64Tもx64版Windowsの登場で一気に普及するようだ。

ゲストにMicrosoft社副社長のJim Allchin氏が登場 今後は64bit CPUの出荷比率を増やしていく、Xeon系では、年内に100%にしたい考え

 Gelsinger副社長は、VTの取り込みやマルチコアの活用、そして64bitへの移行を呼びかけ、講演を終えた。

 企業向け分野は、マルチコア化、64bit対応を優先し、年内にも出荷をその方向に持っていくというのがデジタルエンタープライズ事業部の方向のようだ。また、以前に比べるとItaniumの影が薄くなったと感じた。IA-32の父ともいわれるGelsinger副社長の基調講演だったせいもあるが、IA-32の64bit化もItaniumの退潮に拍車をかけている。

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spring2005/systems/

(2005年3月3日)

[Reported by 塩田紳二]

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