ソニーは1月5日、VAIOシリーズのデスクトップPCやノートPCの春モデルを一挙に発表した。今回は、その春モデルの中でも注目の新シリーズ「VAIO type F」をレビューすることにしたい。 VAIO type Fは、15.4型ワイド液晶を搭載した2スピンドルノートPCで、主にデスクトップPCの代替として使われることを前提とした製品だが、従来のこのクラスの製品に比べて、大幅な軽量化と薄型化を実現したことが特徴である。 ●最薄部25.4mmのスリムボディを実現 VAIO type Fのボディは新しく設計されたもので、シンプルなフォルムが美しい。ボディカラーも、パールホワイトとブラックを基調にしたもので、万人受けしそうだ。ボディサイズは364×264.5×25.4~36.4mmで、最薄部はわずか25.4mm(ジャスト1インチ)と、非常にスリム。重さも約2.9kg(FS70B以外は約2.85kg)と、このクラスのノートPCとしてはかなり軽い。携帯して持ち歩くための製品ではないが、部屋から部屋への移動などの際も、軽いにこしたことはない。 VAIO type Fは搭載CPUや光学ドライブなどの仕様の違いによって、全部で4つのモデルが用意されている。今回は、最上位となるVGN-FS70B(以下FS70B、店頭予想価格24万円前後)を試用した。なお、試用したのは、試作機なので、製品版とは細部が異なる可能性もある。
最上位モデルのFS70Bでは、CPUとしてFSB 533MHzのPentium M 740を搭載している。従来のPentium MのFSBは全て400MHzであり、FSB 533MHzのPentium Mは、1月19日にIntelから発表されたばかりの新製品だ(Intelの正式発表前に発表されたことになる)。 コア自体は、従来と同じ90nmプロセスルールで製造されるDothanコアだが、FSBが400MHzから533MHzに上がったことでFSB帯域幅が広がり、パフォーマンス向上が見込める。 IntelはCPUと同時に、FSB 533MHz対応のIntel 915PM/GMチップセットを発表したが、FS70Bでは、グラフィックス機能非統合のIntel 915PMが採用されている(それ以外のモデルでは、グラフィックス統合型のIntel 915GMを採用)。 Intel 915PM/GMは、DDR2/DDRのデュアルチャネルアクセスに対応していることが特徴だ。従来のIntel 855PM/GMEはシングルチャネルアクセスしか対応していないため、メモリ帯域幅が狭かったが、Intel 915PM/GMを採用したVAIO type Fでは、メモリ帯域幅も従来の2倍に広がっている。 なお、Intel 915PM/GM自体はDDR2もサポートしているが、VAIO type Fでは、従来通りPC2700のDDRメモリが採用されている。 メモリスロットとして、SO-DIMMスロットを2基装備しているが、FS70BとFS50Bでは、標準で256MB PC2700 SO-DIMMが2枚装着されているので(合計512MB)、空きスロットはない。しかし、512MB実装されていれば、とりあえずは満足できるだろう。当然、256MB×2という構成になっているのは、デュアルチャネルアクセスを有効にするためだ。 ●1,680×1,050ドット表示が可能な15.4型ワイド液晶を搭載
FS70Bでは、液晶ディスプレイとして、15.4型ワイド液晶パネル(1,680×1,050ドット)を採用していることも魅力だ。なお、FS70B以外のVAIO Type Fでは、サイズは同じ15.4型ワイドだが、解像度は1,280×800ドットとなっている。 FS70Bの場合、一般的なXGA液晶(1,024×768ドット)に比べて、一度に表示できる情報量は約2.24倍にもなる。解像度が高いので、複数のアプリケーションを同時に立ち上げても、快適に作業が可能だ。 また、この液晶パネルはクリアブラック液晶と呼ばれるもので、いわゆるツルピカ液晶の一種だが、多層ARコートが表面に施されており、映り込みが抑えられている。輝度やコントラストも高く、DVD-Videoの映像なども鮮明に表示される。 また、ビデオチップとして、NVIDIAのGeForce Go 6200 with TurboCache(以下GeForce Go 6200 with TC)を搭載する。下位モデルは統合型チップセットを採用しているため、ビデオチップは非搭載。 GeForce Go 6200 with TCは、メインメモリの一部をビデオメモリとして動的に利用するTuboCacheテクノロジーの採用によって、ビデオメモリの容量を減らせるため、低コストで十分な性能を実現できることが特徴だ。DirectX 9に完全対応しており、統合型チップセットに比べてはるかに高い描画性能を誇る。ゲームをやりたいという人にも十分応えられるだろう。 ●DVD+R DL対応のDVDスーパーマルチドライブを搭載最下位モデルのFS20以外のVAIO type Fでは、光学ドライブとして、DVD+R DL対応のDVDスーパーマルチドライブを搭載している。全ての記録型DVDメディアに対応し、1枚あたり8.5GBの容量を持つDVD+R DLもサポートしている。DVD±Rメディアには最大8倍速書き込みが可能で、性能的にも不満はない。 HDD容量は全モデルとも80GBと大きく、余裕がある。なお、試用機では日立GST製DK23FA-80(HTS428080F9AT00)が搭載されていた。HDDはパック式ではないが、底面のHDDベイカバーを開けるだけで、比較的簡単に交換できるようになっている(もちろん、ユーザーによるHDD交換は保証外の行為となるが)。
本体のサイズに余裕があるため、キーボードもゆったりしており、使いやすい。キーピッチは約19mmで、キーストロークは約2.5mmである。キー配列も標準的で、キーピッチも均等なので、ミスタイプもしにくい。また、エンターキーやバックスペースキーが大きいのも嬉しい。ポインティングデバイスには、インテリジェントタッチパッドが採用されている。パッドのサイズも大きく、操作性も良好だ。 また、キーボード右上には、2つのショートカットボタンが用意されており、アプリケーションの起動などの動作を割り当てることが可能だ。キーボード上部にはステレオスピーカーも内蔵されている。
VAIO type Fは、拡張性も高い。本体に、USB 2.0×3、IEEE 1394(4ピン)、外部ディスプレイ出力、マイク入力、ヘッドホン出力を装備しているほか、オプションのポートリプリケータを装着することで、USB 2.0ポートが2基追加されるほか、プリンタポートも利用できるようになる。 カードスロットとしては、PCカードスロット(Type2×1)とメモリースティックスロットを装備している。メモリースティックスロットは、標準サイズだけでなく、携帯電話などで使われているより小型のメモリースティック デュオもそのまま差し込むことが可能だ。 PCカードスロットのフタは内側に倒れ込むようになっており、紛失する恐れはない。メモリースティックスロットにも上下スライドタイプのフタが用意されている。また、SDメモリーカード/MMC/スマートメディア対応のメモリカードアダプターが付属するのも嬉しい。 Ethernetと56kbps対応モデム機能に加えて、IEEE 802.11b/g対応の無線LAN機能を装備している。本体手前側に、ワイヤレススイッチやワイヤレスインジケータが用意されているのも便利だ。 なお、FS70B以外のモデルについては、USB接続の外付けFDDが標準で付属する。
標準で付属するバッテリパック(S)は11.1V、4,400mAhの6セル仕様で、公称約2時間の連続動作が可能とされている。実際のテスト結果については後述するが、あまり長いとはいえない。デュアルチャネル対応のIntel 915PMや単体ビデオチップを搭載しているため、消費電力が大きいのであろう。ちなみに、ビデオチップを搭載していないFS50Bでは、公称駆動時間は約3.5時間に伸びている。 しかし、VAIO type Fは、基本的に机の上に置いて使うマシンであり、モバイル用途を前提としているわけではないので、バッテリ駆動時間が短くてもそれほど気にはならない。なお、オプションのバッテリパック(L)を利用することで、駆動時間は1.5倍の約3時間に延びる。 ACアダプタのサイズも大きめだが、こちらも製品の性格から考えて、特に問題はないと思われる。
参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoの「MobileMark 2002」、「SYSmark 2002」、Futuremarkの「3DMark2001 SE」および「3DMark03」、id softwareの「Quake III Arena」を利用した。 MobileMark 2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。 また、3DMark2001 SEやQuake III Arenaは、3D描画性能を計測するベンチマークだ。MobileMark 2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、電源プロパティの設定を「常にオン」で計測した。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用にPentium M 1.50GHzを搭載したVAIO type S VGN-S70BとPentium M 715を搭載したQosmio E10/1KLDEWの結果も掲載してある。 FS70BのMoblieMark 2002のPerformance ratingは216で、ほかの2機種に比べると大幅に高くなっている。VGN-S70Bのスコアが低いのは、L2キャッシュサイズがDothanコアのPentium Mの半分しかないBaniasコアを採用しているためと考えられるが、同じDothanコアのPentium Mを採用しているQosimio E10/1KLDEWに比べても、スコアは約26%向上している。CPUクロックの向上率は約15%であり、クロック向上率よりもスコアが伸びていることになる。これは、FSBが400MHzから533MHzに高速化されたことと、デュアルチャネル対応の新チップセット「Intel 915PM」が効いているのであろう。 バッテリ駆動時間を示すBattery life ratingの値は、FS70Bが114(1時間54分)であり、ほかの2機種に比べるとやや見劣りする(公称バッテリ駆動時間が約2時間なので、ほぼ公称通りだが)。しかし、前述したように、本製品の性格を考えると、バッテリ駆動時間の短さは大きな欠点とはならない。 SYSMark 2002のスコアも優秀である。MobileMark 2002のPerformance ratingの結果ほど差は開いていないが、十分なパフォーマンスといえる。 3DMark2001 SEや3DMark03、Quake III Arenaといった3D系ベンチマークの結果も、かなり高いスコアを記録している。GeForce Go 6200 with TCは、GeForce 6シリーズの中では下位に位置する製品だが、1世代前のGeForce FX Go5200や、DirectX 8対応のMOBILITY RADEON 9200に比べると性能的には有利である。高性能ビデオカードを搭載したデスクトップPCにはさすがにかなわないが、最近の3Dゲームも、解像度やオプションをある程度落とせば十分遊べるだろう。 【VAIO type F VGN-FS70Bベンチマーク結果】
VAIO type Fは、ワイド液晶とスリムなボディが魅力のノートPCであり、製品としての完成度も高い。持ち歩くための製品ではないが、デスクトップPC代わりに家庭などで使うにはぴったりだ。 1,680×1,050ドット液晶とDVD+R DL対応スーパーマルチドライブを搭載し、512MBメモリ、80GB HDDを装備した最上位モデルのFS70Bでも実勢価格は24万円前後なので、買い得感も高い。TV視聴/録画機能は装備していないが、PCとしての基本性能は高いので、ノートPCでTVを見るつもりがないという人には特にお勧めしたい。 □関連記事 (2005年1月20日)
[Reported by 石井英男]
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