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Intel クレイグ・バレットCEO記者会見
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クレイグ・バレットCEO |
1月6日(現地時間) 開催
基調講演終了後には、報道陣からの質問に答える記者会見が開催されたので、その模様をお伝えしよう。
●コンシューマユーザーに新しい選択肢を提供してきたIntelの3年間
Q:Intelのこの3年間についてどう思いますか?
バレット氏:Intelがこの3年間で大きな変貌を遂げたかと問われているのであれば、そうではないと思います。弊社の製品計画は3年計画に基づいて作られており、この3年間はほぼそれにそった製品をリリースし続けてきました。私は数年前にもこのCESで講演しましたが、その時にも家電とPCの融合についてお話ししましたが、皆さんそうしたことはだいぶ先だと考えておられたと思いますが、実際にはかなりのスピードで実現しつつあります。
我々は、そうした状況に対応するため、数年前にデジタルホームの戦略を打ち立て、それを着々と実行してきました。今後も、コンシューマユーザーに対して、よりよい使い勝手、高い処理能力、高品質なビデオ、広帯域なブロードバンドといった技術を顧客に提供していきたいと考えています。
Q:日本や韓国に比べると遅れていると言われる米国でのブロードバンドの普及度合いについて教えてください。
バレット氏:以前に比べればだいぶ前進したと考えていますが、それでもやや厳しい見方をする必要があるでしょう。一言でブロードバンドといってもその実体には大きな違いがあります。例えば、東京では24Mbpsや48Mbpsといった高速な帯域幅をサポートしたDSLが普及していますが、米国のDSLは残念ながらそうではありません。
Q:WiMAXの進捗状況について教えてください。
バレット氏:かなりよい状況だと思います。30~40にのぼる開発アナウンスがすでに行なわれており、プロトタイプも続々と登場しています。最初のシリコンもすでに出荷が開始されており、機器ベンダの開発を促しています。2005年~2006年頃には実際の製品が登場してくることになるのではないでしょうか。
●家電と共存していくPCは依然として強力な製品であり続ける
Q:あなたの基調講演ではHDコンテンツについて盛んに触れていました。その配信方法についてはどうでしょう? 家電業界は、HD DVDやBlu-rayといったメディアでの覇権争いを相変わらず続けていますが、IT業界はブロードバンド配信といった新しい配信方法を模索しています。どの方式が、コンシューマユーザーにとってよい選択だと考えていますか?
バレット氏:業界はこれまでに、さまざまなメディアフォーマットを作ってきたという歴史があります。そして、実際の競争の中で、スタンダードとなるものを作ってきたのです。現在業界が必要としているのは、コンテンツをどのように家庭にもたらすのかということです。それは、物理的なメディアかもしれませんし、光ファイバーや無線のようなオンラインという形かもしれませんが、重要なことは互換性です。
ノートブックPCで起きたことを例に考えてみましょう。すでにノートPCには、無線LAN、Bluetoothなどの無線技術が利用されていますが、今後はUWB、WiMAX、3Gとさまざまな無線技術が採用されていくことになるのでしょう。その時に重要になるのは、ソフトウェアによる無線機能の実現です。ソフトウェアがプロトコルを関知し、それにあった無線を自動で選択する。そうした機能を実現し、ユーザーが自分の使い方にあったものを使えるということが重要なのです。
コンテンツの配信も同じことです。重要なことはユーザーがコンテンツを楽しめることです。確かに市場では複数の規格が併存していますが、それを決定するのは市場です。ある規格は生き残るでしょうし、そうではない規格は消えていくでしょう。
Q:中国市場におけるデジタルホームの戦略はどうですか?
バレット氏:中国では、すでにいくつかの企業がデジタルホームの提案を行なっていますが、あるベンダは独自の規格を採用しているし、別のベンダは標準規格を採用しているという状況だと思います。弊社としては、DLNA(Digital Living Network Allaiance)という標準規格を業界の他のベンダとともに策定しており、互換性を確保するという観点から重要な取り組みだと考えています。先ほど話題になったリムーバブルメディアの規格もそうですが、標準規格は技術の普及にとって非常に重要な取り組みです。ぜひ、中国のベンダの皆様にもDLNAの取り組みに参加して頂きたいと思っています。
Q:PCは家電の機能を取り込んでいくことが可能でしょうか?
バレット氏:ノートPCを見てください。すでに皆さんがお持ちのノートPCには、もともと通信の技術だったワイヤレスの機能が内蔵されていますよね。今後PCに、家電が持つ機能を搭載し、より便利になっていくということは当然起きてくるのではないでしょうか。
Q:そうした、PCと家電が統合されたような時代でも、PCは依然として強力な製品であり続けると思いますか?
バレット氏:私はそう考えています。家庭の中は、何も家電でなければならないという縛りはありません。現在は、ある家電ベンダの製品ばっかりあったという家庭でも、今ではPCはDell、携帯電話はNOKIA、テレビはSamsungというようにマルチベンダになっていることが当たり前になってきている。そうした時代には、相互接続性が何よりも重要になってきます。だから、我々はDLNAに取り組んでいて、どうしたら互換性を実現し、かつユーザーが楽しめる物になるのかを常に考えています。大事なことは、家電とPCは競合する物ではありません、お互いに補完しあうものなのです。
●マルチコアへの取り組みを業界に訴えていく必要性
Q:汎用プロセッサにどう思いますか? 汎用プロセッサが家電で中心的な位置を占める日はくるでしょうか? それとも、これまで通り専用プロセッサの時代が続くと思いますか?
バレット氏:おそらく、両方の組み合わせになるでしょう。PCの世界では標準に基づきアプリケーションなどを作っていきますが、家電の世界ではそうではありません。ベンダ側の要求に応じて作ることになりますので、それに応じて汎用であったり、専用であったり、両方の組み合わせになっていくでしょう。
Q:Intelはシングルコアからマルチコアへの移行を進めている。ソフトウェアの対応が鍵だと思うがどう思いますか?
バレット氏:いつでもアーキテクチャの移行には時間がかかるものです。OSももちろんそうですし、アプリケーションの移行はまさにチャレンジだと言っていいでしょう。しかし、我々はそれに段階的な移行を促してきました。例えば、Pentium 4プロセッサではHTテクノロジという仮想的なデュアルコアを導入してきましたし、サーバーやワークステーションではすでにマルチコア環境を実現しています。
しかし、最も注意しなければいけないことは、どのようにしてアプリケーションにマルチコア環境で最大の性能を発揮するように最適化していくのかという問題です。この問題に関しては我々も最大限の注意を払っていく必要があると考えています。Intelでは、OSベンダ、コンテンツプロバイダ、ソフトウェアベンダ、ハードウェア、ゲーム開発者、そしてハイエンドのユーザーなどに積極的な呼びかけをしていっています。また、コンシューマユーザーにとっても、ビデオの処理などでマルチコアは大きなアドバンテージがあることをアピールしていく必要があると考えています。
Q:現在Intelが語っているデュアルコアの将来にはどんなものがあるのでしょうか?
バレット氏:これからもムーアの法則に従った進化を続けていくでしょう。今後も、トランジスタの数は増え、クロック周波数は上がり、処理能力は向上していきます。また、今後は増えたトランジスタを、CPUコアを増やす方向に使っていくことになるでしょう。それにより、より多くのスレッドが処理できるようになっていきます。
こうした方向性はIntelだけでありません、IBMも、ソニーも、AMDも、Sunも、皆がマルチコアの話をしています。誰もがこの方向に向いているのです。
●PCの使い勝手を変えるべくIntelとMicrosoftは努力を続ける
Q:Intelが家電機器、例えばテレビ向けプロセッサなどを開発するということはあるのでしょうか?
バレット氏:最初に強調しておきたいのは、現在のデジタル家電はデジタルコンテンツをハンドルする機器であるというものだということです。それはPCだけでなく、インテリジェントなセットトップボックスもそうでしょう。我々は弊社のグラフィックスやビデオプロセッサの性能を上げていっていますし、テレビ機能の取り込みも積極的に行なっています。
Q:昨日Microsoftのビル・ゲイツ会長の基調講演で行なわれたIP-TVについてはどうでしょう?
バレット氏:そうですね、我々もIP-TVには興味があります。ただ、現時点ではなんの決定も行なわれていません。
Q:家電とPCの統合が起こる中で、家電業界の産業も替わっていっていると思います。近い将来に、Intelが家電ベンダ向けのマイクロプロセッサを生産するといったことも可能性としてはあるのでしょうか?
バレット氏:PC業界では、1つの規格に基づいてコンポーネントベンダの各社が“ビルディングブロック”を作っていき、それを最終製品のベンダが1つにして出荷するという構造をとってきました。こうしたビルディングブロックという考え方は、通信業界もそうなってきています。今後は家電に関しても、どんどんそうなっていくでしょう。これまでは、1社がコンポーネントから最終製品まですべてを作るという垂直方式を採用してきましたが、今後は1つの規格のもと、OS、ソフトウェア、プロセッサなどの汎用ビルディングブロックを利用して製品を作るという水平分業が当たり前になっていくと思います。
Q:例えば、普通の人々がATMを使いこなすように、Windowsを簡単に使いこなせる日がくると思いますか。
バレット氏:MicrosoftはPCを使いやすくするために、多大な努力をしてきました。しかし、最大の障害は過去との互換性を維持しながら、それを実現していくことです。これは非常に難しい作業です。
私は、Longhornはその1つの解であると思っていますし、ユーザーインターフェイスは大変便利になりますよ。
Q:でも昨日の基調講演では4回もフリーズしてましたよ。
バレット氏:そうですね、不幸なことでしたね。CESはコンシューマのためのショーであり、エンドユーザーに、どうしたらより簡単に使えるかどうかをアピールする必要があります。コンシューマの皆様は、IntelやMicrosoftに対して、“もっと簡単にしてくれ”と常に望んでおられると思いますが、ゲイツ氏やバルマー氏もそのことは理解されていると思いますし、今後も彼らは努力を続けていくでしょう。
ここで指摘しておきたいのは、現在Microsoftは競争にさらされているということです。IntelがAMDやその他のCPUベンダとの競争にさらされているように、Microsoftも家電ベンダやLinuxとの競争にさらされています。そうしたこともあるので、Microsoftは今後もユーザーインターフェイスをより簡単にするべく努力を続けていくと私は思います。
□2005 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【1月7日】【CES】Intel CEO クレイグ・バレット氏基調講演
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0107/ces04.htm
(2005年1月8日)
[Reported by 笠原一輝]