■元麻布春男の週刊PCホットライン■アイ・オーの2.5インチHDD採用RAIDドライブを試す |
アイ・オー・データ「HDR-MDS-A」 |
ここにきてようやく落ち着きを見せているものの、ひところのHDDの記録密度向上は凄まじいものだった。ムーアの法則を上回るようなスピードで記録密度が向上し、半年ごとに新製品が登場するような勢いであった。そのおかげで、HDD 1台あたりの容量は拡大し、すでに1台で400GBもの容量を持つ3.5インチATAドライブが登場している。
だが、一口に400GBといっても、この膨大な容量は、ビデオデータでも蓄積しない限り、個人にとっては持て余してしまう。一般的な用途を前提にする限り、HDDの容量はもはや問題ではなくなってしまった。
もし容量が問題でないのだとしたら、この後はどのような方向へ向かえばよいのか。1つはHDDの小型化だろう。3.5インチという「大型」のプラッタでなくても十分な容量が得られるのだとしたら、小さくしない手はない。
小さなプラッタの方がスピンドル回転数を上げやすいし、記録密度の向上にも有利な側面があるなど、性能向上に有利な部分が少なくない。すでにサーバー用のドライブではプラッタを小型化し、10,000rpm以上のスピンドルを採用したものが珍しくない。
もちろん、小さなプラッタは、モーターのトルクも少なくて済むから省エネルギーだし、騒音も少ない。すでに2.5インチドライブも、1台あたりの容量が100GBに到達しており、日常的な利用には十分な容量が確保されている。
●デスクトップに2.5インチHDDが採用されない理由
にもかかわらず、ノートPC以外で2.5インチHDDが使われないのは、2.5インチドライブが高価(バイト単価は3~4倍)なことに加え、PC本体やケースに2.5インチドライブを受け入れる準備が整っていないことが原因だろう。価格は、基本的に市場の需給関係で決まるから、たくさん売れれば必ず安くなる。現在の価格にしても、一昔前に比べれば格段に下がっている。
PCやケースが2.5インチドライブに対応していないことも、おそらく2.5インチドライブが高価なことと無縁ではないだろう。ごく一部の省スペースタイプを除き、HDDベイが2.5インチドライブ用になっているものは存在しない。
ドライブの小型化は省スペースタイプのPCには有効だが、一般的なサイズのPCにとってそれほどメリットがあるわけではない。そもそもデスクトップPCの場合、必ず光学ドライブを内蔵しているから、そこで大体の大きさが決まってしまう、という事情もある。
当然のことながら、ノートPCと異なりデスクトップPCでは、ドライブの小型化による軽量化の恩恵はほとんどない。それでも筆者は、記録密度の向上ということだけをとっても、HDDの主流は、いずれ3.5インチから2.5インチに切り替わると思っているのだが、それにはまだ数年かかるだろう。
では、それまで2.5インチをデスクトップPCで利用する価値がないのかというと、そんなことはない。そのひとつの方向性を示しているのが、アイ・オー・データ機器の内蔵型ミラーリングHDDだ。なかなか言葉で説明してもピンとこないのだが、要は、2台の2.5インチドライブ(9mm厚)とハードウェアによるミラーリング回路基板を、3.5インチ幅、1インチ厚のドライブと同じ大きさに詰め込んだもの。色々言うより、写真を見た方が話が早い。
2.5インチドライブを2台並べたHDR-MDS-A。ドライブの下にコントローラ基板がある | ホストインターフェイスは、通常のATAコネクタ。電源コネクタは小型のものになっている |
現在のラインナップは、HDR-MDSシリーズと、HDR-MDS-Aシリーズの2つ。どうやらHDR-MDSは終了で、HDR-MDS-Aに切り替えのようだ。
●スタンドアロンなハードウェアRAID
今回試用したのは、このHDR-MDS-A相当のベースユニットに、HDR-MDSシリーズで使われていたと思われる20GBの4,200rpmドライブ(HGSTのDK23EA-20)を組み合わせたもの。
実際のHDR-MDS-Aシリーズの製品に搭載されているドライブは40GB×2からで、今回のユニットで性能を語っても意味はないのだが、印象としてはRAID 1構成だがドライブ単体の時とほとんど変わらない、というところだ。
HDR-MDSシリーズは、ハードウェアによるミラーリングのおかげで、システムからは通常のHDDとして認識されるため、特別なドライバ等を必要としない。したがって、通常の3.5インチドライブと全く変わらない感覚で使える。
万が一障害が発生した場合の警告や、ドライブを交換した場合のリビルドも、完全にスタンドアロンで実行され、ホストに依存しない。OSに依存する(Windows 2000/XPのみのサポート)のは標準添付のRAID監視ユーティリティ(今回の試用機には添付されていなかった)だけだ。
ただ、監視ユーティリティ等がなくても、起動時に正常であれば「ドレミファソラシド」とブザーがなり、エラー時も一定のパターンでブザーがなる(ディップスイッチで無効にもできる)から、監視ユーティリティがなければ困るというほどでもないだろう。
底面にあるディップスイッチ、ケーブルセレクト、マスタ、スレーブの設定のほか、リビルドを自動開始するか、リビルド中のアクセスを許すかなどの設定ができる | 内蔵するコントローラ基板 | RAIDコントローラのASIC(Delta2)はアイ・オー・データ製 |
残念ながらHDR-MDSシリーズは、容量の割には価格が高く(若干価格が引き下げられたHDR-MDS-Aでも40GBで78,000円)、一般向けとは言いがたい。おそらく市場として狙っているのは、システムの一部として組み込まれるPCで、長期間メインテナンスフリーで動作しなければならないものとか、長期にわたりデータを安全にロギングしなければならない用途とか、そうしたニッチな市場だろう。
だが、複数の2.5インチドライブを1台の3.5インチHDD互換のフォームファクタに詰め込むというアイデアは意外といけるのではないかと思う。今後、シリアルATAに対応した2.5インチHDDが登場してくると、もっと楽にこうしたマウントを作ることができるのではないかとも考えられる。
最近のPCは、標準でRAID機能を備えているものが少なくないから、RAIDコントローラ基板は取り去って、マザーボードのソフトウェアRAIDに任せてしまえばいい。それで安価な製品に仕立てたほうが一般向きと言えるだろう。
RAID 1は、ソフトウェア的な障害(コンピュータウイルス等を含む)には無力だが、ハードウェア的な障害には強い。バックアップの代わりには決してならないが、何もないよりははるかに安心だ。
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【9月29日】アイ・オー、3.5インチベイに入る2.5インチ×2 RAID1ユニット
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0929/iodata3.htm
(2004年11月19日)
[Reported by 元麻布春男]