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記録型DVDドライブの高性能化と価格の下落ペースには驚くばかりだ。記録型DVDドライブの記録速度は、倍々ペースで向上し、すでに16倍速記録をサポートした製品が登場した。しかし、16倍速記録では、回転数が1万回転前後に達するため、メディアに使われているポリカーボネートの強度からいっても、16倍速以上の高速化は困難とされている。 ただし、現在、16倍速記録を実現しているのは、DVD-RやDVD+Rといった追記型メディアのみであり、DVD-RW/RAMやDVD+RWといった書換型メディアの記録速度は、まだ4~5倍速程度である。また、2層記録メディアについても、現状では最大5倍速となっているため、今後は、書換型メディアと2層記録メディアへの記録速度の高速化が焦点となるだろう。 今回は、プレクスターから12月上旬(当初は11月中旬発売とされていたが延期された)に発売予定の「PX-716A/JP」を取り上げることにしたい。PX-716A/JPは、DVD±Rへの16倍速記録と、DVD+RWへの8倍速記録を実現した最新モデルであり、注目が集まっている。 2層記録メディアへのサポートも充実しており、DVD+R DLへの4倍速記録が可能なほか、12月中旬に予定されているファームウェアアップデートによって、Dual Layer DVD-Rにも対応する。なお、PX-716A/JPはATAPI内蔵型だが、USB 2.0/IEEE 1394に対応した外付けタイプの「PX-716UF/JP」も12月下旬に発売される予定だ。 ●メディア特性の学習機能や独自の収差補正技術によって、高い記録品位を実現記録型DVDドライブの高速化によって、浮き彫りにされてきたのが、DVDメディアの品質のバラツキである。市場には台湾製などの安価なDVDメディアも流通しているが、こうしたDVDメディアでは、品質のバラツキが大きく、高速で記録しようとしてもうまくいかない場合がある。 しかし、PX-716A/JPでは、「Intelligent Recording」と呼ばれる技術の採用によって、高い記録品位を実現していることが特徴だ。Intelligent Recordingは、プレクスターの記録技術の集大成ともいえるもので、「AUTOSTRATEGY」、「INTELLIGENTTILT」、「POWERREC」の3つの技術から構成されている。 AUTOSTRATEGYは、ドライブがメディアの特性を自動的に学習して登録する機能であり、今後発売されるメディアなど、ドライブにメディア情報が登録されていないメディアに対する記録品位を向上できる(DVD±Rメディアに対応)。 INTELLIGENTTILTは、液晶による収差補正とレンズチルトを組み合わせた独自の制御技術である。16倍速という高速記録時でも、メディアの反りなどを補正し、高品位記録が可能になる。 POWERECは、実際の記録状態をリアルタイムに監視し、記録品位を維持できる最適な記録速度をドライブが自動選択する機能である。 ●2種類のフロントパネルが付属PX-716A/JPでは、ホワイトとブラックの2色のフロントパネルが付属しており、好みに応じてパネルの色を変えられるのは嬉しい。トレイはプレクスター伝統のブラックトレイで、レーザーピックアップからの乱反射を防ぐことができる。 また、PX-716A/JPの奥行きは170mmで、従来のPX-712A/JP(奥行き190mm)に比べて、20mm短くなっている。筐体の小さなキューブ型PCでは、奥行きが長い光学ドライブは使いにくいが、PX-716A/JPならキューブ型PCでも大丈夫だ。
●DVD+RWへの8倍速記録もいち早く対応PX-716A/JPの最大記録速度は、DVD±Rが16倍、DVD+R DLが4倍、DVD+RWが8倍、DVD-RWが4倍である(Dual Layer DVD-Rへの記録速度は現時点では発表されていないが、2倍か4倍になるだろう)。この中で、特に注目したいのが、DVD+RWへの8倍速記録を実現していることだ。DVD+RWの8倍速記録規格は9月30日にリリースされたばかりで、現時点で対応を表明している製品は、PX-716A/JPのみである。ただし、まだ8倍速対応のDVD+RWメディアが登場しておらず、プレクスターの製品紹介ページでも、DVD+RW 8倍速記録の推奨メディアは、近日公開予定とされている。また、DVD+RWへの8倍速記録はファームウェアのバージョンアップも必要になるようだ。 【PX-716A/JPがサポートする記録型DVDメディアと最大書き込み速度】
●オリジナルユーティリティもさらに強化PX-716A/JPは、付属アプリケーションが充実していることも魅力だ。CD/DVDライティングソフトの「Drag'n Drop CD+DVD 4」、DVDオーサリングソフトの「PowerProducer 2 Gold」、DVDプレーヤーソフトの「PowerDVD 5」(CPRM対応版)がバンドルされている。さらに、プレクスターオリジナルのユーティリティソフト「PlexTools Professional」がバンドルされている。 PlexTools Professionalは、PX-716A/JPの各種設定変更やテストが行なえるツールだ。騒音レベルを下げるために速度を意図的に落としたり、トレーの開閉速度、スピンダウン時間の調整、CD-Rに最大1.3倍の容量の書込みを行なう大容量記録(GigaRec)が可能なほか、オーディオリッピング機能やメディア品質チェック機能(Q-Check)、簡易ライティング機能なども備えている。 PX-716A/JPに付属するPlexTools Professionalでは、新たにピットやランドのヒストグラムを表示する「Q-Check TA Test」が追加されており、DVD±Rメディアの記録品質を内周、中周、外周に分けてチェックできる。従来通り、メディアのエラーテスト(C1/C2エラー、PI/POFエラー、FE/TEエラー、Beta/Jittar)も可能なので、メディアの記録品質をチェックするのに役立つ。記録品質にこだわるマニアも納得できるだろう。
●DVD+Rへの記録では4.1GB超のデータを6分台で記録可能
それでは早速書き込み速度を検証してみることにしたい。まず、以下のテスト環境で、合計4.17GBのファイル(フォルダ数1,299、ファイル数15,411)を書き込むのにかかる時間を計測することにした。 比較対照用として、アイ・オー・データ機器のDVD±R/RWドライブ「DVR-ABN8」(NEC製ND-2500A採用)を用意し、同様に書き込み時間を計測した。ライティングソフトとしては付属のDrag'n Drop CD+DVD 4を用い、直接メディアに書き込みを行なった。 また、書き込み時間は、セッションクローズの時間も含めて計測している。なお、今回試用した製品は評価用のサンプル品なので、ファームウェアなどが正式出荷版とは異なる可能性がある。 利用したメディアは、DVD-Rが太陽誘電製の8倍速対応メディア、DVD+Rが評価用として入手した16倍速対応メディア(三菱化学製)、DVD-RWがビクター製の4倍速対応メディア、DVD+RWが三菱化学製の4倍速対応メディア、DVD+R DLが三菱化学製の2.4倍速対応メディアである。 PX-716A/JPについては、自動的に最適な速度で書き込むAuto(POWEREC)を選択した場合と、表示されている最大速度を選択した場合の両方で計測を行なった。結果は下の表にまとめた通りだ。 DVD+Rへの16倍速記録では、6分36秒という好成績をおさめている。書き込み速度については、期待通りの性能だといえる。なお、DVD+RWについては、今回利用した4倍速対応メディアでは8倍速という選択肢が表示されず、Auto(POWEREC)を選んでも、やはり4倍速止まりであった。 DVD+R DLについても、合計8.35GBのファイルを28分4秒で記録できている。2.4倍速対応製品ではメディア全周への記録に40分以上かかることを考えると、DVD+R DLへの書き込みもより実用的になったといえる。 【ファイルの書き込みにかかった時間】
【テスト環境】
●回転数一定のフルCAV方式を採用記録型DVDドライブでは、4倍速記録(一部の製品では6倍速記録も)まではCLV方式で記録されるのに対し、8倍速以上で記録する場合は、ゾーンCLV方式またはパーシャルCAV方式、フルCAV方式で記録される。線速度一定のCLV方式で8倍速以上の記録速度を実現しようとすると、内周部での回転速度が高速になりすぎてしまうためだ。 つまり、4倍速や6倍速までは、メディア全域にその速度で記録されるのだが、8倍速以上ではメディアの内周部はそれよりも遅い速度で書き込まれ、外周に行くにしたがって記録速度が上がっていくことになる。 記録型DVDドライブの8倍速記録や16倍速記録は、あくまで「最大」記録速度であり、メディア全域をその速度で書き込めるわけではない。また、同じ16倍速記録をうたっている製品でも、製品によって、記録方式や記録速度を変化させるタイミングが違うため、実効的な記録速度は変わってくる。PX-716A/JPでは、DVD-RとDVD+Rへの16倍速記録を、角速度一定(回転速度一定)のフルCAV方式で行なうことが特徴だ。 そこで、「Nero CD-DVD Speed」を用いて、各種メディアの最大記録速度の推移を計測してみた。利用したメディアは、先ほどと同じだ。グラフの緑色の線が記録速度を表し、黄色の線が回転数を表している。 まず、DVD+Rへの記録速度の推移を見てみよう。評価用として付属してきた16倍速対応DVD+Rメディアを利用したのだが、最初に計測したメディアでは、15倍速を超えたところで、記録速度が12倍速に落ちてしまった。そこで、別のメディアで再び試したところ、今度はフルCAV方式でちゃんと16倍速に達した。 同じメディアでも、品質のバラツキがあるため、POWERECによって16倍速記録が行なえないと判断されると、自動的に記録速度を低下させ、確実に記録が行なえるようになってるのだ。12倍速に落ちた場合と16倍速に到達した場合の記録にかかった時間の差は20秒ほどであり、それほど大きな差ではないが、推奨メディアでも常に16倍速で記録できるとは限らないようだ。 次に、DVD-Rについてだが、下の画面キャプチャを見れば分かるように、こちらも同じメディア(太陽誘電製8倍速対応メディア)を使っていても、メディアのバラツキによって、実際に記録される速度には大きな違いが出てくる。ただし、ここで利用した太陽誘電製の8倍速対応DVD-Rメディアは、プレクスターのサイトによると、12倍速までの推奨メディアとされている。16倍速推奨メディアについては、近日公開予定とされているので、推奨メディアでは、より16倍速記録での安定性が向上する可能性が高い(三菱化学や日立マクセルから、16倍速対応DVD-Rメディアが11月から12月にかけて登場する予定)。 DVD+RWについては、やはり今回利用した4倍速対応メディアでは、4倍速でしか記録できていないことがわかる。DVD+RWへの8倍速記録は、対応メディアの登場とファームウェアアップデートを待たねばならないようだ。 なお、DVD-RWや2層記録のDVD+R DLについては、スペック通りCLV方式で4倍速で記録されていることがわかる。 また、DVD+R DLに記録した場合のBookTypeを調べてみたところ、「DVD-ROM」となっており、BookTypeが「DVD+R DL」として記録される製品に比べて、他の機器での再生互換性は高い。
●現時点で最強の記録型DVDドライブであり、幅広いユーザーにお勧めPX-716A/JPは、DVD±Rへの16倍速記録やDVD+RWへの8倍速記録を実現した高性能ドライブであり、DVD-RAMの読み書きはサポートしていないことを除けば、現時点で最強の記録型DVDドライブといえる。 単に速度が高速なだけでなく、Intelligent Recordingの搭載によって、メディアの品質に応じたライトストラテジーによる最適な書き込みを行なってくれることも魅力だ。12月中旬に予定されているファームウェアのアップデートによって、Dual Layer DVD-Rにも対応するなど、将来性も高い。 想定実勢価格は16,000円前後とされており、コストパフォーマンスも高い。現在、4倍速や8倍速クラスの記録型DVDドライブを利用していて、記録速度に不満がある人はもちろん、初めて記録型DVDドライブを購入するという人にもお勧めだ。 □関連記事 (2004年11月16日)
[Reported by 石井英男]
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