大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

家庭向けPCリサイクル、1年間の成果




●1年間の回収規模は18万台に

パソコン3R推進センター
海野隆事務局長

 昨年10月から開始した家庭向けPCのリサイクルが1年を経過した。

 1年間の回収台数は186,302台。平均すると月1万5千台規模の回収実績となるが、今年8月には月間2万台を突破、9月も2万台弱と、最近では2万台前後で推移している。

 「徐々にリサイクルの認知度が高まっていることの証だと判断している。とくに8月は、夏休み期間を利用してPCのリサイクル手続きをしたユーザーが多かったようだ」と話すのは、パソコンのリサイクルを推進を担当する「有限責任中間法人パソコン3R推進センター」の海野隆事務局長。

 今年5月に、社団法人電子情報技術産業協会から分離独立する形で設立した同センターは、6月には広域処理認定業者となったことで、撤退メーカーや組立PCなどの回収義務者不在PCのリサイクル回収を、全国からも受け付けることになったため、これらのPCの回収が7月以降は3倍になるといった動きが見られている。

 「2年度目は、少なくとも月間2万台規模で推移するのは間違いない。年間で25万台から30万台規模の回収になるだろう」と海野事務局長は予測している。

 では、この1年間の回収実績をもう少し細かく見てみよう。

 パソコン3R推進センターによると、186,302台の回収実績は、「家庭から排出されるPCの3割程度」と分析している。

 同センターでは、業界出荷台数や、推定使用年数、中古市場で流通されるPC、個人間取引によって他人に譲渡してしまうPC、あるいは家庭内に退蔵されるパソコンの台数などから試算した結果、60万台から70万台程度のPCが排出対象になるとしており、そこから逆算して、約3割という結果を導き出している。

 18万台のうち、ほとんどメーカー製PCおよびディスプレイ。 メーカー別の数値は公表していないが、やはりNEC、富士通といった古くからPC事業を推進している企業の比率が高いようで、両社あわせて7割程度を占めているようだ。


PCリサイクルマーク

 ちなみに、昨年10月以降に発売されたメーカー製PCには、回収時点でリサイクル費用を支払うことがないということを認識するように、リサイクルマークが貼付されているが、「リサイクルマーク付きのPCも、今年夏以降、すでに2~3台の回収実績が出ている」という。

 ノートPCで、持ち運びの最中に落としてしまうなど、メーカー保証がきかない壊れ方をしたPCが回収されたようだが、施行から1年以内にリサイクルマーク付のPCが回収されるとは同センターでも予測していなかったようだ。

 一方、組立PCおよびゲートウェイなどの撤退メーカーをあわせた回収義務者不在PCの回収実績は、わずか3,572台に留まった。その内訳は、約40%が組立PCで、ゲートウェイ製PCが45%を占めている。組立PCよりも、日本市場で実績を残しながら撤退したゲートウェイの比率が高いという結果になっている。

 ただ、先にも触れたように、7月以降、回収義務者不在PCの回収が増加していることから、今後1年では、こうしたPCの台数が増加することになりそうだ。


●足並みが揃いきらない自治体の対応

 だが、その一方で、この1年間のPC回収のなかで、いくつかの取り組むべき課題も出てきているようだ。

 ひとつは、依然として全国の自治体の足並みが揃っていないことだ。むしろ、これを100%揃えるのは難しいことだといえるが、同センターとしては、「メーカーによるパソコンリサイクルに協力していただきたい」という点でのアピールを進める考えだ。

 今年2月に全国の自治体を対象に行った調査では、自治体としてメーカー製PCの回収をやめる、あるいは回収義務者不在のPCを含めて回収をやめるという回答した自治体は68%にのぼり、さらに経過措置を見て、やめたいといった自治体が15%を占めた。これらの自治体は、いわば、独自に粗大ゴミとしての回収を行わずに、メーカーリサイクルによるスキームを活用するという姿勢を示したものだ。

 だが、残りの約2割の自治体に関しては、まだ粗大ゴミとしての回収を行う姿勢を見せている。

 例えば、大都市圏では、大阪市や京都市、北九州市が、依然として粗大ゴミとしての回収を継続しているし、過疎地などの自治体のなかには、PCを粗大ゴミとして無償回収しているところもあるという。

 自治体によっては、北九州市のようにエコタウン構想の推進によって、自前でリサイクルに取り組んでいるという例があったり、「循環型社会の目指す主旨は理解しているが、住民に3,000円から4,000円のリサイクル費用を負担させることは住民の利益に反する」として、粗大ゴミとして低料金で処理する例もある。

 自治体によって処理方法が異なるのは不公平感も生まれるため、是正も必要だという声もあるが、実際には最終判断が自治体に委ねるられているだけに、足並みを揃えるのは無理だと言わざるを得ないだろう。

 一方、リサイクルの回収の手間から、これを避ける個人ユーザーの動きがあるのも事実だ。

 実際、パソコン3R推進センターに回収に関する問い合わせをしてきた利用者のうち約2割が、実際には回収手続きを取らなかったというデータもある。

 「問い合わせた後に、友人に譲渡したり、中古PC店に売ることが決まったという例もあるようだが、問い合わせたら、リサイクル料金が思ったよりも高かった、あるいは手続きが繁雑そうで敬遠してしまった、という例もあっただろう」と海野事務局長は話す。

 確かに、メーカーへの問い合わせ、料金の事前払い込み、排出するPCの梱包作業など、面倒な手続きが多いのも事実。リサイクル率を引き上げるには、そのあたりの改善も必要になってくるだろう。

●繁雑な作業は少しでも回避しよう

 では、こうした繁雑な作業を、少しでも軽減するいくつかの手法を考えてみよう。

 まず最初に、PCを排出するとなった時の問い合わせについてだ。

 排出するPCがメーカー製PCだった場合は、まずはそのメーカーのホームページを見ることをお勧めする。

 この時点で、最初に地元自治体のゴミ収集窓口に連絡すると、自治体のなかでたらい回しにされる可能性があるのに加えて、結局は、パソコン3R推進センターやパソコンメーカーに連絡してくれ、ということになる。改めて、メーカーに連絡しても、なかなか電話がつながらなかったりといったことも起こっているようだ。

 「自治体からパソコン3R推進センター、そこからメーカーにまわされて、やっと連絡がついたらと思ったら、息子のPCのためにデスクトップか、ノートPCかがわからず、結局、また改めてメーカーに連絡することになったというように作業が繁雑になっていては、それだけでリサイクルに出すのがいやになってしまう。まずは、メーカーのホームページを見てもらえれば、やり方も理解でき、さらにそのサイトから直接リサイクルの手続きもできるため、スムーズに申し込みができる」(海野事務局長)というわけだ。

 注意しなくてはいけないのは、PC本体とディスプレイのメーカーが違う場合には、それぞれのメーカーに連絡しなくてはけいないという点。プリンタは、対象外であるという点だ。

 ちなみに、組立PCの場合は、パソコン3R推進センターに連絡するのが一番手っ取り早い。CPUやメモリなどのひとつひとつのパーツの場合は、不燃ゴミとして処理してかまわないか、ケースなどは、粗大ゴミとして処理必要がある場合もある。

 また、パーツだけの場合は、PC本体と認められないので、メーカーに連絡しても回収してもらえないと思った方がいい。


●リサイクル手続き作業は一日では終わらない

 次に注意したいのは、一日でリサイクルの手続きが終わることがないため、数日間の猶予を持つ必要があるということだ。

 リサイクルの申し込み手続きをしたからといって、その日のうちに回収が可能になるというわけではない。まず、リサイクルの手続きをメーカーに申し込むと、リサイクル費用の振り込み用紙が配送されてくる。これに約2日間、さらに、振り込んだあとに回収するのための「エコゆうパック」伝票が自宅に送付されてくる。やはりこれに2日間。リサイルクルするPCは、この伝票とともに直接、郵便局に持ち込むことができるが、これを戸別引き取りという形にするとやはりその指定に時間がかかる。ここまでの作業を経過すると、だいたい土日を挟むことになるため、結局10日間程度がかかってしまうというのが実状だ。

 リサイクルには時間がかかるということを覚悟しておかないと、期間が長期化した感じを受けてしまい、その作業をしている方が嫌になってしまう。このあたりは、もう少し改善をするべきポイントだともいえるが、いまは、最初から時間がかかるものと決めてかかった方が、気持ち的にも余裕ができる。

 そして、もうひとつが、PCを排出する際の梱包だ。粗大ゴミがそのまま排出できるのに対して、リサイクルPCの場合は、ゆうパックでの配送のため、「輸送に耐える簡易梱包」が前提となっている。この点は、パソコンリサイクルの手間ともいえる。

 ただし、この梱包は、ダンボールでなければいけないと思っている人も多いようだが、そんなことはない。

 例えば、新しく買ったPCのダンボールを応用したりといったことも可能だし、宅配便が利用しているビニールの袋を利用することも可能だ。さらに、各自治体のゴミ収集袋を何重かにして、ガムテープで梱包するという手法でも構わない。まぁ、その際には、「東京都23区推奨ゴミ袋」などと書かれた面を表にすると、一般のゴミと区別がつかなく紛らわしいので、印刷面を裏返しにした方がいいかもしれない。

 そのほか、お中元、お歳暮の時期は、「ゆうパック」が忙しくなるため戸別回収に時間がかかったり、メーカーの申し込み手続きの処理が月曜日に集中するためにそれを避けた方が比較的手続き処理が早くなる、というような点も考慮するといいだろう。

 PCのリサイクルを予定している人は、慌てずにゆっくりとやるのが一番、というつもりで取り組んだ方が、いいようだ。

□パソコン3R推進センターのホームページ
http://www.pc3r.jp/
□関連記事
【20003年8月20日】【大河原】個人向けパソコンリサイクル開始直前! その疑問にズバリ答える!
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0820/gyokai69.htm
【2003年4月21日】【大河原】JEITA、10月から個人向けPCのリサイクルを開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0421/gyokai56.htm

バックナンバー

(2004年10月18日)

[Text by 大河原克行]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright ©2004 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.