デジタルカメラ 新製品レビュー

バックナンバー

キヤノン PowerShot A400



 PowerShot A400はA310の後継機として誕生した。店頭予想価格は26,000円前後と低価格ながら、2.2倍光学ズーム、8種類のポジションを備えたスペシャルシーンモードなど、上級機に迫る機能を備えている。さらに4色のボディカラーを用意。ユーザーは好みに合ったボディを選ぶことができる。

 なお、テスト機ではExifデータの機種名が「PowerShot A320」となっているが、出荷される製品はPowerShot A400と表示される。


本体色は4色用意される(右写真)。手前から時計回りに「萌」、「空」、「雫」、「杏」と色の名前も凝っている

●開放F値の明るい高性能ズームレンズを搭載

レンズは5.9~13.2mmF3.8。画角は35mm判の45~100mmに相当するが、広角がややもの足りない感じがする。ズーム全域で3.8という開放F値が維持される点は立派

 A310のレンズが単焦点であったのに対し、A400は5.9~13.2mm F3.8という光学式2.2倍ズームを装備。画角を35mmフィルムカメラに換算すると45~100mmのズームになる。広角側の画角はそれほど広くないが、エントリークラスということを考える致し方ない。

 またズーム比が低いためF3.8という比較的明るい開放F値がズーム全域で確保される。そのため望遠側でも高速シャッターが切れ、手ぶれ防止に役立っている。この点は高く評価すべきだ。さらに望遠側でも大口径が保たれるので、被写体までの距離が近ければ被写界深度を浅くすることも可能だ。

 絞っても絞りの形が真円に保たれるのでボケ味も自然だ。そしてズーム比を低くしたことより、ディストーションも意外と低く抑えられているようだ。

 最短撮影距離は、通常47cmだが、マクロモードでは広角端で5cmまでの接写ができる。このときの撮影範囲は47×35mm。35mmフィルムカメラに換算すると倍率は約1/1.3。作例を見れば分かるとおり、本格的な接写が楽しめる。

●画素数は320万と実用的

 有効画素数は320万。この程度の画素数だとファイルサイズがそれほど大きくならず扱いやすい。最近は低価格機でも画素数の多い製品が増えているが、実用性の面でとらえるとこの程度の画素数がいちばん使いやすいのではないだろうか。

 ただし、使用しているCCDは1/3.2インチで、同じ画素数の前機種「PoweShot A310」の1/2.7インチから小さくなった。映像エンジンはキヤノン独自の「DIGIC」で、高画質を実現している。

●設定がしやすいスペシャルシーンモード

 ズームレンズ搭載と並ぶA400の特徴として、スペシャルシーンモードが上げられる。搭載されているシーンは、ポートレート、夜景、新緑/紅葉、スノー、ビーチ、打上げ花火、水中、パーティー/室内の8モード。このときホワイトバランス、色効果、ISO感度などは、選んだシーンに合わせて自動的に設定される。

 さらにモードダイヤルの採用によりモードの選択がすばやくできることも大きな特徴だ。ボタン操作を組み合わせた方式のように階層が深くないのでとても使いやすい。また背面の操作ボタンはすべて右手で操作できるレイアウトになっている。

 ただしボディの厚みに対して高さが低いので、ちょっとホールディングがしづらい気がする。

 AFはAiAF(Artificial Intelligence Autofocus:人工知能オートフォーカス)を採用。AF枠が5点から9点に増え、撮影状況に応じてAF枠が自動的に選択される。選択されたAF枠は液晶モニターに表示され、どこにピントを合わせているのかが確認できる。ほとんどの場合、適切な位置にピントが合うが、この機能をオフにすればAF枠を中央一点に固定することもできる。

コネクター類のカバーは合成ゴム製だが、撮影中に外れやすいスペシャルシーンモードは、ダイヤルをSCNに合わせ十字キーで目的のシーンを選択。モードダイヤルに独立したポジションがあり使いやすい

●高次元でAE、AF、ホワイトバランスを制御するキヤノン独自のiSAPSテクノロジー

 A400はAF処理スピードを高速化するとともにシャッターのタイムラグを短縮するクイック撮影機能を装備。約0.1秒というタイムラグを実現した。また、カメラの縦/横位置を検知するSIセンサーの搭載により、より高精度なAF、AE、オートホワイトバランスを実現した。

 なお撮影間隔は液晶モニター使用時で約3秒、不使用時で約2.5秒と連写性能はそれほどでもない。また起動時間は、液晶モニターが表示されるまで約2.5秒かかり、やや長く感じられるが、エントリーモデルであることを考えるとこれで十分と言えるだろう

 シャッタースピードは1~1/1500秒まで。1~1/6秒ではノイズリダクションが作動する。

 背面の液晶パネルは1.5型。サイズはA310と同じだが画素数が7.8万から11.5万に増えたうえ、15段階の明るさ調節も備え視認性がアップした。

●経済性に優れた単3形電池を使用

記録メディアはSDメモリーカード。電源は単3形電池2本を使用する。電池室にストッパーがないので、カバーを開けると電池が滑り出してくることがある

 電源は単3形電池2本。アルカリ電池のほか充電式のニッケル水素電池が使用できる。この方式のメリットは何と言っても電池にかかるコストが低減できることだ。特に単3形ニッケル水素電池は値段が安く、メーカーにこだわらなければかなり安い値段で手に入る。さらに単3形電池はデジカメに限らず利用できる電化製品が多く汎用性が高い。

 電池の体積が大きいためカメラの小型化には貢献しないというデメリットはあるが、電池の容量は体積に比例するので想像以上に長持ちする。ニッケル水素電池だと液晶モニター使用時で300カットの撮影が可能。さらに撮影中に電池がなくなっても、アルカリ単3電池ならどこでも手に入る。エントリークラスのデジカメには最適な電源と言えるだろう。


以降に掲載する作例のリンク先は、特に記載がない限り、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更しました)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。クリックすると撮影したの画像が別ウィンドウで表示されます。
キャプション内の撮影データはISO感度/シャッター速度/絞り/露出補正値/ホワイトバランスです
d1301.jpg d1302.jpg
広角側5.9mmで撮影
730.91 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/640秒 / F5.60 / 0.00EV補正 / Auto
中間の10.5mmで撮影
771.27 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/640秒 / F5.60 / 0.00EV補正 / Auto
d1303.jpg d1304.jpg
望遠側13.2mmで撮影
755.96 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/640秒 / F5.60 / 0.00EV補正 / Auto
レンズの開放F値が明るいので、被写界深度の浅い表現も可能。望遠側13.2mmで撮影
1.06 MB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/250秒 / F3.80 / 0.00EV補正 / Auto
d1305.jpg d1306.jpg
望遠側13.2mmで撮影。やや糸巻き形ディストーションがあるが、このクラスにしては少ないほうだ
638.66 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/320秒 / F5.60 / 0.00EV補正 / Auto
広角側5.9mmで撮影。画角がそれほど広角でないためディストーションも目立たない
924.33 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/250秒 / F3.80 / 0.00EV補正 / Manual
d1307.jpg d1308.jpg
ナスの葉に留まったイチモンジセセリ。ほぼ最短撮影距離の5cmで撮影している
594.27 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/160秒 / F3.80 / 0.00EV補正 / Manual
このカットも最短撮影距離の5cmで撮影。アサガオの花のグラデーションがきれいだ
570.10 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/100秒 / F3.80 / 0.00EV補正 / Manual
d1309.jpg d1310.jpg
734.27 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/250秒 / F5.60 / 0.00EV補正 / Auto
737.50 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/500秒 / F5.60 / -0.67EV補正 / Auto
d1312.jpg d1313.jpg
701.14 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/1000秒 / F5.60 / -1.33EV補正 / Auto
660.94 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/1500秒 / F5.60 / -2.00EV補正 / Auto
補正なしのカットから始め1/3段ずつマイナス補正。シャドー部のツブレが非常に少ない
d1314.jpg d1315.jpg
ホワイトバランスを「太陽光」にして撮影。日陰の部分がわずかに青っぽくなったが、全体のバランスは良好だ
1.09 MB / 2048×1536ピクセル
Auto / 1/400秒 / F3.80 / 0.00EV補正 / Manual
輝度差の激しい条件で評価測光をテスト。窓の外の風景は完全にオーバーになったが、作品的にはベストな露出だ
659.81 KB / 2048×1536ピクセル
ISO50 / 1/8秒 / F3.80 / 0.00EV補正 / Auto
d1316.jpg
逆光にも強くフレアによる画質の低下も少ない
963.17 KB / 2048×1536ピクセル
Auto / 1/320秒 / F3.80 / 0.00EV補正 / Auto

□製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/powershot/a400/index.html
□関連記事
【8月20日】キヤノン、実売2万円台の2.2倍ズーム機「PowerShot A400」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0820/canon5.htm

■注意■

  • 各記事のサンプル画像の著作権は、中村文夫に帰属します。無断転用・転載は禁じます。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。

  • 作例画像は、オリジナルのままです。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。

バックナンバー

(2004年9月21日)

[Reported by 中村文夫]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.