2004年9月7日~9日(現地時間)
IDF 2日目の基調講演は、デスクトッププラットフォームグループのビル・スー氏と、モバイルプラットフォームグループのアナンド・チャンドラシーカ氏によって行なわれた。ここでは、各プラットフォームでのデュアルコア製品に関する話題が飛び出した。 ●Smithfieldとみられるデスクトップ向けデュアルコアCPUをデモ ビル・スー氏は講演の冒頭で、現在の業界に押し寄せてくる大きな波について述べた。インターネットや無線LANの爆発的な普及によって、企業や個人の生活は根本的に変化したが、これを体験した人は二度と元に戻れないものであり、これが大きな波を感じるキーワードだとした。 そこで挙げられたのが2つのテーマだ。1つは2年前に発表したデジタルホームで、もう1つがデジタルオフィスである。オフィスではビジネスを推進したり、コミュニケーションを取るときにインターネットが欠かせない存在になっており、このデジタルオフィスの活用は新たなビジネスチャンスがあると主張。ただし、現在のオフィスには4つの問題点が指摘あるという。
1つは管理性や運用性の問題で、これはインターネットの浸透によって生じた、さまざまな資産運用/管理に費やされるコストが膨大なものになっているというもの。たとえば、ネットワークに外部から侵される例がインターネット普及以降に増加しており、生産性の低下や企業における情報の信頼性が脅かされているとした。 続く問題点は地域的な労働力の分散である。各地に労働力を分散することはグローバルにインフラを共有できる点にメリットはあるが、コミュニケーションが問題になってくる。ただ、この点については、Instant Messageの活用によって生産性があがるとし、今後VoIPなどと協調したソフトウェアが登場すると予測している。 次は情報が膨大になりすぎて、処理しきれないという問題。これは蓄積した情報を分析する能力が不足しているということである。最後に、モビリティについても問題が指摘され、いつでもどこでも、しかもセキュアに情報を入手できる環境は、まだまだ整っていないとした。 しかし、問題=ビジネスチャンスとスー氏は語る。こうした問題を解決するために、1つのコンポーネントでやろうとするのは難しいが、プラットフォームソリューションやサービスを活用したデジタルオフィスがその解決法だという。 このデジタルオフィスを実現するための技術として、2つの技術をピックアップしてデモンストレーションが実施された。昨日のオッテリーニ氏の基調講演でも触れられた、iAMT(Intel Active Management Technology)とデュアルコアである。 まずiAMTについて、現在はまだ基礎的な段階であるとはしているが、iAMTを実装する2つのシステムを利用したデモが実施された。最初に行なわれたデモは、バックグラウンドに用意されたレジストレーションサーバーがネットワークを監視/検証。正しい状態であるかを確認し、ウィルス感染が確認されるとネットワークから切断するというもの。 もう1つの、マネージメントコンソールを使ったデモでは、最初にネットワーク上のシステム状態を検索し、電源が入っていないクライアントに対して自動的に電源を入れ、パッチを適用し、電源を切るという作業をリモートで行なった。電源が入っていなくても作業が行なえるので、週末も関係なく行なえるというメリットがあるわけだ。
次に実施されたのは、各地域に労働力が分散した場合のコミュニケーションについてのデモである。建築現場で発生した問題を解決するために、Centrinoノート、Intel 915G/Pentium 4搭載PC、さらにマルチディスプレイ環境のPCの3台のPCで、ビデオ会議による話し合いを行なうデモが実施された。 この最後の1台では、ビデオ会議のほかにCADの図面を見たり、話し合いの内容を録音するといった、複数の作業をスムーズに実行した。そしてデモの終了間際に、この3台目のPCがIntel 915G上で動作するデュアルコアCPUを搭載したデスクトップPCだとスー氏は告白した。 製品についての詳細は述べられなかったものの、これはIntelが2005年に投入しているデスクトップ向けのデュアルコアCPU「Smithfield」であると想像するに難くない。スー氏は、デュアルコアのテクノロジはHyper-Threadingの次のステップとして位置付けられており、すべてのプラットフォームで採用することを、昨日のオッテリーニ氏に続いて改めて宣言した。 ここまではデジタルオフィスについての話題だったが、続いてデジタルホームの現在の進捗が述べられた。これは昨日のオッテリーニ氏の基調講演の延長線上にあるような内容となっており、デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス(DLNA)によって策定された設計ガイドライン1.0に準拠したEntertainment PCが紹介されたほか、新たに「Intel Network Media Product Requirements 2.0」が発表され、昨日紹介されたDTCP/IPのデモなどが改めて行なわれた。 最後にスー氏は「満たされていない要求に対し、技術を開発し、コンテンツを配信し、そして価値のあるソリューションにする。これが大きな波を起こし、よりよい生活ができるよう世界を変えていく」と講演をまとめた。 ●モバイル向けプラットフォーム「Napa」を発表
カメラを内蔵しているというCentrino PCを組み込んだサーフボードを抱えて登場したチャンドラシーカ氏。まずは、2001年以降のノートPCユーザーの増加について触れ、さらなるビジネスチャンスがあるとした。そのためには業界として、3つの行動を取る必要があるという。 1つめはセキュリティ関連など、モバイルプラットフォームに対応したソフトウェアの開発である。Intelではモバイル化を行なうための指標を示したサイトの開発や、モバイル向けソフトウェアのSDKを提供している。 さらに、新しい無線LANセキュリティ規格のIEEE 802.11iに触れ、2つのデモを行なった。1つはデバイス認証で、ワイヤレスアクセスを行なう際に、接続可能なデバイスを登録したRADIUSサーバーに照会。ここに登録がなければ、アクセスを拒否するというものだ。 もう1つは、ポリシーサーバーが最新のセキュリティポリシーをアクセスポイントへ送り、ワイヤレスアクセスに対して適用するというもの。デバイスが認証されたものであっても、スパイウェアなどのアプリケーションがインストールされたクライアントではアクセスが拒否される。こうした仕組みについて1カ月以内にホワイトペーパーが提供されると話している。
取るべき行動の2つ目はプラットフォームの機能強化である。これについては、既報のとおり2005年の第1四半期に「Sonoma」プラットフォームが登場する。SonomaはDDR2 SDRAM、第3世代のグラフィック機能、HD Audioなどを組み込んだモバイルプラットフォーム。現在、125通りのデザインが、各ノートPCベンダーによって開発されているという。 さらに、次世代のモバイルプラットフォームである「Napa」が発表された。Napaを構成する要素の1つは65nmプロセスで製造されるデュアルコアのCPU「Yonah」だ。Hyper-Threadingに対応するほか、デュアルコアに最適化された省電力技術がハードウェアに盛り込まれているのが特徴になる。 この省電力技術は、負荷が小さいときに1つのコアの電力を抑える仕組み。また、LaGrande TechnologyやVanderpool Technologyなどもサポートされることになる。 Napaを構成するこのほかの要素としては、次世代のグラフィック、オーディオ機能を実装したチップセット「Calistoga」、そして「Golan」と呼ばれる無線LANモジュールが挙げられている。Golanは、次世代無線LAN規格をサポートし、さらに現在のプラットフォームよりも小さなカードに収まるという。
3つ目に示された行動は、バッテリ寿命の向上である。現在、約5時間がしきい値になっているが、さらに長時間駆動できるバッテリに対する要求は大きいという。そこで同氏は8時間の駆動という目標を掲げている。 この目標に対するアプローチの1つとして、シリコンレベル、OSのパワーマネージメントレベルで最適化した場合のデモが実施された。ここではSonomaプラットフォームを利用し、すべての省電力機能を有効。これにより、最大3Wの電力抑制が達成された。 また、バッテリの容量を向上させることも重要なアプローチだとし、2つの新しいバッテリが紹介された。 1つはパイオニクスが開発したリチウムポリマーの製品。陽極材料、陰極材料の両方を改良したほか、無駄なスペースを排除してパッケージングすることにより、2倍の容量を持たせることができる。 もう1つはZinc Matrix Powerが開発したアルカリ電池技術を改良した技術で、陽極側材料の最適化を行ない、アルカリで問題になる酸化膜を改善したことで、陰極側に手を加えることができるようになり、同じく2倍の容量を持たせられるという。
このほか、バッテリ駆動時間向上技術の将来についても語られ、Battery Life Working Groupの規格に準拠した3W以下の液晶パネルが、来年以降は1,000万台ほどに増えるとしている。 また、デュアルコア、ディスプレイパネルの省電力技術やOS側のパワーマネージメントを再構成する点などを盛り込んだ「ACPI3.0」を策定したことが紹介された。 最後にチャンドラシーカ氏は、「これまでに挑戦してきた革新をより進めるために業界と協力し、人々が技術に合わせるのではなく、技術が人々の人生において使いやすいやりかたに適合できるようする」と語った。 □IDF Fall 2004のホームページ(英文) (2004年9月10日) [Reported by 多和田新也]
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