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Creative「Portable Media Center」レポート
米Microsoftは9月2日(現地時間)、かねてよりβテストが行なわれていた「Windows Media Player 10」(WMP10)を発表。同時に独自運営の音楽配信サイト「MSN Music」のプレビュー版を立ち上げた。また、Microsoftの発表に呼応し、Creative、iRiver、SamsungがPortable Media Center(PMC)を発表している。 ここではWMP10の新機能、MSN Musicの概要や日本語版サービスの可能性、そしてCreative製「Zen Portable Media Center」の試作機をレポートすることにしよう。 ●ポータブルデバイスとの連携を強化したWMP10 Windows Media Player 10(WMP10)は、米国での発表と同時にダウンロード提供が開始されているため、英語版であればいつでも利用可能だ。英語版ではあるが、日本語タグや日本語ファイル名のメディアファイルを正常に扱うことができる。メニューやダイアログの英語が苦にならないならば、今すぐに試すことができる。 よりシンプルになったユーザーインターフェイスに目を取られがちだが、WMP10が目指したのはコンテンツのダウンロード販売、ダウンロードしたコンテンツのPC上での利用、そしてポータブルデバイスとの連携をよりスムーズに行なえるようすることだ。 Appleの成功作であるiPodとiTunes、iTunes Music Storeの例を見るまでもなく、コンテンツ購入からPC上での優れた管理性、プレーヤとしての使い勝手、それに誰もが簡単にコンテンツを持ち出せるようにすることは、とても重要なポイントだからだ。MicrosoftはWMP10の目標として「Buy it, Play it, Take it with me」というキーワードを掲げている。 また、Media Centerで録画したTVやPC上で管理しているデジタルカメラデータを、WMP10の中で管理可能にしている。これにより、Media Centerが標準で扱えるメディアタイプすべてが、WMP10の中でも利用可能になった。Media CenterとWMP10は共通のライブラリや機能をバックボーンに、ユーザーインターフェイスの違いによって使い分ける兄弟のような関係になった。 加えてメディア配信サービスへのアクセス機能を強化。同時発表されたMSN Musicはもちろん、月額固定で好きな音楽を楽しめる「Napster」や、映画コンテンツのレンタル(再生期限付きダウンロード)や購入を行なえる「Cinema Now」などのサービスに対応している。コンテンツサービスへのアクセスはWebベースで作られたページをプレーヤ内で表示させることで行なうが、専用プラグインを用いてiTunes Music Storeと同じようにプレーヤ上でPCの機能を活用しながら目的の曲を探し、試聴し、購入できるようにアプリケーション開発を行なうこともできる。 ちなみに日本でのサービスだが、日本法人のマイクロソフト株式会社はWMP10と関連サービスに関して、現時点では一切のコメントを控えている。しかし、噂によれば米国と同じようにMSN Musicを立ち上げるとの観測がもっぱらだ。もちろんMSN Music以外にも、Windows DRMを用いているコンテンツ配信サービスならば、WMP10日本語版に対応する可能性はあるだろう。また映画配信のCinema Nowも、既に日本法人が立ち上がっており、こちらもWMP10日本語版と同時にサービスを開始するのでは? と推測される。もちろん、すでにコンテンツを提供中のPRISM TVもWMP10に対応するはずだ。 なぜなら、時期は未定ながらPMC日本語版も市場に投入される見込みだからだ。CreativeとiRiverが、国内販売されるPMCの最有力候補だろう。PMCはネット販売でダウンロードした映像コンテンツを出先で楽しむことができる。必ず対となる配信サービスは用意されると考えられる。 ●圧倒的なレスポンスのPMCだが…… さて、ではCreative Zen Portable Media Center(Zen PMC)の試作機を簡単に紹介しておこう。ただし、試用したZen PMCは米国において評価サンプルとして貸し出されたものであり、日本仕様とは細かな違いがあるかもしれない。 日本法人のクリエイティブメディアは、日本での発売に関してはアナウンスできる段階ではないとしている。また、試作段階の品であるため、液晶パネルの品質やヘッドフォン出力に関しては参考程度に留めておいて欲しい。特に液晶パネルは、製品版では変わっている可能性が高い。 Zen PMCは20GB HDD、3.7型液晶パネル、最長7時間のビデオ再生、音楽ファイルで最長22時間の再生が可能なリチウムイオンバッテリ(3.7V 3.6Ah)を内蔵している。重さは352g(試作機の実測値)だ。米国での価格は499ドルである。 そのほか、細かなハードウェアスペックは全PMCで共通と考えていい。400MHz動作のIntel XScale、64MB RAM、2MB ROM、液晶パネル解像度は320×240ピクセル。対応コーデックは動画がWMV(7~9の全てに対応。ただしCBRエンコードのみ再生保証で最高800kbpsまで)、音声がWMA(VBR、Lossless、Voice含む)とMP3、画像がJPEGとなっている。もちろん、コンポジットビデオ出力でTVに接続することも可能だ。小型ながらスピーカーを内蔵しているため、音質さえ気にしなければ何人かで映像を楽しむこともできる。 Zen PMCの詳細なスペックに関しては、すでに日本でもプレスリリースが出ているため、そちらを参照して頂きたい。
操作面は緑色のスタートボタン、戻るボタン、それに4方向カーソルボタンとOKボタンが左側に集中配置されている。基本的な操作感はMedia Centerに準ずるもので、左手だけでの操作に違和感を感じないならば、誰でも直感的に使うことができるだろう。ただ、左にカーソルがあると、ついつい右手でOKボタンを押したくなるもの(ゲーム機の影響だろうか)。右手側には再生、一時停止、次曲、前曲、ボリューム調整のボタンが並んでおり、そちらを間違えて押してしまうことがしばしばあった。そうした意味では、やや慣れが必要と言えるかも知れない。
ただし動作速度は他の類似デバイスに比べ、圧倒的に速い。再生から出画までの時間や、メニュー操作に対するレスポンスは小気味よく、デジタルカメラ写真の表示も400万画素程度の画像ならサクサクと動く。ポータブルデバイスの“オマケ”写真表示機能は、たいていは遅くて使い物にならないものだが、本機程度の速度があれば十分に実用に耐える。 メニュー構成や音楽再生中のジャケット表示画面、音楽再生をしながらのメニュー操作やスライドショーなど、Media Centerに通じる良さがあちこちにちりばめられているのがPMCだ。 しかし、こうしたポータブルデバイスは単体で楽しむものではない。コンテンツを管理するPCとポータブルプレーヤであるPMCが、どのように連携するかが気になるところではないだろうか? PMCの最大のネックは、実はそこにあるのかもしれない。 ●トランスコード必須のビデオ転送とMedia Center Editionの不在 PMCはWindows XP Media Center Edition 2004(MCE)を映す鏡のような存在だ。言い換えればMCEで管理しているデジタルコンテンツが無ければ、その能力を100%発揮することはできない。WMP10にデジタルカメラ写真の管理機能などが付加され、MCEでなくともPMCを楽しめるようになっているが、TV録画機能だけはWMPではカバーできない。“MCEで予約録画をしておいたTV番組をボタン一発同期をかけてPMCで持ち出す”といったことはMCEが無ければできないのだ。 ユーザーが所有しているTVチューナカードの録画フォルダを、WMP10で監視する設定を行なっておけば、録画で追加されたMPEG-2映像を自動的にWMP10のライブラリに追加して(この場合、登録場所はTVではなくVideoになる)利用することも不可能ではないが、番組名がファイル名になっている場合はともかくとして、TV録画時のプロパティ情報が利用できず、管理性が著しく低下してしまう。 WMP10には「Sync」つまり同期機能が追加されており、自動的にライブラリ内容をシンクロさせることが可能になった。この時、ユーザーはコンテンツのサイズやCODECを全く気にしなくていい。ジャケット写真などももちろん自動転送できる。iTunesとiPodに比べると、シンクロ設定がやや煩雑ではあるものの、機能面ではさしたる違いはない(もちろん、手動でのファイル移動も可能)。ただし、これらのユーザー体験が完全にシームレスになるにはMCEの存在が欠かせないのである。 では手動のファイル操作は可能なのか? もちろんできる。PMCはUSB 2.0対応のストレージとして認識されるため、特定のフォルダを開いてその中に手動管理しているファイルを放り込めばいい。が、放り込む前にCBRのWMVへの変換を手動で行なっておく必要がある。PMCはタイトルリストをWMVのタグから生成するため、変換時にはタイトルを入力しておく必要もある。また自分で作成したWMVを転送する際は、エクスプローラから直接ドラッグ&ドロップで移動させる必要がある。WMP10を用いて同期を行なうと、必ずWMVへの再変換がかかってしまうからだ。 またPMC自身には2カ国語放送用の音声モード切替機能はない。従って、WMVへのトランスコード時にLチャンネル(日本語側)のモノラルに変換しておかなければ、左右で異なる言語の音声が出てきてしまう。PMCに手動で転送する際は、2カ国語放送への対応も自ら行なっておかなければならない。 問題はTV録画部分に集中しているわけだが、これも日本においてMCE2004が壊滅的なほど普及していない事が理由であることは明白だ。日本以外、特に北米の店頭販売ではMCEが主流になってきている(ソニーでさえデスクトップはMCEマシンだ)ものの、国内での出荷台数は僅か。今秋にはMCEの次期バージョン発売が予定されているが、主要メーカーが独自のリモコンインターフェイスを開発している現状を考えれば、状況は厳しいかもしれない。 ただし先日、システムビルダー(ホワイトボックスPCベンダー)に対してもMCEが提供されることが発表され、MCEの提供形態は緩和されつつある。もし、秋葉原で普通にMCEライセンスと対応パーツを入手できるようになれば、自作系ユーザーを中心に市場環境は変化するだろう。ハードウェアベンダーが日本語版PMC発売の方向で話を進めているのに対して、日本語版の話題があまり出てこないのは、そうした準備を進めている段階と見ることもできる。 ●より使いやすくなるDRM対応デバイス さて、もう少しPMCのバックグラウンドに入り込んでみると、一点、興味深いところもあった。Zen PMCはUSB 2.0に対応したマスストレージクラスデバイスだが、PCと接続するとUSBストレージとして認識されると同時に、MTPデバイスとしても認識され、ドライバがインストールされる。 MTPとは聞き慣れない言葉だが、開発者向け情報を探してみるとMedia Transport Protocolの略だそうだ。MTPはUSBマスストレージクラスを含む、あらゆるストレージデバイスとの通信レイヤの上にかぶせる形で動作し、著作権保護フラグ付きのコンテンツを安全に転送できる。MTPドライバはWindows XP SP2以降に含まれているため、MTPに対応したUSBマスストレージクラスのポータブルプレーヤは、ドライバインストールなしでDRM(デジタル著作権管理)で管理されたコンテンツを転送可能になる。 これまでDRMに対応するには、独自のセキュアな転送を行なうためのドライバが必要になっていたが、今後は汎用ドライバだけでDRM対応のデバイスを開発できることになる。MTPの情報はかなり以前から開発者に提供されていたようで、既発売のデバイスの中には既にMTP対応している製品も多い。 Microsoftによると、そのデバイス数は既に75以上だという。手元にある製品の中では、CreativeのMuvo TXがMTPに対応していた。 □Creative Zen Portable Media Centerのプレスリリース (2004年9月3日) [Reported by 本田雅一]
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