「LUMIX DMC-FX7」は、2003年10月に発売されたLUMIX DMC-FX5の後継機だ。光学3倍ズーム装備のコンパクトデジカメに光学手ぶれ補正機構を搭載したモデルの、2代目にあたる。先代は財団法人日本カメラ財団が毎年選出している「歴史的カメラ」にも選ばれるなど、標準ズームと手ぶれ補正を結びつけた初のコンパクトデジタルカメラとして評価されたが、FX7でははたしてどのような進化を見せてくれるだろうか。 DMC-FX7の最大の特徴は、小さなボディに巨大な液晶パネルを搭載していることだ。もちろん500万画素という高画質も特徴のひとつだが、ボディ背面のほとんどを液晶パネルが占め、カメラを後ろから見た印象はデジカメというより液晶テレビのようだ。余談だがこのカメラにTVチューナーを内蔵すれば、パーソナルTVとして十分通用するだろう。 ●2.5型の大型液晶パネルを搭載 液晶パネルの画面サイズは実寸で50×38mm(幅×高さ)。ボディ背面のほとんどを占有し、もうこれ以上パネルを大きくすることは不可能という域に達している。 このサイズだとプレビュー時にいちいち画面を拡大することなく撮影画像のチェックができる。さらにLCDの輝度を一時的に40%上げるパワーLCD機能を装備。この機能を使えば明るい場所でも液晶パネルがよく見える。ただしLCDの輝度を上げると画面がプラス側に露出補正したような状態になるので、ハイライト部が飛び気味になる。あくまでも構図決定や絵柄確認用だ。またパワーLCD機能は電力を多く消費するので、30秒たつと自動的に通常の輝度に戻るようになっている。 いずれにしてもこれだけ大きな液晶パネルを使っていると電池の持ちが気にかかる。実は以前にLUMIX FXシリーズを使ったとき、意外と電池の消耗が速く、「電池を喰う」という印象が強く残っている。しかしFX7では電子回路全体に渡って省エネが徹底されたようで、電池の持ちはかなり良くなっている。公称値では約120枚の撮影ができることになっているが、実際の撮影では128MBのSDカード(最大画素、FINEモードで約50枚の撮影が可能)を2枚フルに撮影してもバッテリーはダウンしなかった。
●高い操作性とコンパクト化を実現 ボディサイズは94.1×24.4×50mm(幅×奥行き×高さ)。思い切って光学ファインダーを省いたことで、従来の製品に比べ体積比で約2/3の小型化に成功している。特筆すべきはレンズを本体に収納したときの24.4mmという厚みで、この薄さならワイシャツの胸ポケットに入れても苦にならない。重量もメモリーカード、バッテリー込みでわずが153gだ。ただ液晶パネルが非常に大きいので、持ち運びのときパネルにキズを付けないかちょっと心配になる。神経質なユーザーはサードパーティー製の保護フィルターなどを貼ると良いだろう。 ボディ背面は液晶パネルが大部分を占め、操作部はかなり隅に追いやられたような印象を受ける。しかし操作に必要なスペースは十分確保されており決して操作性は犠牲になっていない。特にダイヤルで撮影モードを選び、十字キーで詳細を設定する方式はシンプルで使いやすい。また各項目を設定する際も階層が深くないので、じれったさを感じることがない。最近のデジカメは、多機能化にともない操作がめんどうになる傾向が強いが、この点についてはとてもよく整理されている。
●新方式の手ぶれ補正機構搭載 大型液晶パネルと並ぶFX7の特徴は、手ぶれ補正機構である。以前からFXシリーズは、この機能を売り物にしてきたが、FX7は新方式の光学式手ブレ補正ジャイロを搭載。手ぶれ補正の性能が大幅にアップした。プレスレリースによると「手ブレ補正制御システムを新画像処理LSI『ヴィーナスエンジンII』に組み込むことで、手ブレ検出ジャイロ及び手ブレ制御系のサンプリング周波数を従来の480回/秒から4,000回/秒と処理速度の高速化を実現し、制御の時間遅れ成分を大幅に低減。これにより手ブレ補正性能の向上と補正帯域の広域化を実現しました」とあり、要するに1秒間に行なう手ぶれ検出回数を増やすと同時に補正光学系のレスポンスを向上させ、手ぶれ補正の高性能化を図っているのだ。 FX7の手ぶれ補正モードには、常時手ぶれ補正機構を作動させるモード1と、シャッターボタンを押した瞬間に補正機構を作動させるモード2があり、モード2の方ががより高い効果を得ることができる。 また従来の製品では、手ぶれ補正をオンにするとシャッタースピードにリミッターが掛かり1/8秒以下にならなかったが、FX7では予め設定を変更すれば1秒までの低速シャッターが利用可能になった。だが実際に撮影した感想を率直に述べると、手ぶれ補正機構が効果を発揮するのは1/8秒程度が限界のようで、それ以上遅いシャッタースピードでは手ぶれが発生した。やはり夜景などの撮影には三脚が必要である。 ●新開発の「ヴィーナスエンジンII」で高画質を実現
従来のFXシリーズはダイナミックレンジがやや狭く、白飛びや暗部のノイズが気になったが、FX7では新開発の「ヴィーナスエンジンII」により、この点が大幅に改良された。レンズはライカ DC VARIO-ELMARIT(バリオ・エルマリート)5.8~17.4mm F2.8~5.0を搭載。特にパステル調の微妙な色再現性に優れ、彩度が不自然に強調されない点に好感が持てる。このFXシリーズも「ヴィーナスエンジンII」の登場により、ようやく高性能レンズに見合った画像が得られるようになったようだ。またディストーションが低く押さえられている点も高く評価したい。 このほか「ヴィーナスエンジンII」の採用により0.008秒というレリーズタイムラグを実現。カード容量一杯まで連続で撮影が可能な「フリー連写モード」と相まってストレスのない撮影ができる。なおフリー連写モードは、シャッターを押しっぱなしにするとカードの容量いっぱいまで連写ができるが、高速で連写ができるのは、FINEで4コマ、STANDERDで7コマまで。これ以上のコマ数になると書き込みが終わるまで連写は一時ストップしてしまう。
●光学ファインダーを省略したことについて 最初にこのカメラを手にしたとき、光学ファインダーを省略したことがとても気になった。というのは「電池の持ち」と「液晶パネルの見やすさ」がとても気になったからだ。だが実際に使ってみると、電池の持ちは公称値通りだったし、炎天下でもパワーLCD機能を使えば快適にフレーミングを行なうことができた。もはや、このクラスのカメラに光学ファインダーは不要ではないだろうか? 敢えて光学ファインダーを省きカメラのコンパクト化を優先させたパナソニックの姿勢には大いに共感を憶える。
□製品情報 ■注意■
(2004年8月25日) [Reported by 中村文夫]
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