フィルムスキャナの第2弾は、前回のエプソンGT-F550と同じ解像度を持つフラットベッドスキャナ、「CanoScan 5200F」である。フィルムのスキャンは35mm専用という点も同じである。 違うのは、フィルムのオートローダを装備していないことだ。そのほかは反射原稿は当然スキャンできるし、形状も似ている。わずかに大きいぐらいで、ちょうどライバルになると思われる。このため、同じフィルムをスキャンすることを前提として、試用してみた。 ●操作性はやはりフラットベッドそのもの 外観からしてフラットベッドスキャナだが、内部もほぼフラットベッドスキャナの標準的なタイプと言っていい。カバーを開けて、保護マットを外すと、フィルムスキャンのための蛍光灯照明部が出てくる。ただし、フィルムホルダーに入れてスキャンする方式のため、ストリップフィルム(スリーブ仕上げ)を6コマカバーするように細長い。以前のフラットベッドスキャナでは、フィルムを照明するための「透過原稿ユニット」が必要だったが、現在の製品ではこのように照明部が組み込まれている。 PCとの接続はUSB2.0で、転送速度は早い。ファイルが8bit TIFFということもあって、転送はエプソン GT-F550よりもやや速い。また、フィルムスキャナを最高解像度でスキャンし、転送するよりも速い。 オートローダを装備していないので、フィルムはホルダーにセットし、スキャナの奥を目印にして置く(写真A)。この場合、フィルムを裏返しにセットしなければならない。これは撮像素子がガラス面の下側にあり、スキャンをするというフラットベッド型に共通した「お約束」である。フィルムスキャナはもちろん、前回のGT-F550でもストリップフィルムのオートローダを経験してしまうと、ホルダーは面倒だ。それにゴミが付きやすいという点も気がかりだ。 スライドマウントに入っているフィルムは別のホルダーをセットし、そこにマウントをはめていくような形になる(写真B)。4コマ同時にセットするのはエプソンよりは便利である。しかし、やはりホルダーのセット自体が面倒くさい。
フィルムをセットしたら、あとはPCにインストールしたドライバを使う。ArcSoft PhotoStudioというサードパーティー製のソフトをまず起動し、メニューから「取り込み」を選ぶと、スキャンドライバ(Scan Gear CS)が起動するようになっている。 このドライバには基本モード(図1)と拡張モード(図2)がある。基本モードは300dpiがディフォルトであり、ほかの設定もあまりできない。本格的なフィルムスキャンは拡張モードを使うべきだ。このほかに、Canon Scan Toolboxというのもあり、これはおもにスキャナから直接プリンタへ出力するコピーモード用である(図3)。
拡張モードでは出力解像度を2,400dpiまでセットすることができる。さらに自動色調整、輪郭強調、ごみ傷除去、退色補正、粒状感低減などのメニューもある。 前面の操作パネルは非常にシンプルで、コピー、スキャン、PDF、E-mailの4つだけ。ただ、フィルムのスキャンはドライバ側で命令するから、このボタン類は使わない(写真C)。 ●スキャンの画質は十分満足できるもの では、実際にスキャンしてみた結果はどうだろうか。 前回と同様のフィルムということで、まず女性ポートレート。1,200dpiの解像度でスキャンしてみた。画像の大きさは1,644×1,112ピクセル、8bit TIFFで保存して、約5.23MBとなった。画像サイズから言うとデジカメの200万画素クラスだが、それよりも解像度が高い感じだ(写真1A)。 さらに、2,400dpiの最高解像度でスキャンしてみた。3,288×2,224ピクセル、8bit TIFFで保存して、約20.9MBのファイルサイズになった。画像を見ると、ドライバで輪郭強調がかかっていることもあり、非常に解像度が高い(写真1B)。色再現性もよく、A4にプリントアウトしてみても、600万画素のデジカメに匹敵するほどだ。
このスキャナのもうひとつの長所は、スキャンするフィルム1コマの面積が35.4×23.7mmと、35mmフルサイズ(36×24mm)にきわめて近い点だ。エプソン GT-F550では約22×32mmにトリミングされてしまうのに比べると、5200Fではトリミングの度合いがぐっと減っている。たとえば、国旗を入れた写真ではちゃんとカメラのフレーミングどおりになっている(写真2)。また、この写真ではよりポジ忠実で、露出もぴったりだった。こういうむずかしい条件でも、このスキャナの自動露出の精度は非常に高い。 つぎの被写体はさらに意地悪と思われる、シルエットになった完全逆光写真だ。これも自動露出が正確に働いて、ポジ忠実に仕上がった(写真3)。全体に露出はエプソンよりも0.5EVほどアンダーめだが、オリジナルにはより忠実である。 粒状感低減では、ISO1600のカラーリバーサルで舞台を撮影した、顔の部分にかなり粒子が目立つフィルムをスキャンしてみる(写真4A)。たしかにざらざら感が少なくなった(写真4B)。プリントアウトしてGT-F550と比べてみると、粒状感の改善はエプソンのほうがいいが、そのぶんピントが甘くなったような感じになる。その点、キヤノスキャン5200Fはまだざらざら感が残るものの、ピントが甘くなることはなかった。これはどちらがいいかは好みによるし、この粒状改善とか粒状感低減というのは、もっと現像オーバーだったり、あるいはもっと増感をして、ほんとうに粒子が荒れた写真を救済するためのものと思われる。なお、お断りしておかなければならないのは、前回のこの画像は裏焼きだった。今回の向きが正しいので、間違いをお詫びして訂正する。
さて、以上の画像はすべてスキャンしたままで、あとで手を加えていない。そのままストレートで出して、これだけの画像が出るというのは素晴らしい。ただ、写真の完成度を高めるには、やはりレタッチソフトで補正をしたほうがいい。Arc Soft PhotoStudioもレタッチ機能があるが、慣れているPhotoshop CSでレタッチをした。まず、彩度を上げて、さらにややピントが甘いので、アンシャープマスクを300%かけてみた。その結果、A4にプリントしてもびくともしない画像を得ることができた(写真5)。
●ほぼフルフレームのスキャンはうれしい このように、フィルムスキャンだけをしてみたが、前回のGT-F550同様に、予想以上にいい画質が得られた。とくに気に入ったのは、35mmフィルムをほぼノートリミングでスキャンしてくれることだ。フィルムスキャナーだと、まわりまで入れて、完全なフルフレームでスキャンしてくれるが、ホルダーを使う以上、完全なフルフレームは無理だろう。しかし、ほぼフルフレームのスキャンができるということは非常にありがたい。 また、デフォルトでアンシャープマスクがかかるようになっているとはいえ、非常に解像度が高い。また、露出もぴったりで、色再現性もいい。前回も書いたが、本当にこのタイプのフラットベッドスキャナを購入する気になった。 注文はGT-F550のようなオートローダの装備だ。これがあるとないでは、使い勝手に相当な差が出る。フィルムスキャナと張り合っていくためには、オートローダは必需品だろう。 もちろん、解像度は2,400dpiに満足することなく、もっと上げていって欲しい。さらに、35mm専用ではなく、せめて中判フィルムをカバーするようになって欲しい。大判(4×5インチ判以上)はやや特殊だし、まだまだフィルム派が多く、デジタル化しようとするユーザーは少ない。しかし、645判や6×7判はフィルムで撮っておいて、デジタル化もしたい、というユーザーが増えてきている。とりあえずは645判まででいいから対応して欲しい。 あと、ボディーの大きさがやや大きめと書いたが、これはもう少し小型化できないものだろうか。もちろん、反射原稿に対応するために、そうは小型化できないのはわかっているが……。 CanoScan 5200Fは、コストパフォーマンスも高く、多目的に使えるフラットベッドスキャナである。いまだに「フラットベッドなんて」と思われている方々には、ぜひ体験していただきたい高画質スキャナである。 □キヤノンのホームページ ■注意■
(2004年8月10日)
【PC Watchホームページ】
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