OperaでWeb閲覧が可能な端末
「京セラ AH-K3001V」



■一年ちょっとぶりのAir H" PHONEの新端末

開いた状態のAH-K3001V本体。薄くシャープなイメージのデザイン

 いま話題になっている携帯端末がある。それが京セラ「AH-K3001V」だ。DDIポケットのサービス「Air H" PHONE」に対応した端末で、このサービスに対応した端末としては昨年4月1日に発売された日本無線の端末以来、1年ぶりの新端末になる。

 音声端末タイプでパケット代金が定額制というサービスに対応した「Air H" PHONE」は、当時話題にはなったものの利用できる端末が日本無線の端末しかなく、他社製の端末を待ち望むユーザーが少なくなかった。

 京セラの端末も昨年冬には登場するという噂があったが、発売されなかった。なかなか登場しない新端末に苛立ちを覚えるDDIポケットユーザも少なからずいたのではないだろうか。ようやく5月14日に発売開始されたのが、「AH-K3001V」である。

 4月下旬に正式発表され、5月に入ってからは多くのショップで予約販売の受付を開始した。予約を開始した量販店では、予約数が一杯になり、早々に締め切ったショップも出てくるほどの人気だったという。発売当日は行列ができるなど、この端末への期待度が高かったことが伺える。

■DDIポケットのAir H" PHONEサービスの魅力

 6月上旬現在、DDIポケット以外でも定額制の料金プランをサービスしている事業者は存在するが、筆者にとってその料金はあまり魅力的な額ではない。DDIポケットの場合、標準コースにオプションメール放題を付ければ、月々3,360円の定額料金で、メールの送受信だけはいくらでも利用できる。端末でのインターネットアクセスだけでなく、PCなどでのデータ通信が使い放題になるプランでも月々6,000円程度の料金で利用できる。

 通信速度に違いがあるので一概に比べることはできないが、各種割引サービスを利用しない場合、最低でもNTTドコモのFOMAで10,600円、auのCDMA 1X WINで8,100円の月額料金で、DDIポケットの料金の低さが分かっていただけるだろう。

 DDIポケット以外の事業者では、端末だけで利用するパケット料金は定額サービスが提供されているが、PCなどのデータ通信は従量制になってしまう点も気になるところだ。

 料金以外にも筆者が特に気に入っているところがある。DDIポケットのEメールは端末の機種に左右されるものの、全角文字で一通20,000文字まで送受信することが可能(AH-K3001V利用時)なことだ。

 パソコンでの受信を前提としたメールでも、これならほとんど読むことができる。メールに関しては、他の事業者のメールサービスと比べて極めて魅力的な仕様だ。

■予定どおり発売日に入手

 「AH-K3001V」は発売日には手に入れにくい可能性があったため、筆者も都下の量販店で予約を入れた。

 5月14日の発売当日、契約のためにショップに出向くと、携帯電話の契約コーナーには筆者以外に10人ほどの客が契約作業をしていたが、全て「AH-K3001V」の契約であったのには驚かされた。

 普段なら申込書を書いて端末を受け取るまで30分もあればすむはずだが、その日は約2時間待ちという状況だった。

 ちなみに筆者が契約したのはパケコミネットプランにオプションメール放題を加えたものだ。端末が気に入らない場合は数カ月で解約する可能性もあるため、年間契約割引は申し込まなかった。

 このプランにしたのは、端末をPDAやパソコンにつないで通信する予定がないこと、端末自体でホームページをアクセスする機会が多いこと、A&B割という割引サービスが受けられることが主な理由だ。A&B割に関しては、後日DDIポケットのサービスセンターから申し込みを行なった。

 端末を受け取ってまず感じたことはコンパクトで軽量だということ。普段、2.4型の液晶画面でメガピクセルのデジカメ機能を搭載した携帯電話を持ち歩いているためか、スペック以上に軽い印象を受けた。

 PHSだからといって、最近の携帯電話と比べて外装の質感は劣ることはなく、液晶もクリアで文字も読みやすいものだ。ちなみにAH-K3001Vの画面は半透過型TFT液晶で解像度は240×320ドット、サイズは2.2型と最新の携帯電話と比べても遜色のないものが採用されている。

折りたたんだAH-K3001V本体。色はホワイト。レンズの横にあるのは、自分撮り用のミラー 外部に付けられた液晶画面。電波状態や時刻などの情報が表示される 外部に付けられた液晶画面は、電話を開いた状態では上下が反転する
AH-K3001Vのボタン部分。最上部のPAGEボタンで画面スクロールなどの操作が可能。もうちょっと大きいと使いやすいのだが…… 充電器に乗せたAH-K3001V。ACアダプタと直接接続されている USBケーブルを接続したままでも、充電器に載せることができる形状になっている
【お詫びと訂正】初出時にキャプションと画像の対応がずれていました。お詫びして訂正させていただきます。

■情報量の多いメール画面

 オンラインサインアップを行ない、pdx.ne.jpドメインのEメールのアドレスを取得した。とりあえず、ボタンの押しやすさや日本語変換のチェックをするためメールを作成することにした。

 ボタンの操作感は良好で、日本語変換に関してもストレスを感じることはなかった。日本語変換はモバイルWnnV2が搭載されている。日本語入力は、最新機種の携帯電話と比べてとくに優れているとは感じないが、予測変換機能もあり十分合格点は付けられるものだ。

 変換辞書に関しても良好で、今のところ入力で極端にストレスを感じる機会はなかった。

 ただ、数十文字程度の文字入力であればいいが、入力文字数が多くなると、急に処理が遅くなることがある。何が原因で起こっているのかはわからないが、長文の入力を行なう機会が多いユーザーは、購入前に実機に触れて試しておくことをお奨めしたい。

もっとも小さなフォントで表示したメーラ。情報量が多く使いやすい

 次に、何通かのメールをAH-K3001Vで開いてみた。本機のメーラでは4つのフォントサイズを選択できる。試行錯誤の結果、筆者は最も小さいフォントに設定することにした。このフォントはかなり小さいが、液晶の視認性がいいこともあり、文字がつぶれて読めないということはない。

 最も小さいフォントに設定しておくと、メーラ上では横方向に全角18文字を表示でき、携帯端末としては情報量の多い画面となる。画面のスクロールもページ単位で上下できるキーが用意されており、素早いスクロールが可能だ。

 また、pdx.ne.jpドメインのほかに、普段使っているインターネットメールのアドレスを2種類登録でき、端末だけの操作で直接送受信が可能になっているが、いまのところ必要を感じていないので利用してない。

 メールだけでなく、ダイヤルアップ接続先の設定もデフォルトで設定されているAir H" PHONEセンター(端末内ではClub AirH"と表記されている)以外に2カ所まで設定できる。それだけでなく、Opera起動時や、メール送受信時など個別の接続先をデフォルト値以外に2つまで設定でき、必要に応じて簡単に切り替えることができる。

 このようにダイヤルアップ接続などの設定が細かくできるのは珍しく、とても便利に感じるユーザーも多いのではないだろうか。

■WebブラウザはOperaを採用

 AH-K3001Vの最も大きな特徴はブラウザとして採用されているOperaだろう。本機のOperaは、CompactHTML、HTML、SSL、Cookie、JavaScriptに対応しているものだ。

 通常、携帯電話などでは専用のホームページ以外は正常に表示できない場合がほとんどだ。もちろん、携帯電話の普及にともない携帯電話向けのホームページは増えて来たが、PC向けに開発されたページの内容と異なったり、情報量が少なかったりするのが現実である。

 しかし、AH-K3001Vに搭載されたOperaならPC向けのホームページを表示可能で、フレームを使ったホームページなども表示できる。

 Operaの表示モードは、携帯電話向けに作られたホームページを表示するのに適している「ケータイモード」、パソコン向けのホームページをそのまま表示するのに適している「フルスクリーンモード」、パソコン向けのホームページをAH-K3001Vの画面に適したサイズに加工して表示する「スモールスクリーンモード」の3モードが用意されている。

 大きな解像度のページを縮小表示する機能なども用意されている。ブラウザを終了することなく、表示モードを切り替えられるのも便利だ。フレーム間の移動は、カーソルボタン操作のほか、メニューからの操作でも可能になっている。

 実際に使ってみると、PCでインターネットを利用するのとほぼ同じ感覚でホームページを利用でき、そのメリットは大きいだろう。この機能だけでもAH-K3001Vを購入した価値があると感じている。

 もちろん、全てのサイトをそのまま表示できるわけではない。特にインターネットバンキングやインターネットトレード、インターネットショッピングといったサイトは、正常にアクセスできない場合がある。しかし、これまで表示すら正常にできなかったサイトがチェックできるのは大きな進歩だ。

 データ転送速度が32Kパケットと遅いこと、画面がQVGAに制限される点を差し引いても、携帯端末でPC用のホームページが表示できる事は大きな魅力だろう。

ケータイモード(ズーム100%)で PC Watchのページを表示した画面 解像度の大きな画面はズームの倍率を下げることで全体表示ができる ケータイモード(ズーム50%)で PC Watchのページを表示した画面
フルスクリーンモード(ズーム50%)で PC Watchのページを表示した画面 スモールスクリーンモード(ズーム100%)で PC Watchのページを表示した画面。画面に収まりがいいように、自動的に加工され表示される スモールスクリーンモード(ズーム100%)で PC Watchのページを表示した画面をスクロールした状態
ブラウザを起動したまま、表示モードを切り替えることができる メインメニューを表示した画面
内蔵メモリの詳細状態を表示した画面。「その他」はメールやCookieなどで利用されている部分。受信メールが82通あるため、その他の割合が大きくなっている 82通のメールを削除した後の内蔵メモリの状態画面。「その他」の部分が小さくなっている

■その他の機能

 通話の品質に関しては、PHSらしい音質でクリアな通話ができた。車や電車などで移動しながらの通話は試していないが、都内で歩いて会話する程度なら特に問題を感じたことはない。

 AH-K3001Vには、PCなど他の機器と接続するためにUSBポートが用意されている。PCのUSBポートに接続すれば、AH-K3001Vを使ったダイヤルアップ接続が可能だ。USBバスパワーを使った充電もできる。

 付属のCD-ROMに収録されたアプリケーションをPCにインストールすれば、AH-K3001V内の電話帳やブックマークを追加・編集したり、カメラで撮影した画像データや電子メールを吸い出したり、待ち受け画像の作成などが可能だ。

 付属のアプリケーションをひととおり使ってみると確かに悪くはないのだが、細かな点で気になる部分が無くはない。

 付属のCD-ROMでは、京セラユーティリティソフトウェアとH"問屋という2つのアプリケーションが収められているが、H"問屋で電話帳を操作すると入力していない誕生日欄におかしな日付が入るといった現象が確認できた。

 また、11万画素CMOSタイプのカメラが内蔵されているが、それほど目玉となる機能ではない。対象物との距離と関係なく、全体的にぼやっとした撮影画像になってしまうようだ。まだ、光量不足な場合は画像全体に縦のノイズが乗ってしまう。京セラはデジタルカメラメーカでもあるのだから、今後のチューニングに期待したい。

夕刻に撮影した画像。暗い場所だと縦にスジのようなノイズが入ってしまう 明るい戸外で撮影した画像。条件のいい状況での撮影

 販売戦略上、カメラはどうしても内蔵させたかったということなのだろうが、個人的にはこのクオリティのカメラは必要ないと感じた。カメラのコストを内蔵メモリの容量増に割り当ててもらいたかったと感じているのは筆者だけだろうか。

 また、AH-K3001Vは、αPHSや自営モードの規格には対応してないため、会社や自宅の電話機の子機として利用することはできない。

■期待以上の満足度

 この多機能な端末をまだまだ使い込んでいるとは言えないが、筆者が期待していた以上の満足度を感じている。

 メールやブラウザ、ダイヤルアップ接続の仕様はよく考えられており、Air H" PHONEのサービスを楽しむことができる仕上がりになっている。今のところ、大きなトラブルには遭遇していないため、余計に満足感が高いのかもしれない。

 ただ、操作中の端末の反応速度は速いほうではない。また、個人的に気になったのは、指定時刻を音や振動などで知らせてくれるアラーム機能が、Opera起動時には動作しなかったところと、Opera起動時に音声着信ができなかったことがある点だ。これは不具合とは言えない部分だが、改善されればうれしい。

 発売直後にアップデータが公開されるなど、やや未完成な感もあるが、携帯端末で手軽にメールやブラウザを利用できるメリットは大きく、そこに魅力を感じるユーザーには良い端末と言えるだろう。

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(2004年6月4日)

[Text by 一ヶ谷兼乃]


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