筆者はコンパクトデジカメを愛用している。小型・軽量でポケットに手軽にねじ込めるものがいい。確かにコンパクトでは撮れないシーンもある。先日の「INDY JAPAN 300マイルレース」(ツインリンクもてぎ)などは、それに近い状況だ。 そういうところでも写真を撮りたい、あるいは撮らなければならない人には一眼レフタイプしかないだろうが、筆者はそういう写真を撮ろうとか、撮らなければならない立場ではないから、コンパクトで十分である。 それでも持って行ったLUMIX FZ-1でも記念の一枚くらいは撮れるものだ。実際、もてぎで一番役に立ったアイテムは何かといわれたら、仕事(Pit Live TVの取材)を別にすれば、やはり双眼鏡だった。今度行く機会があったら、もっと明るくて視野の広いのを持っていきたいところだが、双眼鏡も大きくて重いものよりコンパクトタイプが好きだから、その願いはかなわないかもしれない。 さて、そのツインリンクもてぎには、FZ-1のほかに、別のコンパクトデジカメを持参した(FZ-1がコンパクトか、と言われると微妙なところだが、冬用アウターのポケットならねじ込めなくはないし、少なくとも軽量なのは間違いない)。それはリコーのCaplio RXだ。 ●広角撮影が可能なコンパクト機
Caplio RXのウリは広角端が28mm(35mm換算、以下同様)というクラス随一のワイドズームと、レスポンスの良さである。28mmワイドは1つ前のモデル(Caplio G4 wide)からの特徴だが、RXではテレ端を他社の平均的な3倍ズーム機(35mm~110mm前後)に近い100mmまで伸ばした3.6倍ズームレンズを採用したことが新機軸だ(G4 wideは28mm~85mmの3倍ズーム)。いずれにせよ、5万円以下の価格帯で、28mmワイドが使えるデジカメは、このリコーの2機種以外にない。 一方、ズーム倍率を伸ばしたこと、カメラの小型・軽量化を進めた副作用で、レンズは暗くなってしまった。G4 wideではワイド端(28mm側)でF2.6、テレ端(85mm側)でF4.3だったF値が、RXではワイド端(28mm側)でF3.1、テレ端(100mm側)ではF5.8まで暗くなっている。やむをえないことではあるといえ、手ぶれ、特にテレ端では要注意だ。 レスポンスの良さは、このところのリコー製コンパクトデジカメで一貫して訴求されてきた長所。シャッター半押しをしないで、一気にシャッターを押し切った場合のレリーズラグが世界最速の0.12秒というのがセールスポイントである。 筆者はこれに異議を唱えるつもりはないが、若干の注釈は必要かと思っている。それは0.12秒でシャッターが切れたとしても、必ずオートフォーカスが合焦しているとは限らないこと。もう1つはストロボのチャージが入るとキビキビとした動作が失われやすいことだ。 特に標準添付のアルカリ乾電池やニッケル水素乾電池では、バッテリ駆動時間そのものには問題ない(バッテリはかなり持つ方である)ものの、ストロボのチャージに時間がかかる。ストロボ撮影が多いユーザーは、別売オプションの専用リチウム充電池を買っておいた方がいい。専用リチウム充電池を使うと、バッテリ駆動時間が延びるだけでなく、ストロボチャージ時間も短縮される。 ●ストロボ撮影用ホワイトバランス設定が可能に ストロボ撮影時のシャッターラグ(ストロボが焚かれてからシャッターが切れるまでの時間)も良好なようだ。筆者の手持ちのコンパクトデジカメのうち、キヤノンのPowerShot A60は、ストロボが光ってからシャッターが切れるまでの時間が長めのようで、うちのネコを撮るとかなりの確率で目をつぶった写真になってしまう。ペットの撮影にストロボはあまり使いたくないのだが、どうしても使わなければならないこと(ストロボを使っても撮りたいこと)もある。
とはいえ、ストロボの光量やワイド端での周辺光量などまで考えれば、ストロボ撮影は必ずしも本機が得意とするところではない。ただ、ストロボ撮影時でもホワイトバランスの変更ができるようになったことも、大きな進歩に挙げられる。 以前使ったことのあるCaplio RR30では、ストロボ撮影時にホワイトバランスが変更できなくて困った記憶がある。オートホワイトバランスで何も問題がなければ良いのだが、RR30では必ずしもオートでうまくいかなかった。RXではホワイトバランスの変更が可能になったし、ストロボ使用、非使用にかかわらず、オートホワイトバランスの精度にも進歩が見られるようだ。RR30に比べればシャープネスもニュートラルに近づいているように感じた。 ただし精度という点でも、こと本体の工作精度になるとちょっと怪しい。特にアラが目立つのがSDカードとバッテリホルダ兼用のフタの部分で、カメラ本体前部と後部のパネルがツライチになっていない(触ると継ぎ目が分かる)。実用上の問題はないのだが、ちょっと残念なところだ。 ●FinePix F401のリプレースとなれるか? また、起動時間を短縮したことの影響か、起動時あるいはズーム操作時に生じるレンズの繰り出し音も、うるさいとは言わないまでも決して静かではない。屋外での使用では特に問題はないのだが、たとえばカンファレンス等のプレゼンテーションを撮影するような場合、ノイズが若干気になる。本機に一番ふさわしい利用法は、屋外でのスナップ撮影、旅行のお供、といったところだろう。 実はCaplio RXに触れてみるに際して、筆者は1つの希望を持っていた。それは、今仕事用のメモに使っているFinePix F401を置き換えられないか、というものだ。F401は、小型・軽量である上、比較的レンズが明るく(F2.8~4.8)、撮影感度がISO 200~と高い。 しかも動作音(レンズの繰り出し音)が静かだから、薄暗い室内でプレゼンテーションを撮るのに比較的向いたカメラだ。筆者の用途は、ディスプレイで見るか、せいぜいL判程度にプリントする程度だから、FZ-1やF401のような200万画素機で全く困らない。 それでもF401を置き換えたくなったのは、記録メディアのスマートメディアをSDカードに変えたい、という事情があるからだ。もう1台のFZ-1がSDカードであるだけでなく、最近のノートPCはSDカードのリーダーを備えたものが増えている。若干スケジュールが遅れたものの、1GBのSDカードも発表されたように容量も十分だし、採用するメーカーも増加の一途。個人的には次の標準はSDカードではないかと思っている。 もちろんFZ-1だけで済めばそれに越したことはないのだが、かさばる上にバッテリ寿命が筆者の希望に遠く及ばない。FZ-1と組み合わせるカメラとして、小型・軽量であるだけでなく、同じメディアが使えて、なおかつズームレンズが広角にシフトしたCaplio RXは最適ではないかと思ったのだ。 残念ながら、この希望をかなえるのは、Caplio RXでは少々難しかった。何度か説明会等に持参してプレゼンテーションを撮影してみたのだが、油断するとすぐシャッター速度が1/8や1/4になってしまう。特に広い部屋で後の席だと暗いテレ端での撮影となるため、ノイズが増えるのを承知でISO 800を使わざるを得ないが、それでも十分でないことがある。この用途には、もうしばらくF401を携帯することになるだろう。 ●お散歩用カメラとしてベスト だからといってCaplio RXが悪いカメラだとは思わない。冒頭でも述べたように、コンパクトタイプのカメラは少なからず得手不得手があり、万能ではない(万能性を追求すると、かさばる一眼レフになる)。スナップカメラとしても、ワイド端では周辺光量落ちが目立つなど、決して長所ばかりではない。しかしだからこそ、その代償として小型・軽量、28mmワイド、5万円を大きく切る価格といった長所があるわけで、要はそれを分かって使うことだと思う。うるさいことを言わなければ、クラス随一の28mmワイドと長いバッテリ寿命を持つRXは、最高のお散歩カメラになり得る。 内蔵する8MBのフラッシュメモリにしても、標準添付のSDカードが8MBなら、こんな使えないものをつけて、と文句の一言も言いたくなるところだが、内蔵ならば緊急時に使えるかも、と評価できる。散歩中に絶好の被写体を見つけた時、SDカードがいっぱい、ということは考えられる話だ。どれを消そうかと悩んでいたり、カバンの中の予備のSDカードを探していては、シャッターチャンスを逃してしまう。 前モデル(Caplio G4 wide)に比べて薄型になった本体も、ポケットにはなじみやすい。その一方で、本機の発売によりG4 wideの実売価格はグンと下がっているから、望遠タイプのデジカメと組み合わせることを前提にすると魅力的だったりするのだが。 気軽な外出用、あるいは荷物を増やしたくない旅行のお供を探している人は検討してみる価値のあるカメラだろう。 □関連記事 (2004年4月28日) [Text by 元麻布春男]
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