[an error occurred while processing the directive]

無線LANでモータースポーツを楽しむ
~「インディジャパン2004」映像配信サービスレポート

iPAQ 4015で実況映像を受信中

4月15日~17日



 4月15日からの3日間開催された「ブリヂストン・インディジャパン300マイル2004」。このレースに合わせ、会場となったサーキット「ツインリンクもてぎ」では無線LANを用いた映像配信サービスの実験が行なわれた。

 昨年の鈴鹿8時間耐久ロードレースやF1日本グランプリで、鈴鹿サーキットが観客向け無線LANサービスを行なったが、鈴鹿サーキットと兄弟会社でもあるツインリンクもてぎでも、鈴鹿で得られたノウハウを活かし、新しいサービスを模索する一貫として導入されたという。

 無線LANアクセスポイントは、メインスタンドおよびオーバルコース・ターン1からターン2にかけての観客席周辺、それにコントロールタワーからパドックにかけてのエリアに約40基を設置。すべてIEEE 802.11b対応のアクセスポイントで、SSIDはpitlivetv、暗号キーはなしだ。

 ただし、鈴鹿サーキットが無料でインターネットにアクセス可能なのに対し、茂木における無線LANはインターネットへの接続がされていない。このため、サーキットの無線LANインフラを利用してメールチェックやWebページの閲覧、掲示板への書き込みなどを行なうことはできない。

順位表もストリーミングで配信。インディ側がタイム計測システムを持ち込んでおり、データ互換性がないための苦肉の策だとか

 無線LANはサーキット内のイントラネットに接続され、PDAやPCに対してレースのライブ映像とリアルタイムの順位、ラップタイムを、それぞれストリーミングで放送する。タイムチャートはダイナミックHTMLを用いるのではなく、チャート映像を動画ストリームで配信していた。レースのライブ映像には実況アナウンスも流れるため、映像と実況、解説を楽しみながらレースを観戦できることになる。

 鈴鹿ではテストした機材そのものを見せる、という意味で開放されていたインターネット接続が、茂木では行なわれなくなったことに関して、ツインリンクもてぎ営業部営業課チーフの本間公康氏は「鈴鹿での反省がある」と話す。

 「鈴鹿ではインターネットを開放したがために、本来のコンテンツを来場者が楽しめなくなっていた。1アクセスポイントあたりの同時接続数が限られているためだ。同様にインターネットからサーキットコンテンツにアクセス可能にしてしまうと、外来トラフィックでサーキットに足を運んで頂いている観客向けのサービス容量に限りが出てしまう」と本間氏。

 今後もツインリンクもてぎで開催される主要レースで、同様の無線LANサービスを実施しながら、観客に向けてどのようなサービスが適しているかを模索する。

●快適なPDAからのアクセス

 映像や音声の配信はニッポン放送プロジェクトが制作。日本放送プロジェクトは以前からFM放送でインディジャパンの実況を配信しており、サーキット内に流れる実況音声も担当している。これに映像をプラスし、ストリーム配信しているわけだ。

 本間氏によると、今後の主要レース、たとえばJGTC(全日本GT選手権レース)やモトGPなど、年内いっぱいは可能な限りサービスを継続。来年以降も縮小の計画はなく、さらに良いサービスを目指す。

 「たとえばアクセスポイントをIEEE 802.11gに対応させることで複数ストリームを同時に配信し、カメラを素早く切り替えたり、注目しているクルマを追いかけるようにカメラを自動切り替えするといったアイディアもある。レースをより楽しめる環境を、ITを用いて作っていきたい(本間氏)」。

 映像ストリームはMPEG-2、MPEG-4、Windows Mediaの3種類が採用されており、クライアント環境に応じて選べる。ソフトウェア面での支援は、沖電気、マイクロソフト、ビートクラフトが担当。クライアントはWindowsマシンの他、PocketPC 2003を搭載したPocketPC、あるいはビートクラフト製MPEG-2プレーヤーがインストールされているシャープのLinuxザウルスが利用できる。

 このうちザウルスに関しては、メインスタンド裏にあるピットライブTVのブースに50台の貸し出し端末が用意されていた。金曜日の予選でもほとんどの端末が出払っており、なかなかの盛況ぶりだ。端末を返却に来た観戦者に話を聞いても、ほとんどが順位のわかりやすさや目の前で映像を楽しめる良さを気に入っている様子である。

 なお手持ちの機材で接続する場合は、アクセスポイントに接続後「http://pitlivetv」にアクセスすればブラウザ上にコンテンツが表示され、使っている端末に適したストリームのアイコンをクリックすれば楽しむことができる。

 筆者もこの日のために持ち込んだhp iPAQ 4150内蔵の無線LAN機能を使い、コンテンツにアクセスしてみた。ノートPCやザウルスの場合、完全な透過型液晶のため晴天時はディスプレイが見にくくなってしまう。いきおい輝度を最大に上げることになるが、するとバッテリ持続時間の問題が頭をもたげてくる。その点、半透過型液晶を採用したiPAQのようなPDAであれば、バックライトオフでも見やすい。

 ピットライブTVは、バッテリ持続時間とワイヤレスアクセス機能を実現するCentrinoモバイルテクノロジをデモンストレーションする場としてインテルがタイトルスポンサーにもなっているが、当日は晴天だったこともあって、ノートPCを使うユーザーはほとんど見かけなかった(もっとも、PocketPCの多くにインテルのPXAプロセッサが搭載されているのはご存じの通り。iPAQ 4150も然りだ。Intel Insideには変わりがない)。

キャンギャル写真を期待している人には申し訳ないけど、そんな暇、ありませんでした。これ1枚だけしか撮っていません。ごめんなさい 開会セレモニーではブルーインパルスのデモ飛行もあった 渡邊貞夫さんがスタート前の国家を演奏
なぜ小倉優子なのか?? ボーリングのパーフェクトスコアは300点。インディジャパンは300マイル。で、日本ボウリング場協会のイメージガールをつとめる小倉優子さんが招待されたそうなのだが、う~ん。かなり苦しいぞ スタート直前の様子 スタート前、コックピットで集中力を高める高木選手
日本人最高位でフィニッシュしたルーキーの松浦 松浦選手が所属するスーパーアグリ・フェルナンデスが使っているテレメトリシステムの一部。アクセル開度、スピード、ステアリング角度などがリアルタイムに表示される
こちらはIRL標準のリザルトビューア。オフィシャルのタイム計測システムと接続され、リアルタイムにラップチャートが更新される F1やJGTCとは異なり、ハイテク機器は必要最小限のようだった。パドック内もスッ キリ・サッパリ 燃料補給とタイヤ交換を行う高木虎之介

●HP製Itanium2サーバとXeonサーバでコンテンツをリアルタイム配信

 さて続いてシステムの裏側に回ってみた。ツインリンクもてぎの方針として、サーバの機種名や各サーバの役割分担などは明らかにできないが、コンテンツ配信サービスのバックエンドには日本ヒューレット・パッカード(HP)が提供したItanium2サーバと、複数のXeonサーバ、沖電気のXeonワークステーションによって構成されていた。

 このうち、沖電気のワークステーションはMPEG-2とMPEG-4の配信に使われている。Windows Mediaのリアルタイムエンコードは、すべてクラスタリング構成を取るHP製Xeonサーバが担当。すべての機器が、ひとつの19インチラックに収まっていた。

 このほかHPは30台のノートPCを、プレス向け貸し出し端末に提供しており、無線LANを通じてプレスルームにいなくとも、レース状況を把握しながら取材活動が行なえるようにしていた。

 HPと言えばBMW Williams F1チームのサポートで知られるが、日本においてもツインリンクもてぎ、鈴鹿サーキットでの無縁LANコンテンツ配信、それにJGTCにおけるM-Techチームのサポートを行なうなど、モータースポーツに対して積極的な活動を展開している。

 HPの担当者は「モータースポーツとITは、切っても切れない関係になってきている。すべてのエンジニアはPCを活用しながら作業を進め、PCを使って作戦を練る。もちろん、マシン開発にPCは欠かせない存在だ」と、サポート理由を話す。

 今後、顧客サービスにITを活用する例が増えてくれば、さらにモータースポーツとITの関係は深いものになっていくだろう。しかし、モータースポーツの顧客サービスとしてITを活用する取り組みは始まったばかりだ。屋外での利用に適した端末やバッテリ持続時間の問題も解決していかなければならない。もちろん、サーバや無線LAN技術の進歩も、サービスを楽しめる人の数を増やすためには重要になるだろう。

インディジャパンとインディ500にスポット参戦するロジャー安川 ターン1でインを差した高木虎之介。不利な状況下ながら決勝での追い上げは見事 だった 昔のインディカーも登場

□日本HPのホームページ
http://www.jpn.hp.com/
□ツインリンクもてぎのホームページ
http://www.twinring.jp/

(2004年4月19日)

[Reported by 本田雅一]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.