会期:3月18日~24日(現地時間) 世界最大のITトレードショー「CeBIT 2004」が3月18日~3月24日の7日間にわたって、ドイツのハノーバー市にあるハノーバーメッセにおいて開催されている。IT、通信、デジタル家電などテーマは多岐にわたっており、1月に米国で開催されたInternational CESに続き様々な新製品が発表されることになる。 初日となる18日(現地時間)には、多数の企業が様々な発表会を行なっているが、そうした中で無線LANの普及を目指す業界団体「Wi-Fi Alliance」は、無線LAN規格に関する記者説明会を開催した。 昨年IEEE 802.11委員会の規格策定が完了し、対応製品が多数販売されているIEEE 802.11gの普及に関する説明をはじめ、現在IEEE 802.11委員会のTGiにより規格策定が進められている、無線LANのセキュリティを強化するための規格であるIEEE 802.11i、QoS規格であるIEEE 802.11e、次世代高速無線LANとなるIEEE 802.11nの策定状況などに関する説明がその主な内容だ。 ●普及が進む無線LAN製品、2004年は家電への普及も目指す
今回のCeBITでは、ほとんどのベンダのトップがIT、家電、通信の3つの融合が今後の方向性であると強調する。いわゆるデジタル家電という新しい流れの中で、それら3つの技術を最もうまく融合できたベンダこそが生き残る、というのが機器ベンダや半導体ベンダに共通する危機感であることを浮き彫りにしている。 そうした中無線LANは、いわゆるデジタルホームなどと呼ばれる、ネットワーク化された家庭内での通信インフラとして期待されている。Wi-Fi Allianceの記者説明会ではまず、現在の無線LANの普及状況、今後のロードマップなどについて説明された。 この中で、Wi-Fi Allianceのマネージングディレクタであるフランク・ハンズリック氏は、「昨年の第4四半期の段階で、Wi-Fiに対応した製品の出荷数は900万ユニットを越えた」と述べ、無線LANの普及は順調に進み、今後も順調に普及が進んでいくだろうという見通しを明らかにした。 「Wi-Fi Allianceは相互接続性を実現するためにロゴプログラムを行なっており、認証された機器は相互に接続できることが保証される。実際、テストを実行すると、1/4が最初のテストを落ちており、このプログラムがなければ相互接続性を実現するのは不可能だろう」(ハンズリック氏)の通り、無線LANの機器ベンダにとってWi-Fiのロゴを取得することはマーケティング上の必要条件となっている。 さらにWi-Fi AllianceはWi-Fi Zoneと呼ばれるWebサイトでパブリックホットスポットに関する情報を提供しているが、現在はWi-Fi Allianceのページからのみアクセスできるようになっている。そこで、このデータベースを外部のWebサイトにも公開する“Wi-Fi Zoneポータルプログラム”と呼ばれるサービスを開始することも明らかにされた。これにより、Wi-Fi Alliance以外のWebサイトでも、ホットスポットの情報を公開することが可能になり、「利用者の利便性がより増すだろう」(ハンズリック氏)と、無線LANの普及に役立つとWi-Fi Allianceでは考えているようだ。
●QoSの11e WMEは第2四半期に認証テストプログラムを開始へ
今回の発表会では、無線LANに関するロードマップも公開された。現在IEEE 802.11委員会では、QoSの為のTGe(TaskGroup e)、セキュリティのためのTGi(TaskGroup i)、次世代無線LANの規格のためのTGn(TaskGroup n)などの分科会に分かれて規格を検討している。 Wi-Fi Allianceは、これらの規格策定の進行状況に対する見通しと、それらが終了した後のロゴプログラムの認証テストなどに関するスケジュールが説明された。 これらの3つの規格の中で最も早く規格策定が終了するのがTGeだ。IEEE 802.11eとしてリリースされる予定のこの規格は、QoS(Quality of Service、帯域保証)に関する規格となっている。 今後無線LANはネットワーク上でビデオファイルを再生する用途などに使われると考えられている(すでにそういう使い方もされているが)が、そうした時に問題となるのがQoSだ。 ビデオの再生を途切れることなくスムーズに行なうには、必要な帯域を映像再生のために確保しておく必要がある。現在の無線LANではそうした仕組みが用意されておらず、ネットワークに負荷がかかるとコマ落ちが発生したり、再生が止まってしまうなどのトラブルの原因となっている。そこで、IEEE 802.11eではQoSの仕組みを用意して、ビデオファイルの再生などで問題が発生しないように配慮する。 WME(Wireless Multimedia Enhancements)と呼ばれるQoSの規格は、現在最終段階に来ており、3月末に行なわれるIEEE 802.11委員会の会合で承認されれば、IEEE 802.11eとして第2四半期には策定が完了することになるという。 Wi-Fi Allianceでは、この動きを受けてWMEに関する規格策定が終了し次第、相互接続性の検証を行ない、ロゴのためのテストを開始するという。ただし、これはIEEE 802.11委員会の決定がでてからということになり、場合によっては延期される場合もあるかもしれない。 ●セキュリティの11iは第4四半期、11nは2005年に
TGiでは、現在最も利用されているWEPを拡張するセキュリティ強化に関する規格が策定されている。 このうち、いくつかの技術はWPA(Wi-fi Protected Access)としてWi-Fi Allianceが標準を策定しており、すでに多くの製品に搭載されている。11iではこのWPAを拡張し、さらに強固なセキュリティを実現することになる。 昨年時点の予定では、IEEE 802.11iの策定は第2四半期には終わる予定だったが、実際にはやや遅れ、第3四半期にずれ込む見込みであるという。このため、Wi-Fi Allianceの認証プログラムの開始も第3四半期となっており、対応製品が登場するのもそのころになりそうだ。ただ、実際にはほとんどの無線LANコントローラはすでに11iに準拠しており、ファームウェアのアップデートなどで対応できる製品が多そうだ。 TGnで検討されているのはIEEE 802.11nとなる予定の規格で、現在のIEEE 802.11a/b/gの後継となる高速無線LAN規格で、ローデータレートで100Mbit/secを実現するものだ。 11nは昨年の段階では2006年~07年に規格策定が予定されていたが、これが大幅に早まり2005年の第3四半期での規格策定終了が現時点では検討されているという。 Wi-Fi Allianceによる認証プログラムや対応製品の出荷も2005年の第3四半期が予定されており、早ければ2006年の初め頃には対応製品が登場するということも十分にありそうだ。 ●今後はVoice over Wi-Fiへの取り組みも検討中
このほか、ハンズリック氏は家電エリアにおけるWi-Fi Allianceの取り組みなどについても言及した。「今年はデジタル家電に無線LANが搭載されることも増えるだろう。すでにDMA(Digital Media Adaptor)のような製品には無線LANが搭載されており、2007年には現在の5倍程度になるだろう」と説明し、Wi-Fi Allianceとしても今後積極的に無線LANがデジタル家電に搭載される動きを後押ししていきたいと述べた。 また、ハンズリック氏は無線LANベースの携帯電話の動きに触れ、「日本ではすでにNTTドコモが試作のハンドセットを公開しているなど動きがでてきている。今後はWi-Fi Allianceで相互接続性の確認を始めるなど、積極的に取り組んでいきたい」と述べ、無線LAN業界全体として、Voice over Wi-Fiに対応した無線LAN携帯電話について取り組んでいきたいという意向を表明した。 □CeBIT 2004ホームページ(英文) http://www.cebit.de/homepage_e □関連記事 【2003年7月4日】【笠原】802.11gのスループットを上げる“フレームバースティング” http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0704/ubiq15.htm 【2003年3月13日】【CeBIT】Wi-Fi Allianceが新セキュリティ仕様「WPA」の詳細を公開 ~801.11g用のラベルも http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0313/cebit02.htm (2004年3月19日) [Reported by 笠原一輝]
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