会場:米国ネバダ州ラスベガス市 ラスベガスコンベンションセンター
かつて、COMDEXと言えば、参加者にとっては苦行以外の何者でもなかった。というのも、COMDEXの会場は実に広大で、最盛期にはメイン会場であるLVCC(ラスベガスコンベンションセンター)以外の会場にでも開催されており、会場内の移動には一苦労させられたからだ。 しかし、そうした話も今や昔。前日レポートでもふれたように、今回のCOMDEXでは、3つあるLVCCホールのうち、セントラルホール1つだけを利用している。しかも、セントラルホールをすべて使っているわけではなく、最奥は基調講演の会場に利用されているなど、実際にはさらに小さい規模となっている。 今回は、COMDEXの会場の様子と注目の展示製品などについてお伝えしよう。 ●最も大きなブースを構えたMicrosoft 今回のCOMDEXで最も大きなブースを構えていたのがMicrosoftだ。というよりは、大きなブースを構えていたのがMicrosoftだけと言った方が正確だろう、あとは小さなブースが多数あるという構成になってしまっていた。 Microsoftのブースでは、同社の製品が多数展示されており、特に例年と変わった感じはない。また、ブース内には同社のOSやソフトウェアに関連した製品を取り扱っているベンダが小さなブースを持っており、自社製品をアピールしていた。 Microsoft以外のブースはいずれも小型で、米国の展示会というよりは、小型のブースが所狭しとならぶComputex Taipei的な印象が強かった。韓国、台湾、香港のベンダが、ぞれぞれにグループを作って展示ブースを形成している。 展示されているものを見る限り、COMDEXの主催者が目指していたようなエンタープライズ向けのソリューションというよりは、コンポーネントやエンドユーザー向けと思われる製品が多く、残念ながら企業の購買担当者や技術責任者が見に来たとしても、それほど得るものが多いとは思えなかった。 実際、いくつかのブースで聞いて回ると、COMDEXへの出展を申し込んだ後に、COMDEX自体の方針転換を聞かされた、という出展社が少なくない。極端な話、方針転換自体を知らない関係者も少なくなかった。これでは、COMDEXの方針と出展社の間で食い違いがあってもしかたないだろう。
●Gatewayや富士通がコンバーチブル型のTablet PCを展示 すでに、MobileFocus/DigitalFocusのレポートで、Acer、HP、ViewSonic、東芝の4社が、“第2世代Tablet PC”とゲイツ氏が呼ぶ、新しいTablet PCを展示したことをお伝えした。COMDEX会場のMicrosoftブースにはさらにGatewayと富士通のTablet PCも展示されている。 Gatewayはキーボードが付いていないスレート型と液晶が回転してノートPCとしても使えるコンバーチブル型の2つの製品を展示していた。超低電圧版Pentium M 1GHz、Intel 855GM、Intel Pro/Wireless 2100(IEEE 802.11b)を搭載した、いわゆるCentrinoノートで、12.1型の液晶ディスプレイを搭載し、重量は約1.36kg。オプションでドッキングステーションが用意されており、これらに装着することでデスクトップPCライクに使うことができる。 また、別途コンバーチブル型の“Tablet PC Deluxe”も用意されている。12.1型液晶ディスプレイを採用し、液晶パネルを回転して折りたたむことでTablet PCとして、あるいはクラムシェル型のノートPCとして使うことができる。 こちらも、超低電圧版Pentium M 1GHz、Intel 855GM、Intel Pro/Wireless 2100(IEEE 802.11b)を搭載し、いわゆるCentrinoノートとなっている。PCカードスロットの他、SD/メモリースティック両対応スロット、Ethernet、モデム、外部RGB出力、USB 2.0×2などのポートを備えている。 富士通は日本ではスレート型のみをリリースしているが、富士通の米国法人はCentrinoベースのコンバーチブル型Tablet PCを展示していた。LifeBook T3000と呼ばれるこの製品は、12.1型の液晶ディスプレイを搭載し、CPUには通常版Pentium M、チップセットにはIntel 855GM、無線LANにはIntel Pro/Wireless 2100(IEEE 802.11b)を搭載したCentrinoノートPCだ。 Pentium M 1.40GHz、256MBメモリ、40GBのHDDというスペックで1,799ドルという価格に設定されており、すでに米国では販売が開始されている。 今回のCOMDEXでは、東芝、富士通、HP、Acer、ViewSonic、Gatewayと、いずれもTablet PCの新製品を発表しており、さながらTablet PCのショーケースのようだった。 1つ言えるのは、全体的に液晶ディスプレイのサイズが大型化に向かい、スレート型はほとんど姿を消し、コンバーチブル型が主流になってきたことだろう。日本では、なかなか新製品が発表されないTablet PCだが、米国ではそれなりに将来性が期待されていることが伺える。
●来場者を集めていたのは、販売系のブース Microsoftブース以外は、小さなベンダのブースだけで、ケーブルやら、USBマウスやらと、どちらかと言えばComputex Taipeiのような展示会になっており、特に目立った新製品などは見あたらなかった。 実際、商談などをしなければ、2時間もあればすべての展示ブースを一通り見て歩くことが可能で、初日だけ来て、あとは来ないという来場者が多かったようだ。このため、初日はともかく、2日目、3日目の午後ともなると、来場者もかなり減り、寂しい展示会になってしまっていた。 だが、そんな会場の中で唯一、人を集めていた場所がある。それが販売系のブースだ。今年のCOMDEXでは、Dellが出展しており、会場でオーダーを受けつけるサービスを実施していた。しかも、会場だけの特別価格などが提示されており、それが理由で多くの来場者を集めていたようだ。 そのほかにも、会場で即売会のようにビデオカメラを売っていたブースなどが人気を集めており、COMDEX会場内でもっとも活気のある場所となっていた。
●対抗イベントは展示会よりもカンファレンスに注力 COMDEXに対抗するイベントとして、JupiterMediaが主催したCDXPOは、ラスベガスの主要地区(ストリップ通り周辺)にあるホテルとしてはLVCCから最も遠いところにあるマンダレイベイホテルで開催された。ただ、CDXPOはカンファレンスが中心のイベントになっており、展示会はどちらかと言えばおまけという扱いだ。 CDXPOの展示会は、マンダレイベイホテルのサウスホールを利用して行なわれていたのだが、利用されているのはサウスホールの1/4程度で、残りの部分は使われていなかった。実際に、このホールをすべて埋めようと考えていたのかどうかはわからないが、そうだとすれば見込みよりも出展した企業が少なかったのかもしれない。また、参加している企業も半分近くがカナダの企業となっており、PC関連の展示はほとんどなく、基本的にはエンタープライズ向けの展示が中心になっていた。
●COMDEX離れはさらに加速か、各ベンダはCESへの移動を検討 このように、展示会がCOMDEXの主要部分であるとすれば、事実上、本格的に出展しているのはMicrosoftだけ。言い換えればMicrosoftがいなければ成り立たないイベントになってしまっていた。日本の業界関係者などがお金をかけて行くほどの価値があるショーであるかと言えば、すでにそうではなくなっていると言ってよい。 ただ、実際には周辺で開催されていた、各ベンダのプライベートショーや発表会などは相変わらず盛んで、それだけを見ていると例年のCOMDEXと大きな違いはない。単に本体のCOMDEXだけが地盤沈下してしまったように見える。 では、なぜCOMDEXはここまで寂しいものになってしまったのだろうか? 直接的の原因は、一昨年(2001年)のCOMDEX直前にニューヨークで発生した9.11テロ事件により、来場者が激減、昨年もその減少傾向が止まらなかったということがあるだろう。 それでも昨年は、まだ展示会場もそれなりの広さがあり、実際にいくつかの新製品を見つけることができた。今年はそれすらも見つけることができないのは、やはり“エンタープライズ向け”というコンセプトが間違っていたと言えるのではないだろうか。 このため、「もうCOMDEXには出展しない、来年からはCESだけに出展する」という話は期間中に何度も聞いたし、プライベートショーをCOMDEXに平行して行なっていたベンダも、来年度以降はCESと同じタイミングにする、と言っているところが多かった。 COMDEXを主催するMediaLive Internationalに突きつけられた現実はかなり厳しいと言える。来年以降もCOMDEXを開催するのであれば、かなり思い切った改革が必要になるだろう。 □COMDEXのホームページ(英文) (2003年11月20日) [Reported by 笠原一輝]
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