会期:9月24日(現地時間)
VIA Technologiesは、Computex Taipei 2003会場近くのホテル「Grand Hyatt Taipei」において、開発者向けのイベントであるVIA Technology Forum(VTF)を開催し、同社の今後の製品計画などについて説明した。その中で、同社のウェン・シー・チャン社長兼CEOは、キューブ型という新しいプラットフォームを作るのに成功したMini-ITXの戦略をさらに進める、より小さなフットプリント(設置面積)のNano-ITXフォームファクタを策定したことなどを明らかにした。 ●今後はハイエンドの市場も重視していくとVIAのチャン社長 VTFのオープニングには、VIAのウェン・シー・チャン社長兼CEOによる基調講演が行なわれた。この中でチャン社長は、同社が主張してきた、すべてのデバイスが接続されることでよりよい体験をユーザーに提供できる「Total Connectivity」というビジョンを説明。 「当社の戦略は、高度なコンピューティングから、どこにでもあるようなデバイスすべてのx86の環境を構築していくことだ。これには、Pentium 4やAthlon 64のような高性能なCPUをサポートするチップセットから、当社のEdenのようなCEライクなデバイスまでトータルでソリューションを提供していく」と述べ、これまでの“バリュー”(低価格と言い換えてもいいが)一辺倒から、ハイエンドからローエンドまですべての市場を重視していくという姿勢の転換を明確にした。 チャン氏はこれまでの基調講演では必ず「IntelのPentium 4の高クロックなんて必要ない」と必ず繰り返していたのだが、今回の基調講演ではそうした“アンチIntel”の姿勢はまったく見せず、Intelを「パートナー」と呼んでいたのが印象的だった。こうした、チャン氏の姿勢の変化の裏には、もちろんIntelとVIAの訴訟が終結したという背景がある。これにより、VIAはIntelと争う必要がなくなり、これまでの“アンチIntel”の姿勢を引っ込めたと考えていいだろう(先週のIDFで、展示会にVIAブースがあったのも同じ流れだといえる)。 チャン氏は、「家電のような分野にx86を入れていくには、とにかく消費電力やフットプリント(チップの設置面積)を小さくしていくことが重要だ」と述べ、同社がこれまで推進してきたMini ITXよりもさらに小さなフォームファクタとして「Nano-ITX」と呼ばれるフォームファクタの規格を策定したこと、さらにそのNano-ITXに利用するCPUパッケージとして超小型のNano-BGAと呼ばれるパッケージを開発したことを明らかにした。Nano-ITXでは、マザーボードのフットプリントが12×12cmとなり、17×17cmのMini-ITXに比べてもさらに小さくなっている。 今回のComputex Taipeiでもキューブ型のPCケースは大流行という感があるが、よく知られているようにキューブ型ケースのマザーボードはMini-ITXフォームファクタの製品がほとんどだ。言ってみれば、VIAがMini-ITXというフォームファクタを標準化したからこそ、ケースベンダーはキューブ型ケースを作る、マザーボードベンダーはMini-ITXのマザーボードを作るという“分業”が可能になり、キューブ型ケースという新しいプラットフォームを作ることに成功したと言ってよい。最近のPC業界では、こうした新しいプラットフォームやフォームファクタの標準化をIntelが行なってきたが、VIAは今回Intelのお株を奪うフォームファクタの標準化に成功したという訳だ。 VIAとしては、Nano-ITXで、“2匹目のどじょう”を狙っていることは間違いなく、今後台湾のケースベンダなどからNano-ITXに対応したケースが登場すれば、より小さなキューブ型ケースや、これまでには見たことがないほど小型のケースなどが期待できるだけに要注目の動きだ。 ●PT880、PT890とリリースしていくIntel向けチップセット 午後に行なわれたテクニカルセッションでは、チップセットなどの具体的な製品に関する戦略が説明された。VIAのプロダクトマーケティング担当副社長のジー・ウェイ・リン氏は、今年の第4四半期から2004年にかけてのVIAチップセットに関する詳細を説明した。 Intel向けの製品としては、すでに7月にシングルチャネルのPT800をリリースしているが、今後もこの後継となる製品をリリースする。すでにIDFでは、デュアルチャネル版のPT880を展示( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0918/idf04.htm )しており、COMPUTEX TAIPEI 2003でもいくつかのマザーボードベンダなどで搭載製品が展示されている。 PT880では、メモリコントローラがデュアルチャネルとなり、DDR400を利用した場合にメモリの帯域幅が6.4GB/秒となる。このため、800MHzのシステムバスをサポートするPentium 4の帯域幅である6.4GB/秒とマッチし、PT800よりも高い処理能力を発揮すると予想することができる。 実際、リン氏はPT880の処理能力の具体例として、3DMark2001 Second Editionのスコアを上げ、「PT880は、Intel875Pのスコアを上回っている」と、IntelのIntel875Pよりも高い処理能力を発揮するとアピールした。なお、リン氏によれば、PT880の大量出荷は今月末に開始される予定ということなので、第4四半期にはマザーボードが各マザーボードベンダなどから出荷されることになるだろう。
PT880の後継として用意されているのが、PT890だ。PT890では、DDR2、PCI Expressといった、IntelがGrantsdaleで実現しようと考えている機能が搭載されることになる。リン氏は「我々のPT890では、グラフィックス用途とは別のPCI Expressのバスをノースブリッジに用意する。これは、PCI Express X1を4つないしは、PCI Express X4を1つとして利用することが可能になる」と述べ、サウスブリッジにグラフィックス用途ではないPCI Express X1を用意するIntelのGrantsdaleに比べて、技術的なアドバンテージがあると主張した。PT890は第4四半期中にサンプル出荷が開始され、来年の第1四半期中に大量出荷が開始される予定であるということだ。 なお、PT800、PT880、PT890のグラフィックス統合版として、PM800、PM880、PM890という3つの製品を予定している。PM800/PM880にはUniChrome2コアを統合し、PM890ではUniChrome3コアを統合する予定となっている。UniChrome2は、現在VIAの統合チップセットに利用されているUniChromeコアの後継で、2パイプラインX2テクスチャユニットの構成になっており、200MHzコアとなっている。これに対して、UniChrome3コアでは、DirectX9対応となる予定で、4パイプライン構成で、ピクセルシェーダ2.0に対応しており、エンジンのクロック周波数は250MHzになるという。ただし、UniChrome3コアのスペックはまだまだ流動的であり、今後も変更される可能性が高い。
●K7世代向けデュアルチャネルチップセットのKT880を来年投入 AMD向けのチップセットとしては、すでに第2四半期にシステムバス400MHzに対応したKT600をリリースしたが、K7世代(Athlon XP)向けのチップセットとして、今年の末までにKT880を投入することを明らかにした。 KT880は、KT600のデュアルチャネルメモリ版で、NVIDIAのnForce2に対抗する製品となる。これにより、ハイエンドのK7の市場で、NVIDIAに奪われた市場の奪回を目指すことになる。 K8世代向けのチップセットとしては、すでにK8T800を投入しているが、まもなくK8T800にUniChrome2コアを統合した統合型版K8M800を投入する。 PT890のK8版がK8T890だ。K8T890はPCI Expressブリッジとなり、グラフィックス用のPCI Express X16と、PCI Express X1が4つないしはPCI Express X4が1つという構成となる。なお、K8T890にUniChrome3コアを統合したK8M890も計画されているが、今回は特に言及はなかった。
●次世代サウスブリッジはVT8239で、AzaliaとGigabit Ethernetに対応
リン氏は、最後にサウスブリッジについて触れた。「VT8237の後継として、VT8239をリリースする。VT8239ではAzaliaオーディオやGigabit Ethernetに対応する」と述べ、VT8237の機能をさらに拡張するという方針を明らかにした。 これも、2004年にIntelがリリースするGrantsdaleの機能を先取りしたものだと言ってよい。VT8239がGrantsdaleを上回っている点は、Gigabit Ethernetを搭載している点だろう。GrantsdaleのサウスブリッジであるICH6はGigabit Ethernetを搭載しておらず、Gigabit Ethernetの機能を実現するには、PCI Express接続されるNorthwayというコードネーム呼ばれる外付けGigabit Ethernetチップを利用する必要がある。これに対してVIAでは、外付けのPHY(物理層)を追加するだけでGigabit Ethernetに対応することができ、ローコストで追加することができるようになる。 なお、VT8239は2004年の第1四半期にサンプル出荷が開始され、2004年の第2四半期に大量出荷される予定だ。 □COMPUTEX TAIPEI 2003のホームページ(英文) (2003年9月25日) [Reported by 笠原一輝]
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