●厚さ8mmのカードサイズデジカメ 富士フイルムアクシア株式会社のカード型デジタルカメラ「eyeplate mega」が本日発売された。 eyeplate megaは、クレジットカードサイズデジタルカメラの2代目で、131万画素CMOSセンサーを搭載し、最大1,280×1,024ピクセルの画像が撮影できる。また、マクロモード、SDメモリーカードスロットを新たに装備し、別体のフラッシュまで標準装備される。価格はオープンプライスだが、購入したベスト電器では11,800円だった。
機能豊富ながらクレジットカードサイズを守ったeyeplate megaだが、最薄部は8mmながら、レンズ部分が膨らんでおり約1cmの厚みがある。レンズ部分は沈胴式で、電源スイッチを入れる動作で、さらに少し飛び出す。
本体外装のほとんどがアルミ素材で、さわると冷たく、品質感も高い。周囲のプラスチック部分も明るいグレーで清潔感がある。レンズはコーティングの関係か、斜めから見るとルビー色に見える。 右側面にはSDメモリーカードスロットとUSBインターフェイス(mini B)、左側面にはストラップの取り付け部と電源スイッチ、背面には撮影枚数などを表示する小さな液晶と、ビープ音のON/OFFスイッチ、画面サイズ切替と削除の兼用ボタンが配置される。また、本体の表と裏には、右手で保持しやすいようにくぼみが作られている。
バッテリは内蔵のリチウムイオンで、充電はUSBのバスパワーで行なわれる。データ転送も充電もUSB 1本というシンプルなシステムで、持ち歩くものも少なくてすむ。
別体のフラッシュは、本体上部の穴に2本のプラグを差すことで固定される。フラッシュを装着した状態は合体ロボというか、装甲付きというか、本体のみとはだいぶ異なった印象を与える。これは、フラッシュが電源として単四電池を内蔵しており、分厚いデザインにならざるをえないからだ。装着した状態の厚みは約22mmになる。
●軽快な撮影感
操作系はシンプルで、マクロ切替と兼用の電源スイッチ、シャッターボタンの4カ所だけだ。通常は電源スイッチを左手で入れて、右手でシャッターを押すだけでいい。 本体に設けられたくぼみは、指がうまくかかって持ちやすさに貢献している。しかし、前モデルでは右にあったストラップの取り付け部が左になってしまったので、持ち歩いている状態から構えるときにとまどうことがある。 eyeplate megaには液晶モニターが搭載されていないため、ファインダーは光学式のみ。ファインダーを正面から覗くと、中央に“○”が見えるようになっている。これは写ルンですなどでも採用されている技術で、ファインダーを斜めから覗き込んでしまい、目標と異なった場所を撮影してしまうことを防ぐための工夫だ。eyeplate megaは、本体が薄く斜めに構えてしまいやすいので、有効な技術だろう。 シャッターボタンの反応がよく、データの保存時間も短いため、軽快に撮影できる。データの保存が早いのは、RAW形式で保存されるためだろう。640×480ピクセルだけでなく、1,280×1,024ピクセルの撮影モードでも速い。 レンズは35mmカメラ換算で46mm相当なので、単焦点のコンパクトカメラとしてはちょっと望遠寄りだが、とくに違和感はなかった。 オートパワーオフは30秒に設定されており、撮ろうと思った時に、OFFになっていることが何度かあった。これは60秒に変更できるが、本体では行なえず、付属のソフトウェアで操作する必要がある。 内蔵フラッシュメモリは16MBで、撮影枚数は1,280×1,024ピクセル時で21枚、640×480ピクセル時で91枚だ。1,280×1,024ピクセルで撮影する場合は、SDメモリーカードがほしいところだ。SDメモリーカードはコントローラの関係で最大256MBまでの対応となっている。256MBでは、1,280×1,024ピクセル時で334枚、640×480ピクセル時で1,401枚保存可能となる。そこまでいかなくて、64MBぐらいのカードがあるとちょうどいいと思う。SDメモリーカードを使用しているときでも、記録時間は短く、内蔵メモリカードとの体感差は感じられなかった。
2時間前後で150枚ほど撮影した状態で、3分割で表示されるバッテリの残量表示が、ようやく1つ欠けた。メーカー測定値では500枚の撮影が可能とされている。よほど枚数をこなさない限り、満充電してあれば、その日のうちはバッテリを意識しなくてもいいだろう。なお、充電時間は、使い切った状態で約2時間とされている。 ●大容量に追いつかない付属アプリケーション
データの転送はUSBケーブルを接続し、専用のアプリケーションで行なわれる。 今回はWindows XP機で試したが、データ転送速度は遅く、150枚ほどの画像を転送するのに20分前後を要する。転送時にRAWデータからJPEGへの変換を行なっているためか、コントローラの関係なのかはわからないが、USB 1.1で接続しても2.0で接続してもほとんど速度は変わらない。 それならと、SDメモリーカードからUSB 2.0のカードリーダーで転送し、ローカルで変換しようとしたが、専用アプリケーションが対応していなかった。 USBからのデータ転送時しか変換ができないのでは、せっかく大容量でカードリーダーなども豊富なSDメモリーカードに対応しても、その利点を生かすことができない。PC上のRAWデータをJPEGへローカル変換できようにバージョンアップを期待したい。撮影の軽快さに比べると、転送はやや面倒な印象だ。 なお、転送時にはJPEGの圧縮率などの調整はできない。また、専用アプリケーションは、表示速度も遅く、サムネール表示や画像の回転、スライドショウなどの最低限しか備えていないので、慣れたアプリケーションがあればTWAINドライバを使用する方がいいかもしれない。
専用アプリケーションの対応OSは、Windows用がWindows 98/Me/2000/XP、Macintosh用がMac OS 9.0~9.2.2とMac OS X 10.1~10.2.3。ただし、Mac OS XではTWAINは対応しない。 ●有効なマクロモード 撮影画像については、実写画像を参照していただきたいが、全体に素直でおとなしい印象だ。ただし、コントラストは低めで、やや色味が薄い画像でもある。とくに実物よりも赤が弱く撮れるようだ。 なお、東京地方は梅雨の真っ最中で、曇天でしか撮影できなかった。遠景の画像はそのあたりを考慮して見てほしい。 新機能のマクロ撮影は有効で、かなりアップで撮れる。A4の文書類も文字が読める状態で撮れ、高解像度化とあいまって用途を広げている。 ただ、マクロで寄れるのが25cmまでなので、近寄りすぎてピンぼけになることも多かった。このあたりは液晶モニタを搭載していない以上、しょうがないところだろう。少しずつ距離を変えながら前後3枚ぐらい撮っておくことをおすすめしたい。データの保存で待たされることがないので、連続撮影もあまり苦にはならなかった。 また、データは1,280×1,024ピクセルモード時で800KB~1.4MBで、圧縮比は高くない。その割に、樹木の葉などの細部の描写は苦しいところがあるが、これは光学系の限界なのだろう。画像メモとしては十分な実力だと思う。 逆に良く撮れているのが逆光や暗い神社などで、黒つぶれしにくくちゃんと描写できている。これはeyeplate megaが搭載しているAutobrite機能が有効に働いているということだろう。この機能は、明暗差が激しい場合に露出を自動的に補正するものだ。 フラッシュについては、一長一短という感じだ。真っ暗な状態でも撮影できるのはありがたいのだが、調光機能が搭載されていないので用途は限られる。マニュアルにも、フラッシュ撮影距離は1.5mとされており、マクロモード時は使用しないように記載されている。実際に撮影してもそのとおりの印象だ。なお、フラッシュのチャージ時間は約10秒だった。 富士フイルムの関連会社の製品だけに、ファインダーといい、フラッシュといい、写ルンですとの血縁を感じるし、軽快な使用感も似ている。カード型のデジタル写ルンですとして、そういう製品を求めている人にもお勧めしたい。 ●実用性の上がったeyeplate mega eyeplate megaを編集部内で見せていると、メガピクセル携帯電話があるのに必要なのか、という声もあった。実際に使ってみた印象では、これはまったく別のものだ。少なくとも、eyeplate megaの軽快な撮影感と黒つぶれしにくい画像は、カメラとしてはD505iよりも優れている。 eyeplate megaは、「1万円程度で、万能ではないが、そこそこ実用性があるグッズ」という自分の位置をよく理解して設計されている印象だ。前モデルに対しても、マクロモードの追加と高解像度化により、実用性は上がっている。フラッシュの追加も撮れる範囲を広げたいという設計者の意図は強く感じられる。 eyeplate megaは、使用するうえでUSB付きのパソコンが必須であり、PCユーザーをターゲットとした製品だ。また、液晶モニタを搭載していないことから、普通のデジタルカメラよりも、ある程度使う人を選ぶところもある。しかし、その前提を把握しており、eyeplate megaに魅力を感じているのであれば、購入していい製品だと思う。なにより、銀塩カメラっぽいデジタルカメラが多くなってなってきたなかで、こういうデジタルカメラならではの形をした新製品が登場したことを歓迎したい。 ●実写画像
□富士フィルムアクシアのホームページ (2003年7月25日) [Reported by date@impress.co.jp]
【PC Watchホームページ】
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