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SCO社長、Linuxのライセンス問題について説明
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SCOのダール・マクブライド社長兼CEO |
7月9日発表
日本SCO株式会社は9日、都内でパートナー及び報道関係者向けの戦略説明会を開催した。説明会には米本社からダール・マクブライド社長兼CEOが出席。IBMへの訴訟を始めとする、LinuxにおけるUNIX System Vライセンス問題について説明した。
●UNIXライセンスの保護が柱に
説明会に予定されていたのは2時間。冒頭、日本SCOの麻生誠 代表取締役社長からUnixWare 7やSCO Authenticationなどの同社製品やサービスについて説明されたが、こちらは10分ほどで終了。ほとんどの時間は、マクブライドCEOによるライセンス問題の説明に費やされた。
マクブライドCEOは2002年6月にSCOのCEOに就任。以来の同社の状況を「(就任時は)オフロードを運転しているようだったが、現在では軌道に乗り、好転しつつある」と述べた。その理由を「中核資産であるUNIX OSにフォーカスしたから」とし、同社のUNIXビジネスの背景を説明した。
UNIXは'69年にAT&Tのベル研究所で開発されたOSだが、'93年にNovellがUNIX部門を買収、UNIXに関連するすべての知的財産(IP:Intellectual Property)もNovellに移動した。その後、'95年にSCOがNovellからUNIX事業とUNIX関連IPを買収した。
UNIXは、SCOによれば6,000件以上ライセンスされ、SUN MicrosystemsやHP、IBM、SGI、NEC、富士通、日立、東芝などが、UNIXからの派生物を自社独自のOSとしてリリースしている。
SCOは'95年にNovellからUNIXを買い取った | UNIXから派生したOS。IBM AIXやSun Solarisも派生物 |
なお、SCO自身も「SCO UnixWare」というOSをリリースしており、小規模ビジネスや店舗、支店向けのサーバーといったニッチな市場にフォーカスしている。また、UnixWareとインターネットアプリケーションやWebサービスの連携プラットフォームとして「SCOx」を提唱している。
しかし、UNIXライセンスを重視する構えで、同社は今年1月にSCOsource事業部を設立、Linux上でUNIX System Vアプリケーションを動作させるライブラリのライセンス提供ビジネスを始めている。マクブライドCEOはSCOsourceの目的を「SCOのIPを守り、提供していくこと」としている。
●IBM訴訟の経緯を説明
ライセンス問題の発端は、マクブライドCEOが就任してから「SCOのソースコード資産を一度整理し、評価したほうがいい」と考えたことにある、としている。調査の過程でLinuxのソースコードに、SCOが著作権を保有するUNIX System Vのコードが入っていることが判明。法的措置を取る前にHP、Microsoft、SUN Microsystemsなどの大手ベンダーに連絡したところ、IBMのみ「ネガティブなリアクションを寄せられた」ため、今年3月に訴訟に踏み切ったという。
SCOがIBMを訴えたのは、IBMのUNIX派生物「AIX」のソースコードを「オープンソースコミュニティに不適切に寄付した」からだという。具体的にはNUMA(NonUniform Memory Access:不均等メモリアクセス)やJFS(Journal File System:ジャーナルファイルシステム)、マルチプロセッシングの方法、LinuxのPower PC対応など、主にエンタープライズ用途に必要な重要な技術のソースコードが、オープンソースコミュニティに寄贈されているとした。
また、IBMがLinuxに対して提供したソースファイル数が、2000年のカーネル2.2では0だったのに対し、エンタープライズ機能を向上させた2001年のカーネル2.4では300近くまで急増していることも明らかにした。
マクブライドCEOはSCOを「木の幹」に例え、IBMらライセンシーとその派生物を「木の枝」とした。UNIXライセンスは派生物についてもその機密が保護されなければならないとし、「UNIXという大木の枝をLinuxという若木に持ってきて、接木するのは契約違反」と主張した。
ライセンス問題の流れ | IBMがAIXからカーネル2.5に寄贈したとするソースコード | IBMがLinuxに寄贈したソースファイルとヘッダファイル数の推移 |
SCOはIBMに対して「100日以内に解決されない場合はAIXの使用権を停止する」と3月7日(現地時間)に告知。また、IBMを「契約違反、不公正競争、悪質な介入、企業秘密の漏洩」のかどでユタ州法廷に訴えた。IBMはこれに応じなかったため、SCOは6月16日(現地時間)にIBMのAIX使用権を停止、これ以降に出荷されたAIXに関しては損害賠償を請求するほか、IBMによるUNIXソースコード利用の永久停止を求めた。
マクブライドCEOは「IBMはパートナーにSCOとのビジネスをやめる指示を出すなど、プレッシャーをかけている。SCOはIBMの1万分の1程度の規模しかない企業だが、この件に関しては屈するか、戦うかの選択肢しかなかった。訴訟は最後の手段だ」と述べた。
なお今回の訪日では、「IBMのような事例を作らないために」日本の大手ベンダーと話し合う予定としている。
●ターゲットはエンタープライズ用途のLinux
また、マクブライドCEOは「エンタープライズレベルのマルチプロセッサシステムには、高い技術が要求される。25年にわたるUNIX開発のノウハウに、直接アクセスすることで成し遂げられるものだ。3人くらいのホビイストがガレージでこつこつ作っていても、こうしたシステムは実現できない」という見解を述べた。さらに、エンタープライズ用途に使われるマルチプロセッシングに関するソースコードの寄贈が、カーネル2.4で500以上に急激に増えていることをあげ、IBM以外のベンダーの関与も示唆した。
こうした主張にも現れているように、SCOのターゲットはカーネル2.4以降で活発になったエンタープライズ用途へのLinuxの利用で、カーネル2.2以前のソースコードに関しては「マイナーな問題」とした。また、ソースコードの漏洩がデスクトップ用途や組み込み用となど、エンタープライズ以外の分野でも認められた場合は、その分野でも違反を追求せざるを得ないとしている。が、エンタープライズ以外の分野については調査中であり、当面はエンタープライズ分野での追求にリソースを振り向けるとしている。
カーネル2.2から2.6への飛躍的な進歩は、UNIXのノウハウなしには不可能だったと主張 | マルチプロセッシング関連のソースファイルとヘッダファイルの寄贈数の推移 |
●Linuxコミュニティの怒り
一方、SCOはLinuxのユーザーに対しても賠償を求める姿勢を明らかにしており、今年5月には優良企業1,500社に対して警告書を送付している。エンドユーザーに賠償を求めることについて同社は、米国の著作権法の規定によるものとした。
マクブライドCEOは、こうした同社の動きに対してLinuxコミュニティから大きな反発を受けたことを明らかにし「(SCOの)WebサイトはDoS攻撃され、チャットで悪口を言われ、インターネットで(CEOの)自宅の住所を地図付きで公開された。夜中の2時に電話がかかってきて、決闘を申し込まれたこともある」と述べた。
マクブライドCEOは「心情的には、Linuxコミュニティの人々の怒りは理解できる。彼らは、Linuxムーブメントを停めてほしくないと考えているからだ」とした。が、「Linuxには大きな被害を受けた。正直なところ、会社はかなり危うい所までいった」、「LinuxコミュニティはUNIXのライセンスがSCOにあることも知っている。この問題を解決しなければLinuxは発展できない。Linuxには試練の時だ」と、Linux自体にも違反を追及していく姿勢を明らかにし、「Linuxのカーネル2.4以降はNapsterのような汚点(tainted)」と述べた。
一方で「毎日、訴訟に明け暮れるつもりはない」とも述べ、Linuxの発展を阻害する意図は無く、今回の問題を業界のよい将来に向けたものとした。
さらに、SCOの動きの中で、Microsoftと早々に和解したことから、「MicrosoftとLinuxの代理戦争をやらされているのではないか」という見解があることについて、「UNIXに関するIPはSCOにとって重要なものだ。Linuxによって被害を受けたから、問題を提起した」とした。
●ライセンス違反の証拠も
SCOはIBMやLinuxにおけるライセンス違反の証拠も持っていると主張しているが「訴訟前に公にはできない」としている。が証拠の提示を求める声が大きいため、今年の6月から、ユタ州のSCO本社で、非開示契約を結んだ上で希望者に証拠を見せているという。
その反応のほとんどはSCOの主張を肯定するもので、報道関係では「LinuxコミュニティのメディアはSCOを攻撃するが、Fortuneのような主流メディアではSCOに同意する傾向がある」とした。
□日本SCOのホームページ
http://www.jp.sco.com/
□ニュースリリース(IBMのAIX使用権を終了)
http://www.jp.sco.com/company/press_release/2003/030617iat.htm
(2003年7月9日)
[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]
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