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松下、0.18μmFeRAM混載システムLSIを量産化

FeRAM混載システムLSIの量産ウェハ

7月9日発表



 松下電器産業株式会社は、0.18μmFeRAM混載システムLSIを開発、この量産化に成功したと発表した。

松下電器産業半導体社 古池進社長

 FeRAMは、電源を切っても内容が保存される高速書き込み、低消費電力を実現するメモリで、主にモバイル用途での利用が期待されている。今回開発した0.18μmFeRAM混載技術は、これまで数kbitに留まっていたメモリ容量の大容量化が可能になり、不可能とされていた大規模システムLSIの開発が可能になる。

 また、書き込み時間の高速化を実現したことでEEPROMの5分の1以下に短縮、書き換え回数は10の12乗まで可能になり、用途の汎用度が高まるという。

 松下電器産業半導体社の古池進社長は、「ユビキタス時代を、本当に具現化する技術になる」と今回の技術を位置づけ、FeRAMを半導体社の主力製品のひとつとして積極的に取り組んでいく考え。

 具体的には電子マネーや、個人情報が入ったICカードなどでの利用のほか、携帯電話やテレビなどの多様な通信方式に対応することが可能な、リコンフィギュラブルなシステムLSIの設計を可能にするという。第1弾として、今年8月には非接触型ICカード用途のサンプル出荷を開始し、今年12月には量産を開始する予定。会見では、8KBのFeRAMと、16KBのROMを混載したシステムLSIを例にあげ、現行の5分の1のサイズになることを示した。

FeRAMの原理 会場に展示された層状超格子強誘電体の結晶模型
FeRAM混載システムLSIのダイ EEPROMにくらべ1/5以下の書き込み時間

 同社では、すでに0.32μmによるFeRAMの量産化を開始しており、現在でも月300万個の生産規模に達している。2005年には1,000万個の規模に拡大させる計画だが、そのうち0.18μmFeRAMで100~200万個を占めることになると見込んでいる。

 今回発表したFeRAM混載システムLSIを実現するに当たって、松下電器では3つのブレイクスルーを実現した。

 1つは多層配線によるFeRAMセル特性の劣化の問題。多層配線による信頼性の低下をいかに補うかという取り組みだ。

 システムLSI化に必要な多層メタル配線工程では、水素が発生。これが、FeRAMの特性劣化につながるという問題があった。同社では、水素劣化防止技術であるFEHB(フェーブ)技術を採用することで、完全隔離が可能な保護構造を実現。多層配線後も劣化しないという高い信頼性を確保することに成功した。この部分で19件の特許を申請しているという。

 2点目は微細化への挑戦だ。FeRAMセルの面積を、いかに高集積化するかという点では、従来のプレナー技術から、スタック技術へと移行することでこれを解決したという。

 プレナー技術では、メモリセルを選択するトランジスタのコンタクト部と、強誘電体キャパシタ部とが離れた構造になっていたが、新たに選択トランジスタのコンタクト部の上に強誘電体キャパシタ部を設けたスタック技術の開発に成功。メモリセル面積を従来の5分の1に小型化した。また、1個のトランジスタと1個のキャパシタでメモリセルを構成したITIC(1トランジスタ1キャパシタ)技術と、スタック技術を組み合わせた微細セル技術であるUSEC(ユーセック)技術によって従来比で10分の1の小型化を実現した。この分野では53件の特許をもつという。

 3点目は、低電力化への取り組みだ。この部分には、層状超格子構造をもつSBT薄膜形成技術を採用。SBTの膜厚を100nm以下とする新技術によって、従来の3Vに比べて大幅な省電力化となる1.1Vの超低電圧動作を世界で初めて実現した。ここでは9件の特許があるという。

FeRAMで採用された様々な技術 FeRAMと各種メモリの比較

 今後は、FeRAM混載システムLSIに関しては、2005年には、0.13μmプロセスと3次元化した立体セル技術を採用、さらに、2007年には90nmの技術を採用するという。これにより、セル面積をさらに5分の1以下にすることが可能だという。

 古池社長は、「SRAMも、DRAMもそれぞれにいいところを持っており、すべてがFeRAMに置き換わるとは思っていない。また、MRAMに関しても新たな用途に活用できる可能性をもったものだと認識している。だが、FeRAMは、システムLSI化に最も適し、SRAM、DRAMの優れた特性をいずれもカバーできるものだと考えている」とコメントした。

 松下電器では、ブラックボックス技術の創出を「ものづくり改革」の柱のひとつと位置づけているが、今回の0.18μmFeRAM混載システムLSIも、そのなかのひとつであるのは明らか。DVDプレイヤー関連のシステムLSIの開発で先行したことによって、同分野の最終製品におけるシェアを揺るぎないものとした松下電器だが、今回の0.18μmFeRAM混載システムLSIも同様に、ユビキタス社会におけるリーディングカンパニーを目指す松下電器にとって、戦略的なブラックボックス技術としての意味合いをもつといえる。

FeRAMのサンプルボード FeRAMチップの搭載例

□松下電器産業のホームページ
http://matsushita.co.jp/
□ニュースリリース
http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn030709-1/jn030709-1.html
□松下電器産業半導体社のホームページ
(7月9日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://panasonic.co.jp/semicon/

(2003年7月9日)

[Reported by 大河原克行]


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