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JEITA、中古PCの市場規模は年間200万台と推計
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中古PC市場の規模 |
6月17日発表
社団法人電子情報技術産業協会は17日、IT機器の回収・処理・リサイクルに関する調査報告会を開催した。この中で、日本における中古PC市場が、2001年度実績で約200万台規模に達していることを明らかにした。
同調査によると中古PCの市場規模は、'99年度が60万台、2000年度が120万台、2001年度が200万台。新品のPC出荷台数がマイナス成長を余儀なくされている中で、年率2桁増の急速な勢いで拡大していることがわかった。企業などから排出されたハイクラスのリースアップ製品が、廉価で市場取り引きされていることが牽引役となっていると、同協会では分析している。
今回の調査では、2001年度には国内全体で403万台のPCが、使用済みPCとして排出されたと見ており、そのうち357万台が企業などの事業系ユーザー、46万台が家庭系ユーザーからの排出だと見ている。家庭系ユーザーからは15万台、事業系ユーザーからは25万台が直接中古PC市場に流通しているほか、企業のPC利用の約6割を占めるとされるリースによる「リースアップ」製品を含むリース会社およびレンタル会社を経由して中古市場に流れ込んだPCが150万台、また、メーカーや販売会社が回収したものから、中間処理業者を通じて中古PC市場に出回るものが10万台程度あると見ている。
このうち、実際に中古PCとして販売されているのは112万台。残りの約85万台は海外市場向けに輸出されていると分析している。112万台のうち約70%にあたる78万台が関東地区で消費されるという。また、海外向けの輸出では、日本に比べて一時期前のCPUでも商品価値があるのが特徴で、従来からの中国、東南アジアに加えて、東欧、ロシア、アフリカなどにも輸出が広がっているという。2002年に中国向けの中古家電品の輸出が禁止となったため、タイが東南アジアの輸出拠点になっているようだとしている。
PC排出量の推移 | 使用済みPCの処理ルート | 処理ルート別の使用済みPC台数 |
PCの排出量と、中古市場の規模 | 中古PCは海外にも流れる |
●不安要素はあるが、中古市場は当面拡大
中古PCの売れ筋 |
一方、同協会が、中古PCの販売店などにヒアリングした結果によると、中古PC市場を形成するためには、(1)新製品の価格が高いこと、(2)機能・性能がそれほど落ちないこと、(3)部品交換が不要なこと、の3点の要素が必要だという。
第1点目の新製品価格が高いという点では、新品が高ければ高いほど、中古PCの割安感がアピールできる。現在、中古PCの平均単価は、デスクトップPCでは5万円以内、ノートPCでは10万円以下。だが、ソーテックやイーマシーンズ、ショップオリジナルPCなどの新品PCもこの価格帯まで下がってきていることから、中古PC販売店は単価の面では厳しい状況に陥っているのも事実だ。
第2点目の機能・性能がそれほど落ちないことという点では、それが製品寿命の延命化にもつながり、商品価値が高まるということにつながる。ブロードバンドの進展によって、メール専用機としての利用など本体機能に依存しない使い方も出てくれば、追い風になるとしている。いまや、PC本体よりもインクジェットプリンターの方が機能の進化が激しく、中古市場には向かないといわれている。
第3点目の部品交換が不要であるという点では、中古販売店やリユース事業者の手間をかけないという点で工数の削減につながるという。これも、利益確保と中古市場の形成には重要な要素だという。
将来の市場動向としては、新品PCの価格が安いという状況が続くと中古PC市場の存続は難しくなるとしているものの、高速インフラの整備が進むと端末側での性能の高さが必須条件ではなくなること、新品を一定期間利用して新しい物に買い換えるという層が増えれば、ハイクラスの製品が市場に出回り中古市場が回転する可能性があること、今後、中古市場でも液晶ディスプレイの人気が高まっていくことなどから、当面は、市場は拡大基調にあると見ている。
●事業系より長い家庭系のPC保有年数
今回の中古PC市場調査およびPCリサイクル率の予測に対する前提として、同協会ではPCの廃棄までの保有年数調査も行なっている。これによると、事業系PCと家庭系PCでは大きな差が出ているのがわかった。
事業系PCでは、リースの契約年数が5~6年に集中する傾向があることから、それに伴って、PCの保有期間もここに集中している。これに対して、家庭向けPCは、使用済みになっても知人に譲渡するといったことも多く、事業系PCに比べて廃棄までの年数が延命化する傾向にある。そのため、調査結果でも、家庭系PCの廃棄時期は、13年をピークに下っていくという形になっている。
同協会では、平均13.8年と家庭向けPCの廃棄年数を位置づけたが、調査を進めると、15年を越えたところで経年残存率が3割強の割合で維持され、減少しないことがわかった。つまり、15年以上そのPCを所有している人は、使用せずに長年保管し続ける人が、3割の割合で存在することがわかったのだ。
この退蔵分を差し引き、廃棄年数を改めて計算してみると、平均保有年数は8.9年になるという。
この結果、事業系PCの保有年数は平均で5.8年、家庭系PCでは平均8.9年と、約3年の差がついている。
家庭系PCの保有年数 | 事業系と家庭系のPC保有年数の分布 | 退蔵分を除く家庭系PCの保有年数 |
●PCリサイクル法は新たな説明なく
一方、今回の報告会では、今年10月に開始される家庭向けPCのリサイクルについても説明が行なわれたが、回収再資源化のために商品者が負担する費用はいくらになるのか、といった注目されている数値の具体的な公表もなく、新たな報告はなかったといえる。
家庭向けPCの定義については、メーカー各社がそれぞれに搭載OSや機能などをもとに「家庭向けPC」であることを明確化し、それをJEITAのホームページ上で明らかにすることが発表された。
また、10月1日以降に発売されたPCに貼付される「PCリサイクルマーク」に関しては、基本的にはPC本体に銘板として、あるいは銘板の周辺に印刷されることになるが、海外で生産し、同拠点から全世界に向けて出荷している場合には、シールの形で貼付するという。
なお、経済産業省が新たに作成した、家庭向けPCのリサイクル開始をアピールするパンフレットが会場で配布された。
PCリサイクルマーク | 経済産業省が作成した家庭向けパソコンのリサイクルに関するパンフレット |
今回の報告会は、JEITAのITリサイクル対応専門委員会の昨年度1年間の活動報告として行なわれたものである。
冒頭、挨拶に立った同協会の吹譯正憲専務理事は、「リサイクルに関しては、産業側にはコスト負担という側面もあるが、地球環境にどう取り組んでいくか、環境と共生するためにはどうするかを考えることが重要。この考え方のもとで、新たなビジネスモデルや環境にやさしい製品づくりをするべきだと考えている。JEITAでは、後ろ向きの考え方ではなく、環境と共生できる製造業として、今後もリサイクルに積極的に取り組んでいきたい」とした。
□JEITAのホームページ
(18日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.jeita.or.jp/
(2003年6月18日)
[Reported by 大河原克行]
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