元麻布春男の週刊PCホットライン

筆者にOfficeは必要か?



●GWだというのにシステムを入れ替えるはめに

 土日の並びの悪さやSARSの影響で、例年に比べてイマイチだった今年のGWだが、筆者はひときわパッとしないGWをすごした。予定外のメインテナンス作業、それも原稿書きに使うメインマシンの実質的な更新を余儀なくされたからだ。実は予定外といいながら、以前から若干不調の兆しが現れていた。時に処理速度が低下する傾向が見られたのである。

 ボチボチ新しいマシンを用意しないとヤバイな、とは思っていたのだが、ついにスクリーンセーバーを解除するのに、マウスを動かしてから数分がかかる事態に陥ってしまった。状況がかなり深刻なことは明らかだが、とりあえず再起動することにした。もちろん再起動のプロセスは、正規の手順(Windowsのシャットダウン)に従ったもので、シャットダウンは見た目正常に行なわれたのだが、再起動時、自動的にドライブのエラーチェックが始まり、大量のエラーが自動修正されていった。その後、ようやくWindowsは起動したものの、明らかにおかしい。

 まず分かったのは、Outlook 2000の個人フォルダが丸ごと消えてしまったことだ。受信メールやアドレス帳についてはバックアップを取っていたから、それほど大きな問題ではなかったのだが、うっかり送信済みメールをバックアップするのを忘れていたため、筆者自身が書いた最近のメールがほぼ失われてしまった。また、起動はしたものの、ネットワーク経由でファイルをコピーするとシステムがいきなりリブートしたり、ローカルでファイルをコピーするとI/Oエラーが頻発する始末(いずれもCドライブ起点)。もはや使い物になる状態でないのは明らかであった。

 幸い、原稿や資料などのデータは、Cとは別のパーティションにしてあったから無傷ですんだ。パーティションサイズに制約のあった昔のようにパーティションを切るのは止めようか、とも思っていたのだが、今回のようなソフトウェア的な要因によるクラッシュには、データをシステムと別パーティションに分離しておくことがまったく無意味ではないことを自ら経験するハメとなってしまった。いずれにしても、システムの入れ替えは避けられない。

 一般にシステムを入れ替えるような場合、筆者はそれまで使っていたのと別な、新しいマシンを用意することにしている。新しいマシンに移行した後も、しばらく古いマシンをバックアップに回したいからなのだが、今回の場合は古いマシンを残しておいてもバックアップにはならない。そこで、ハードウェア的には古いマシンに最低限の変更(ハードウェア的な障害でないと分かっていても、さすがにハードディスクは交換したい)だけを施すことにした。

 その一方で、ソフトウェア的には今回、大きなチャレンジを行なおうと考えた。以前から、次にマシンを乗り換える際には、一度試してみたいと思っていたアイデアを実行に移すことにしたのだ。それは、極力Microsoft製品を使わないでみよう、という試みである。Microsoft製品を使わないといっても、OSであるWindowsを止めることはできない。デバイスサポートの点で、ほかのOSでは話にならないことが分かっているからだ。とりあえず筆者としては、MTVシリーズが動かないOSにはお引取り願うしかない。

●エンタープライズ指向を強めるMicrosoft

 結局は、Windowsの上で利用するアプリケーションを、極力非Microsoft製品にしてみよう、ということにしかならないわけだが、そう考えたのはワケがある。それは、Microsoftはもはや筆者のような個人向けの(少なくとも個人ユーザーを大事に考える)ソフトウェア会社ではなくなった、と感じたからだ(もちろんゲームだけは例外だろうが)。

 現行のWindowsであるWindows XPが、Professional Edition(XP Pro)とHome Edition(XP Home)の2つで構成されていることは、おそらくすべての人が知っていることだろう。だが、XP Homeの実態はXP Proのサブセットだ。それもかなり内容が絞られており、例えば、そのままではSmart Displayを使えない。Smart Displayを使うには、Step Upgradeと呼ばれるXP Proへのバージョンアップパッケージを購入する必要がある(Step UpgradeはSmart Displayに無償添付されたりはしない)。究極の家庭向けWindowsともいえるMedia Center EditionのベースになっているのもXP Proであって、XP Homeではない。

 Officeにしても、次の最新版ではXMLを用いたデータの連携がうんぬんと言われるが、筆者の環境にはバックエンドのデータベースはないし、持つ予定もない。Microsoftのソフトウェアは近年エンタープライズ志向を著しく強めており、筆者にはそぐわない、と感じているのだ。

 ソフトウェアの中身、あるいは開発の方向性の問題とは別に、ライセンスポリシーについても同様なことを感じている。現在Microsoftは企業向けにさまざまなボリュームライセンスを行なっており、台数に応じた値引きを行なっている。これ自体は、たくさん買う人には安く売る、という商売の常道に過ぎない。問題は、こうしたボリュームライセンスが、台数と期間をベースにしてライセンス料が示されているのに対し、個人向けのライセンスは台数は明確に示されている(1パッケージ1台のPC、それもアクティベーションという監視つき)のに対し、ライセンス期間は必ずしも明記されていないことだ。

 たとえば、企業がボリュームライセンスを行なった場合、更新せずに契約期間が過ぎると、ソフトウェアの使用は違法となる。したがって、企業はライセンスを更新するか、Microsoft製品の使用を止めるかの二者択一を迫られる。個人向けの場合、明示的な契約期間というものはないから、いつまでもズルズル使い続けても違法にはならない。これだけ見ると個人の方が得をしそうだが、事情はそう簡単ではない。

 Microsoftは、サポート提供期間(サービスパックやホットフィックスの提供を保証する期間)を製品のリリースから最短5年と定めている(はがきスタジオのように毎年リリースされるものは別)。ここで注目なのは、ユーザーが購入してから5年なのではなく、製品がリリースされてから5年、という点だ。たとえば現行製品であるWindows XPは、Pro、Homeを問わず2006年12月31日までと、すでに決まっている。つまり、来年Windows XPプリインストールPCを購入したユーザーが確実にサポートを受けられるのは2年以上、3年未満ということになる(WinHECでLonghornが2005年以降のリリースになることが明らかにされたようだ)。

 それを超えてサポートが欲しければ、OSをアップグレードするしかないわけだが、ボリュームライセンスする企業には、契約によってはアップグレードが無償で提供されると聞くと、個人のほうが得とは言い切れなさそうだ。

●Officeなしで暮らしていけるか?

 と、きつい言い方になってしまったが、現在はMicrosoftも舵を切りつつある途上で、中途半端な部分、実情にそぐわない部分もあるのだろう。また、Microsoftが企業である限り、その目標は利益の追求にほかならず、その方法を選択していった結果、エンタープライズ志向となっていったことは十分理解できる。それは企業として正しい行動である。

 しかし、だからといって、個人ユーザーである筆者が、Microsoftの目標(利益の追求)に協力する必要もない。逆に、筆者のようなユーザーが無自覚にお金を払うから、Microsoftはエンタープライズ志向の会社になってしまったのかもしれない(それほど大げさなものではないとは思うが)。少なくとも、同じお金を払うなら、できるだけ個人ユーザー相手にソフトウェアを開発してくれる会社にしたいものだ。

 Windowsのように、現時点では代替がきかないものは別としても、果たして筆者にOfficeは必要なのだろうか。間違いなくMicrosoft Officeはこの分野のデファクトスタンダードであり、筆者も日本語版の最初の、まだExcelとWordの2本のみで構成されていたバージョンから、Officeをインストールしてきた。それはある種当然でもあり、惰性でもあったわけだが、ほかのプログラムともども、ここで1回見直してみようと思ったのである。その結果、必要だと思えばまだ封を切ってもいないOffice XPをいよいよインストールするだろうし、Officeなしでも暮らしていけると感じれば、これでお別れになるかもしれない。筆者自身、結果が楽しみである。

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【2002年10月17日】マイクロソフト、製品のサポート期限を明確化
~Windows XPの標準サポートは2006年年末まで
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1017/ms.htm

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(2003年5月12日)

[Text by 元麻布春男]


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