●次世代OS LonghornのポイントはUIの3D化 Microsoftは、次世代Windows「Longhorn(ロングホーン)」で、ユーザーインターフェイス(UI)の根本的な変革に手をつける。それは、3DグラフィックスハードウェアとDirectXをベースにした新UIだ。Windowsの歴史始まって以来、最大のGUIの変革となる。Microsoftは、これまでLonghornに3DハードベースのUIを導入することを明かしていたが、その詳細は説明していなかった。今回、WinHECで公式にその一端が明らかにされた。 これまで、WindowsのGUIはGPUの進化を全く活かしてこなかった。通常のアプリケーションが使うのは、旧態依然とした2DグラフィックスAPI「GDI」で、Windows XPになり見かけは変わっても基本的なシステムは変わっていなかった。だが、Longhornでは最新GPUの機能を活かしたGUIへと変わる。そのため、Longhornの新UIのフル機能を使うためには、DirectX9クラスGPUが必要となる。そして、これこそが、GPUベンダーがDirectX9世代GPUに向けて走り始めた理由でもある。 では、実際にLonghornのUIはどうなっているのだろう。 ウインドウをドラッグするとウインドウの裾がはためく。各クライアントウインドウを任意のDPIに拡大したり、半透過にして後ろのウインドウを透かし見ることもできる。フリッカーフリーのアニメーションをデスクトップに飛ばすこともできるし、DVDムービー再生ウインドウをデスクトップ上でくるくると回すこともできる。
これが、Microsoftが今回のWinHECでかいま見せているLonghorn UIの姿だ。見た目の印象は、静止画だったデスクトップがアニメになったような雰囲気だ。今回のデモでは、Longhornに実装されるUIの全ての機能が実演されているわけではないが、そこからは従来のWindows UIよりもはるかに自由度が高く進化したインターフェイスの姿が見えてくる。 「WindowsのネクストラウンドはLonghorn。完全に新しいプレゼンテーションシステムと新しいスタンダードユーザーインターフェイスのガイドラインを含んでいる。リッチなグラフィックス機能は、拡張されたグラフィックス機能をフルに活かす」とMicrosoftのビル・ゲイツ会長兼CSAも、LonghornのポイントがUIにあることを強調する。 ●3D GPUの機能を活かすことにフォーカス もっとも、MicrosoftのWindows UIの3D化は今回が初めての試みではない。例えば、'98年のWinHECでも、Microsoftは「GDI 2k」と呼ぶ次世代UIのデモを行ったことがある。この時は、デスクトップ上のアプリケーションウィンドウを立方体にして、立方体のそれぞれの面に異なるExcelのシートを貼り付け、サイコロのように転がすという派手なデモを見せた。このGDI 2kは実現しなかったわけだが、その息吹はLonghorn UIに生きている。例えば、GDI 2kで紹介した半透過ウインドウ機能は、Longhorn UIに取り入れられる。 しかし、GDI 2kとWinHECでのLonghorn UIデモには違いもある。GDI 2kと比べるとLonghorn UIの変革はずっと大人しい。立方体がデスクトップを転がるような派手な演出はない。むしろ、(現段階での)見た目は従来のWindows XPインターフェイスとそれほど変わらないように見える。 その理由についてMicrosoftのDean Lester氏(General Manager, Windows Graphics and Gaming Technologies)は3月のGDC(Game Developers Conference)の際にこう語っていた。 「3Dインターフェイスに対して、人々が何を期待しているか、非常に興味深い疑問がある。それは、3D化なのか、それとも3Dハードウェアの機能を活かすことなのか。実際には3Dインターフェイスと言っても、様々なアプローチがありうる。そして、そのいくつかはユーザーエクスペリエンスを向上させるが、いくつかは逆に悪くしてしまう。私は、3Dインターフェイスにとって重要なのは、カスタマニーズがどこにあるかをよく理解して技術を使うことだと考えている」。 実際、今回のLonghorn UIでは、下手にUIを3D化するのではなく3Dハードウェアの機能を活かすことに集中しているように見える。ただし、後述するが、Longhorn UIには実際には2段階があり、より先進的なUIでは、もっと過激なインターフェイスになっている可能性がある。 また、LonghornのベーシックなUIの見た目が、従来のWindowsとは変わらないとは言っても、そのベースは大きく変わっている。それを端的に表すのが、Longhornデスクトップの要素をばらばらにして画面上で回転させるデモだ。これを見るとデスクトップ上の各要素が全て異なるバッファにレンダリングされていることがよくわかる。 従来のWindows UIは、シングルバッファに直接描かれていた。つまり、一枚絵だったわけだ。それに対してLonghorn UIでは各アプリケーションはそれぞれのバックバッファにレンダリングされ、そのバックバッファをコンポーズすることでデスクトップを構成している。また、描画はGDIではなくDirectXベースで行なわれる。だから、各サーフェイスに3D GPUの機能を使ったエフェクトをかけることができるわけだ。 ●フル機能を使うにはDirectX9クラスGPUが必須に こうしたLonghorn UIの全ての機能を使うためにはDirectX9クラスGPUが必要となる。しかし、2005年のLonghorn登場時ですら、全てのPCがDirectX9クラスGPUを搭載しているわけではない。そのため、MicrosoftはLonghornに段階的なUI機能を提供する。「Tier 1 Experience」と「Tier 2 Experience」の2段階だ。 Tier 1 Experienceは、Longhorn UIのベーシックな機能を提供するモードだ。Windows XPライクなデスクトップに、高DPIスケーリングや半透過ウィンドウといった機能を加えたものになる。このレポートで紹介しているデモの画面は、基本的にこのTier 1相当の機能が中心となっているようだ。 それに対してTier 2 Experienceは、「Graphically stunning UI(グラフィックス的に素晴らしいUI)」をベースにする。これが、どういった内容になるのかは、まだ今日の時点では、わからない。 また、この他、Longhornには「Windows 2000 compatibility mode」のUIも用意される。 では実際にLonghorn UIにはどんなGPUが必要なのか。基本的な要求環境は下のようになる。最低でもDirectX7クラス、Longhornの本当のUIを使うにはDirectX9クラスが必要になる。
【2002年9月11日】【後藤】Microsoftの「Palladium」でPCは“自由から管理”へ!? http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0911/high30.htm 【2002年10月18日】【後藤】MicrosoftのPalladiumは批判を解消できるのか http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1018/high31.htm (2003年5月9日) [Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]
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