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IDF Japan Spring 2003レポート

2004年のノートPC像を提示
~セカンダリディスプレイ搭載のコンセプトモデルも

会期:4月9日~4月11日
会場:ヒルトン東京ベイ



 初日に行なわれた「Mobile Internet PC 2004 Vision」と題された技術トラックでは、2004年のノートPCに必要とされる機能、そして新しいノートPCがもたらす新たな利用像が示された。


●Always Best Connected

Mobile Internet PC 2004 Visionが示す新たな利用モデル

 “Mobile Internet PC 2004 Vision”とは、2004年末に登場するであろうノートPCを描いた将来像。将来像といっても、青写真ではなく、同社が2002年から研究開発を続けてきたもので、詳細な仕様などもすでに固まりつつある。

 そのビジョンで示される最大の要素は“Always Best Connected”、“Location Aware Computing”そして“Always On”の3つのコンセプト。

 Always Best Connected(ABC)とは、常に最善の接続性をもたらすという意味で、ユーザーがネットワークインフラを意識することなく、ノートPC自身が最適なネットワークを検出し、接続するというもの。

 プレゼンテーションを行なった、Intel Mobile Platform Group Chief Technology EvangelistのMike O. Trainor氏によれば、ABCの実現には2つの壁があるという。

Intel Mobile Platform Group Chief Technology EvangelistのMike O. Trainor氏

 1つ目は、いかにノートPCが最適なネットワークを探し出すかという技術。これは、例えば、無線LANから有線LANに接続を切り替えた際に、ユーザーがネットワーク設定を変更せずとも、PCが自動的に設定を切り替え、接続するというものだが、それに近い技術は現在のノートPCにもすでに実装されており、ハードルは低いという。

 ABCでは、単に接続するというだけでなく、ローミングした際の認証や、Hotspot利用時の課金なども視野に入れており、これらをいかに簡潔に実行するかということが2つ目の壁となっている。

 現在、商用Hotspotは速いペースで増加しつつあるが、1つのISPやキャリアがカバーする範囲は限られている。また、複数のISPを利用することで、利用可能エリアを広げることはできるが、その場合でも、ISPやキャリアが変わる場面でネットワークにログオンし直す必要がある。

 この問題に対してインテルが提唱する解決策の1つがノートPCにSIM(Subscriber Identification Module)と呼ばれる認証用のモジュールを実装するというもの。

 SIMにはユーザー固有の認証情報が埋め込まれており、アカウント名・パスワードを入力せずとも、SIMの認証情報を用いて自動的にログオンができる。

 ISPがSIM認証へ対応することで、ユーザーはログオンや利用ISPを意識することなく、自動的にネットワークに接続できるようになる。SIMの認証情報は1つ1つ固有のものとなっており、かつ暗号保護されているので、パスワードの利用より強固なセキュリティが実現できるという。

 また、このSIMはGSM、GPRSといった携帯電話網の通信を利用した課金機能を備える。無線LANのHotspotから携帯電話網へ認証情報を渡すことで、課金を携帯電話のキャリアに一本化できる。

Always Best Connected (ABC)の模式図 ABCではSIM(Subscriber Identification Module)により、安全かつ簡単な認証を行なう


●Location Aware Computing

 Location Aware Computing (LAC)とは、ノートPCが自身の居場所を検知するというもので、乱暴な言い方をすればGPSなしにノートPCをカーナビにしてしまう技術。

 カーナビでは衛星を使って位置の検出を行なうが、LACは既存のネットワークインフラの情報を利用して位置を把握する。そのネットワークインフラには、LANのルーターやスイッチの場所、無線LANのアクセスポイントの場所や信号の強さ、無線WAN(携帯電話やPHSモジュールなどでの無線通信)の端末IDなど、ありとあらゆるネットワークが含まれる

 正確にはLACではGPSの利用も想定されているが、これらの情報を総合的に利用することで、建物の中での位置までもが把握できるといい、GPSを超えた位置検出が可能となる。

 Trainor氏の例によれば、オフィス内でこの技術を使えば、そこが知らない場所であっても、ネットワークプリンタの場所などを容易に知ることができる。

 また、レストランなど何かしらの場所を探したい時に、今自分がどこにいるかを入力せずとも、レストランと入力するだけで、最寄りのレストランを探し出したり、友人が今どこにいるかを探すことができるようになる。

Location Aware Computing (LAC)のアーキテクチャ LACを利用したアプリケーションの一例。検索する場所の種類として「レストラン」を選択するだけで、自分の周りのレストラン一覧が地図とともに表示される(写真左)。また、登録した友人の位置情報なども確認できる(写真右)


●Always On

 Always On (AON)とは、文字通り常にOnになった状態を指すが、AONではノートPC全体ではなく、限られた部分のみを常時Onにする。

ノートPCのふた部分に搭載されるセカンダリディスプレイ

 AONではセカンダリディスプレイというこれまでのノートPCにはないハードウェアが付加される。これはノートPCのふた側につけられる小型のディスプレイ。セカンダリディスプレイの具体的な仕様については触れられなかったが、プレゼンテーションではタッチパッド程度の大きさのモノクロ液晶ディスプレイ程度のものを想定していた。

 ふた側につくということは、ノートPCを閉じた状態で使うということであり、同様のものでは、最近の携帯電話の背面ディスプレイを彷彿とさせるが、セカンダリディスプレイの用途はまさに携帯電話の背面ディスプレイと同じものとなる。

 ABCによりノートPCは利用場所を問わずネットワークへの常時接続が可能となるが、この接続はノートPCを閉じた状態でも維持され、メールサーバーなどへのアクセスを続ける。

 セカンダリディスプレイには、新着メールや、予定表、インスタントメッセージなどの情報が表示される仕組みとなっており、ユーザーはノートPCを閉じたまま、最新のメッセージを確認できるようになる。

ノートPCと携帯電話・PDAなどをBluetooth接続し、セカンダリディスプレイ代わりに使う発展形も想定されている

 そして、Trainor氏によれば、2005年にはAON状態でノートPCと携帯電話やPDAなどとがシンクロするようになるという。具体的にいうと、ノートPCと携帯電話やPDAなどがBluetoothにより常時接続されるようになり、セカンダリディスプレイに表示される情報が、リアルタイムで携帯電話やPDAの画面に表示される。

 これにより、ユーザーはノートPCをカバンに入れたままで、手軽に最新情報を入手できるようになる。

 常時Onではバッテリの持続時間が心配されるが、Trainor氏は、AONではごく限られた部分しか駆動しないということ、またバッテリ技術がさらに向上するといった理由から、この技術が実現可能であるという見通しを示した。


●Mobile Internet PC 2004 Visionを具現化した「Newport」

新鮮なデザインのMobile Internet PC 2004 Visionコンセプトモデル「Newport」

 プレゼンテーションではMobile Internet PC 2004 Visionを具現化したコンセプトモデル「Newport」が披露された。

 Newportの外観は、現在のノートPCとタブレットPCを組み合わせたようなものとなっており、目を引くようにあえて奇をてらったかのようにも見えるが、実際には現実的なつくりとなっている。

 キーボード部は、液晶ディスプレイを搭載した本体部分から着脱可能となっている。本体に取り付けた状態では、通常のノートPCのように利用できる。キーボード部にはUSB端子が備えられており、ポートリプリケータ的な用途を持つほか、セカンダリバッテリも内蔵している。

 キーボード部を取り外すと、タブレットPC状態となる。本体背面にはAONで利用するセカンダリディスプレイを装備。そのほか、側面にはオーディオ、USB、DVIといったインターフェイスを備えている。

 内部のスペックの詳細は明らかにされなかったが、IEEE 802.11a、IEEE 802.11b、Bluetooth、GPSの4種類の無線機器を内蔵。また、ライトセンサーを備え、周りの明るさによって液晶の明るさを抑え、バッテリ駆動時間を伸ばす仕組みが実装されているという。

左側面。本体側には、オーディオ、USB、DVI端子が、キーボード側にはUSB mini端子が備えられている 右側面。キーボードにはセカンダリバッテリが内蔵される 本体背面にはセカンダリディスプレイを搭載。セカンダリディスプレイ横にはインターフェイスと思われるボタンもある
折りたたんだところ キーボードを取り外すと、タブレットPCそっくりの外観となる


 このように、Mobile Internet PC 2004は、そこで利用される技術こそ既存のものをいくらか拡張しただけとも言えるが、ノートPCをより便利にするための新しい試みが意欲的に採用されていると言える。

 従来、新製品のプレゼンテーションでは、ともすれば、性能向上や機能追加にのみ焦点があてられがちだったが、Mobile Internet PC 2004は、これまでにない新たな用途を提供するもので、早い登場が期待される。

□IDFのホームページ
http://www.intel.co.jp/jp/developer/idf-j/

(2003年4月10日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]


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