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NEC、金杉新社長体制が本日付けでスタート
~利益倍増、社員の意識改革目指す

NEC 金杉明信社長

3月28日



 3月28日付けでNECの新社長に就任した金杉明信氏は、記者会見を行ない、来年度利益倍増計画を目標とする新経営体制について、今後の方向性などについて明らかにした。

 その中で懸念事項であったパソコン事業が2003年3月期決算で黒字化する見込みであること、携帯電話事業において、2003年度は、中国、欧州向けを中心に前年比5倍に拡大する計画を明らかにした。

●パソコン事業の黒字化達成は確実に

 金杉新社長は、会見の冒頭に、NECの置かれた立場について次のように話した。

 「西垣時代に推進した構造改革は、半導体事業の分社化や、パソコン事業が今期は黒字化することが確実になるなど順調に成果をあげている。今年度の営業利益に関しても、当初見込みである1,000億円を100億円前後過達することとなり、収益性は回復基調にある。だが、株主資本の毀損が重要な経営課題として残っており、これを改善する必要がある」。

 金杉社長は、新経営体制では、2003年度における利益倍増計画とともに株主資本の増強、ITとネットワークの統合ソリューション展開およびグローバルな事業発展を核とした成長戦略の確立を掲げ、これらの問題を解決するとともに事業拡大を目指す。

 利益倍増に向けては、SIサービス事業の収益確保、モバイル事業のさらなる成長、ブロードバンド事業の構造改革、ノンコア事業の売却・資産の圧縮などに取り組む方針で、「経済低迷、デフレ環境が継続する中でも、売り上げが伸びなくても利益を確保できる体質を作り上げる。ネットワーク事業は、前年比2桁増に近い伸び率を見込むが、それ以外は、大幅な売り上げ増加は見込まない」とし、利益倍増計画は売り上げ増によるものでないことを示した。

 パーソナル事業に関しては、ビッグローブ、パソコン、モバイルを組み合わせたユビキタスソリューションを新たな成長戦略と考えていることを示したほか、モバイル端末事業では、海外事業戦略の強化を打ち出し、1年間で2千数百億円規模となる前年比5倍の売上げ計画を掲げた。

 「モバイル端末事業は、国内では停滞するが」と前置きしながらも、「2.5世代携帯電話において、中国市場へフォーカスを強めるとともに、欧州地区に向けたハイエンド機の展開、KPNグループなどへのiモードによる新規展開を見込む。さらに、第3世代携帯電話においては、ハチソンの事業を皮切りに最先端端末の投入によって市場の牽引役を果たしたい」とした。

ITとネットワークの統合ソリューションを展開 モバイル端末事業の戦略

●事業ライン制を導入し、権限も大幅委譲

 新経営体制では、従来のカンパニー制度を廃止し、事業ライン別の体制へと移行した。

 「私がトップダウンで決めた組織」とする今回の事業ライン制は、従来のNECソリューションズと、NECネットワークスの2つの社内カンパニーを統合、ITとネットワークを融合した組織となる。

 「従来は、3つの社内カンパニーがあったが、そのうち半導体会社が完全分社し、2つになったことで分社効果が薄いこと、マーケットニーズが、ITとネットワークを一緒にもってきてくれ、というように変化してきたことで、今回、2つを融合した組織体制へと移行した。全社一丸による俊敏な事業体制の確立と、オープンでフラットな組織体制、市場と現場を中心にしたマーケットドリブンの考え方による体制を確立したい。もともと私は、NECソリューションズのカンパニー社長を務めていたからわかるが、カンパニー制は、自己責任でスピード経営ができ、効率的であるという反面、そろそろカンパニー間に壁が出来始めてきたという傾向があった。その一方、NECソリューションズの中には、西垣前社長がいろいろ事業をぶち込んだので、それが新しい事業を生むということにもつながったという経緯もある。異なる事業の融合によるシナジー効果という点では、NECソリューションズの成果を全社に広げたと考えてもらえればいい」と話した。

9つの事業ライン

 新組織は、スタッフおよびR&D部門のほかに、9つの事業ラインで構成される。

 国内の顧客に対するソリューションおよびNECの全製品の営業を担当する「国内営業事業ライン」、大企業、団体、グローバル企業などに対して業種別に直販対応を行なう「業種営業事業ライン」、SEによるシステム、サポート、ソリューション提供を行なう「システム・サービス事業ライン」、OS、SI基盤ソフトをはじめとするソフトウェア製品および新たなソフト事業を担当する「ソフトウェア事業ライン」、オープンサーバー、メインフレーム、ストレージなどを取り扱う「コンピュータ事業ライン」、固定通信キャリア向けネットワークソリューション、光ネットワーク、IP通信などのプロダクト事業を担当する「ブロードバンド事業ライン」、放送、防衛、宇宙など社会インフラソリューション向けの「社会インフラ事業ライン」、モバイル系キャリアへのトータルソリューションを提供する「モバイル事業ライン」、ビッグローブおよびパソコンをはじめとするパーソナル関連製品群を扱う「パーソナルソリューション事業ライン」となる。

 これまで、パソコンは、NECソリューションズにおいて、PCサーバー、メインフレームなどと同じ事業グループで取り扱われていたが、今回の新体制では、完全に分離されることになる。また、モバイル事業に関しては、端末機器とインフラを一体化した組織体制とし、「従来の『交換機』と『伝送』に分けるという古い考え方を捨てた」(金杉社長)とした。

 各事業ラインは、それぞれに損益の責任を持つとともに、課題となる事業については構造改革の責任ももつとし、事業ラインのトップに対する権限委譲も図る。

 「9つの事業ラインとトップマネジメントチームが侃々諤々しながら、シナジー効果をどうクリエイトしていくかが鍵になる」とした。

●ノンコア事業の売却は「まだ白紙」

 金杉社長が触れたノンコア事業の売却については、具体的な事業対象に関する質問が相次いだが、金杉社長は「まだ白紙の段階」、「事業によっては、パートナーとのアライアンスとしてすすめていくことも考えたい」などとコメントしたに留まり、明言を避けた。

 また、「ノンコア事業の定義は、コア事業ではないということ。コア事業とは、ITとネットワークの統合ソリューションを構成する事業であることと、半導体事業である。現在はノンコア事業がなにかというよりも、コア事業にフォーカスしたい。ノンコア事業については、フラットな組織体制となり、私が事業に関与するなかで見ていきたい。また、グループ経営という面では西垣(=前社長、本日付けで副会長)と一緒に見ていくことになる」とした。

●燃える集団を目指す

 金杉社長は、新体制によって「個を活かした、燃える集団」、「安定志向DNAからチャレンジ志向DNAへ」との考え方を示し、社員の意識改革をすすめていく重要性を訴えた。

 「NECの財産は、技術の蓄積であり、優秀な社員であると考えている。社員の意識調査を10年以上続けているが、まじめで安定志向である点は変わらない。しかし、その裏返しでいえるのは、チャレンジ精神、貪欲性がないということだ。企業は、個人が重要であり、チャレンジ精神を持った企業文化に変えたい。そのためには、CSを重視する風土と、現場志向が必要。私はカンパニー社長として3年間、この改革に取り組んできたが、カンパニー内ではその成果が出ていると考えており、この活動を全社規模に広げたい」と話した。

●金杉カラーが表面化せず

 今回の社長会見では、3月末締めの決算発表を約1カ月後に控えていることから、具体的な数値などについては言及されないままで、やや迫力にかけた会見であったことは否めない。

 また、事業ラインごとの明確なビジョンについても言及されなかったことは残念であり、金杉カラーともいえるものが前面には出てこなかった。

 しかし、経済環境が低迷しても、収益を確保できる体質に転換するなど、収益が回復基調に転換した段階での社長就任だけに、金杉社長の一手に注目が集まるのは当然のこと。4月25日に予定される決算発表では、中期経営計画にも言及される公算が強いことから、その段階で金杉カラーが前面に出てくることに期待したい。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0303/2801.html

(2003年3月28日)

[Reported by 大河原克行]


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