会期:3月2日~5日(現地時間)
今回のPMAでは、数十機種ものコンシューマー向けデジタルカメラが一気に発表された。 中でも今回の新たな展開として明確に見られたのが、大型液晶や有機ELといったディスプレイを搭載したモデルの登場だ。 初の液晶モニター付きデジタルカメラ「カシオ QV-10」発売から8年。デジタルカメラは成熟期を迎えようとしており、カメラにさほど詳しい人でなければ、どれを見ても似た寄ったり……という状況になりつつある。それだけに、この春の大型液晶や高品位ディスプレイの搭載は、デジタルカメラ本来の楽しさを再発見させてくれる新展開として、大いに注目される。 ●見事なほど美しい実売価格399ドルの有機EL搭載モデル登場!
次世代高品位ディスプレイとして注目されている有機EL(OLED)を搭載した、待望のデジタルカメラ「EasyShare LS633」が、PMA初日にKodakから遂に発表された。 最近では、デバイスや携帯電話系のイベントで、参考出品として有機ELを見かけることが多くなったが、それはあくまでもショー用のサンプル品レベルであり、これまで量産向けの製品に搭載されたフルカラー対応のものは無かった。今回、本機に搭載されたアクティブ方式のフルカラー有機ELディスプレイは、Kodakと三洋電機、さらに両社の合弁会社で生産会社となるSKディスプレイが共同して、商用出荷にこぎ着けたものだ。 「LS633」は、Kodakが米国で販売している人気シリーズ「EasyShare」シリーズの上位機種。機能的には1/1.8インチの300万画素級CCDを搭載したもので、上位モデルには独の名門Schneider(シュナイダー)の3倍ズームレンズが奢られている。 また、このモデルはほぼ同時に発表された、昇華型プリンタ一体型の専用クレードルで「Printer Dock6000」にも対応している。LS633をこのPrinter Dockのクレードルに挿すだけで、実に簡単な操作でホームプリントができるシステムとなっている。 もちろんこれらはKodakにとって今回のPMAの目玉となる製品であり、ブースの一等地でそのデモが行なわれていた。 ●デジタルカメラ本来の“楽しさ”をもう1度楽しめる
筆者は、有機ELはイベントで見慣れているはずなのだが、実際にカメラに搭載されたLS633のデモ機を初めて見たときは、その表示品質のあまりの美しさに感動してしまった。なかなか説明が難しいのだが、誤解を恐れずにいえば、ディスプレイ部の映像があまりにきれいでリアルだったため、そこだけが浮き上がって見えたほど。 もともと有機ELは、通常の液晶モニターと違って背面にバックライトがあるわけではなく、ディスプレイ自身が発光する自発光タイプ。しかも、斜め方向からの視認性(視野角)がきわめて高いこともあって、真横に近い、かなり急な角度からカメラのディスプレイを見ても、全く視認性が変わらない。カメラのモックアップなどで、液晶部分にカラープリントを貼ったものがあるが、初めてLS633を見たときには、斜め方向からの視認性があまりに高いため、バックライトで照らされたフィルムがそこに貼ってあるのかと誤解してしまったほどだ。 搭載された有機ELが2.2型と、デジタルカメラ用としてはかなり大型なものということもあって、とても視認性がよく、カメラ自体がきわめて高画質なデジタルイメージビューワーになったような印象を受けた。カメラのディスプレイがこれだけ高品位になると、カメラで画像を再生して楽しむといった、デジタルカメラ本来の“楽しさ”をもう一度堪能できる感じで、初めて「QV-10」を見たときに近い感動を覚えてしまった。 しかも、価格を聞いてビックリ。本機は300万画素3倍ズーム機で、しかも、これだけ大きくて高品位かつ高価な有機ELディスプレイを搭載していながらも、米国での実売価格は“わずか”399ドルとリーズナブルな設定となっている。これで本当に元が取れるのか? と思ってしまうほどだ。 ●残念ながら日本への導入予定はなし
と、ここまではいいのだが、とても残念なのは、LS633が豪州や欧州で先行発売されるモデルであり、日本国内への導入が全く予定されていない点だ。 Kodakのデジタルカメラ、中でもクレードル対応のEasyShareシリーズは、米国ではかなりのシェアを獲得している人気シリーズ。だが、日本国内では多くのライバル機に押され、実績をあげていないため、今回のモデルを始めとした、最新のEasyShareシリーズは日本国内への導入予定がないという。 【お詫びと訂正】初出時に米国で先行発売と記述いたしましたが、豪州と欧州が先行発売となります。お詫びして訂正させていただきます。
とはいえ、今回の有機ELディスプレイ搭載機は、写真をカメラのディスプレイで楽しめるという新しい楽しさがあり、カメラとしての基本機能も充実している。極端に小さいわけでも、とてもスタイリッシュなわけでもないが、コダックの絵づくりには定評があり、Schneiderブランドのレンズも魅力的だ。また、今回同時発表された「Printer Dock6000」もよくできたシステムといえる。
筆者自身、久々に感動したモデルだけに、できれば台数限定でのWeb販売など、実現可能な範囲での国内販売を大いに期待したいところだ。 □EasyShare LS633の製品情報(英文)http://www.kodak.com/eknec/PageQuerier.jhtml?pq-path=9/19/487/662&pq-locale=en_US ●京セラ、2.5型液晶モニターを搭載したプロトタイプを参考出品
京セラは今回、PMAブースで初お目見えとなる、2.5型液晶モニター搭載機を2機種出展した。 このモデルは「Finecam L4v」と「Finecam L3v」と呼ばれるモデル。前者は1/2.5インチの400万画素CCD、後者は1/2.7インチの320万画素CCDを搭載した光学3倍ズーム機だ。 本機の最大の特徴は、ボディ背面をいっぱいに使った、超大型の2.5型TFT液晶モニターを搭載している点だ。液晶モニターの画素数は11万画素(474×234ピクセル)と、それほど高密度ではないが、実機を見るとその大きさに圧倒されてしまう。 前面からカメラを見るとごく普通のサイズのモデルなのだが、背面を見ると、その印象は全く異なる。よくこのサイズのボディーは2.5型の液晶を搭載したなあ~と感心してしまうほど。さすがに、これだけ液晶が大きいと、撮影時に液晶ファインダーとして使っても見やすく、撮影画像を再生したときの迫力も十分。液晶は通常のTFTタイプであり、まだプロトタイプということもあって、表示品質は極上とはいえず、斜め方向の視認性はもう一息といった印象はあるものの、この迫力を考えれば十分許容範囲だ。 本機はあくまでもPMA向けのプロトタイプということだが、ブースでは自由にデモ機を手にすることができる上、きちんとした型番もあり、簡易カタログが配布されていることもあって、市販されるのは確実。もちろん日本国内にも導入されると思うが、具体的な価格や日程は全く未定の状態という。早期の発売を大いに期待したい個性的なニューモデルだ。 このほか、大型液晶を搭載したという点では、2型液晶搭載の単焦点タイプの300万画素モデル「カシオ EXILIM EX-S3」もPMAで発表されているが、こちらは別途レポートしたい。 □PMA 2003のホームページ(英文)http://pma2003.pmai.org/ (2003年3月5日) [Reported by 山田久美夫]
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