●アイ・オー初のデジカメはムービーカメラ 今回、製品化直前の量産試作機を試用できたのでレポートをお届けする。一部、製品と異なる部分もあるかもしれないが、ごく少ないはずだ。 Motion Pixの特徴は、16,500円という低価格と、ムービーカメラという位置づけがされていることだ。 Motion Pixは、インターネットショップの予約販売では、13,800円程度の価格で販売されている。35万画素級のトイカメラよりは高いが、カメラメーカーのデジタルカメラの最低ラインである実売19,800円よりは安いという価格設定だ。 また、ムービーを強調した性格は、典型的な縦型のムービーカメラを模した、そのデザインからも伺える。液晶もウィング式に90度開く形で装備されている。 撮像素子は、130万画素のCMOSセンサーで、静止画が1,280×1,024ピクセルと640×480ピクセル、動画が320×240ピクセルで撮影できる。動画のフォーマットはMotionJPEGコーデックのAVIで、フレームレートは10fpsだ。この記事では静止画は常に1,280×1,024ピクセルで撮影した。 記録メディアは内蔵の8MB SDRAMとCF(Type 1)。内蔵の8MBはSDRAMで、電池の交換時に消えてしまうので、CFは必須と考えたほうがいいだろう。電源は単3電池2本だ。
●価格の割には高級感のある操作感 実物を手にしてみると、写真で想像していたのよりもずっと小さい。また、液晶の開け閉めや、ボタン類の操作感に節度があり、価格の割には高級感がある。丸みを帯びたほどよい大きさのボディと相まって、好ましい印象だ。とはいっても、価格なりの部分はあり、CFスロットは蓋なしだし、液晶も1.4型のSTNなので、それなりの見えぐあいだ。液晶については、あとで詳しく紹介する。 Motion Pixの操作ボタンは、主電源を兼ねるジョグ式の「メニューコントロール」、その上の「movie」、ボディ上の「シャッター」の3つしかない。 液晶を開け、メニューコントロールを3秒間押し続けると主電源が入り、もう一度押し続けると切れる。movieボタンで動画撮影、シャッターボタンで静止画撮影だ。節電のため、60秒以上操作しないと、自動的に電源が切れる。フォーカスは、鏡筒に120度ほど回るピントリングがあり、それで操作する。 本体は液晶を閉めた状態では自立するが、液晶を開けると自立できない。PCのWebカメラの用途もあるので、プラスチック製の小さな三脚が付属する。ちなみに三脚をつけたままでは電池交換はできない。
●シンプルで撮りやすいムービーカメラ 操作系がシンプルなので、撮影時に迷うことはあまりなかった。起動時と静止画撮影時は、起動音とシャッター音が鳴る。固定焦点レンズの画角はわりと望遠寄りで、35mmカメラ換算で40mmぐらいの感じ。液晶がついているのはありがたいことで、フレーミングが正確で、ねらったものが写っていないということはない。液晶のないトイカメラとは安心感が違う。 ただし、液晶の見え具合はそれなり。何が写っているかはわかるが、ピントが合っているかどうかは判断が難しい。室内で目をこらすとかろうじてピントが判断できるが、屋外ではほとんど判断できない。また、何色かはわかるが、色あいはわからない。 おかげで、接写のあとでピントリングを戻し忘れて、ピンボケの写真を何枚か撮ってしまった。液晶のレベルを考えると、ピントリングではなく、マクロと通常のモードスイッチ切り替えの方が、現在の状態が分かりやすくてよかったと思う。
また、液晶には省電力のためかON/OFFスイッチがついている。しかし、光学ファインダーは一応ついているが、あてにならないので、OFFにする機会はほとんどないだろう。 ちょっととまどったのは、静止画の撮影時にシャッターボタンを押すと液晶が消えてしまうことだ。ちょうど、ゆっくりとまばたきをするような感じで消えてからまた映る。また、撮影画像の確認のプレビューもない。最初の何枚かはついあわてて、手ぶれ画像ができてしまった。これについては、あとで説明する。 わりと頻繁に使っていると、1時間半ほどでバッテリがなくなった。この後も、だいたい同じペースだったので、近所の散歩以外は予備の電池を用意したほうがよさそうだ。ただし、普通の単3アルカリ電池なので、市街地ならどこででも購入できる。試みに、新しい電池と交換し、液晶をつけた状態で連続してムービーを撮り続けてみたら、22分32秒で電池が切れた。
●赤が派手だが、思ったよりもよく写る 実際に撮った画像を見ると、静止画、動画とも、色の乗りがいいのに驚いた。CMOSセンサーを使用するトイカメラでは色乗りが悪く、晴天時でも曇天のように写ってしまうものが多いが、それとは一線を画している。動画は色がよく出て、いい感じに写る。いくつか試してきた低価格のデジタルカメラの中では、かなりいい部類に入ると思う。音声はモノラルだが、周辺の音もよく拾えている。撮っているときの自分の声も大きく入るので、覚えておいた方がいい。 10fpsとフレームレートが低いので気になっていたが、動物の動きなどは自然だ。ただし、自動車や電車などの動きの激しいものを撮ると、すこし動きが飛ぶ感じになる。これについては、サンプルを見ていただきたい。 【注意】動画はMotionJPEGコーデックのAVIファイルのため、Media Playerでは再生できないことがあります。その場合は動画ファイルをダウンロードし、こちらからQuickTimeをインストールして、QuickTime Playerから開いてください。
静止画像は、赤や黒はくっきりと出過ぎるぐらいで派手な印象だ。ただ、日当たりが良いとよく写るが、日陰や逆光気味になると、中間ぐらいの明るさの部分が沈んで、暗い感じになってしまうクセがある。光学系もそれなりで、フレアなども出るので逆光は避けた方がいいだろう。 また、静止画の解像度は1,280×1,024ピクセルあるが、光学系が追いついていない感じで、遠景を撮ると周辺の描写は、わりといいかげんだ。まぁ、価格や性格を考えると、そういうことを求める製品ではないだろう。 そして、Motion Pixでは、静止画優先の普通のデジカメと違って、機械式シャッターがなく、撮像素子の情報を順次呼び出すので、静止画の手ぶれ画像は独特のものができる。手ぶれに従って、被写体が曲がって写るのだ。同様に、高速で動く自動車などを撮ると、自動車が変形する。そういえば、動画に重点を置いたコダックのmc3も同様の仕様だった。 手ぶれについては、注意できるし、ブレてしまうよりは、すこし曲がってもちゃんと写るほうがいい場合の方が多い(程度問題だが)。色々遊べるネタでもあるので私には楽しめる余録だが、一応、覚えておいた方がいいだろう。
●TVでも見られるが、やはりPC用周辺機器 Motion Pixは、ビデオケーブルも付属しており、TVでも再生することができる。大きい画面で家族そろって見られるのはありがたい。ただし、静止画はわりときちんと見られるが、動画は画素数の制限か、ちょっとツライこともある。同じ画像でも、PCに転送してから見た方が印象が良かった。ムービーカメラというジャンル分けなので、誤解されるかもしれないが、単独のAV機器ではなく、PCの周辺機器としてとらえるべきだろう。 ●PCの使い方を広げる手頃なおもちゃ 1万3千円台という実売価格を考えると、かなり遊べる道具だと思う。絵が一応まともなので、そこそこ楽しめる。操作もわかりやすく迷わないし、液晶がついているので撮影時も安心感もあり、普通のデジカメとして扱える。もう少し、液晶の品質が良くなって、動画のフレームレートが上がれば、それにこしたことはないが、現時点でもあまり困ることはない。ムービーを主にしたことと、静止画の解像度が高いことでカメラ付き携帯電話とも差別化できている 念のために言っておくと、Motion PixはDVカメラの代用になるわけではない。ズームがなく、TVに映したときの画質もDVに比べれば貧弱だ。子供の運動会の記録には向かないだろう。 Motion Pixは、パソコンを日常的に使っている人が、使い方を広げるための手軽な周辺機器という位置づけなのだと思う。価格を考えれば、それは成功していると言っていいだろう。とくに、ちょっとした散歩や日帰りの旅行に持ち歩くといった用途には推薦できるし、その散歩が楽しくなるだろうことは請け合ってもいい。 アイ・オーは、こういう分野ではこれが初めての製品だが、面白い製品に仕上がっていると思う。良い意味で、次の製品に期待したい。
□アイ・オー・データ機器のホームページ (2002年12月2日) [Reported by date@impress.co.jp]
【PC Watchホームページ】
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