10月21日購入 購入価格:7,980円 ●トイカメラの決定版か? エヌエイチ・ジャパン・ホールディングス(NHJ)から発売されているトイカメラChe-ez!シリーズは、手頃な価格とトイカメラとしては写りが良いことで定評を得ており、本誌でも何機かテストしている。 今回発売された「Che-ez! splash」は、デザイン的には名作「Che-ez! SPYZ」を引き継いだスクエアなデザインだ。本体サイズは60×17×38mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約42g(本体のみ、電池除く)と大きさもほぼ同じ。32万画素CMOSを搭載し、単4アルカリ電池1本で動作する。
「Che-ez! SPYZ」との大きな違いは、記録用のメモリがフラッシュメモリになったこと、暗い場所用のフラッシュが標準添付されたこと、マクロ撮影が可能になったことだ。Che-ez! SPYZの弱点が、内蔵記憶素子がSDRAMで電池が切れるが画像が消えてしまうこと、暗い場所に弱いこと、マクロ撮影ができないことだったので、それを克服したことになる。ちなみにChe-ez! SPYZの長所は、品質感の高いボディと美しい画像だ。 これはかなり決定版かも、ということでレポートをお届けする。なお、ビックカメラでの購入価格は7,980円(税別)だった。
●使いやすくなった本体 本体のサイズはSPYZとほぼ同じだ。主な素材は金属で、価格以上の高級感があり、冷たい感触が心地よい。 前面には、レンズ、ファインダー、セルフタイマー時に点滅するLEDが、背面には、モノクロ液晶とモードスイッチが配される。背面のモノクロ液晶は、ごく小さなもので撮影可能枚数などの表示ができるだけだ。ファインダーや撮影画像の再生などの機能はもっていない。 ボディはSPYZとはまったく別物で、SPYZでは引っ張り出すようになっていたファインダーが内蔵され、見えぐあいも改良されている。また、SPYZでは単4電池のフタが本体からはずれるようになっており、なくなりやすいという欠点があったが、一体型に改良されている。 上面にはマクロの切り替えレバーと、電源、シャッターボタンが配されている。側面のUSBミニBインターフェイスや、底面の三脚穴などは標準規格に沿ったもので好ましい。 内蔵のフラッシュメモリは8MB。出力解像度は640×480ピクセル(VGA)のみで、FINEモードで約155枚、NORMALモードで約219枚撮影可能となっている。HIGHで26枚、LOWで107枚だったSPYZに較べると大改良だ。
●フラッシュは独立式 標準添付されるフラッシュは、本体とは別体となっており、使用時に取り付ける。ジョイントの部分は、接点とプラスチックのピンだけだが、カチッという音とともに確実に固定される。往年のミノックスのようといえばほめすぎだが、モノとしての魅力は十分にある。 フラッシュは電源スイッチも電池も独立している。電池はCR2というリチウム電池を使用するが、ヨドバシカメラでの購入価格は2本入りで1,000円だった。性能的に必要なのだろうが、本体価格に比較して高価すぎる感じだ。また、フラッシュの電池のフタは着脱式で、はずれてしまう。
●色味の乏しい画像、使用範囲の狭いフラッシュ いざ撮影にとりかかると、起動が遅いのに気が付く。平均して5秒ぐらいかかる。撮影間隔も4~5秒かかり軽快感がない。フラッシュと同時に使っていると、フラッシュのチャージの方が速い。さすがフラッシュは高い電池を使っているだけあるとバカな感心をしてしまう。 また、電源ONやレリーズに伴なって、かなり高いビープ音がする。これは盗撮防止のためなのだろうが気に障る。 撮影画像はSPYZとはかなり印象が違い、全体に色味に乏しいいわゆる“安いCMOSくさい”ものだ。NTTドコモのビルや、遠景などの撮影は快晴に近い好天の日だったのだが、空の青さが出ていない。これまで使った経験のあるトイカメラでいえば無印良品の「MP35」に似ていて、曇天の日のように撮れてしまう。SPYZは画素数が少なくても、色の再現性がよく、“写真”という感じに撮れて好感が持てたのに対し、残念な印象だ。画像はFINEモードで撮影したが、このモードでも圧縮率はかなり高い。
マニュアルにも記載されているが、フラッシュは本当に暗い場所用で、日中に日陰や逆光などの際の補助光に使おうとすると真っ白になってしまう。同様にマクロ撮影時にも使用できない。日中シンクロやマクロ撮影などの際に必要な調光機能を持っていないようだ。
また、これは撮影者の問題でもあるのだが、20cmまで寄れるマクロ撮影で、寄りすぎてしまってピンぼけになる例が多かった。 Che-ez! splashは、液晶ディスプレイを搭載していないので、フラッシュ撮影やマクロ撮影の失敗がその場でわからないのもつらい。一般のデジタルカメラについている液晶ディスプレイのありがたみを再認識させられた。腕がないと言えばそれまでだが、難しいカメラという印象だ。
撮影時のモード切替や、不要な画像の消去などの操作表示にはアイコンも併用されてはいるが、必ずしも使いやすくはなかった。やはり、日本語のメニューが表示される一般のデジタルカメラと比べることには無理がある。
●トイカメラの苦しさがあらわになった機種 5日間使ってみた印象は、「モノとしての魅力はあるが、実用性については疑問符付き」というものだ。とくにChe-ez! SPYZは、あまたあるトイカメラのなかでも図抜けて発色がきれいだっただけに、画像に魅力がないのは残念な結果だった。 また、トイカメラ全体の位置付けというものも考えてしまった。SPYZが登場した1年前とは異なり、まともなVGAサイズの画像が撮れ、美麗な液晶ディスプレイを備えたカメラ付きケータイというライバルがある。さらに、値段は3倍近い差があるとはいえ、「EXILIM」や「サイバーショットU」という常時携帯を目指した小型のデジタルカメラも登場している。これらのなかった1年前に比べ、トイカメラ全体の魅力が下がっているのは否定できない。 Che-ez! シリーズはフラッシュやマクロ撮影という撮影領域を広げる方向で機能を強化されたが、それだけに大型のカラー液晶を搭載できないという欠点が、よりあらわになった気がする。機能が増えたことによって、基礎体力のなさを感じる機会が増えてしまったと言ってもいい。 このままの価格であれば、Che-ez! splashよりも、SPYZのメモリをフラッシュメモリにして、電池のフタをはずれないように改良した製品の方がほしい。その方ができることとできないことがはっきりしていて、失敗の可能性が予見でき、使っていてストレスが少ないと思えるからだ。 □エヌエイチ・ジャパン・ホールディングスのホームページ (2002年10月25日) [Reported by date@impress.co.jp]
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