会期:10月8日、9日(現地時間) 会場:台北国際会議中心(TICC)
VIA Technologiesが開発者向けに開催しているVIA Technology Forum(VTF)では、VIA Technologiesの今年後半、そして来年の戦略などについての説明が行なわれている。 特に初日の午後に行なわれたセッションでは、同社の副社長であるシー・ウェイ・リン氏により今年、そして来年のチップセットロードマップに関する説明が実施された。また、展示会場では注目のデュアルチャネルDDRをサポートしたP4X600など、注目製品の展示も行なわれた。 ●デュアルチャネルDDRのP4X600は10月に出荷開始 OEMメーカー筋の情報によれば、IntelはデュアルチャネルDDRをサポートしたチップセットであるE7205(Granite Bay)を、11月4日(米国時間)にリリースする予定であるという。また、SiS(Silicon Integrated Systems)も、同じくデュアルチャネルDDRをサポートしたSiS655を計画しているなど、ハイエンドPC市場やワークステーション市場をターゲットとしたPentium 4向けデュアルチャネルDDRチップセットが、今後続々と登場する予定となっている。 デュアルチャネルDDRが必要とされる理由は、Pentium 4がメモリの帯域幅に影響を受けやすいCPUであるからだ。実際、DDR266(2.1GB/sec)に比べて、倍の帯域幅を実現するPC1066のデュアルチャネル(4.2GB/sec)のほうがパフォーマンスは上回っており、よりPentium 4のパフォーマンスを引き出している(このあたりについては、Intel 845GEのレビュー記事などを参照して頂きたい)。 だが、Direct RDRAMを利用しているPC1066は、DDR SDRAMに比べてやや高価であり、もう少しコストパフォーマンスのよい選択肢として最近俄然注目を集めてきたのが、DDR SDRAMをデュアルチャネルとして利用するデュアルチャネルDDRのソリューションだ。 実際、DDR266を2チャネルとして利用することで、4.2GB/secという、Pentium 4のシステムバス(533MHz)の帯域幅である4.2GB/secとマッチしPentium 4のパフォーマンスをより引き出すことが可能になる。 今回VTFで展示されたP4X600もそうした製品の1つで、P4X400との違いは、基本的にメモリであり、P4X400がDDR333の1チャネル(2.7GB/sec)までのサポートであるのに対して、P4X600はDDR333の2チャネルとなっており、帯域幅は5.4GB/secを実現している。このほかの仕様(AGP 8X、V-Link 8X)などは同等で、基本的にはP4X400のデュアルチャネル版だと考えればよい。 今回会場に展示されていたのは、VPSDプログラムで出荷される予定の“P4P6008X-V”で、マザーボードの出荷時期などはまだ未定であるという。 リン氏は現在出荷されているサンプルについて「インハウス(社内用)のサンプルだ。顧客用のサンプルはまもなくだ」と述べ、現実的にはまだまだ初期の段階にはあるようだ。ただ、リン氏によれば、今回はバリデーションなども比較的順調に進んでいるようで、10月の終わりには出荷版に近いものが出されるようになるということだ。 なお、気になる価格だが、E7205がワークステーション用ということで、Xeon用マザーボードに近い非常に高い価格になることが予想されているが、リン氏によれば「P4X600のターゲットはハイエンドPCだ。E7205ほど高くなることはないだろう」と述べており、さらに基板も安価な4層基板で作られる(E7205は当初は6層基板となる)ことを考えると、現在のPentium 4マザーボードよりもやや高いというレンジでとどまる可能性が高い。したがって、ハイエンドPCユーザーにとっても非常に気になる存在といえ、要注目の製品といえるだろう。
●2003年にはDDR IIとDDR IおよびQBMをサポートしたP4X800をリリース さらに、VIAはこれまでDDR IIをサポートするとしてきたP4X800に関して若干予定を変更し、P4X800に関してはDDR IIとDDR Iの両方をサポート、Kentron Technologyが推進しているQBM(Quad Band Memory)のメモリモジュールも併せてサポートすることを明らかにした。 QBMのメモリモジュールでは、2バンクになっており、2つ目のバンクのクロックを90度遅らせ、ボード上に搭載されているQBM10というスイッチを利用して各バンクに交互にアクセスすることで、シングルチャネルながらデュアルチャネルと同じような効果を実現する。 つまり、DDR266を搭載した通常のPC2100メモリモジュールをシングルチャネルで利用した場合の帯域幅は2.1GB/secとなるが、DDR266を搭載したQBMでは倍の4.2GB/secとなるため、シングルチャネルでも533MHzのPentium 4にマッチする帯域幅となる。 QBMにおける追加コストは、モジュール上に搭載されるQBM10というスイッチだけになり、ロイヤリティフリーであるため、モジュールベンダもメモリデバイスベンダもロイヤリティを払う必要がないというのが、この技術のメリットだ(Kentron Technologyはスイッチを販売して儲けるというビジネスモデルとなっている)。 ただし、QBMが受け入れられるかはまだまだ未知数だ。その理由の1つはメモリデバイスベンダがこうした技術を受け入れるかどうかで、Kentronが現時点で明らかにしているQBMに協力的な企業というリストの中にメモリデバイスベンダはない。 ただ、Kentronがロイヤリティフリーにするというビジネスモデルを採用していることが、この状況を変える可能性もあり、VIAとしてもそれにかけてみた、ということなのだろう。 これまでも、こうしたちょっと変わったDRAMの技術はたくさん登場してきたが、いずれもメインストリームにならず消えていった。その最も大きな理由は、最大のチップセット供給メーカーであるIntelに採用されなかったからだ。 そういう意味でもQBMがどうなるかはIntelの動向次第と言えるのだが、今のところIntelが採用する可能性は低いと言っていい。現時点ではかなりニッチな市場にとどまる可能性が高いと考えていいだろう。
●グラフィックスコアのコードネームはVIA製のCasstleRockへ変更 さて、今回のプレゼンテーションでは多数の統合型チップセットが紹介された。統合されるグラフィックスコアについて、従来はVIAの子会社であるS3 Graphicsが開発しているZoetrope(ゾートロープ、Savage XPなどに採用)コアが採用されると説明されていたのだが、今回説明されたプレゼンテーションの中では、“CastleRock”と呼ばれるコア名に変更されていることが明らかになった。 今回明らかになった情報やOEMメーカー筋などからの情報を元にまとめたVIA Technologiesの推定チップセットロードマップは以下の通りだが、KM400やP4M400などグラフィックス統合型のチップセットのコアはいずれもCastleRockになっている。 CastleRockは、VIAが自社内に設立したグラフィックス開発チーム(新竹にオフィスがある)が開発したコアで、C3用チップセットとしてリリースされたApollo CLE266に内蔵されているものと同じだ。CastleRockは1パイプライン2テクスチャユニット(1P2T)の3Dエンジンを内蔵し、MPEG-2のデコーダ、デュアルディスプレイ(DuoView)機能のサポートなどの特徴を持っているという。 VIAの関係者によれば「CastleRockはよりローコスト向けのコア、デスクトップPCでは低コストが何よりも優先されるので、CastleRockコアを採用した」ということだ。 今後デスクトップPC向けのグラフィックスコアは、VIAの新竹チームが開発したCastleRock系が採用され、Hammer用としてリリースされる予定のK8M400には次世代CastleRockである“CastleRock II”(2パイプライン×2テクスチャユニット)が採用されることになるとリン氏は説明している。 なお、今後はVIAの新竹チームとS3 Graphicsの開発チームで情報交換をより進め、よりグラフィックスコア開発の速度を上げていくという意向のようだ。
●次世代のサウスブリッジはVT8237で、Serial ATAコントローラを追加
現在VIAの主力サウスブリッジは、USB 2.0コントローラが内蔵されたVT8235だが、2003年には次世代サウスブリッジとなるVT8237が登場する。2003年に登場するP4X800はVT8237との組み合わせになる。 VT8237は、USB 2.0のポート数が6から8に増え、Serial ATAコントローラが2ポート統合される。なお、VIAでは、このVT8237では無線LANのMACを統合する計画も持っていたようだが、現在はペンディングになっているという。 ただ、将来のバージョンでは無線LANのMACを統合する計画もされているようで、どのように統合するのか(ベースバンドも統合するのかなど)を今後も検討していくという説明がされた。 ●展示会ではKT333のCFリビジョンやP4X400のCEリビジョンなどのマザーボードが展示される
VTFの展示会では、いくつかのマザーボードベンダが出店していたが、その中の1つであるSOLTEK Computerのブースでは、KT333やP4X400の新リビジョンが展示されていた。 KT333の新リビジョンであるCFバージョンは、実はKT400と同じダイであるという。ただし、KT400の特徴の1つであるAGP 8Xの対応が削られていて、AGP 4Xまでの対応となっているという、KT400のピンカットアウト版だ。 こうしたバージョンをVIAが用意したのは、1つには顧客のニーズに答えるためであるという。実は、KT400とKT333のCEバージョンまでは、ピン互換になっておらず、マザーボードベンダはそれぞれ別の基板を利用して生産する必要があった。 しかし、KT333のCFバージョンを利用すると、KT400用の基板を利用してKT333チップセットのマザーボードを作れるようになる。同じ基板で2つのマザーボードがつくれれば、マザーボードベンダ的にはコストメリットがあり、また、KT400への移行を渋っているベンダ(実際に少なくないと言う)に対しても、今後もKT333を作り続けることができるようになるわけだから、移行を促すという意味でもメリットがあるという。 P4X400のCEバージョンというのは、VIAとしては正式出荷版であるという。「P4X400のCDバージョンはごく初期の出荷版で、出荷した数も少ない。CEバージョンが正式な出荷版となる」(リン氏)と説明されたが、SOLTEKによれば、より信頼性が向上しており、DDR400における動作もかなりよくなっているという。 現在のところSOLTEKでは日本向けに出荷する予定はないとのことだが、VIAファンには少々気になる情報だ。
□VIA Technologiesのホームページ (2002年10月10日) [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
【PC Watchホームページ】
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