プロカメラマン山田久美夫の「CEATEC JAPAN 2002」レポート

松下、フォトキナ出品2モデルを国内初展示



 国内最大級の映像・情報・通信展示会「CEATEC 2002」が幕張メッセで1日より開幕した。

 イベントとしての目玉は、やはりBlu-rayのような次世代記録メディアや、液晶や有機ELなどのディスプレイなどだが、その一方で、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話、それを活用する各種機器も多数出展されており、この分野でもなかなか見応えのあるイベントとなった。


■ 松下電器産業

●国内未発表のフォトキナ出品2モデルを先行展示

 松下電器産業は、先に開催されたドイツのフォトキナで、200万画素光学12倍ズーム機「DMC-FZ1」と300万画素3倍ズーム機を出展した。

 これらのモデルは、まだ国内で正式発表されていないにも関わらず、今回のCEATECでは、参考出品という形で両機種とも出展されている。

 フォトキナでは「DMC-FZ1」は自由に触れられる状態でのデモを行なっていたが、CEATECでは実機を手にすることはできず、ケース越しに見るだけで、詳細なスペックなども明らかにされていない。また、ブースで聞いても、「発表前なので……」という返答だけなのが残念。

 しかし、一眼レフっぽいスタイリングで、しかも200万画素ながらも、光学手ブレ補正式の12倍ズームというのは、なかなか魅力的なスペック。それだけに、早々に国内発表し、国内での実販価格を知りたいところだ。

 一方の「LUMIX DMC-F7」の後継機と目される300万画素3倍ズーム機もなかなかの仕上がりで、質感も上々。外観から見ても、かなり大幅な改良がなされている感じで、こちらも期待がもてそうだ。

●家庭内の映像や音声情報を集中管理するAVCサーバーを参考出品

 SDカードを中心にさまざまな展開を見せている松下電器。

 先だって同社は、SDメモリーカードからPCなしにDVD-RAMなどにデータを保存できるHDDビデオデッキ「DMR-HS2」を発売し、PCなしに大容量データを扱える環境を具体的に構築しつつある。もちろん、PCを自由に使える人なら、データのコピーなど朝飯前だが、家族みんなが利用するデジタルカメラのような製品にとって、誰でも簡単にデータを操作できるという環境は、今後とても重要なポイントになってくるだろう。

 そして今回のCEATECでは、この考え方をさらに推し進めたものとして「AVCサーバー」を参考出品していた。

 これは、家庭内での動画や静止画、音声などを一カ所に蓄積し、さまざまな環境から利用できるようにしたもの。簡単にいえば、テレビからも、PCからでも、ネットからでもアクセスできる、大容量ホームサーバーというわけだ。

 具体的にいえば、TV放送はもちろん、DVカメラで撮影した動画、デジタルカメラでの静止画、インターネット経由での映像・音楽情報などあらゆるものを、本機に内蔵された大容量HDDやDVD-RAMなどに集中的に保管。

 そのデータを各種ビデオ系出力はもちろん、LAN(イーサーネット)やUSBによりPC上でも活用できるようにしたもので、サーバーのデータは、SDメモリーカードにコピーして、他の機器で利用することもできる。また、無線LANにも対応しており、将来的には外出先から携帯電話で自宅のAVCサーバーにアクセスするといったところまで考えられている。

 ブースでは、SDカード経由でのデータコピーや、保存データをビデオ出力して大型テレビで映したり、LAN経由でノートPCからアクセスするといった、さまざまなデモが行なわれており、その有効性をアピールしていた。

 また、デザインもホームユースを考慮した、高品位でスタイリッシュなものに仕上がっており、PC周辺機器としてのサーバーとは一線を画すものに仕上がっていた。

 残念ながら本機はまだ開発中であり、今回も参考出品という形だが、もし手頃な価格でこのようなAV系ホームサーバーが家庭で利用できるなら、すぐにでも楽しみたい! と思わせる魅力をそなえた製品だった。


■ 三洋電機

●1.7秒の高速起動を実現した400万画素3倍ズーム機「DSC-AZ3」を出品

 三洋電機は、CEATEC前日に発表したばかりの400万画素3倍ズーム機「DSC-AZ3」を出品。

 このモデルは、一足先に発表された200万画素動画デジカメ「DSC-MZ3」とほぼ同じ筐体を採用したモデル。本機は、約1.7秒の高速起動とシャッター間隔約2秒という、軽快な動作を特徴としたもの。

 実際にブースで手にしてみると、沈胴式ズームの繰り出し速度がかなり速いこともあって、数値以上に起動が機敏に感じられる。また、撮影感覚もほとんどストレスを感じることがないレベルに仕上がっている。このあたりは先代のAZ-1に比べると格段の進化だ。

 また、液晶画面上でのモード設定表示もよく考えられており、メニューを選ぶと、各設定内容の簡単な説明が、吹き出しのような形で表示されるあたりも、なかなか親切だ。

 さらに、色相・彩度・明度を、RGBCMYの各色ごとにマニュアル設定でき、絵づくりをユーザーの好みにカスタマイズできるあたりも、なかなかユニーク。こだわり派マニアにとって、かなり楽しめる機能に仕上がっている。

 このほか、エプソンが提唱する、USB経由でのプリントが可能な「USB DIRECT-PRINT」に対応しており、ブースでも同機能を使ったプリントデモが行なわれていた。

 ただ、三洋というと動画というイメージが強いが、今回のモデルは、CCDの関係で、高画素にはなったが、動画性能は320×240ピクセルで15フレームに留まっているのが少々残念なところ。また、他社の400万画素級モデルが小型軽量指向なのに比べると、やや大きめな点も少々気になった。

●無線LAN環境で瞬時に

 また、同ブースでは、無線LANを使ったネットデジカメと呼ばれるシステムのデモも行なわれていた。これは無線LAN環境下で、カメラを常時接続し、撮ってすぐにインターネット上の電子アルバムに保存できるシステムだ。

 具体的には、デジタルカメラのCFカードスロットに、汎用の無線LANカード(IEEE 802.11b)を挿して撮影。その画像や液晶モニターの表示画面を、無線LANで接続したPCの専用ソフトで、リアルタイムに表示したり、画像データをストレージするもの。そのため、公衆LAN環境下であれば、撮影後、瞬時にネット上に画像をアップすることもできる。

 つまり、デジタルカメラのメモリカードに画像を記録する代わりに、撮ったその場でデータを転送して、いきなりネットにアップしたり、ネットで結ばれたPCにストレージしてしまおうという試みだ。もちろん、他のLAN対応機器にデータを転送したり、カメラからインターネット経由でプリントを依頼することも可能だ。

 この機能は、同社のデジタルカメラのソフトウエアを一部改造したモデルで稼働しており、すぐにでも実用化できるレベルのシステムとなっている。

 もちろん、現時点ではまだ実験段階であり、三洋電機としては、ハード側の提供はするものの、公衆無線LANの環境については「環境が整うのを待っている段階で、自社で環境を構築する予定はない」という。

 実際にデモを見てみると、公衆無線LANの環境さえ整えば、とても便利で理想的なシステムであり、撮影した瞬間に無線LANで結ばれたPCに画像が表示されるのは実に快適で楽しいもの。イベント会場やテーマパークなど限られた環境下であれば、実現できるシステム。たとえば、本システム対応機を使ってテーマパークで撮影して、帰りに出口でプリントを持って帰るといったこともできるといった、さまざまな楽しみ方ができるシステムとして、今後の展開が注目される。

●ツイン液晶モニタを使った、3G対応のカメラ付き携帯を参考出品

 三洋ブースで一番の人気を博していたのが、3G対応のカメラ付き携帯電話のコンセプトモデル。

 今後、カメラ付きモデルが携帯電話の主流になることは確実だが、本機はその便利さに加え、使う楽しさを感じさせるモデルとして、なかなか注目される存在だ。

 本機の特徴は、2つのカメラ部と、角度が自由に変えられる2つの液晶モニタ(有機EL?)を備えながらも、スタイリッシュでコンパクトに仕上がっている点だ。

 まずカメラ部だが、折り畳み式ボディーのヒンジ部分にメインのデジタルカメラユニットを搭載。この部分ならレンズ光学系を長く取れるので、画質面でも有利だ。残念ながらモックアップではズームレンズではなく、単焦点レンズベースのデジタルズームが前提となっていたが、もしかすると、ズームレンズをこのスペースに収納することも、技術的には可能だろう。

 また、テレビ電話モード用として、サブのカメラユニットも液晶上方に備えている。

 さらに、通常の液晶モニターのほか、角度が自由に変わる、ツインモニターを採用。これは片方のモニターでMAILを読みながら添付ファイルを表示したり、テレビ電話モードでは自分と相手を別のモニターで表示することもできるなど、なかなか便利そうなもの。さらに、PDA的な使い方では単一の液晶モニターよりも多くの情報を一度に閲覧することができるなど、実用性も高そうだ。

 もちろん、本機は参考出品ではあり、このまま製品化されるとは考えにくいが、機能とデザインと実用性の高さがうまく融合したカメラ付き携帯電話として、とても魅力的なモデルだった。


■ メモリースティックパビリオン

●この秋の新製品を一堂に展示。ただし、200万画素の「Cyber-shot U」の出展はナシ

 ソニーが提唱するメモリースティック。今回のCEATECでは、メモリースティック賛同メーカーの合同ブースとして、採用製品を一堂に集めた「メモリースティックパビリオン」を展開。その幅広い製品群をアピールしていた。

 そのなかでソニーは、この秋に発売される新型Cyber-shot「DSC-F717」や、Blurtooth内蔵の「DSC-FX77」などを、発売前の新製品を出品。ブースではこれらのモデルを自由に手にすることができた。

 ただ、フォトキナで発表されていた、200万画素版の「Cyber-shot U」こと「DSC-U20」は、残念ながら出品されていない。ブースで聞いたところ、日本国内での展開は現時点で未定ということだ。だが、日本人好みのモデルであり、多くにユーザーが欲しがっているモデルだけに、早期の発表・発売を期待したい。

 このほか、同ブースではHPのメモリースティック対応ダイレクトプリントモデル「Photosmart 7350」なども出品されていた。


■ JVC

●デジタルハイビジョン対応の超小型ビデオカメラを参考出品

 JVCは今回、AV系のさまざまな新展開をアピールしていたが、なかでも注目すべきものとして、本格派ビデオカメラ+αのサイズで、超高画質なデジタルハイビジョン撮影ができるビデオカメラを参考出品していた。

 もちろん、参考出品とはいえ、ブースではすでに実写デモも行なわれており、ほとんど完成品に近いレベルという印象だ。

 デザインも上々で、スタイリングもきわめてスタイリッシュ。本格派モデルらしい、とても高級感があるものに仕上がっていた。

 サイズ的にもデジタルハイビジョン機とは思えないほどコンパクトに仕上がっており、このサイズになれば、十分に携帯可能なレベルだ。

 もちろん、価格はかなり高価だと思うが、本機ならデジタルハイビジョンを個人レベルで楽しむことさえできる可能性を秘めている感じだ。

 価格や発売時期は未定だが、今後の展開がとても楽しみな、新世代のハイビジョンビデオカメラだ。


■ フィリップス

●直径30mm光ディスクを使った、CFカードサイズの1GBリムーバブルディスク「SFFO」を参考出品

 フィリップスブースでは、Blu-rayディスクを主体として展示が行なわれていたが、もうひとつ注目すべき新規格ディスクが出展されていた。

 これは「SFFO」(Small Form Factor Optical)と呼ばれるもので、直径30mmの光ディスクをベースとしたリムーバブルメディア。容量は現時点で1GBを実現しているという。

 また、ドライブもコンパクトで、幅34mm、厚さ7mmと携帯機器にも十分搭載できるレベルを実現している。

 実はこのドライブ部は、CFカードと同じ形状で、CFカードスロットに収納できるもの。つまり、このSFFOが実用化されれば、CFカードスロットを使って、交換可能な1GBリムーバブルディスクが実現するわけだ。

 書き込みは青色レーザーを使ったもので、書換可能なタイプと追記型のものが用意されるという。

 ただし、現在はまだ企画段階であり、実用化は数年先になるという。もちろん、この世界の大容量化は日進月歩。それだけに、製品化される頃には、1GB程度の容量ではお話にならないということにもなりそうだが、今後の展開が楽しみな超小型光ディスクだ。


■ 三菱電機

●ハニカムCCD搭載の「D251i」をアピール。プリントデモも展開

 カメラ付き携帯電話のなかでも人気の高い「D251i」。本機は富士フイルムのスーパーCCDハニカムを搭載したモデルであり、画質や感度の面でも、他のモデルを上回る実力を備えている。また、メモリースティックDuoを搭載している点も大きな特徴だ。

 三菱電機ブースでは、この「D251i」を使った撮影デモが行なわれており、その場で、メモリースティック対応のソニーの昇華型プリンターや、店頭プリント用プリント端末を使ったプリントも行われていた。

(2002年10月3日)

[Reported by 山田 久美夫]


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